【クマ出没対策の最前線】AIが全国情報を地図で可視化!新サービス「FASTBEAR」とクマ検出AIカメラ「SENTINEL」で安心な社会へ

AIがクマ出没情報を一元化!「FASTBEAR」で全国の状況を地図で把握、AIカメラ「SENTINEL」で早期警戒を実現

近年、全国各地でクマの出没が相次ぎ、人身被害も増加の一途をたどっています。環境省の速報値によると、令和7年度はクマによる人身被害が230人に達し、犠牲者も13人という過去最多水準を記録しました。また、4月から10月までの出没数は3.6万件以上、捕獲数も9867頭といずれも過去最多水準となっています。

このような状況の中、クマに関する情報は各自治体のウェブサイトや報道機関のニュースなど、さまざまな場所に分散しており、地域住民や関係者が正確かつ迅速な情報を得るのが難しいという課題がありました。また、情報の更新頻度や表記方法も統一されていないため、混乱を招く原因となることも少なくありません。

この課題を解決するため、東京大学・会津大学発スタートアップの株式会社Aisometry(アイソメトリー)は、AI技術を駆使したクマ出没情報ダッシュボード「FASTBEAR(ファストベア)」を公開しました。さらに、市街地へのクマの侵入を早期に検知するAIカメラ「SENTINEL(センチネル)」の開発も進められています。

1. クマ出没情報ダッシュボード「FASTBEAR」とは

「FASTBEAR」は、全国47都道府県のクマ出没情報を集約し、地図上でリアルタイムに可視化する画期的なダッシュボードです。このサービスは、情報の分散という長年の課題に対し、AIを活用した新しい解決策を提示しています。

1.1. AIエージェントが情報を自動収集・整理

FASTBEARの最大の特徴は、独自のAIエージェントが自治体などの公式発表や各種ニュースを自動で収集し、ダッシュボードに最新情報を反映させる点にあります。通常、自治体や報道機関が公表する情報は、それぞれ異なる形式で提供されます。しかし、FASTBEARのAIはこれらの多様な情報を一定の形式に整理し、比較・参照しやすい形で表示します。これにより、利用者は手間なく全国の最新情報を一元的に確認できるようになります。

FASTBEARシステムが日本全国のクマ出没・目撃情報をヒートマップとログで表示。各地のツキノワグマ目撃事例が詳細に記録されており、地域ごとの危険度も視覚的に把握できる。

1.2. 地図とログで全国の出没状況を俯瞰

ダッシュボードでは、クマの出没情報を地図上に表示します。色分けされたヒートマップで出没が多いエリアが直感的に分かり、さらに拡大することで個々の出没地点を点マーカーで確認できます。これにより、地域をまたいだ状況把握が可能となり、自治体や施設管理者は「自分のエリア周辺のリスクが上がっているか」を素早く判断できるでしょう。

FASTBEARというウェブアプリケーションの画面で、日本地図上にクマの出没情報が多数表示されています。左側のサイドバーには、ツキノワグマの目撃情報が日付や場所とともにリストされており、合計964件の出没事例が報告されています。地図の濃いエリアは報告が多いことを示しています。

また、出没ログとして時系列で情報がリスト表示されるため、過去の事例も含めて詳細を確認できます。この機能は、過去の出没パターンを分析し、将来的な対策を検討する上でも非常に有用です。

1.3. 過去10年間の膨大なデータと今後の展開

株式会社Aisometryは、過去10年間にわたる数万件規模のクマやイノシシなどの詳細な出没データを保有しています。この膨大なデータは、AIによる情報収集範囲の拡大や、将来的な通知機能の提供、さらには安全対策や戦略的意思決定のためのデータ分析基盤として活用される予定です。

国や自治体の公式情報や報道メディアのニュースなどをAIエージェントが収集・統合し、分類・整理・構造化したデータをデータベースに格納。最終的にダッシュボードで可視化する情報処理フローを示しています。

今後、FASTBEARはメールやLINEなどでの通知機能や、現在地を起点としたアラート通知を拡充し、ユーザーのニーズに合わせた情報配信を強化していくとされています。これにより、「知る」だけでなく「次の行動につながる」情報提供を目指しています。

データベースからのデータがLINE通知を通じて伝えられ、その情報がダッシュボードで可視化される一連のシステム連携プロセスを示しています。

1.4. データ分析基盤としての役割

FASTBEARで収集・整理されたデータは、統一されたフォーマットでデータベースに格納されます。現状、各自治体が公表するデータには形式のばらつきがありますが、これを一つのデータベースにまとめることで、産学連携によるクマ出没の異常事態に対する原因究明や、被害抑止に向けたデータサイエンスに基づく意思決定を可能にする基盤が構築されます。収集されたデータは、AIによるクマ出没予測など、さまざまな科学的知見を社会に提供する可能性を秘めています。

FASTBEARのプロダクトURLはこちらです: https://fastbear.aisometry.com/

2. クマ検出AIカメラ「SENTINEL」の開発

「FASTBEAR」と並行して、株式会社Aisometryはクマ検出AIカメラ「SENTINEL(センチネル)」の開発も進めています。SENTINELは、市街地や生活圏に隣接するエリアでのクマの侵入を早期に察知し、関係者が迅速に対応できることを目的としたAIカメラです。

2.1. 効率的な防衛網の構築

SENTINELは、現場で使える「一次情報」を増やすことで、確実な情報に基づいた注意喚起や巡回・誘導の意思決定を支援します。低コストでの導入が可能であり、市街地付近に監視カメラ群を整備することで、クマの出没に対する効率的な防衛網を敷くことができます。これにより、広範囲を人手で巡回・監視する必要性を減らし、自治体職員や猟友会などの人的負担軽減にもつながると期待されます。

