日立が社会インフラを革新する次世代AIソリューション「HMAX」を発表!フィジカルAIで未来をどう変える?
2026年1月6日、株式会社日立製作所(以下、日立)は、米国ネバダ州ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」において、次世代AIソリューション群「HMAX by Hitachi」(以下、HMAX)を発表しました。HMAXは、AIと社会インフラを結びつけ、私たちの生活を支える基盤をよりスマートで持続可能なものに変革することを目指しています。

HMAXとは?社会インフラを革新する次世代AIソリューション群
HMAXは、「AIで社会インフラを革新する」という壮大なビジョンを掲げたソリューション群です。私たちの身の回りにある物理的な設備(フィジカルアセット)やデジタルな情報(デジタルアセット)から得られる膨大なデータを活用し、日立が長年培ってきた社会インフラに関する深い専門知識(ドメインナレッジ)と、最先端のAI技術を組み合わせることで、社会が抱える複雑な課題の解決に挑みます。
具体的には、HMAXは以下のような先進的なAI技術を駆使します。
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Perception AI(認識AI): 音響や振動センサーのデータなどを解析し、異常を検知・報告するAIです。例えば、鉄道インフラのわずかな異変を早期に察知し、大きなトラブルを防ぐことに役立ちます。
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生成AI: 新しいデータや情報を生み出すAIです。送配電網のエネルギー最適化アルゴリズムを迅速に生成するなど、複雑な課題に対する最適な解決策の発見を加速します。
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Agentic AI: 自律的に目標を設定し、計画を立て、実行するAIです。最適な保守スケジュールを自動で計画・実行するなど、人間が行っていた判断や作業をAIが代行し、効率化と精度向上に貢献します。
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フィジカルAI: 現実世界のアセットを直接制御し、物理的なアクションを起こすAIです。送配電網やスマートビルディングシステムをリアルタイムで制御するなど、デジタル世界と物理世界を融合し、より高度な自動化と最適化を実現します。
これらのAI技術が連携することで、HMAXはお客さまや社会に最大の成果と価値を提供し、現場システムの信頼性とパフォーマンスを向上させることが期待されています。
HMAXがもたらす3つの主要分野と今後の展開
HMAXは、AIの力によって特に大きな価値を生み出す3つの主要分野に焦点を当てています。
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HMAX Mobility(モビリティ)
よりスマートで最適化された交通システム、自律運転、そしてIoTに対応したモビリティの実現を目指します。例えば、鉄道の運行状況をリアルタイムで分析し、遅延の予測や最適な運行ルートの提案を行うことで、利用者の利便性向上やエネルギー効率の改善に貢献します。 -
HMAX Energy(エネルギー)
電力供給網や再生可能エネルギー設備など、非常に重要なエネルギーインフラのバリューチェーン全体において、安全性、信頼性、そして持続可能性を確保することを支援します。デジタル技術を活用したサービス群により、問題の発生を未然に予測して防止することで、設備の稼働時間を最大化し、資産の寿命を延ばし、性能と効率を最適化します。 -
HMAX Industry(産業)
ビルや工場といった現場において、安全性、生産性・品質の向上、環境への配慮といった価値を提供します。これにより、現場で働く人々の業務を革新し、人々のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)向上に貢献します。
さらに、HMAXは今後、データセンターや金融機関など、極めて高い信頼性が求められるミッションクリティカルなシステム領域へも展開を計画しています。
なぜ今、フィジカルAIが重要なのか?
現代の製造業や社会インフラの現場では、慢性的な人手不足や設備の老朽化といった深刻な課題が顕在化しています。これらの課題は、日々の業務効率だけでなく、社会全体の持続可能性にも影響を及ぼしています。
このような状況に対応するため、フィジカルAIが注目されています。従来のAIが主に情報処理やコンテンツ生成に重点を置いていたのに対し、フィジカルAIは現場データをリアルタイムで収集・分析し、その結果を実際の運用に組み込むことで、現実世界で直接的な価値を創出します。具体的には、設備の異常を予知して保全したり、複雑なシステムを最適化したり、あるいはロボットを制御して作業を行ったりする分野で活躍します。
フィジカルAI市場は、2030年までに約1247.7億米ドル規模に拡大すると予測されており、その重要性はますます高まっています。日立は、長年にわたり鉄道、エネルギー、製造といったミッションクリティカルな分野で培ってきたOT(運用・制御技術)と深いドメインナレッジを強みとし、このフィジカルAI領域に最適なソリューションを提供できる独自のポジションにあります。この日立ならではの次世代AIソリューションが、現実世界の課題解決を強力に推進します。
日立の執行役副社長 兼 デジタルシステム&サービス統括本部長の阿部淳氏は、「HMAXは社会イノベーションを次なるステージへと導く『Lumada 3.0』の中核を成すソリューションであり、全社の知恵と技術を結集することで、これまでにないシナジーを創出していきます。現場のデータを革新的なAIで『知』に変えることで、複雑な社会課題の解決を強力に牽引し、次世代の社会インフラを支える具体的な価値を提供していきます」と述べています。
また、日立の執行役専務 戦略SIBビジネスユニットCEO兼Lumada 3.0戦略推進室長の谷口潤氏は、「HMAXにより、働く人とインフラをエンパワーし、人や社会が秘める可能性を解き放ちたいと考えています。熟練者不足に直面する現場の業務高度化や、再生可能エネルギー導入に不可欠な送配電網の安定運用など、お客さまの最も複雑な課題に革新的な解を提供します」と語り、HMAXが環境・幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現に貢献することへの期待を示しています。
