【医療DX】TXP Medicalと阪大病院が生成AIで治験業務を革新!電子カルテからのデータ自動登録で効率化とヒューマンエラーを大幅削減

生成AIが医療現場を変える!TXP Medicalと大阪大学医学部附属病院が治験業務DXを加速

医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、最先端のAI技術がどのように現場の課題を解決していくのか、注目が集まっています。

この度、TXP Medical株式会社と大阪大学医学部附属病院は、生成AIを活用した治験向け電子ワークシートの「自動登録機能」を共同開発しました。この画期的な機能は、電子カルテから治験ワークシートへのデータ転記作業を自動化し、日本の治験における業務効率化とデータ品質向上に大きく貢献することが期待されています。

治験の現場が抱える課題と共同開発の背景

新薬や新しい医療機器を患者さんに届けるためには、「治験」と呼ばれる厳格な臨床試験が不可欠です。しかし、この治験のプロセスには、多くの手間と時間がかかるという課題がありました。

特に、治験で得られた患者さんのデータを収集する際、電子カルテに記録された自由記述のテキスト情報から、必要な情報を探し出し、治験ワークシートへ手作業で転記する作業が大きな負担となっていました。この手動での転記作業は、医師やCRC(治験コーディネーター)といった専門職の貴重な時間を奪うだけでなく、入力ミスなどのヒューマンエラーが発生するリスクも伴います。これが、治験全体の効率を妨げるボトルネックとなっていたのです。

このような課題を解決するため、TXP Medicalと大阪大学医学部附属病院は、令和4年度第2次補正予算 厚生労働省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」の一環として、「AI(人工知能)ホスピタル実装化のための医療現場のニーズに即した医療AI技術の開発・実証」プロジェクトを推進しました。

この共同研究では、TXP Medicalが持つ医療データ構造化技術と、大阪大学医学部附属病院の先進的な研究環境が結集され、現場のニーズに応える次世代型電子ワークシートの開発が実現しました。

生成AIで治験ワークシートへのデータ自動登録を実現

今回開発された「生成AIを活用した治験向け電子ワークシート自動登録機能」は、治験業務の効率を劇的に向上させる可能性を秘めています。

TXP Medicalと大阪大学医学部附属病院が、生成AIを活用した治験向け電子ワークシートの「自動登録機能」を共同開発したことを示す画像

この機能の最大の特長は、電子カルテのテキスト情報を、院内オンプレミスサーバー(病院内に設置された専用のコンピューターシステム)に構築された生成AIが解析・構造化し、治験ワークシートへ自動で登録する点にあります。これにより、これまで医師やCRCが手作業で行っていた、電子カルテからの情報コピー&ペースト作業が不要になります。

AI初心者の方には、「生成AIが医療データを解析する」と聞くと、セキュリティ面で不安を感じるかもしれません。しかし、このシステムでは、患者さんの情報を病院の外部に出すことなく、院内ネットワーク内で完結するローカルLLM(大規模言語モデル)という生成AIを使用しています。これにより、高いセキュリティを保ちながら、正確な情報抽出と自動登録が可能となっています。

この自動登録機能は、手動転記に伴う業務工数を大幅に削減するだけでなく、転記ミスなどのヒューマンエラーのリスクも低減させ、治験データの品質向上に大きく貢献します。

開発された電子ワークシートの主な特長

共同開発された電子ワークシートは、生成AIによる自動登録機能だけでなく、治験現場での使いやすさを追求したさまざまなインターフェースを備えています。

1. 生成AIによる電子カルテ情報「自動登録機能」

電子カルテ、DWH、GPUサーバ(生成AI)を用いて院内データを解析・構造化し、自動で治験ワークシートに登録する阪大病院における治験データ管理システム

この機能は、電子ワークシートの核となる部分です。

  • 高精度な自動抽出とセキュリティ: 電子カルテの膨大なテキストデータから、治験に必要な情報を高精度で自動抽出します。前述の通り、この処理は院内オンプレミス環境のローカルLLMで行われるため、患者さんの機密情報が外部に漏れる心配がありません。病院のセキュリティ基準を厳守しながら、AIの恩恵を最大限に活用できます。

  • 自動登録: 抽出されたデータは、治験ワークシートの適切な項目に自動的に入力されます。これにより、手作業による入力の手間と時間を大幅に削減できます。

  • 高い汎用性: この機能は、特定の治験だけでなく、他の治験にも応用できるよう設計されています。利用者が自身で入力項目や生成AIへの指示(プロンプト)を作成できるため、様々な治験プロトコルに対応可能な高い柔軟性を持っています。