白い背景の白い台の上に置かれた、黒いドーム型の防犯カメラのクローズアップ画像です。シルバーのベースが特徴で、セキュリティシステムや監視技術を象徴しています。

現代的な建物のコンクリート壁に設置された、銀色のドーム型防犯カメラのクローズアップ。背景にはガラス窓の建物、緑の木々、青空が広がり、セキュリティと監視の雰囲気を伝えています。

2.2. FASTBEARとの連携でより強固な対策へ

SENTINELで得られた画像付きの高精度な情報は、FASTBEARにリアルタイムで反映されるように設計されています。これにより、自治体発表や報道ベースの情報とAIカメラからの一次情報が統合され、より精度の高い状況判断と迅速な意思決定が可能になります。この連携により、強固かつ精緻な市街地防衛が実現されるでしょう。

森林の中で黒いクマが写っている画像です。画像解析によりクマが検出され、その確信度も表示されています。自然環境における野生動物の様子を捉えています。

地図上に、複数の監視カメラが設置されたネットワークと、山間部から市街地や農地へ侵入するクマの群れが描かれています。クマの生息域や活動範囲が赤く示されており、獣害対策システムを示唆しています。

3. 開発の背景と社会貢献への強い意志

株式会社Aisometryの中心メンバーは、福島県会津若松市にゆかりがあり、クマの出没問題を「遠くのニュース」ではなく、生活と隣り合わせの現実として受け止めてきました。市街地や人家の近くまで出没が及ぶ状況では、安心して外出することすら難しくなります。現場では、日々の出没対応に追われる職員の負担、情報の真偽確認に伴う疲弊、そして誤情報が生む不安の拡大など、複合的な課題が山積しています。

このような状況に対し、開発チームは「誰かが守ってくれるのを待つのではなく、守る仕組みをつくる」「出没情報が散らばっているなら、集めて見える形にする」「現場の一次情報が足りないなら、検知の目を増やす」という強い思いで開発を開始しました。

FASTBEARは「不安」を増やすための地図ではなく、行動を早くするための地図であり、SENTINELは「怖がる」ためのカメラではなく、被害を未然に防ぐためのカメラです。これらのプロダクトを通じて、地域全体を守りたいという開発者の願いが込められています。

本プロジェクトは、経済産業省が主催する「未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業」の一環として、東京大学大学院工学系研究科および福島県立会津大学コンピュータ理工学部の研究開発メンバーが中心となって企画・構想されました。

環境省が公表したクマの出没情報と人身被害件数の速報値は、以下のリンクで確認できます。

晴れた日の屋外で、二人の男性が並んで立っています。背景には青い空と緑豊かな木々、そしてモダンな建物が広がり、大学のキャンパスのような雰囲気です。二人はカメラに向かって穏やかに微笑んでおり、和やかな様子が伺えます。

4. 導入により期待される効果

FASTBEARとSENTINELの導入により、以下のような多岐にわたる効果が期待されます。

4.1. 迅速な出没情報の把握と連携

自治体や報道からの統合された情報に加え、AIカメラからの一次情報が加わることで、関係機関への情報連携が迅速化します。これにより、注意喚起や巡回判断、捕獲・誘導といった初動対応が大きく改善されるでしょう。

4.2. 出没データに基づく中長期的な安全対策

過去10年間の出没データ(場所・時間帯・季節など)に、今後のAIカメラによるデータ蓄積を統合して分析することで、より効果的なゾーニング計画の策定、重点監視エリアの設定、捕獲・予防策の検討などが可能になります。データに基づいた科学的なアプローチで、中長期的な安全対策を講じることができるでしょう。

4.3. 人的負担・監視コストの軽減

AIカメラによる一次情報の把握と裏付けが進むことで、広範囲を人手で巡回・監視する必要性が減り、自治体職員や猟友会などの人的負担が大幅に軽減されます。これは、限られた資源の中で効率的な獣害対策を行う上で非常に重要な要素です。

4.4. 既存システムとの連携による情報活用

FASTBEARは、自治体の情報公開基盤や防災情報システムとAPI連携する可能性があります。これにより、新たなシステムを一から導入することなく、クマの出没情報を既存の防災・安全情報と統合して提供できるようになり、地域全体の情報共有体制が強化されることが期待されます。

5. 今後の展望

株式会社Aisometryは、今後も自治体や関係機関とのフィールド実験を積極的に実施し、FASTBEARおよびSENTINELの実運用に向けた改善を進めていく予定です。ユーザーからのヒアリングを踏まえ、通知機能やデータ収集範囲の拡大など、機能拡充を段階的に行っていくとされています。

また、過去10年間の数万件規模の出没情報を統一形式で分析し、必要に応じてデータ提供やAIによる活用支援にも取り組むことで、学術研究や政策決定への貢献も目指しています。経済産業省の「未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業」の枠組みと共に、地域課題の解決に直結する実装と検証を重ね、現場で真に役立つプロダクトとして完成度を高めていくことでしょう。

6. 会社概要

  • 会社名:株式会社Aisometry (Aisometry Inc.)

  • 所在地:

    • (本店) 東京都文京区本郷6丁目25−14 3F Hongo Egg内

    • (福島県オフィス) 福島県会津若松市一箕町大字鶴賀字下居合145番地2 会津大学 産学連携センター内

  • 代表者:代表取締役社長 兼 CEO 松島弘幸

  • ホームページ:https://aisometry.com/

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