3D-CADとAIが建築教育を変革!九州産業大学の特別講義が示す「実務直結」の教育効果
近年、AI(人工知能)技術の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスのあらゆる分野に大きな影響を与えています。特に建築業界では、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでおり、3D-CAD(3次元コンピューター支援設計)や生成AIといった最新ツールが設計の現場で欠かせないものとなっています。
このような背景の中、次世代の建築人材を育成するため、安心計画株式会社、株式会社Lib Work、そして九州産業大学の香川治美研究室が協力し、画期的な産学連携プログラムを実施しました。この特別講義では、学生たちが実務で使われる3D-CADと建築生成AIを使いこなし、短期間で住宅設計を体験。その結果、従来の教育では得られにくい多角的な学習効果が明らかになりました。今回は、この特別講義の実施レポートと、学生アンケートから見えてきた具体的な教育効果について、AI初心者にも分かりやすく詳しくご紹介します。
最新技術を導入した実践型授業の全貌
この特別講義は、九州産業大学 建築都市工学部 住居・インテリア学科の学生を対象に実施されました。一般的な大学の授業では、座学や手描きによる設計演習が中心になることも多いですが、このプログラムでは、実際に建築現場で使われている最新のデジタルツールが導入された点が最大の特徴です。
授業の概要
授業では、住宅設計の実務で活用されている3D-住宅CAD「Walk in home」と、建築生成AI「タノモシカ」という二つの強力なツールが使われました。3D-CADとは、コンピューター上で建物を立体的に設計できるソフトウェアのことで、平面図だけではイメージしにくい空間をリアルに可視化できます。生成AIは、テキストや画像などの情報をもとに、新しいデザイン案や表現を自動で生成する技術です。
学生たちは3人1組のチームとなり、2025年12月4日から12月25日までの期間、以下の内容に取り組みました。
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CAD操作習得: 3D-CADの基本的な操作方法を学びました。
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住宅設計: 仮想の施主を想定し、実際に住宅のプランを設計しました。
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耐震・省エネ性能の検討: デザインだけでなく、建物の安全性や環境性能も考慮した設計を行いました。
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AI活用: 生成AI「タノモシカ」を使って、設計アイデアの発想補助や表現の洗練に挑戦しました。
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最終プレゼンテーション: 完成した住宅プランをチームで発表しました。

この授業は、単にツールの使い方を学ぶだけでなく、プランニングから3D化、AIによる表現補助、そして最終プレゼンテーションまで、一連の住宅設計プロセスを体験できる実践的な内容でした。
学生アンケートから見えた5つの教育効果
授業を終えた学生たちへのアンケート結果からは、最新デジタルツールの導入が設計スキルの習得や実務意識の醸成に、どのような具体的な効果をもたらしたのかが明らかになりました。ここでは、特に注目すべき5つの教育効果を詳しくご紹介します。
1. 「短期間で形にする成功体験」が設計への自信に
設計経験が少ない学生にとって、ゼロからアイデアを形にするのは時間も労力もかかります。しかし、この授業では、直感的な操作が可能な3D-CADと生成AIを組み合わせることで、経験の有無に関わらず、学生たちは短期間で自分のアイデアを具体的な住宅プランとして表現することができました。
この「短期間で設計を完成させ、発表までやり遂げる」という成功体験は、学生たちに大きな自信を与えました。「自分にもできる」という肯定的な感覚は、設計に対する意欲を大きく向上させ、今後の学習やキャリア形成において非常に重要な原動力となるでしょう。従来の設計教育では、完成までの道のりが長く、途中で挫折してしまう学生も少なくありませんでしたが、最新ツールがそのハードルを下げ、より多くの学生に達成感をもたらしたと言えます。
2. 3D可視化による「空間把握能力」の向上
建築設計の基礎となるのが、図面から実際の空間をイメージする「空間把握能力」です。従来の平面図中心の学習では、この能力を養うには経験と訓練が必要でした。
しかし、3D-CADを使ったモデリングでは、設計した空間を立体的に見ることができるため、天井の高さや部屋の広がり、人や物の動きを示す動線、家具の配置などを、あたかも実際にその空間にいるかのように体感しながら設計を進めることが可能になります。学生からは「図面上の数字だけでなく、実際の暮らしを想像しながら考える力が養われた」という声が多く聞かれました。これは、単なる図面上の知識ではなく、ユーザー体験に基づいたリアルな設計思考が育まれた証拠であり、将来、顧客に対してより説得力のある提案ができるようになるための重要なスキルです。

3. 構造・性能を意識した「実務的視点」の芽生え
住宅設計は、美しいデザインだけでなく、安全性や快適性といった機能面も非常に重要です。特に、日本の住宅では耐震性や断熱性能といった構造・性能の基準を満たすことが義務付けられています。
この授業では、学生たちは意匠デザインだけでなく、設計段階で耐震性や断熱性能といった数値をシミュレーションし、確認しながら設計を進めました。その結果、多くの学生に「安全性とデザインを両立させる」という実務的な視点が芽生えました。単に見た目の良さだけでなく、なぜこの構造が必要なのか、どうすればエネルギー効率の良い住宅になるのかといった、根拠に基づいた設計の重要性を学ぶ貴重な機会となりました。これは、将来、建築のプロとして社会に出た際に、顧客の要望に応えつつ、法規や性能基準をクリアする責任ある設計を行うための基礎となります。


