業界初!生命保険の給付金査定に生成AIが医学判断を導入
生命保険の給付金支払い査定業務は、お客様の生活に直接関わる非常に重要なプロセスです。しかし、医学的な判断を伴う複雑なケースでは、専門知識を持つドクターへの照会が必要となり、時間や手間がかかることが長年の課題でした。この課題に対し、最先端のAI技術を活用する動きが今、注目を集めています。
大同生命保険とシナモンAIの協業がもたらす業界初の革新
株式会社シナモン(シナモンAI)とT&D保険グループの大同生命保険株式会社は、生命保険業界で初めて、給付金支払い査定業務における医学判断に「生成AI」と「RAG(Retrieval Augmented Generation)」技術を活用したAIエージェント「給付金支払い査定AI」を共同開発しました。この画期的なソリューションは、2026年4月1日より本格提供が開始されます。
この革新的な取り組みは、従来の査定業務が抱えていた「医学的判断の困難さ」と「それに伴う時間コスト」という大きな課題を解決することを目指しています。これまでは、判断が難しいケースでは査定担当者が社内ドクターに照会し、その準備や回答待ちに膨大な時間を要していました。
「給付金支払い査定AI」の具体的な機能と期待される効果
「給付金支払い査定AI」は、大同生命が保有する業務マニュアルや医療情報をRAGを活用した生成AIで高度に分析し、医学的根拠に基づいた判断を短時間かつ正確に導き出すことが可能です。これにより、これまで社内ドクターの判断が必要だったケースの約70%をAIが代替できるようになります。
このAIソリューションの導入により、給付金1件あたりの査定処理速度が大幅に向上し、お客様への支払い日数が短縮されることが期待されます。さらに、査定担当者と社内ドクターの業務時間を年間約1,800時間削減する見込みです。削減された時間は、より付加価値の高い業務、例えば最適な顧客体験を創出するための事務プロセス検討や実践に充当され、組織全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させます。
また、生成AIが出力する医学的判断の根拠は、経験の浅い査定担当者の学習材料としても活用でき、医学知識の効率的な習得と査定品質のさらなる向上にも貢献します。

生成AIとRAG:AI初心者でもわかる基本知識
この新しいAIソリューションの核となるのが「生成AI」と「RAG」という技術です。AI初心者の方にも分かりやすく、それぞれの技術の基本的な仕組みを解説します。
生成AIとは?
生成AIとは、テキスト、画像、音声など、さまざまな新しいコンテンツを自ら「生成」できる人工知能のことです。例えば、人間が書いたかのような文章を作成したり、簡単な指示からリアルな画像を生成したりすることができます。今回のケースでは、医学的な根拠に基づいた判断を文章として生成する役割を担っています。これにより、これまで人間が行っていた複雑な判断の一部をAIがサポートし、業務の効率化と品質向上に貢献します。
RAG(Retrieval Augmented Generation)とは?
RAGは「検索拡張生成」と訳され、大規模言語モデル(LLM)が回答を生成する際に、事前に用意された特定の情報源(今回の場合は大同生命の業務マニュアルや医療情報)を参照して、より正確で信頼性の高い回答を生成するための技術です。
一般的な生成AIは、学習した膨大なデータから回答を生成しますが、時には間違った情報や古い情報を提供する「ハルシネーション」と呼ばれる現象が起こることがあります。RAGは、この問題を解決するために、ユーザーの質問に関連する情報をデータベースから検索し、その検索結果を元に生成AIが回答を作成します。これにより、特定の企業や組織が持つ最新かつ正確な情報に基づいた、信頼性の高い回答が可能となるのです。
大同生命の事例では、RAGが同社の持つ専門的な医療情報や業務マニュアルを参照することで、給付金査定における医学的判断の精度と信頼性を飛躍的に高めています。
シナモンAIが提供する業務の核を担う2つのAIプロダクト
シナモンAIは、今回の給付金支払い査定AIの基盤技術として、業務のコアを担う2つのAIプロダクトを提供しています。これらのプロダクトは、企業のDX推進において重要な役割を果たします。
1. Super RAG™
「Super RAG™」は、表や図などの複雑なドキュメントを解析し、高精度な回答を生成するLLM環境をノーチューニングで構築可能な独自AIプロダクトです。その最大の特徴は、前処理・検索・生成という全ての工程を汎用的かつ高精度に「全体最適化」している点にあります。
特に、前処理においては、従来のRAGが文字数で機械的に区切るのに対し、「Super RAG™」は独自のレイアウト解析技術を用いてタイトルや図表を自動判別し、文書の意味や構造を保ったまま最適にチャンク化(分割)します。これにより、データ活用に適さない非構造化データを高度に構造化し、RAGシステムによる業務自動化を極めて高い精度で実現します。
Super RAG™は、企業が持つ膨大な非構造化データ(例えば、契約書、報告書、マニュアルなど)を、AIがより深く理解し、活用できる形に変換する能力に優れています。これにより、企業内のナレッジを最大限に引き出し、業務プロセス全体の効率化を促進します。