2. 視覚的に状況を把握できる「被験者一覧画面」

臨床試験の被験者管理システム画面で、被験者一覧、投与群、性別、確認項目、入力状況、合併症・有害事象、変更履歴が表示され、検索や削除機能も利用可能です

治験では、多くの被験者(患者さん)の情報を管理する必要があります。この電子ワークシートには、被験者ごとの状況を一目で把握できる一覧画面が搭載されています。

  • 色分けによる進捗管理: 被験者ごとのワークシートの進捗状況(例えば、未実施、実施完了、許容範囲内、要確認など)が色分けされて表示されます。これにより、業務の「抜け漏れ」を瞬時に発見し、効率的なタスク管理が可能になります。

  • 直感的な操作性: 視覚的に分かりやすいインターフェースは、医療従事者が複雑な情報を素早く理解し、適切な対応を取る手助けとなります。

3. 有害事象・併用薬の状況をグラフで可視化

患者の治療進捗を示す医療グラフ。頭痛や咳などの症状、薬の服用記録が時系列で表示されています

治験において、被験者に発生した有害事象(薬の副作用など)や、併用している薬の状況を正確に把握することは非常に重要です。このワークシートは、これらの情報を分かりやすく可視化します。

  • 時系列情報のグラフ表示: 有害事象の発生時期や、併用薬の有無、投与期間といった重要な時系列データが、直感的に理解しやすいグラフ形式で表示されます。これにより、データの傾向を素早く把握し、迅速かつ正確な臨床評価や報告業務を行うことができます。

  • 意思決定のサポート: 複雑な情報を視覚化することで、医師やCRCはより根拠に基づいた判断を下しやすくなります。

4. 院外連携を可能にする仕組み

将来的な展開として、この電子ワークシートは院外との連携も想定しています。院内で作成されたデータを、セキュリティが確保されたQRコードを通じて院外ネットワーク上のワークシートへ安全に連携する仕組みが実装されています。これにより、治験に関わる多様な関係者間でのスムーズな情報共有が期待されます。

今後の展望と医療DXへの貢献

今回の共同開発は、治験の現場における業務負担を大幅に軽減し、日本の医薬品・医療機器開発のさらなる発展に貢献することを目指しています。

今後、まずは大阪大学医学部附属病院内での実証実験を通じて、開発された機能の実用性を詳細に検証する予定です。実用性が確認された段階で、この革新的なシステムは全国の医療機関への展開が計画されています。

さらに、今回の開発で培われた生成AIによる自動登録技術は、治験だけでなく、医療レジストリ(特定の疾患や治療に関する患者さんの情報を継続的に記録・管理するデータベース)への応用も進められています。これにより、臨床研究の現場における業務負担も大幅に軽減されることが期待されます。

厚生労働省「中小企業イノベーション創出推進事業」とは

今回の共同開発は、厚生労働省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」を活用して推進されました。この事業は、国の制度的支援のもと、中小企業の持つ優れた技術力と、医療機関の臨床現場で培われた知見を融合させることを目的としています。

医療現場の具体的なニーズに基づいたAI技術の開発・実証を促進し、その成果を広く社会に還元することで、日本の医療全体の質の向上とイノベーション創出を目指す、非常に重要な国家プロジェクトです。

関連リリース: 中小企業イノベーション創出推進事業 「AI(人工知能)ホスピタル実装化のための医療現場のニーズに即した医療 AI 技術の開発・実証」の開始のお知らせ

TXP Medical株式会社について

TXP Medical株式会社は、「医療データで命を救う」というミッションを掲げ、現役の救急集中治療医が立ち上げた次世代の医療インフラを牽引するスタートアップ企業です。

2017年8月28日に設立され、急性期医療データプラットフォーム「NEXT Stageシリーズ」の開発と提供を主軸としています。主力システムである「NEXT Stage ER」は全国の大病院88箇所(大学病院や救命救急センターでのシェア約50%)で稼働しており、救急隊向けの「NSER mobile」は全国51地域、1200万人以上の人口をカバーする運用実績を持っています。

同社は、急性期医療AI技術の開発・提供や臨床研究支援事業も手掛けており、900項目に及ぶ検査データやバイタルデータなどを活用した、急性期領域における唯一無二のリアルワールドデータサービスを提供しています。

TXP Medicalに関する詳細は、以下のウェブサイトをご確認ください。
TXP Medical株式会社

まとめ

TXP Medicalと大阪大学医学部附属病院による今回の共同開発は、生成AIが医療現場の具体的な課題を解決し、治験業務の効率化とデータ品質向上に貢献する大きな一歩です。

電子カルテからの手動転記という長年の課題をAIで自動化することで、医療従事者は本来の業務である患者ケアや研究により多くの時間を費やせるようになります。これは、日本の医薬品・医療機器開発を加速させ、最終的にはより多くの患者さんに新しい治療法を届けることにつながるでしょう。

今後、この技術が全国の医療機関に展開され、医療DXがさらに進展していくことに期待が集まります。AI初心者の方も、この革新的な取り組みを通じて、AIが私たちの生活や社会にどのように貢献していくのか、その可能性を感じ取っていただけたのではないでしょうか。

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