AIが製造業の未来を拓く!高額センサー不要で品質向上と技術継承を実現する『3D形状検査・異常分析システム』
製造業界が直面する熟練工の高齢化や人手不足といった課題に対し、AI(人工知能)の活用が期待されています。この度、製造業向けAIソリューションを展開する株式会社キャリアサバイバルと、大径薄肉パイプ製造販売のシンニチ工業株式会社は、AIを活用した「3D形状検査・異常分析システム」の共同開発・実証プロジェクトを開始しました。
この革新的なシステムは、高額なセンサー設置を不要とし、製品そのものの3Dスキャンデータから不具合の原因を特定し、製造現場の品質を安定させる「歩留まり改善」を実現します。本記事では、この共同プロジェクトの詳細と、製造業におけるAI活用の可能性について、AI初心者にも分かりやすく解説します。

製造業が直面する深刻な課題とAI活用の必要性
現在の製造業界では、長年の経験を持つ熟練工の高齢化が進み、その高度な技術や知識を次世代に引き継ぐことが非常に難しくなっています。また、労働力不足も深刻化しており、安定した製品品質を維持するための「技能の標準化」が急務とされています。
シンニチ工業の製造現場でも、これまで熟練工が製品を「触る」ことで、わずかな形状の異常を察知し、その経験に基づいて不具合の原因を見つけ出し、解決することで高品質を保ってきました。しかし、このような感覚的な技術を習得するには長い年月がかかるため、技術継承が大きな課題となっていたのです。
一方で、製品の異常を検知するために、製造ラインに大量のセンサーを設置する方法もあります。しかし、この方法は導入コストが非常に高く、特に中小規模の製造業にとっては大きな負担となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)への一歩を踏み出す障壁となっていました。
このような背景から、キャリアサバイバルとシンニチ工業は、これらの課題を解決するために、製品に直接着目した新しいアプローチを考案しました。それが、AIを活用した「3D形状検査・異常分析システム」です。
AIが「熟練工の勘」を「客観的な数値」に変える
本プロジェクトの核となるのは、キャリアサバイバルの持つAI技術です。熟練工が指先で感じ取っていた「わずかな違和感」や「異常の兆候」を、製品の3Dスキャンデータとして取り込み、AIが解析することで「客観的な数値基準」に置き換えます。これにより、これまで言葉や感覚でしか伝えられなかった技術が、データとして可視化され、誰もが理解・活用できるようになります。
さらに、この3Dスキャンデータと、製造設備の稼働情報や生産記録といった様々なデータをAIに学習させることで、製品の品質異常が発生した際に、「なぜその不具合が起きたのか」という原因をAIが高精度で分析できるようになります。
このシステムが実現すれば、熟練工の経験に頼ることなく、誰でも高い精度で製品の異常を検知し、その原因を特定することが可能になります。結果として、低コストで品質を安定させ、貴重な技術を未来へ継承していく道が開かれると期待されています。
『3D形状検査・異常分析システム』の具体的な特徴
共同開発が進められている本システムには、製造現場の課題解決に直結する3つの大きな特徴があります。
1. 3Dデータ比較による高精度なOK/NG判定
このシステムは、製造された製品の3Dスキャンデータと、完璧な状態の製品(マスター品)の3DデータをAIが詳細に比較します。これにより、人間の目では見逃してしまうような微細な形状の差異や欠陥を瞬時に検出し、製品が基準を満たしているか(OK)否か(NG)を高精度に自動で判定します。これにより、検査の効率が大幅に向上し、品質のバラつきを未然に防ぐことが可能になります。
2. 異常傾向の可視化と要因推定
単に製品の合否を判定するだけでなく、検査データを時系列で蓄積し、AIが形状差異の推移を分析します。例えば、ある特定の時期から製品の形状にわずかな変化が見られるようになった場合、その変化がどのように進んでいるかをグラフなどで「見える化」します。さらに、AIはその変化パターンから、「なぜその不具合が発生しているのか」という原因のあたりをつけるためのレポートを自動で生成します。これにより、問題が深刻化する前に、根本的な原因にアプローチすることが可能になります。
3. 多角的な統合分析
本システムは、製品の3Dデータだけでなく、製造設備のログデータ(いつ、どの設備が、どのように稼働したかという記録)や、現場の日報データ(作業者が記録した日々の生産状況や特記事項)など、様々な種類のデータを統合してAIが解析します。これにより、単一のデータだけでは見えてこなかった、現場の状況に即した多角的な異常分析が可能となります。属人的な経験や知識に頼ることなく、データに基づいた客観的な品質管理を強力にサポートします。
キャリアサバイバルとシンニチ工業、両社の狙い
この共同プロジェクトは、両社にとって重要な意味を持っています。
キャリアサバイバルの視点:中小製造業のDX推進と産業全体の貢献
