電源ケーブル不要の人工心臓が拓く未来:Helioverse Innovationsが川崎市の支援を受け開発加速

医療分野における革新的な技術開発を目指すHelioverse Innovations Inc.(本社:米国オハイオ州、CEO:黒田太陽)が、この度、川崎市が主催し、upto4株式会社が運営協力する「Kawasaki Deep Tech Accelerator 研究開発型ベンチャー企業成長支援事業」の2025年度支援先に採択されました。同社は、電源ケーブルの無い人工心臓の実現を目指しており、今回の採択によってその開発が大きく加速すると期待されています。
人工心臓の現状と患者が直面する深刻な課題
心臓の機能が著しく低下し、従来の治療では回復が見込めない末期心不全の患者さんにとって、人工心臓は命をつなぐ重要な医療機器です。近年、人工心臓治療の進歩は目覚ましく、5年生存率が70%を超えるまでになり、心臓移植に匹敵する主要な治療選択肢の一つとして確立されつつあります。
しかし、現在の人工心臓には大きな課題が残されています。それは、本体を動かすための太い電源ケーブルが患者さんの皮膚を貫通して体外に出ていることです。このケーブルは「ドライブライン」と呼ばれ、患者さんの生活の質(QOL)を大きく損なう原因となっています。
最も深刻な問題は感染症のリスクです。このドライブラインが常に体外に出ているため、患者さんの約22%がデバイス関連の感染症を発症すると報告されています。感染症は、軽度であれば投薬で対処できますが、重症化すると生命に関わる事態に発展する可能性もあります。この問題については、以下の研究論文でも詳しく述べられています。
さらに、感染症のリスクだけでなく、ドライブラインがあることで患者さんの日常生活にも様々な制限が生じます。例えば、入浴が制限されたり、ケーブルが引っかからないように常に注意が必要だったり、心理的な負担も大きくなります。これらの課題は、人工心臓によって救われた命の「普通の生活」を妨げる要因となっているのです。
Helioverse Innovationsが描く未来の人工心臓:電源ケーブル不要の革新
Helioverse Innovations Inc.は、このような既存の人工心臓が抱える課題を根本的に解決するため、電源ケーブルを必要としない「超小型カテーテル式人工心臓」と、体内に大電流を安全に供給できる「完全植込み型ワイヤレス電源システム」の開発を進めています。この革新的な技術が実現すれば、患者さんはドライブラインによる感染症のリスクから解放され、より自由で質の高い生活を送れるようになるでしょう。
この画期的なプロジェクトは、世界で最も長い人工心臓開発の歴史を持つ米国Cleveland Clinicの研究チームと、日本の高度精密産業を支えてきた熟練のエンジニア集団の協働によって推進されています。医療の最前線を知る臨床研究の知識と、世界に誇る日本のものづくり技術が融合することで、これまでにない高性能で安全な人工心臓の実現を目指しています。
Helioverse Innovationsは、この技術開発を通じて、2030年の臨床治験開始を目標に掲げています。臨床治験とは、新しい医療機器や治療法が人に対して安全で効果があるかを確かめるための最終段階の試験であり、この目標達成に向けて着実に歩みを進めている状況です。
「Kawasaki Deep Tech Accelerator」がもたらす開発の加速
今回のHelioverse Innovationsの採択は、「Kawasaki Deep Tech Accelerator 研究開発型ベンチャー企業成長支援事業」によるものです。このプログラムは、大学や企業における研究成果(知的財産など)を活用して研究開発型ベンチャーを設立しようとする研究者や、創業初期のベンチャー経営者を対象に、事業化を加速させるための支援を提供しています。
川崎市は、日本有数の研究開発都市として知られています。その理由として、日本初・最大規模のサイエンスパークである「かながわサイエンスパーク」、産学連携型の研究開発拠点である「新川崎・創造のもり」、そしてライフサイエンス分野の研究開発拠点「キングスカイフロント」といった、多くの研究開発機関が集積している点が挙げられます。これらの施設を中心に、大学や企業の研究者たちが日々、先端技術の研究開発に取り組んでいます。
Helioverse Innovationsは、このプログラムを通じて、既に守秘義務契約を締結しディスカッションを開始している2社のサポーター企業との連携をさらに加速させます。加えて、川崎市が有する高い製造業の集積性と先端部品産業のネットワークを最大限に活用し、高性能モーター、ベアリング、磁気浮上技術、精密加工、電磁干渉対策といった分野における有力企業との新たな接点構築を目指しています。これにより、同社のワイヤレス人工心臓開発に必要な高度な部品や技術の調達、共同開発が期待されます。
本プログラムは、投資家からの資金調達、NEDOをはじめとする公的機関からの競争的資金の獲得、事業会社との提携などを実現するための支援を無料で提供しており、メンターが研究チームやベンチャーに参画し、実際に手を動かしながらハンズオン(実践的)な支援を行うことが大きな特徴です。この手厚いサポートが、Helioverse Innovationsのような研究開発型ベンチャーの成長を強力に後押しします。
CEO黒田太陽氏のコメント:患者さんの「普通の生活」を取り戻すために

