【2026年技術トレンド予測】AIの次は「製造・エネルギー」が世界を牽引!CESデータが示す未来のイノベーション戦略とは?

はじめに:なぜCESデータ分析が重要なのか?

世界最大規模のテクノロジー展示会「CES」は、毎年ラスベガスで開催され、世界の最先端技術が集結する場として知られています。この展示会に出展する企業の動向を分析することは、これから世界がどのような技術に投資し、何を伸ばし、どのような社会を目指しているのかをいち早く理解するための重要な手段となります。

技術と企業をつなぐプラットフォーム事業を展開するリンカーズ株式会社の子会社である株式会社リンカーズOI研究所は、2022年から2025年までの4年間で、延べ41,000社以上ものCES出展企業データを独自に収集・分析しました。この膨大なデータから導き出された「産業界の3つの戦略領域」と「主要国が注視する課題」は、企業の経営計画策定や研究開発テーマの見直し、新規事業開発、さらには投資判断など、多岐にわたる実務領域において非常に重要な情報となります。

リンカーズOI研究所は、CES出展企業の動向を量的なデータと質的な情報の両面から継続的に分析することで、日本の産業界が世界の潮流を確実に捉え、自社の戦略に効果的に反映できるよう支援することを目指しています。

調査概要:4万件超のCES出展データから見えたもの

今回の分析は、CES2022年から2025年までの公式出展企業リストを対象に行われました。合計約41,000件という膨大なデータを基に、55の技術カテゴリについて、出展数の「量」と「伸び率」をマッピングし、技術トレンドの構造を明らかにしました。さらに、各企業の出展概要(Description)に記載された自然言語を処理し、キーワード分析も実施されています。

この詳細な分析により、表面的なトレンドだけでなく、その背景にある深い意味合いや、各国の戦略的な意図が浮き彫りになりました。

分析結果①:AIだけじゃない!「デジタル」から「フィジカル」へ移る技術トレンド

2022年(コロナ禍からの回復期)と2025年の出展データを比較した結果、最も成長した領域は、多くの人が予想するであろう「AI単体」ではありませんでした。この分析は、技術トレンドが「デジタル空間」から、より現実世界に根ざした「フィジカル(現実)空間」へと回帰していることを強く示唆しています。

出展数の増加率が最も高かったのは、「Sourcing & Manufacturing(製造・調達)」で、なんと+422%という驚異的な伸びを示しました。続いて「Energy/Power(エネルギー・電力)」も+208%と大幅に伸長しています。これらの領域は、「Artificial Intelligence(人工知能)」の+179%を上回る成長率を記録しました。

技術カテゴリ 成長率ランキング

この結果は、AIが単なる「話題の技術」から、実際の産業現場に実装される「当たり前のツール」へとそのフェーズを移行していることを示しています。つまり、AIはそれ自体が目的ではなく、製造業の効率化やエネルギー供給の最適化といった、現実世界の課題解決のための強力な手段として位置づけられつつあるのです。

サプライチェーンの再構築やエネルギーインフラの強化といった、物理的な課題への対応が、世界の主要な投資領域となっていることが、このデータから読み取れます。

分析結果②:世界が注力する「3つの戦略領域」とは?

出展数と年平均成長率(CAGR:特定の期間における平均的な成長率を示す指標)を基に技術を分類したところ、世界が特に集中して投資している3つの領域が明らかになりました。

重点領域:市場を牽引するAI・エネルギー・製造

これらの3領域は、年平均成長率が+40%を超える、現在の市場を力強く牽引している分野として注目されます。特に「Sourcing & Manufacturing(製造・調達)」は+73%のCAGR、「Energy(エネルギー)」は+45%のCAGRと高い伸びを示しています。そして、「Artificial Intelligence(人工知能)」も+41%のCAGRと、依然として非常に高い成長率を維持しています。

