【1stRound】大学発ディープテック支援を加速!第14回支援先決定と奈良県立医科大学参画で広がるイノベーションの輪

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)が主導する、国内最大規模のアカデミア共催創業成長支援プログラム「1stRound」は、この度、第14回の支援先を決定しました。

同時に、公立大学法人奈良県立医科大学が新たにこのプログラムに参画することが発表されました。これにより、「1stRound」は国公立・私立大学、研究機関との連携をさらに強化し、大学や研究機関から生まれる先進的な技術シーズを社会に役立てるための事業成長支援を一層推進していきます。

1stRound 第14回支援先一覧

「1stRound」プログラムとは?アカデミア発イノベーションを後押しする仕組み

「1stRound」は、日本の大学や研究機関が持つ世界レベルの技術シーズを、社会で役立つ事業へと育てるための創業成長支援プログラムです。2017年に「東大IPC起業支援プログラム」としてスタートし、2019年からは「1stRound」と名称を変更。多くの大学や研究機関、そして大手企業が協力するコンソーシアム形式で運営されています。

このプログラムの大きな特徴は、以下の3点です。

  1. Non-Equity型資金支援:スタートアップの株式(Equity)を取得しない形で、最大1,000万円の活動資金を提供します。これにより、創業者は会社の所有権を維持しながら、初期の事業活動に必要な資金を得ることができます。
  2. 徹底したハンズオン支援:単なる資金提供だけでなく、事業価値を具体的に高めるための実践的な支援を行います。経験豊富なプロフェッショナルが、事業計画の策定から市場開拓まで、きめ細かくサポートします。
  3. 多様なプレイヤーとの連携:コーポレートパートナーと呼ばれる大手企業との協業機会を創出するほか、ベンチャーキャピタルからの資金調達支援、経営人材の発掘・育成、事業連携ネットワークの提供など、多角的な支援を通じてスタートアップの成長を加速させます。

これまでの9年間で、累計110チームを採択し、大学発スタートアップの設立と資金調達を支援してきました。採択チームの資金調達成功率は約90%に達し、大型助成金の採択率も50%を超えるなど、その実績は非常に高い評価を得ています。

また、グローバル展開支援にも力を入れており、海外のアカデミア系プログラムへの採択実績や、海外の研究機関・アクセラレーターとの連携を通じて、国境を越えたスタートアップ創出を推進しています。日本発のスタートアップが世界で活躍できるよう支援するとともに、海外の優れたスタートアップが日本に進出するサポートも行い、アカデミアの技術とグローバルの知見を結びつけ、世界で通用するスタートアップの創出を目指しています。

奈良県立医科大学が新たに参画!広がる支援の輪と地方・海外チームの増加

「1stRound」は、これまでも国内各地の大学・研究機関と連携し、研究成果を基盤としたスタートアップの創出と成長を支援してきました。今回、公立大学法人奈良県立医科大学が新たに参画したことで、そのネットワークはさらに拡大しました。

近年、このプログラムでは、首都圏だけでなく地方大学を起点とするスタートアップの採択が目立って増えています。直近3回の採択では、東京都以外に活動拠点を置くスタートアップが全体の約半数を占めるほどです。さらに、海外を拠点とするチームの採択も増加しており、グローバルな研究者や起業家との連携が強化されています。これは、日本発の研究シーズを基盤としつつ、国際的な視野で事業化を目指すスタートアップが増えていることを示しています。

「1stRound」は、多様なバックグラウンドを持つ大学発スタートアップの創出を目指し、今後も大学や研究機関とのネットワークを基盤に、各地の研究成果を活かしたスタートアップの創出と成長支援を推進していく方針です。

現在、「1stRound」に参画している大学・研究機関は、東京大学をはじめ、筑波大学、東京科学大学、神戸大学、名古屋大学、一橋大学、北海道大学、九州大学、慶應義塾大学、立命館大学、立命館アジア太平洋大学、早稲田大学、沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)、金沢大学、近畿大学、東京理科大学、日本原子力研究開発機構(JAEA)、量子科学技術研究開発機構(QST)、静岡県立大学、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、お茶の水女子大学、同志社大学、広島大学、産総研グループ、学校法人芝浦工業大学、そして今回加わった奈良県立医科大学を含め、23大学と5国立研究機関に上ります。

