2026年の衆議院選挙が目前に迫る中、各政党の街頭演説は有権者の心を掴むための重要な場となっています。しかし、その演説が実際にどれほどの効果を持つのか、客観的に分析することは容易ではありませんでした。そんな中、コグニティ株式会社が「非・生成AI技術」を用いて、各党の街頭演説を詳細に分析し、投票予測との関連性を探る興味深い試みを行いました。この分析は、単に投票予測を鵜呑みにするのではなく、演説の「特徴」という具体的な根拠に基づいて、その予測がどこまで妥当かを「精査」することを目的としています。

知識表現AIが解き明かす演説の「型」
今回の分析に用いられたのは、コグニティ株式会社が開発した「知識表現AI」です。一般的なChatGPTのような「生成AI」が文章を「作る」ことを得意とするのに対し、知識表現AIは、発話や文章を比較可能な「モノサシ」に落とし込むことに特化しています。これにより、演説の「中身」だけでなく、話の構成、説明の繰り返し方、問いかけの有無といった「伝え方の型」を数値として定量的に捉えることが可能になります。
この技術は、2022年参院選、2024年都知事選、2025年参院選に続く4回目の選挙分析であり、その精度と応用範囲の広さを示しています。
投票予測が高い演説に共通する「勝ちパターン」3要素
選挙ドットコムがJX通信社と共同で実施した投票予測を「評価値」として、投票予測が高い演説に共通する特徴、つまり「勝ちパターン」が抽出されました。その結果、影響が強い要素は以下の3点に収束しています。
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主なトピックの割合を増やす(=論点の数が多い)
演説の中で触れる主要な話題(論点)の数が多く、多様なテーマに言及している演説ほど、投票予測が高くなる傾向が見られました。これは、多くの有権者の関心事をカバーすることで、幅広い層にアピールできる可能性を示唆しています。 -
繰り返し説明の割合を減らす
同じ内容を何度も繰り返して説明するのではなく、効率的で簡潔な説明を心がける演説が有利であると分析されました。聴衆は新しい情報や多角的な視点を求めており、繰り返しが少ない方が集中力を維持しやすいと考えられます。 -
問いかけへの自問自答(回答)の長さを増やす
演説中に聴衆に問いかけた後、その問いに対する自身の回答(自問自答)を長く、具体的に説明する演説が「勝ちパターン」の一部であることが分かりました。これは、単に問いかけるだけでなく、その問いに対する深い考察や具体的な解決策を示すことで、聴衆の共感や理解を深める効果があると言えるでしょう。
これらの要素をまとめると、勝ちやすい演説とは「論点が明確で多岐にわたり、同じ話を繰り返さず、聴衆がどう受け取るかを意識して、問いかけに対して深く答える設計になっている」という特徴を持っていることが明らかになりました。
論点の「数」と「並び方」が示す政党の傾向
高投票予測の政党は、一つの演説に含まれる論点数が多く、多角的な視点から政策を訴える傾向が見られました。一方、低投票予測の政党は、論点を絞り込み、その内容を深く説明する傾向にあることが判明しました。
さらに、主要な論点を情報量順に並べ替えて比較すると、上位の政党では「主張の核」や「意味づけ」が明確になるような話題が上位に並ぶ傾向があります。これに対し、下位の政党では「投票行動の呼びかけ」や「同趣旨の繰り返し」が多くなる傾向が読み取れました。これは、単に多くの論点を提示するだけでなく、その論点の提示順序や内容の質が、有権者の受け止め方に大きく影響することを示唆しています。

話し方の「輪郭」と「問いかけ」にも差
演説の「語りの輪郭」、すなわち話す量、話すスピード、文の長さなどを比較すると、興味深い傾向が明らかになりました。全体的に「ゆっくりめ」の速度帯で話す演説が高投票予測の政党に見られ、具体的には高投票予測側が平均254.2語/分であるのに対し、全体の平均は271.2語/分でした。このことから、主要な政党の街頭演説は、よりゆったりと話すことで、聴衆に内容を理解しやすくしている可能性が示唆されます。

また、問いかけに対する回答(自問自答)の長さについては、公示前の議席数が多い政党ほど「長い自答」をする傾向が見られました。しかし、自問自答の「数」で比較すると、議席数が多い政党ほど問いかけ自体が少ない傾向も確認されています。これは、議席数の多い政党が、より深い回答を通じて説得力を高めつつも、問いかけの頻度は抑えることで、メッセージの焦点化を図っているのかもしれません。
演説特徴から逆算した「再ランキング」:『チームみらい』が想定以上
前述の「勝ちパターン」を用いて、各党の演説がどれだけその特徴を持っているかを0〜100点でスコア化し、演説特徴から逆算した再ランキングが算出されました。
- 自由民主党(100点)
- チームみらい(75点)
- 中道改革連合(70点)
- 国民民主党(58点)
- 日本共産党(53点)
- れいわ新選組(35点)
- 日本維新の会(35点)
- 日本保守党(18点)
- 参政党(5点)
- 社会民主党(0点)
この再ランキングは、実際の投票予測の順位そのものではありません。しかし、「短くシンプル」な演説特性、すなわち「勝ちパターン」に照らし合わせて再計算した場合、『チームみらい』が事前想定以上の高いスコアを獲得したことが注目されます。これは、同党の演説が、効率的で聴衆に響く要素を多く含んでいる可能性を示しています。