このことは、市場が単にデジタル技術からアナログ技術へ回帰しているのではなく、AIが製造業やエネルギー産業といったフィジカルな分野に深く組み込まれる形で、市場全体が拡大していることを示唆しています。AIが現実世界の課題解決に貢献する、具体的な応用段階へと進んでいるのです。

基盤技術領域:社会インフラとして定着するIoT、モビリティ

IoT(モノのインターネット)やモビリティ関連技術は、年平均+20%前後の安定した成長を見せる基盤領域として位置づけられています。特に「Vehicle Tech(車両技術)」では成長率が落ち着きを見せており、これは電気自動車(EV)や自動運転といった技術が、もはや「話題の技術」ではなく、社会インフラの一部として定着するフェーズへと移行したことを示唆しています。これらの技術は、今後の社会を支える上で欠かせない存在となりつつあります。

新興領域:次のイノベーションの芽「量子・宇宙」

出展数自体はまだ少ないものの、年平均25%を超える確かな成長が見られるのが、量子技術と宇宙技術といった次世代領域です。これらは現時点ではまだ汎用化(広く一般に使われるようになること)の一歩手前の段階にありますが、次の大きなイノベーションの芽が着実に育ちつつある領域と言えます。

  • Space Tech(宇宙技術):年平均+25.5%の成長率を記録し、出展企業は83社まで増加しました。民間宇宙ビジネスの成長を背景に、通信技術だけでなく、宇宙空間での製造(In-Space Manufacturing)といった新しいコンセプトも登場し始めています。宇宙が単なる探査の対象ではなく、新たな産業活動の場として注目されていることが分かります。

  • Quantum Computing(量子コンピューティング):年平均+30.5%という高い成長率を示し、2022年の9社から20社へと倍増しています。これは、量子コンピューティングが研究段階から、より具体的な産業応用へと移行しつつある兆しと見ることができます。

分析結果③:世界イノベーション地図の大きな変動

国別の出展動向を分析すると、2022年とは大きく異なる構造変化が明らかになりました。

中国:存在感を急拡大、米国に迫る規模

中国企業のCESへの出展は、2022年には106社でしたが、2025年には968社へと約9倍に急増しました。これは開催国である米国(1,014社)に迫る規模であり、中国がグローバル市場での存在感を再び強力に示していることが分かります。中国企業の技術力と市場への意欲が、世界的な注目を集めていると言えるでしょう。

韓国:スタートアップ分野で世界トップに

次世代技術の実証・発信の場である「Startups(スタートアップ)」カテゴリでは、韓国が330社を出展し、開催国である米国(239社)を上回り世界1位となりました。これは、韓国政府主導のスタートアップ支援策が功を奏し、先端領域での競争力を急速に高めていることを背景としています。韓国のスタートアップ企業が、世界のイノベーションを牽引する存在として台頭している様子がうかがえます。

分析結果④:キーワード分析から見える主要国の関心テーマの変化

各国企業の出展概要(Description)を自然言語処理で分析した結果、国ごとに注力する社会課題が明確に分かれることが分かりました。また、全体的な傾向として、「IoT」や「Camera」といった機能系の単語が減少し、「Safety(安全)」や「Efficiency(効率)」といった“価値”に紐づく単語が増加しています。このことは、CESが単なる「技術展示の場」から、より広範な「未来社会のコンセプトを提示する場」へと進化していることを示唆する結果です。

米国:生活基盤の強靭化への関心「Security」と「Power」

米国企業では、「Security(セキュリティ)」や「Power(電力)」といったキーワードの出現頻度が増加しています。これは、生活基盤の強靭化やエネルギーインフラへの関心が高まっていることを示しています。サイバーセキュリティの強化や、安定した電力供給システムの構築といった課題に、米国企業が積極的に取り組んでいる様子がうかがえます。