キャリアサバイバルは、IT技術を通じて製造業の技術継承問題を解決することを最大の目標としています。今回のプロジェクトは、「AI導入には高額なハードウェア投資が必要」という固定観念を打ち破り、3Dスキャンデータを活用するだけでDXが可能であることを中小製造業に示す重要な事例となります。シンニチ工業との実証を通じて、現場で本当に「使える」実用的な異常分析AIモデルを確立し、同様の課題を持つ企業への横展開を図ることで、日本の製造業全体の生産性向上に貢献することを目指しています。
シンニチ工業の視点:自社DXの加速と共創文化の醸成
シンニチ工業は、これまでもシード/アーリー期のスタートアップ企業や大学との共創に取り組んできました。これは、自社が「実験台」となることで、共創パートナーの事業成長やキャリア形成の機会を提供したいという強い想いがあるからです。本プロジェクトを通じて、先進的なスタートアップ企業との連携により、自社のDXを加速させ、製造現場の喫緊の課題である「歩留まりの改善」と「原価率の低減」を実現することを目指します。また、今後も魅力的なサービスやプロダクトを持つスタートアップ企業との共創機会を継続的に模索していく方針です。
プロジェクトにかける両社代表の想い
この画期的なプロジェクトの実現には、両社の代表者たちの熱い想いがありました。
株式会社キャリアサバイバル 代表取締役 松岡 大介氏のコメント
「『AI導入には高額なセンサー設置が不可欠』という考え方が、多くの中小製造業のDXを阻んできました。しかし、製品そのものは、製造工程の全てを物語る『履歴書』です。製品の形状がどのように変化したかを精緻に捉えることができれば、高価なセンサー網を張り巡らせなくとも、設備の健康状態や製造プロセスの問題点を把握できるはずです。シンニチ工業様の『新しい技術を恐れず、実験台として提供する』という懐の深さに感銘を受け、このプロジェクトが実現しました。現場の方々に本当に活用される『相棒』のようなAIシステムを共に作り上げ、製造業における新しい品質管理のスタンダードを確立してまいります。」
シンニチ工業株式会社 製造部長 鏡堂達也氏のコメント
「自社の製造現場の課題を解決するためには、外部の先端技術を取り入れるだけでなく、共に新たな挑戦へと踏み出せる『仲間』の存在が不可欠だと考えています。この度、キャリアサバイバル様との共同プロジェクトを通じて、自社の生産性向上を実現すると同時に、中小製造業界全体が直面しているDX化という大きな課題に対し、その解決の糸口となるような成功事例を創出していきたいと願っています。また、このような共創活動に共感いただける仲間を募りながら、中小製造業の様々な課題に対し、この『共創』という新しい挑戦の形が業界に根付き、さらに発展していくことを期待しています。」
各社の概要
株式会社キャリアサバイバル
製造業向けAIソリューションの開発・提供を主な事業内容とし、愛知県名古屋市に本社を構えています。
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所在地:愛知県名古屋市中村区名駅4丁目24番5号第2森ビル401
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代表者:代表取締役 松岡 大介
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事業内容:製造業向けAIソリューションの開発・提供
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設立:2022年10月
シンニチ工業株式会社
大径薄肉パイプ(ステンレス・鉄・チタン)の製造販売を手がける老舗企業で、愛知県豊川市に本社があります。
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所在地:愛知県豊川市平尾町天間48番地
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代表者:代表取締役 木下 雄輔
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事業内容:大径薄肉パイプ(ステンレス・鉄・チタン)の製造販売
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設立:1970年9月
まとめ:AIが拓く製造業の新たな可能性
キャリアサバイバルとシンニチ工業による今回の共同プロジェクトは、製造業が抱える技術継承や人手不足、高コストといった長年の課題に対し、AIという新たな視点から具体的な解決策を提示するものです。高額なセンサーに頼ることなく、製品の3DスキャンデータとAI解析を組み合わせることで、熟練工の「勘」を「客観的なデータ」に変換し、品質管理の精度を飛躍的に向上させます。
このシステムが実用化されれば、中小製造業を含む多くの企業が、より低コストでDXを推進し、品質の安定化、歩留まりの改善、そして未来への技術継承を実現できるようになるでしょう。AIと製造業の共創が、日本のものづくりをさらに進化させ、国際競争力を高める重要な一歩となることが期待されます。

