ABC株式会社、Tenstorrent社製AIアクセラレータ「Blackhole」「Wormhole」の国内販売を開始
2026年1月26日、ABC株式会社は、AI技術の最前線を走るTenstorrent社製のAIアクセラレータチップ「Blackhole(ブラックホール)」および「Wormhole(ワームホール)」の日本国内向け販売を正式に開始しました。この発表は、AIの推論処理や画像認識(ビジョン処理)といった分野で、国内のAIサービス事業者の技術基盤を大きく強化する可能性を秘めています。これらの最新鋭チップは、高速な処理能力と低い遅延(レイテンシー)を両立させ、AI技術のさらなる進化を後押しするでしょう。
AIアクセラレータとは、人工知能(AI)の計算処理を高速化するために特別に設計された半導体チップのことです。一般的なCPU(中央演算処理装置)が様々な種類の計算をこなす汎用的なプロセッサであるのに対し、AIアクセラレータは、AIが特に多く利用する行列計算などの特定の計算を効率的に行うことに特化しています。これにより、AIモデルの学習(トレーニング)や、学習済みモデルを使って予測や判断を行う推論(インファレンス)といった処理を劇的に速くすることが可能になります。特に、Tenstorrent社の製品は、AI推論とビジョン処理に最適化されている点が大きな特徴です。

Tenstorrent社製AIアクセラレータ「Wormhole」の全貌
「Wormhole」は、Tenstorrent社が開発した現行世代のAI推論プロセッサであり、その高性能は多くのAIサービス事業者にとって魅力的な選択肢となるでしょう。このチップは、単一のパッケージ内に以下の主要な機能を統合しています。
-
Tensixコア: 72基のTensixコアを搭載。このコアは、AIの計算処理を効率的に実行するために最適化された演算ユニットです。
-
オンチップSRAM: 108MBの高速なオンチップSRAM(Static Random Access Memory)を内蔵。SRAMはDRAMよりも高速にデータにアクセスできるため、AI処理におけるボトルネックを解消し、演算性能を最大限に引き出すのに役立ちます。
-
GDDR6メモリ: 12GBのGDDR6メモリを搭載。これはグラフィックス処理ユニット(GPU)などで広く使われている高速な外部メモリで、大量のAIモデルデータや推論データを効率的に処理するために不可欠です。
-
演算性能: FP8(8ビット浮動小数点数)精度において、驚異的な262TFLOPS(テラフロップス)の演算性能を発揮します。TFLOPSとは1秒間に1兆回の浮動小数点演算ができることを示す単位で、この数値が大きいほど、より複雑で大規模なAI計算を高速に実行できることを意味します。
製品構成としては、単一チップを搭載した「Wormhole n150」と、デュアルチップを搭載した「Wormhole n300」の2種類が提供されます。「Wormhole n300」では、合計128コアと24GBのメモリ、そして約466TFLOPSというさらに高い処理能力を実現しています。価格帯は1,099ドルから1,449ドルとなっており、その性能を考慮すると非常に競争力のある価格設定と言えるでしょう。
次世代モデル「Blackhole」:さらなる性能向上
「Blackhole」は、「Wormhole」の後継となる次世代AIアクセラレータモデルであり、さらなる性能向上と効率化が図られています。この次世代チップは、AI推論処理の限界を押し広げることを目指して開発されました。
-
コア数: 1チップあたり120コア(アーキテクチャ上は最大140コア)を搭載。より多くの並列処理が可能になり、複雑なAIモデルの推論を高速化します。
-
GDDR6メモリ: 28GBまたは32GBのGDDR6メモリを搭載。より大きなAIモデルや、多数のモデルを同時にメモリに保持できるようになり、推論の効率と柔軟性が向上します。
-
提供形態: PCIeカード(p100a, p150a/b)として提供されます。PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)は、コンピューター内部で高速なデータ転送を行うためのインターフェース規格であり、既存のサーバーシステムへの導入が容易になります。
-
演算性能: FP8精度における演算性能は最大664TFLOPSに達します。これは「Wormhole」を大きく上回る数値であり、特に要求の厳しいAIアプリケーションにおいてその威力を発揮するでしょう。
「Blackhole」の価格帯は999ドルから1,399ドルと、「Wormhole」と比較しても同等かそれ以下の価格で提供されるモデルもあり、性能向上にもかかわらず優れたコストパフォーマンスを実現しています。
共通の特長と柔軟なスケーラビリティ
「Blackhole」と「Wormhole」の両製品には、共通して非常に重要な特長があります。それは、複数カード間をQSFP-DD(Quad Small Form-factor Pluggable Double Density)による高速インターコネクトで直接接続できる構造です。QSFP-DDは、データセンターなどで利用される高速光トランシーバーの規格であり、非常に高い帯域幅を提供します。
この高速インターコネクト機能により、複数のAIアクセラレータカードを物理的に統合し、演算性能やメモリ容量を柔軟にスケールアウト(拡張)することが可能です。例えば、最初は小規模な構成で導入し、AIサービスの規模拡大に合わせてカードを追加することで、システム全体の処理能力を段階的に強化できます。これにより、初期投資を抑えつつ、将来的な需要増加にも対応できる柔軟なAIインフラを構築することが可能になります。