韓国:社会課題解決に直結する価値「Safety」と「Efficiency」

韓国企業からは、「Safety(安全)」や「Efficiency(効率)」といった、社会課題に直結する価値領域へのシフトが見られます。これは、単に技術を開発するだけでなく、それが人々の生活の安全を確保し、社会全体の効率を高めるためにどのように役立つか、という視点を重視していることを示唆しています。

中国:自社ブランド創出へ転換「Factory」と「Brand」

中国企業では、「Factory(工場)」に加えて「Brand(ブランド)」が頻繁に登場するようになりました。これは、従来のOEM(他社ブランド製品の製造)中心のビジネスモデルから、自社ブランドを創出し、グローバル市場で独自の存在感を発揮しようとする動きが顕著になっていることを示しています。中国企業が技術力だけでなく、ブランド力でも世界に挑もうとしていることが見て取れます。

日本:ものづくり×脱炭素「Energy」と「Manufacturing」

日本企業は、従来の機能系キーワード(IoT、Cameraなど)から、「Energy(エネルギー)」や「Manufacturing(製造)」へと関心テーマが移行していることが分かりました。これは、日本の強みである「ものづくり」の技術を活かしつつ、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー技術の革新に取り組むことで、この領域での国際競争力を強化しようとする姿勢を示唆しています。

今後の展開:データが示す「問い」を現地で検証

今回の分析により、世界が「AIの実装」と「フィジカル産業の再加速」へと大きく舵を切っていることが浮き彫りになりました。しかし、出展データの変化だけでは見えない、さらに深い論点が残されています。

例えば、急増した中国企業の技術力は、実際どの水準にあるのか。世界トップの出展数を誇る韓国スタートアップの中に、次のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)候補は存在するのか。そして、AIが組み込まれた製造現場は、どのようなオペレーションの変革を起こしていくのか。これらの問いは、今後の技術動向を理解する上で非常に重要です。

リンカーズOI研究所は、これらの「問い」の答えを探るため、CES 2026(米国・ラスベガス)に専門調査員を派遣し、現地でのインタビュー調査やパビリオン視察を実施する予定です。

さらに、本リリースで紹介した定量分析に加え、現地で体感したパビリオンの熱量、主要プレイヤーの動向、そして次の成長市場の兆しを総合的にまとめた「CES 2026 イノベーションレポート」を、2026年1月末に販売開始する予定です。日本の産業界が「いま」把握すべきリアルな技術潮流を、リンカーズ独自の視点でお届けするとのことです。

CES 2026イノベーションレポートご案内サイト:
https://go.linkers.net/2026_ces

株式会社リンカーズOI研究所の詳細については、以下のウェブサイトをご確認ください。
https://oi-lab.co.jp/

リンカーズ株式会社の詳細については、以下のウェブサイトをご確認ください。
https://corp.linkers.net/

まとめ:日本の産業界が捉えるべき世界の潮流

リンカーズOI研究所のCES出展データ分析は、AIが単体でのブームから、製造業やエネルギー産業といった現実世界の基盤となる分野に深く統合され、その価値を最大限に発揮するフェーズへと移行していることを明確に示しました。これは、デジタル技術がフィジカルな世界と融合し、新たなイノベーションを生み出す「デジタルトランスフォーメーション」の進化形とも言えるでしょう。

中国の急速な台頭や韓国スタートアップの躍進は、グローバルな競争環境が激化していることを示唆しており、日本の企業にとって、これらの世界の潮流を正確に捉え、自社の戦略に落とし込むことの重要性が改めて浮き彫りになりました。特に、日本の強みである「ものづくり」と「脱炭素」を組み合わせた「Energy」と「Manufacturing」への注力は、今後の日本の競争力を左右する鍵となるかもしれません。

この分析結果は、これからのビジネス戦略や研究開発の方向性を検討する上で、貴重な羅針盤となることでしょう。世界の技術トレンドの最前線で何が起こっているのかを理解し、未来に向けた一歩を踏み出すための重要な情報と言えます。

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