台湾経済は、AI(人工知能)技術の進化とそれに伴う需要の高まりを背景に、活発な動きを見せています。情報サービス企業グループ「ワイズコンサルティング」が発表した「週刊台湾ビジネスニュース 2025/12/08号」では、電子部材の価格高騰からインフラ整備、都市開発、法規制、そしてサービス産業に至るまで、台湾の最新ビジネス動向が多角的に分析されています。
この記事では、AI初心者の方にも分かりやすい言葉で、台湾ビジネスの「今」を形成する主要なトピックを詳しくご紹介します。
AI需要が電子部材市場に与える影響:南亜プラCCL 8%値上げの背景
銅張積層板(CCL)とは?AI時代に不可欠な素材
AI技術の発展は、私たちの生活だけでなく、産業界全体に大きな変化をもたらしています。特に、AIデータセンターの構築には高性能な電子部品が不可欠であり、その中心となる素材の一つが「銅張積層板(CCL)」です。
CCL(Copper Clad Laminate)は、プリント基板(PCB)の主要な材料です。皆さんが普段使っているスマートフォンやパソコン、家電製品など、あらゆる電子機器の中には必ずプリント基板が入っており、その基板を作るためにCCLが使われています。CCLは、ガラス繊維の布に樹脂を含ませたシート(プリプレグ)に銅箔を貼り合わせたもので、電子信号を伝えるための「道」を作る役割を担っています。
値上げの「三重苦」とAI需要の拡大
業界の動向によると、台湾の大手化学メーカーである台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下の南亜塑膠工業(南亜プラスチックス、南亜プラ)は、2025年12月20日出荷分から、CCLやプリプレグ基板の価格を約8%引き上げた模様です。この値上げの背景には、主に以下の「三重苦」と呼ばれる要因があります。
- 銅の価格上昇: CCLの主要な原材料である銅の国際価格が高騰しています。
- 銅箔の加工費上昇: 銅箔を加工するコストも増加しています。
- 電子材料用ガラスクロスの供給不足: CCLのもう一つの重要な材料である電子材料用ガラスクロスが世界的に不足しています。

これらの供給側の問題に加え、世界中でAIデータセンター向け部品の需要が急拡大していることが、電子部品や材料の供給不足と価格上昇に拍車をかけています。AIの学習や推論には膨大な計算能力が必要であり、そのためには高性能なサーバーやネットワーク機器が大量に必要とされます。これらの機器の基盤となるCCLの需要が増加することで、市場全体の逼迫が深刻化しているのです。

このような状況は、最終的にスマートフォンやパソコン、サーバーなど、さまざまな電子製品の価格にも影響を与える可能性があります。AI技術の進化が、遠く離れた素材市場にまで波及している具体的な事例と言えるでしょう。
より詳細な情報については、ワイズコンサルティングのニュースレポートをご参照ください。
AI需要で電子部材不足、南亜プラCCLを8%値上げか
台湾の空の玄関口が進化:桃園空港第3ターミナル北側出発ロビー運用開始
台湾の主要な国際空港である桃園国際空港は、台湾の経済活動を支える重要なインフラです。2025年12月1日、この桃園国際空港で建設が進められている第3ターミナルの北側出発ロビーが試験運用を開始しました。
年内には正式運用が開始される予定で、これにより桃園空港の年間取扱能力は580万人分増加すると見込まれています。旅行者やビジネス客の利便性が向上するだけでなく、台湾へのアクセスがさらにスムーズになることで、観光やビジネス交流の活性化にも貢献することが期待されます。これは、台湾が国際的なハブとしての地位を強化する上で重要な一歩と言えるでしょう。
日本の技術が台湾のランドマークに:隈研吾氏設計の台中クマ・タワーにDNPアルミパネル採用
日本の著名な建築家である隈研吾氏が設計を手がける台中市の複合商業施設「聯聚中維大廈(クマ・タワー)」の外装デザインに、大日本印刷(DNP)が開発した焼付印刷アルミパネル「Artellion(アーテリオン)」が台湾で初めて採用されることになりました。
Artellionは、DNP独自の焼付印刷技術によって、明るいナチュラルカラーの木目や、リン酸処理仕上げのような金属調の絵柄をアルミパネル上に再現する素材です。この技術により、軽量で耐久性に優れたアルミ素材でありながら、自然素材のような温かみや洗練された質感を表現することが可能になります。隈研吾氏の建築は、しばしば自然素材や日本の伝統的な美意識を取り入れることで知られており、Artellionの採用は、デザイン性と機能性を両立させる革新的な試みとして注目されます。日本の先端素材技術が、台湾の新たなランドマークの創造に貢献する事例と言えるでしょう。