4. 生成AI活用による「発想力・表現力の拡張」と気づき
生成AIは、単に作業を自動化するだけでなく、人間の創造性を刺激し、表現の幅を広げるツールとしても期待されています。この授業では、学生たちは生成AIをアイデア発想の補助や、設計したプランをより魅力的に見せるための表現ツールとして活用しました。
AIに指示を与える過程で、多くの学生が「設計意図を言語化する力の重要性」に気づいたという教育的効果が見られました。AIは、曖昧な指示では思ったような結果を出してくれません。自分の頭の中にあるイメージを明確な言葉でAIに伝えることで、AIは初めてその力を発揮します。
学生からは以下のようなコメントが寄せられています。
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「AIは何をどう見せたいかを明確に指示することで力を発揮するツールだと分かった」
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「AIを使うことで、自分の設計意図を言語化する重要性に気づいた」
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「AIは考えを整理し、表現を洗練させるための道具だと理解できた」
これらのコメントは、AIを使いこなすためには、人間側の思考力や言語化能力が不可欠であるという重要な学びを示しています。AIは、私たちの発想を広げ、表現を豊かにする強力なパートナーとなり得るのです。


5. チーム設計を通じた「協働スキル」の育成
実際の建築プロジェクトは、一人で行うものではなく、設計者、施工者、クライアントなど、多くの関係者が協力し合って進められます。そのため、チームで働く「協働スキル」は、建築業界で働く上で非常に重要です。
この授業は3人1組のグループワーク形式で行われたため、学生たちは自然と協働スキルを体験的に学ぶことができました。具体的には、チーム内での役割分担、異なる意見の共有と合意形成、限られた時間内でのタスク管理など、実務で求められる様々なスキルを実践する機会となりました。学生からは「設計は個人作業ではなく、対話と共有によって完成度が高まるものだと理解できた」という声が多く聞かれました。これは、チームで協力し、互いの強みを活かし合うことの重要性を理解し、コミュニケーション能力やリーダーシップ、フォロワーシップといった社会人基礎力を養う上でも大きな成果と言えるでしょう。


学生からは、以下のような具体的なコメントも寄せられています。
「今回の授業では、チームで一つの作品を制作し、発表まで行うプロセスを通して、計画設計における協働の重要性を実感しました。個人で行う設計とは異なり、コンセプトを共有し、役割分担をしながら進めることで、設計意図を言語化し、他者に分かりやすく伝える力が求められることを学びました」
大学と実務をつなぐ新たな教育モデルとしての意義
今回の特別講義は、学生が将来の進路をより具体的に描く「キャリア教育」としても非常に高い効果を発揮しました。実際に企業が現場で使用しているツールやワークフローを体験することで、学生たちは自身の適性や、今後どのようなスキルを身につけていくべきかといった課題を客観的に捉え直す機会を得ることができました。
このような「実務直結の体験」は、大学教育と社会との間に存在するギャップを埋める、新たな教育モデルとして極めて高い教育効果を示しています。知識の習得だけでなく、それを実践でどう活かすかという視点を持つことは、学生が社会で活躍するための土台となります。
ある学生からは、以下のようなコメントが寄せられました。
「企業の方々と意見交換をしながら課題に取り組めたことは非常に有意義でした。実際に企業の現場で使用されているCADやAIを体験することで、設計の進め方や、設計後にどのように顧客へ提案・表現しているのかを具体的に理解することができ、大変勉強になりました」
今後の展望と一般投票コンテストのお知らせ
安心計画株式会社は、今回の成功を足がかりに、今後もテクノロジーを活用した実践的な学習機会を継続的に提供していく予定です。これにより、次世代の建築業界を牽引する、より実践的で創造的な人材の育成を支援していくことを目指しています。
住宅プラン一般投票コンテスト開催中!
この特別講義の集大成として、学生たちが3D-CADとAIを駆使して作成した住宅プランの一般投票コンテストが開催されています。仮想の施主を想定し、自由な発想と最新技術で作成された学生たちの力作をぜひご覧ください。
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投票ページURL: https://www.anshin.co.jp/information/761
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投票期間: 2025年12月26日(金) 〜 2026年1月31日(土)
皆様からの温かい一票が、未来の建築家たちの大きな励みとなります。投票結果については、後日改めて発表される予定です。
関連企業情報
安心計画株式会社
安心計画株式会社は、1988年に設立された建築業界に特化したプレゼンシステムの専門企業です。2023年6月には株式会社DTSのグループに参画し、最先端のIT技術と長年培ってきた営業力・サポート力を融合させ、全国のビルダーへ革新的なソリューションを提供しています。
株式会社Lib Work
株式会社Lib Workは、1997年設立の戸建住宅事業、プラットフォーム事業、3Dプリンター住宅事業を展開する企業です。
株式会社DTS
株式会社DTSは、総合力を備えたトータルシステムインテグレーター(Total SIer)です。金融、情報通信、製造、公共、建築分野など幅広い領域で、コンサルティングからシステム設計・開発、基盤構築・運用までをワンストップで提供しています。