分析対象とデータについて
今回の分析は、2026年2月8日投票日の衆院選に向けた10党の街頭演説(合計419分)が対象となりました。コグニティの組織分析サービス「COG-EVIDENCE」が用いられ、話題の構造、説明の反復、言葉の使い方などが数値化されています。分析対象となった各党のYouTube演説動画は以下の通りです。
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日本維新の会: https://www.youtube.com/live/daZNGLE4RpU?si=yThSTyPtzkjQpGCb
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国民民主党: https://www.youtube.com/live/RtNIVOhKrWw?si=hA34TygWL680HlQf
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参政党: https://www.youtube.com/live/XXCnHvCB5DQ?si=O5IuJjs2TtpuYir9
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チームみらい: https://www.youtube.com/live/94bNVSixxiI?si=Lfm8C8SCktEuHwm
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日本共産党: https://www.youtube.com/live/BfNeFnpVLx0?si=Dod6gtkj8AyFCkwa
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れいわ新選組: https://www.youtube.com/live/O4gMbFbLgxc?si=lqu_dlHmQIIAhLgJ
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日本保守党: https://www.youtube.com/live/af3QeRpLa8w?si=ggRa9-IuCvOZsasW
なお、今回の分析ではYouTube付属の「文字起こし表示」がそのまま利用されているため、YouTube自体の誤変換が分析上の誤認識を含む可能性も考慮する必要があります。
有権者向け特集ページ「2026年衆院選・政論解体新書」も公開中
コグニティ株式会社は、今回の分析結果を踏まえ、有権者向けに各党のマニフェスト動画・政見放送・街頭演説の論点・特徴を一覧化し、分析レポートを掲載した特集ページ「2026年衆院選・政論解体新書」を公開しています。さらに、noteでは有料記事も提供されていますが、街頭演説の分析については無料で公開されています。
2026年衆院選・政論解体新書
URL: https://cognitee.com/2026vote
この特集ページでは、以下のような内容が提供されています。
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【一の巻】各党マニフェストの分析から「偏り」を把握!投票判断のための「論点・特徴一覧」を公開
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【二の巻】政見放送の「具体策」言及が昨年比大幅減、非・生成AIでロジック構造を解析し”呼びかけ偏重”を可視化
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【三の巻】自民⇔中道、何が違う?印象を超えて判断しよう
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【四の巻】街頭演説の“特徴”から投票予測を精査、演説を点数化(noteは無料公開)
各党から公開された情報をもとに、傾向や注意点について深く分析し、有権者の投票判断の一助となる情報が共有されています。
また、noteの記事はこちらから確認できます。
https://note.com/cognitee/n/n9fecbac0fc6e
コグニティの組織分析サービス「Baseline Review」
コグニティ株式会社は、会話や文章といった定性データを、独自の構造化技術によって「改善に使える指標」と「行動に落ちる示唆」に変換する分析サービスを提供しています。これは、商談、会議、社内共有、研修、顧客対応、IRなど、さまざまなコミュニケーションの「伝わり方」と「成果につながる要因」を可視化し、改善の優先順位や具体的な打ち手を提示するものです。
その第一歩として、短期間で現状の課題と改善の方向性を把握できる「Baseline Review(お試し)」を5万円(税別)で提供開始しています。このサービスでは、個人や組織の力量を確かめるため、パフォーマンスの良いトークと悪いトークの違い(構成、論点の置き方、説得の流れなど)や、最終版の再レビュー(Before/After比較)として、録画、音声、書類などを2本提出することで、分析結果と1時間のブリーフィングが受けられます。

申込ページはこちらです。
https://cognitee.com/baseline-review-cog-evidence
コグニティ株式会社について
コグニティ株式会社は、「技術の力で、思考バイアスなき社会を。」をパーパスに掲げ、定性情報の定量化技術を使った組織分析サービスを提供しています。2013年3月28日に設立され、本社は東京都品川区に位置しています。資本金は6億円(準備金含む)、従業員数は71名(リモートワーカー含む)です。代表者は代表取締役の河野理愛氏です。
これまでに、EY Innovative Startup エンタープライズ部門受賞(2019)、第11回 HRアワード 人材開発・育成部門 最優秀賞(2022)、第22回 一般社団法人日本テレワーク協会 テレワーク推進賞 優秀賞受賞(2022)、第3回TOKYOテレワークアワード 推進賞(2023)など、数々の受賞歴があります。また、一般社団法人生成AI活用普及協会の協議員も務めています(2023年〜)。
公式サイト: https://cognitee.com/

まとめ
今回の衆院選2026の街頭演説分析は、AI技術が選挙の動向を客観的に「精査」する新たな可能性を示しました。演説の内容だけでなく、その「伝え方」の細部にまで着目し、それが投票予測にどう影響するかを定量的に明らかにした点で、非常に画期的な取り組みと言えるでしょう。特に「勝ちパターン」として抽出された3つの要素や、「チームみらい」が演説特徴から高評価を得た点は、今後の選挙戦略を考える上で重要な示唆を与えてくれます。AI初心者の私たちにとっても、普段何気なく聞いている演説に、これほど多くの情報と戦略が隠されていることに気づかされる、貴重な分析結果と言えるでしょう。