2. Flax Scanner™ HUB
「Flax Scanner™ HUB」は、多様な業界・業種で使用されるさまざまなフォーマットの書類から、AIが人間のように意味を理解し、データを読み取ることができる汎用性の高いオリジナルの高精度AI-OCRプラットフォームです。
従来のAI-OCRは、フォーマット化された書類に対して事前に定義する「座標定義型」が主流でしたが、フォーマットが無数に存在する書類への対応は困難でした。これに対し、「Flax Scanner™ HUB」は事前の複雑な設定をすることなく、読み取り難易度の高い非定型帳票からでも高精度にデータを抽出することが可能です。
このプラットフォームは、座標定義型、特徴量学習型、生成AI抽出型の3つの異なるAIエンジンを搭載しており、帳票の種類に合わせた最適な方法でデータを読み取ることができます。これにより、手書きの書類や複雑なレイアウトの書類でも、正確にデジタルデータとして活用することが可能になります。
Flax Scanner™ HUBは、紙媒体の情報をデジタルデータとして効率的に取り込み、AIによるさらなる分析や処理に繋げるための重要な入り口となります。これにより、データ入力作業の自動化や、情報の迅速な活用を支援し、企業のペーパーレス化やDX推進に大きく貢献します。

シナモンAIのビジョンと今後の展望
シナモンAIは、大同生命とのパートナーシップをさらに深め、AIエージェントの適用領域を拡大していく計画です。また、AIによる判断の検証・分析結果を自動処理の条件見直しに応用することで、支払い査定業務のさらなる効率化・迅速化を目指します。
シナモンAIは「誰もが新しい未来を描こうと思える、創造あふれる世界を、AIと共に」をパーパスに掲げ、高度なビジネスAIソリューションを提供しています。同社は、圧倒的高精度のドキュメント解析技術を大規模自然言語モデル(LLM)と組み合わせ、「自動化の自動化」を推進しています。
革新的なAI-OCR「Flax Scanner™」や、LLM活用を大幅に促進する「Super RAG™」を核として、お客様が保有するナレッジからAI時代の新たな事業構造を創造し、飛躍的な成長を実現する変革の先導役として、多くの国内大手企業への提供実績があります。
ベトナム(ハノイ・ホーチミン)に人工知能研究所を構え、高度なAI人材を獲得・育成するエコシステムを構築している同社は、AI-OCR、自然言語処理、大規模言語モデル、音声認識など、非構造化データを活用する技術資産を蓄積しています。これらの技術を、独自のAI戦略「ハーベストループ」と共に、DXやAI活用の推進を支援しています。
まとめ:AIが切り拓く保険業界の未来
今回のシナモンAIと大同生命保険による「給付金支払い査定AI」の本格提供は、生命保険業界におけるAI活用の一つの大きなマイルストーンとなります。生成AIとRAG技術を組み合わせることで、複雑な医学的判断を伴う業務の効率化と品質向上を同時に実現し、お客様への迅速な給付金支払いという直接的なメリットだけでなく、業務に携わる人々の負担軽減や、より創造的な業務へのシフトを可能にします。
この取り組みは、保険業界全体のDXを加速させ、AIが単なるツールではなく、ビジネスの中核を担う「AIエージェント」として、いかに大きな価値を生み出すかを示す好例と言えるでしょう。今後も、AI技術の進化と活用範囲の拡大により、私たちの日々の生活やビジネスがどのように変化していくのか、その動向に注目が集まります。