第14回「1stRound」で選ばれた8つの革新的な技術とスタートアップ

2025年12月に開催された第14回「1stRound」の審査会では、未来を切り拓く8チームの採択が決定しました。それぞれのチームがどのような革新的な技術で社会課題の解決を目指しているのか、詳しく見ていきましょう。

1. MicroCavitics:心筋梗塞治療に革命をもたらす

MicroCaviticsは、超音波とマイクロバブルを用いた「慣性キャビテーション技術」という、まだあまり知られていない最先端の技術を開発しています。この技術を使うことで、心筋梗塞の治療において、血栓(血管を詰まらせる血の塊)を溶かすことと、微小循環(細い血管の流れ)を回復させることを同時に実現します。

これまでの心筋梗塞治療は、患者さんが病院に到着してから開始されるのが一般的でした。しかし、MicroCaviticsの技術は、救急車の中で治療を開始できる可能性を秘めています。心筋梗塞では、時間が経つほど心臓の筋肉が壊死してしまい、回復が難しくなります。救急車内で治療を開始できれば、再灌流(血液の流れを再開させること)までの時間を大幅に短縮し、心筋の壊死を最小限に抑えることができると期待されています。

2. Hanasaka Bio.:異常気象に強い次世代農業の実現

Hanasaka Bio.は、独自に発見した「低分子化合物(X)」という物質を活用し、農業に革命をもたらそうとしています。この化合物は、バニラ、果樹、花、野菜、穀物など、さまざまな植物の休眠打破(冬眠状態から目覚めさせること)、発芽、開花を促進する技術を確立しました。

近年、地球温暖化の影響で異常気象が増え、農作物の生産が不安定になる問題が深刻化しています。Hanasaka Bio.の技術は、植物の成長サイクルをコントロールすることで、異常気象に強い作物を作り、安定した農業生産に貢献することが期待されます。また、開花時期を調整することで、農作物の高付加価値化(例えば、特定の時期に収穫量を増やすなど)にも寄与し、持続可能な農業の実現を目指します。

3. 株式会社ソラマテリアル:空気に浮く新素材「超軽量材料」

株式会社ソラマテリアルは、名古屋大学発のディープテックスタートアップで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のパートナースタートアップにも登録されています。彼らが研究開発しているのは、文字通り「空気に浮くほど軽い」新素材、その名も「超軽量材料」です。

この超軽量材料は、空気の0.5〜10倍という驚異的な軽さに加え、断熱性、吸音性、電磁波吸収といった多様な機能性を兼ね備えています。これまでの材料では難しかった「超軽量」と「機能性」の両立を実現することで、特に航空宇宙分野やモビリティ分野(自動車や電車など)など、軽量化が求められる領域で革新的なソリューションを提供することを目指しています。例えば、航空機の部品をこの材料で作れば、燃費が向上し、環境負荷の低減にもつながります。

4. Noahlogy株式会社:造船・海事産業の未来をAIで描く

Noahlogy株式会社は、東京大学発のスタートアップで、造船・海事産業に特化した技術開発を行っています。日本の造船・海事産業は、熟練技術者の高齢化と引退、そして若手人材の不足、さらには働き方改革の推進によって、船舶設計の質と量が低下するという課題に直面しています。

一方で、次世代の船舶や特殊な船、希少な船へのニーズは高まっており、高度な設計力が求められています。Noahlogyは、AI(人工知能)を最大限に活用することで、熟練技術者の知識や経験を「技術伝承」し、さらに船舶設計にかかる期間や工数を90%も削減することを目指しています。これにより、深刻な需給ギャップを埋め、日本の造船・海事産業を未来の世代へとつなぐことを目標としています。

5. Myracule (ミラキュール)株式会社:未踏化合物空間探索による創薬

Myracule (ミラキュール)株式会社は、これまでの創薬の限界を打ち破ろうとするスタートアップです。有機化合物には、理論上、天文学的な数の種類が存在すると考えられていますが、現在知られているのはそのごく一部、100万分の1以下に過ぎません。