機密情報保護と国際ビジネス:TSMC機密事件における東京エレクトロン台湾の追加起訴
世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)は、最先端の半導体技術を持つ企業として、その機密情報の保護は非常に重要です。2ナノメートル製造プロセスという最先端技術の機密情報を不正に取得したとして、東京エレクトロン(TEL)の台湾子会社である東京威力科創(東京エレクトロン台湾)の元従業員ら3人が、国家安全法(国安法)違反と営業秘密法違反の罪で起訴されていました。
この事件において、台湾高等検察署(高検)智慧財産(知的財産)検察分署は、2025年12月2日、東京エレクトロン台湾を国安法違反などの罪で追加起訴し、合計1億2000万元(約6億円)の罰金を求刑しました。これは、従業員の監督責任を十分に果たさなかったためとされています。特に注目すべきは、国安法違反罪で法人が起訴された初の事例である点です。
この事件は、国際的なビジネス活動において、企業の機密情報保護がいかに重要であるか、そして従業員の行動に対する企業の責任が厳しく問われる現代のビジネス環境を示しています。台湾政府が国家安全保障の観点から半導体技術の保護を強化している姿勢が浮き彫りになる事例と言えるでしょう。
活況を呈する台湾外食産業:王品集団の大量採用と賃上げ加速
台湾のレストランチェーン最大手である王品集団は、2026年に40~50店の新規出店を目標に、1200人以上の大規模な人材募集を行うと発表しました。さらに、初任給を3%以上引き上げ、店長職になれば年収200万台湾元(約990万円)以上を提示するなど、積極的な賃上げも表明しています。
これは、台湾の外食産業が好調であり、競争が激化していることを示しています。人材の確保と定着が企業成長の鍵となる中で、大手企業が魅力的な待遇を提示することで、優秀な人材を引きつけようとしているのです。実際、ビュッフェ最大手の饗賓餐旅事業(フィーストゥギャザー)や、牛肉麺チェーン「三商巧福」を展開する三商餐飲(マーキュリーズF&B)なども、来年の新規出店に向けてそれぞれ900~1000人の人材募集を計画しています。
このような動きは、台湾のサービス産業全体が活力を取り戻し、雇用創出と賃金上昇を通じて経済全体に良い影響を与える可能性を示唆しています。消費者にとっては、より多様で質の高いサービスが提供されることが期待できるでしょう。
台湾ビジネスの動向を継続的に把握するために
今回ご紹介したトピックは、「週刊台湾ビジネスニュース」で報じられた内容の一部です。台湾のビジネス環境は常に変化しており、その動向をリアルタイムで把握することは、ビジネス戦略を立てる上で非常に重要です。
ワイズコンサルティングが提供する「Y’sNews」は、台湾のビジネス、経済、産業に関する動向を日本語で毎日配信する情報サービスです。平日17時に最新ニュースが届けられ、2週間の無料試読も可能です。台湾ビジネスに関心のある方は、ぜひこの機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ワイズコンサルティング グループについて
ワイズコンサルティング グループは、1996年11月に設立された台湾を拠点とする情報サービス企業グループです。経営コンサルティング(人事労務、マーケティング、経営戦略、情報セキュリティ)、人材トレーニング(階層別研修、職種別研修)、日本語台湾経済ニュース・機械業界ジャーナル配信、市場調査、業界調査、顧客調査、クラウドサービスの販売など、多岐にわたる事業を展開しています。
台湾のビジネスに関する情報は、以下の関連リンクからもご確認いただけます。
まとめ:進化し続ける台湾ビジネスの多様性
2025年12月8日号の「週刊台湾ビジネスニュース」からは、台湾経済が直面する課題と成長の機会が鮮明に見えてきました。AI需要による電子部材の価格高騰はグローバルサプライチェーンの複雑さを、桃園空港第3ターミナルや台中クマ・タワーのプロジェクトはインフラ整備と都市開発の進展を、TSMC機密情報事件は知的財産保護の重要性を、そして王品集団の大量採用はサービス産業の活況をそれぞれ示しています。
これらの動向は、台湾が持つ技術力、インフラ整備能力、そして多様な産業の成長力を物語っています。AI技術の進化が経済全体に与える影響は今後も拡大し、台湾ビジネスはさらなる変革を遂げることでしょう。最新の情報を継続的に追うことで、このダイナミックな市場の可能性を最大限に引き出すことができるはずです。