HMAXを支える4つの構成要素
HMAXは、お客さまが現実世界でAIを効果的に活用するための、以下の4つの主要な要素で構築されています。
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デジタル化された資産から収集されるデータ
送配電網、鉄道、製造設備などの物理的なアセットには、センサーや制御・運用システムが組み込まれており、そこから膨大なデータが日々収集されています。HMAXはこれらのデータを統合・活用することで、その力を最大限に引き出す理想的なデータ基盤を形成します。これは、世界中に強固なインストールベース(導入実績)を持つ日立だからこそ実現できる、大きな強みです。 -
業界知見(ドメインナレッジ)
日立は、長年にわたり物理的なシステムや装置の運用・保守に携わってきました。この過程で培われた深い専門知識や判断のロジックをデータに適用することで、それぞれの用途に最適なAI対応モデルが構築されます。単にデータを分析するだけでなく、その分野特有の深い知識と組み合わせることで、より実用的で精度の高いAIソリューションが生まれるのです。 -
先進的なAI技術
HMAXは、データの認識から新たな知見の創出、そして自律的な実行まで、幅広いAI技術を柔軟に活用できるように設計されています。前述のPerception AI、生成AI、Agentic AI、フィジカルAIといった技術が、それぞれの役割に応じて組み合わされ、現実世界の複雑な課題に対応します。 -
強固なパートナーエコシステム
HMAXは、日立単独ではなく、幅広いパートナー企業との協力体制(パートナーエコシステム)を活用して構築されています。業界をリードする企業から最高水準の技術を結集させることで、現実世界の過酷な環境にも耐え得る、堅牢で信頼性の高いソリューションの実現を目指しています。
HMAXの具体的な活用事例
HMAXはすでに、各分野で具体的な成果を生み出しています。いくつかの事例を見てみましょう。
HMAX Mobility
現在、2,000両以上の列車に導入されているHMAXは、2024年に日立レールによって初めて導入された包括的なデジタルアセットマネジメントソリューションです。列車や信号、周辺の鉄道インフラから得られる膨大な現場データを一つのプラットフォームに統合します。このソリューションは、先進的なAIと分析技術を活用し、資産劣化の兆候の特定、最適な保守タイミングの予測、設備計画の機会の提示など、予測によるインサイトを提供します。これにより、保守コストの最大15%削減、エネルギー消費量の15%削減といった具体的な価値創出が実現されています。
HMAX Energy
HMAX Energyは、先進的なデジタル技術、幅広いドメインナレッジ、そして卓越したサービス品質を組み合わせることで、信頼性が高く効率的なエネルギーインフラを実現します。自動検査、リアルタイム監視、予測分析、バーチャルサポートを組み合わせることで、設備の稼働率と可用性を最大化し、設備の寿命延長やオペレーションの最適化に貢献します。
具体的な事例として、イタリアの再生可能エネルギー事業者ERG社では、デジタルサービスの提供により現場検査時間を35%削減し、予期せぬ停止日数の低減を実現しました。また、ドイツ・スウェーデン間の送電事業者Baltic Cable AB社では、高圧直流送電(HVDC)向けデジタルツインの導入により、インシデント対応時間を90%削減するなど、運用の効率化と安定稼働に貢献しています。
HMAX Industry
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HMAX for Buildings: ビルのオペレーション・メンテナンス効率やエネルギー効率の向上だけでなく、居住者・オフィスワーカー・来訪者のウェルビーイング向上にも寄与します。2025年からは、入退室管理や空調制御をはじめとする安全・安心・快適な環境を支えるデジタルサービスが“as a Service”として提供されており、最適なビル環境の実現とビル価値の持続的な向上に貢献しています。
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HMAX for Factories: 工場の設備故障診断を支援するAIエージェントとして、2025年4月からダイキン工業株式会社と実用化に向けた試験運用が開始されました。このAIエージェントは、わずか10秒以内に90%以上の精度で設備故障の原因と対策を回答できることが確認されています。同年12月からは、三菱ケミカル株式会社の化学プラントにおいても、本AIエージェントを活用したトラブルシューティングアシストの共同検証を開始しています。さらに、同年12月より、AIエージェントによる対話形式での産業機器の運用・メンテナンス支援サービスの提供も開始されており、機器の状態に応じた的確な情報を即座に提供し、生産現場を効率化します。
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バッテリー分野やバイオ医薬分野向けにも、バリューチェーン全体にわたるトータルソリューションが提供されています。
CES 2026での発表と今後の展望
日立は、2026年1月6日から9日までラスベガス・コンベンションセンターで開催されるCES 2026に出展し、HMAXを日立ブース(北ホールのブース8529)の中心的な展示として、デモを通じて来場者が体験できるようにしました。また、1月8日にはCES Foundryセッション「Pioneering Industrial AI Technologies for the Physical World」においても、HMAXのビジョンが紹介されました。
日立は、HMAXを通じて、社会インフラの課題解決だけでなく、働く人々のウェルビーイング向上や環境負荷低減にも貢献し、持続可能な社会の実現を目指していくことでしょう。
HMAXに関する詳細情報は、以下のリンクからご覧いただけます。
まとめ
日立が発表したHMAXは、社会インフラが直面する複雑な課題に対し、深いドメインナレッジと最先端のAI技術を融合させることで、これまでにない革新的な解決策を提供するソリューション群です。モビリティ、エネルギー、産業といった多岐にわたる分野で、すでに具体的な成果を生み出しており、今後さらにデータセンターや金融機関など、その適用範囲を広げていくことが期待されます。フィジカルAIの力で、私たちの社会はきっと、より安全で、効率的で、持続可能な未来へと進化していくことでしょう。HMAXは、その未来を牽引する重要な存在となるに違いありません。

