無料で使えるデザインツール「Affinity 3.0」がクリエイターの制作環境を変革する可能性
近年、クリエイティブ業界では、デザイン制作ツールの選択肢が大きく広がっています。特に、Adobe製品に代わる新たな選択肢として注目されているのが、英国Serif社が開発する「Affinity(アフィニティー)」シリーズです。このAffinityの最新版「Affinity 3.0」が、なんと基本機能を完全無料で提供するという方針を打ち出し、世界中のクリエイターやデザイナーから熱い視線が注がれています。
デジタルハリウッドが運営する「デジハリ・オンラインスクール」は、この注目度の高いAffinityに焦点を当てたオンラインセミナーを2025年12月20日に開催しました。グラフィックデザイナーの堀江ヒデアキ氏を講師に迎え、Affinityの持つ豊富な機能や、実務での活用方法について深く掘り下げた内容となりました。この記事では、セミナーで紹介されたAffinityの魅力と、それがクリエイティブな仕事にどう役立つのかを詳しくご紹介します。

デザイン制作の新常識?「Affinity」とは
Affinityは、デザインプラットフォーム「Canva」を展開するCanva Pty Ltd傘下の英国Serif社が開発しているデザイン制作アプリケーションです。これまでもプロフェッショナルな機能を提供していましたが、2025年10月末に発表された最新版「Affinity 3.0」では、基本機能を恒久的に無料で提供する方針が示され、多くのクリエイターにとって非常に魅力的な選択肢となりました。
Adobe IllustratorやPhotoshopといった既存のデザインツールは、サブスクリプション形式での利用が一般的ですが、Affinity 3.0の無料化は、特にコスト面での課題を抱えていた個人クリエイターや中小企業にとって、制作ツールの選択肢を大きく広げるものとなります。もちろん、無料でありながらもプロレベルの機能を備えているため、本格的なデザイン作業にも十分対応できます。
Affinityセミナーで学ぶ実践的ワークフロー
セミナーでは、まず最新版Affinityの主な変更点や、導入する上でのメリットとデメリットが解説されました。その後、参加者は実際にAffinityを操作しながら、既存のデザインツールとの共通点や相違点、そしてAffinityならではのユニークな機能について理解を深めました。
ベクターモードで図形とテキストを操作する
セミナーの前半では、主にベクターモードでの操作が紹介されました。ベクターモードとは、点と線で図形を描く方式で、拡大・縮小しても画像が粗くならないのが特徴です。ここでは、基本的な図形ツールを組み合わせて「爆弾バッジ」を制作したり、移動ダイアログを使って「3D風テキスト」を作成したりするワークフローが実演されました。

参加者は、Adobe Illustratorのようなツールを使った経験があれば、Affinityの操作にもスムーズに移行できると感じたようです。しかし、Affinity独自の機能も多く、新しい発見があったことでしょう。

ピクセルモードで写真補正と加工を行う
セミナーの後半では、ピクセルモードでの写真補正・加工とレイアウトについて学びました。ピクセルモードは、写真のような画像を扱う際に使われ、色や明るさの調整、特殊効果の適用などが可能です。
ここでは、写真をセピア調に加工したり、新聞のようなハーフトーン加工(小さな点の集まりで画像を表現する技術)を施したりする実践的な演習が行われました。これらの機能は、Adobe Photoshopに慣れているユーザーにとっても、Affinityが強力な代替ツールとなり得ることを示しています。

また、レイアウトデザインやページ制作に特化した「レイアウトスタジオ」の機能も紹介されましたが、今回は自動ページ番号機能に限定しての紹介となりました。これは、雑誌や書籍のような複数ページのドキュメントを作成する際に非常に便利な機能です。

AIによる自動処理で作業を効率化
最新の制作ツールに欠かせないのがAI(人工知能)の活用です。セミナーでは、Canva AIを用いたデモンストレーションも行われました。特に注目されたのは、被写界深度の調整、つまり写真の「ボケ感」をAIが自動で演出する機能です。
AI初心者の方にもわかりやすく説明すると、通常、写真のボケ感はカメラの設定やレンズの種類によって決まりますが、AIを使えば、撮影後に写真のどの部分をぼかすかを指定し、自然なボケ味を再現することができます。これにより、写真の表現力が格段に向上し、よりプロフェッショナルな仕上がりを簡単に実現できるようになります。このようなAIによる自動処理は、作業効率を大幅に高め、クリエイターがより創造的な作業に集中できる環境を提供します。