同社は、この「未踏の広大な化合物空間」を探索する独自の技術を開発しています。これにより、これまで治療薬の開発が非常に困難であった「アンドラッガブル」(薬が効きにくい、または薬の標的が見つかりにくい)な疾患に対しても、新しいタイプの薬を見つけ出し、画期的な創薬を実現することを目指しています。これは、難病に苦しむ多くの患者さんにとって、新たな希望となる可能性があります。

6. CaseMatch株式会社:LLMで労働市場の非効率を解消

CaseMatch株式会社は、現在の労働市場が抱える「マッチングの非効率性」という大きな問題に挑んでいます。この問題は、求職者と企業の適切なマッチングが人手に頼りがちで機会が限られていること、そして候補者が実際にどれだけ活躍できるかを正確に予測するのが難しいという点にあります。

同社は、LLM(大規模言語モデル)というAI技術を活用し、業務内容や採用要件をAIが深く理解できるようにします。さらに、候補者の実務能力を評価し、その結果を採用プラットフォーム上に蓄積することで、上記2つの問題を同時に解決することを目指しています。これにより、企業はより適切な人材を効率的に見つけられ、求職者は自身の能力を最大限に活かせる職場に出会えるようになり、日本が抱える労働力不足の解決に貢献することが期待されています。

7. 株式会社Type-I Technologies:全てのセンサーに革新を

株式会社Type-I Technologiesは、量子科学技術研究開発機構(QST)発のベンチャー企業で、「全てのセンサーに革新を」という大きな目標を掲げています。彼らは、数百年後も使われるような次世代センサーを開発するため、量子センサーを活用したデバイスやアプリケーションの開発を進めています。

具体的には、工業用の多項目(温度、磁場、pH、ラジカルなど)をリアルタイムで測定できるインラインセンサーや、超高感度の体液診断システム(量子リキッドバイオプシー)による神経変性疾患、がん、感染症の早期診断技術などの開発を進めています。特に、病気の超早期発見は、治療の選択肢を広げ、多くの命を救う可能性を秘めており、医療分野に大きな変革をもたらすことが期待されています。

8. ルーパーツ株式会社:資源を循環させるアップグレードリサイクル技術

ルーパーツ株式会社は、東北大学発のベンチャー企業で、新しい資源リサイクル技術を開発しています。彼らがまず社会実装を目指しているのは、アルミの「アップグレードリサイクル技術」です。

これまで、アルミはリサイクルを繰り返すたびに純度が低下し、最終的には廃棄される運命にありました。しかし、ルーパーツが開発した「UPLOOP技術」(Nature誌に掲載された実績を持つ)は、世界で初めて、使用済みのアルミを高純度化することを実証しました。この技術が普及すれば、資源を一方的に消費し続ける社会から、資源が何度も循環し、大切に使い続けられる社会へと転換することが可能になります。持続可能な社会の実現に向けて、非常に重要な技術と言えるでしょう。

第15回公募がスタート!次なるイノベーションの担い手へ

「1stRound」プログラムは年に2回実施されており、第15回の公募が2026年4月13日より開始されています。次なるイノベーションの担い手を目指す方々は、ぜひ詳細をご確認ください。

応募締切: 2026年5月25日

詳細はこちら:

まとめ:アカデミア発イノベーションが描く未来

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社が推進する「1stRound」は、大学や研究機関が持つ無限の可能性を、具体的な事業として社会に還元するための重要な役割を担っています。

第14回で採択された8つの革新的なスタートアップと、新たに参画した奈良県立医科大学の存在は、日本のアカデミア発ディープテックが、医療、農業、素材、製造業、創薬、HR、センサー、リサイクルといった多岐にわたる分野で、いかに社会課題の解決と未来の創造に貢献していくかを示しています。

「1stRound」の活動は、単にスタートアップを支援するだけでなく、日本全体のオープンイノベーションを促進し、新たな産業と雇用の創出、そして持続可能な社会の実現に向けて、大きな期待が寄せられています。これからも、アカデミアの知とグローバルの視点を結びつけ、世界で戦えるスタートアップが次々と生まれることに注目していきましょう。

タイトルとURLをコピーしました