Helioverse Innovations Inc.のCEOである黒田太陽氏は、チームの多様なバックグラウンドを持つメンバーについて言及しています。Cleveland Clinicや国立循環器病研究センターの医師陣、日本の産業界を支えてきたパワーエレクトロニクス・ワイヤレス給電エンジニア、日米で豊富な実績を持つビジネスリーダー、規制対応の専門家、国際弁護士など、様々な専門家が結集しています。この多様な知識と経験が、複雑な医療機器開発を成功させるための大きな強みとなっています。
黒田CEOは、「全員の願いは、時間がかかる人工心臓開発を一日でも早く進め、安全なデバイスを患者さんに届け、これまで失われていた『普通の生活』を取り戻していただくことにあります」と語っています。患者さんのQOL向上への強い思いが、開発の原動力となっていることが伺えます。
また、川崎市が医療機器・ロボット・デバイス分野における日本屈指の研究開発拠点であること、そしてNEDOなどの公的機関との連携体制が整備されていることを高く評価しています。今回の「Kawasaki Deep Tech Accelerator」への採択は、「日本のものづくり技術と米国の臨床研究の融合による世界初のケーブルの無い人工心臓の実現」というHelioverse Innovationsの目標達成に向けた、極めて重要なマイルストーンになると強調しました。
同社は、本プログラムの支援を最大限に活用し、2026年3月までに補助人工心臓の第1世代プロトタイプの開発を完了し、その後の前臨床試験への移行準備を着実に進めていく計画です。
CMO川添信氏のコメント:日本のものづくり技術で世界市場へ挑戦

Helioverse Innovations Inc.のCMOである川添信氏は、日本の医療機器市場の現状について触れています。2021年において、日本の医療機器の輸入額は約2.8兆円に達し、市場全体の66.5%以上を輸入製品が占めている状況です。これは、日本の医療現場において海外製の機器が広く使われていることを示しています。
この状況に対し、経済産業省やJETRO(日本貿易振興機構)、官邸レポートなどの分析では、医療機器の完成品における国際競争力には課題があるものの、部材・素材、精密加工、検査装置、光学部品といった特定の領域では日本企業に強い競争力があると指摘しています。つまり、最終製品としての医療機器では輸入が多いものの、それを構成する重要な部品や製造技術においては、日本が世界に誇る技術力を持っているということです。
川添CMOは、「失われた30年を経て再び日本が世界で尊敬され称賛されるための競争優位として、ソフトパワーの強化と同時に製造業の復活が鍵を握る」と述べ、その製造業復活の重点分野の一つとしてヘルスケア分野を位置づけています。日本のものづくり技術力を結集し、世界市場で戦える革新的な医療機器を生み出すことの重要性を強く訴え、人工心臓の開発をその試金石と捉えています。「我々の挑戦に見守り、そして期待してください!」と、力強いメッセージを送っています。
川崎市が持つ製造業のエコシステム(産業のつながり)の集積と、今回のプログラムを通じた異分野技術との融合が、日本発の革新的医療機器として世界市場で競争できる製品開発を加速させるという期待が込められています。
Helioverse Innovations Inc.について
Helioverse Innovations Inc.は、電源ケーブルの無い人工心臓実現を目指す研究開発型ベンチャー企業です。
名称:Helioverse Innovations Inc.
所在地:米国Ohio州
代表者:黒田太陽
設立:2024年
日本法人:Helioverse Innovations Japan 株式会社
所在地:東京都港区南青山3丁目1番36号青山丸竹ビル6F
代表者:黒田太陽
設立:2025年
URL:https://www.helioverseinnov.com/
お問い合わせ:contact@helioverseinnov.com
「Kawasaki Deep Tech Accelerator」について
「Kawasaki Deep Tech Accelerator」は、川崎市が主催し、upto4株式会社が運営協力する事業化加速支援プログラムです。大学や企業の研究成果を活用して研究開発型ベンチャーの設立を目指す研究者や、創業初期のベンチャー経営者を対象としています。
本プログラムでは、6ヶ月間の伴走支援、ベンチャーキャピタル(VC)とのネットワーキング、事業会社とのマッチングなどが無料で提供されます。デバイス、モビリティ、ロボット、創薬、医療・ライフサイエンス、エネルギー、AI、IoT、航空、宇宙など、幅広い技術開発分野に取り組む研究開発型ベンチャーを対象に、資金調達や提携など、事業成長に必要な多角的な支援を行っています。
主催: 川崎市
運営協力: upto4株式会社
URL: https://kawasaki-dta.upto4.com/
まとめ
Helioverse Innovations Inc.の「Kawasaki Deep Tech Accelerator」への採択は、電源ケーブル不要の人工心臓という革新的な医療技術の実現に向けた大きな一歩です。川崎市の強力な支援と、日本のものづくり技術、そして日米の医療研究の融合が、末期心不全患者さんのQOLを劇的に向上させる未来を切り開くでしょう。2030年の臨床治験開始という目標に向けて、今後のHelioverse Innovationsの活動に注目が集まります。この取り組みが、日本の医療技術を世界に発信するきっかけとなることへの期待は大きいと言えます。