ABC株式会社による充実したサポート体制
ABC株式会社は、単にハードウェアを販売するだけでなく、顧客が「Blackhole」や「Wormhole」を最大限に活用できるよう、充実した技術サポートを提供します。このサポートは、Tenstorrent社の公式サポート範囲を超えた、きめ細やかな内容となっています。
-
ファームウェアの微調整と動作環境の最適化支援: AIアクセラレータが最高の性能を発揮できるよう、ファームウェアの細かな設定や、お客様のシステム環境に合わせた最適な動作設定について支援を行います。これにより、導入後のパフォーマンスを最大化し、安定稼働をサポートします。
-
国内向け技術ドキュメントの整備: 海外製品にありがちな技術情報の不足を補うため、国内のお客様が理解しやすいように技術ドキュメントを整備します。これにより、導入から運用までのハードルが低減され、スムーズな活用が促進されます。
さらに、ABC株式会社は、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書」の取得支援サービスも提供します。この証明書は、本チップを設備投資として導入する際に、税制上の優遇措置(例えば、即時償却や税額控除)を受けるために必要となるものです。ABC株式会社は、申請に必要な書類準備や手続きについてサポートを行うことで、お客様の設備投資を経済的にも支援します。ただし、設備を自社で直接活用しないケース(例:レンタル事業者による導入)は同税制の対象外となるため、その場合の証明書取得支援は行われない点に注意が必要です。
「Blackhole」「Wormhole」導入の大きなメリット
ABC株式会社が提供する「Blackhole」と「Wormhole」を導入することで、ユーザー企業には以下のような多岐にわたるメリットが期待されます。
1. 高いコストパフォーマンス
「Blackhole」や「Wormhole」は、他のハイエンドAIアクセラレータと比較して、非常に優れた価格対性能比を持っています。例えば、「Blackhole」は最大664TFLOPS、「Wormhole」は最大466TFLOPSという高い処理能力を持ちながら、PCIeカードの価格は1,000ドル台前半に抑えられています。これは、特にスタンドアロン環境や小規模なクラスタ用途において、初期導入コストを大幅に削減できることを意味します。高性能なAI処理能力を手頃な価格で手に入れられるため、AIサービスの開発・運用にかかる総コストを最適化できるでしょう。
2. 柔軟なスケーラビリティ
両製品は、前述のQSFP-DDによる高速通信に対応しており、複数のカードを直接相互接続することで、処理能力とメモリ容量を線形に拡張できます。これにより、AIサービスの規模や処理負荷の変化に柔軟に対応できるインフラを構築可能です。例えば、最初は数枚のカードで運用を開始し、事業の成長に合わせてカードを追加していくことで、システムを止めずに段階的に性能を向上させることができます。また、「Blackhole」や「Wormhole」のコア構造は、1枚のカード内で複数のAIモデルを並列に推論することも可能にしており、リソースの有効活用に貢献します。
3. 大規模言語モデル(LLM)への対応実績
近年、AI分野で最も注目されている技術の一つに大規模言語モデル(LLM)があります。ChatGPTに代表されるLLMは、テキスト生成、翻訳、要約、対話など、多岐にわたるタスクで高い能力を発揮しますが、その計算負荷は非常に高いです。「Wormhole」および「Blackhole」は、このLLMの同時実行に対応しており、実際に70B(700億パラメータ)モデルの複数同時推論を行った事例も存在します。これにより、複数ユーザーからの同時リクエスト処理や、複数の異なるLLMを組み合わせて提供するマルチタスクAIサービスへの応用が可能となり、LLMを活用したビジネス展開を強力に後押しします。
4. オープンなソフトウェアスタック
本製品は、Tenstorrent社が提供するオープンソースソフトウェアスタック(TT-Buda、TT-Metaliumなど)に対応しています。これにより、AI開発者が広く利用しているPyTorchやONNXといったフレームワークで開発されたAIモデルを、これらのアクセラレータ上で実行することが可能です。オープンソースのソフトウェアスタックは、開発の柔軟性を高め、特定のベンダーに依存しないエコシステムを構築する上で重要な要素です。ただし、ソフトウェアは現在も開発途上であり、継続的な改善が行われている段階であるため、今後の進化にも期待が寄せられます。
今後の展望
ABC株式会社は、今回提供を開始する「Blackhole」と「Wormhole」を含む製品群を通じて、日本国内におけるAIインフラストラクチャの高度化と普及促進に一層貢献していく方針です。今後も、Tenstorrent社の次世代チップの国内導入を視野に入れ、製品ラインナップのさらなる拡充を図る計画です。
また、ABC株式会社がこれまで培ってきたAI・クラウド分野でのソフトウェア開発ノウハウを最大限に活用し、最先端のAIハードウェアとソフトウェアソリューションを融合させることで、お客様のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に支援し、企業の競争力強化に寄与することを目指します。AI技術の進化が加速する中で、ABC株式会社の取り組みは、日本の産業界全体のAI活用を推進する上で重要な役割を果たすことでしょう。
お問い合わせ先
本製品に関する詳細情報や導入のご相談は、以下のABC株式会社のウェブサイトよりお問い合わせください。