セミナー中は、参加者からチャットやリアクション機能を通じて活発な反応が寄せられ、講師の解説や操作デモに対して、その場で気づきや驚きが共有されました。これは、Affinityが持つ可能性と、AIがデザインにもたらす影響への関心の高さを示していると言えるでしょう。
参加者の声から見えたAffinityへの期待
セミナー後のアンケートからは、Affinityに対する強い期待と反響が寄せられました。長年業界標準として使われてきた制作ツールに対して、コストや運用面で課題を感じていた方々から、特に多くの声が聞かれました。
Canvaとの連携で広がる可能性
Canvaを業務で日常的に活用している参加者からは、「より高度な表現力や制作の自由度を求めていたが、Canvaと組み合わせて活用できる現実的な選択肢としてAffinityに期待している」という意見が多く聞かれました。Canvaの手軽さにAffinityの専門的な機能が加わることで、制作の幅が大きく広がることに魅力を感じているようです。
制作プロセスの一本化による効率化
制作プロセスの観点では、「複数のツールや環境を横断して行っていた作業を整理し、制作工程を一本化できる点」が特に評価されました。これまで分断されがちだったデータやワークフローを、Canvaを含む制作環境全体の中で再設計できるという点は、実務に即した大きなメリットとして言及されています。
多様な職種からのニーズ
参加者の職種はグラフィックデザイナーが20%と最も多いものの、Webデザイナー、マーケティング/広報担当者、DTP・エディトリアル担当者、イラストレーター、ディレクター/プランナー、UI/UXデザイナーなど多岐にわたります。

デザイナー職に限らず、マーケティングや広報、ディレクションといった職種においても、「自ら制作を行う場面が増えている」という声が聞かれました。Canvaを日常的に活用する中で、より踏み込んだ表現や制作にも取り組みたいと感じていた参加者からは、Canvaを起点に活用できる制作ツールとして、Affinityに関心を寄せる意見が見られました。これらの声から、手軽さと表現力の中間領域を担うツールとして、Affinityの存在感が徐々に高まりつつあることがうかがえます。
今後の展開:デジハリ・オンラインスクールでAffinity実践講座が開講
今回のセミナーでの大きな反響を受け、デジハリ・オンラインスクールでは、2026年春に堀江ヒデアキ氏による「Affinity講座」の開講を企画しています。この講座では、単なる機能紹介にとどまらず、プロフェッショナルな制作現場を見据えた実践的なカリキュラムが展開される予定です。
近年、制作ツールを取り巻く環境は大きく変化しており、特定のツールに依存するのではなく、目的や役割に応じて最適な選択を行う姿勢が、これまで以上に重要になっています。デジハリ・オンラインスクールでは、従来の専門性の高い制作環境で用いられてきたツールから、Affinityをはじめとした初学者でも取り組みやすいツールまでを横断的に扱い、学びの選択肢そのものを広げる場づくりを進めています。
これは、ツールが作品を生み出すのではなく、学習者一人ひとりが多様な選択肢の中から最適な手段を選び取れる力こそが、これからのクリエイターに求められているという考えに基づいています。新しいツールが加わることで広がる表現の可能性とともに、次の時代の制作現場に向けた学びの場に、ぜひご期待ください。
講師プロフィール
堀江ヒデアキ 氏
グラフィックデザイナーとして、複数社での経験を経て2011年よりフリーランスで活動を開始。エンターテインメントコンテンツのアートディレクション・デザイン業務に携わる傍ら、Affinityに関する情報を個人のX(旧:Twitter)を通じて積極的に発信しています。技術書オンリーイベント「技術書典」では、Affinity解説本「Affinity Suite」をこれまでに3冊刊行し、「刺され!技術書 アワード」にて「ニュースタンダード部門」を受賞するなど、Affinityに関する第一人者として知られています。
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X(旧:Twitter):@petitbrain
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ホームページ:https://www.petitbrain.com/
デジハリ・オンラインスクールについて
「デジハリ・オンラインスクール」は、日本初の産学協同専門スクール「デジタルハリウッド」が運営する、通学不要の本格派オンラインスクールです。1994年の創設以来培ってきたクリエイター育成に特化した教育ノウハウと、デジタルハリウッド大学などを通じたデジタルコンテンツ業界とのつながりを活かし、Webデザイン・3DCG・映像編集の分野において最新かつ実践的なカリキュラムを提供しています。
- デジハリ・オンラインスクール公式サイト:https://online.dhw.co.jp/

