AIと脳科学が融合する未来:アラヤ濱田氏が語るフロンティア領域
2026年1月29日(木)に開催される一般財団法人マイクロマシンセンター主催のSSN研究会公開シンポジウム「マイクロナノが支えるフロンティア領域」に、株式会社アラヤのNeuroAI事業部 ペルソナチームリーダーである濱田太陽氏が登壇します。
このシンポジウムでは、2040年以降の新たな産業創出を見据えた「フロンティア領域」に焦点を当て、AIとニューロテック(神経科学技術)を融合させた研究開発が進む中で、特に注目されるブレイン・マシン・インタフェース(BMI)とデジタルツイン神経科学の最新動向と産業応用について解説されます。
生成AIの発展が加速させる人と機械、脳とネットワークの融合時代において、これらの先端技術がどのようなビジネスチャンスを生み出し、社会に実用化されていくのか、その道筋が示される予定です。

脳と機械をつなぐ「ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」とは?
ブレイン・マシン・インタフェース、略してBMIは、「Brain-Machine Interface」の頭文字を取った言葉で、日本語では「脳と機械のインターフェース」と訳されます。これは、私たちの脳の活動を直接読み取り、その情報をコンピュータやロボットなどの外部機器に伝達することで、機械を意図通りに操作したり、逆に機械からの情報を脳に伝えたりする画期的な技術です。
BMIの基本的な仕組み
BMIを実現するためには、脳の電気信号を検知する必要があります。主な方法として、以下の2種類があります。
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脳波の測定(非侵襲型): 頭皮に電極を装着し、頭の外から脳の電気信号(脳波)を測定する方法です。手術が不要で体への負担が少ないのが特徴です。
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脳への直接的な接続(侵襲型): 脳内に微細な電極を埋め込み、神経細胞の活動をより直接的かつ詳細に捉える方法です。より精度の高い操作が可能ですが、手術が必要となります。
これらの方法で得られた脳の信号は、コンピュータによって解析されます。コンピュータは、特定の思考や意図に対応する脳波のパターンを学習し、認識します。そして、認識されたパターンに基づいて、ロボットアームを動かしたり、画面上のカーソルを操作したりといった命令が機械に送られることで、脳が直接機械をコントロールできるようになります。
BMIで何ができるようになるのか
BMIの技術は、私たちの生活に多岐にわたる変革をもたらす可能性を秘めています。
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身体機能の回復と支援: 脊髄損傷や神経系の疾患などで手足を動かせなくなった方が、自分の脳の信号を使って義手や義足を操作できるようになります。これにより、失われた身体機能を取り戻し、自立した生活を送るための大きな助けとなるでしょう。
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コミュニケーションの革新: 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のように、発話や身体の動きが困難な方が、思考だけで文字入力を行ったり、コンピュータを介して会話したりできるようになります。これは、コミュニケーションに障がいを持つ方々にとって、新たな「声」や「表現手段」を提供することになります。
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エンターテイメント体験の向上: 脳波を使ってゲームのキャラクターを操作したり、VR(仮想現実)空間をより直感的に体験したりと、これまでにない没入感のあるエンターテイメントが生まれる可能性があります。
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産業応用と作業効率化: 集中力や疲労度を脳波から検知し、作業現場での効率向上や安全管理に役立てる研究も進んでいます。例えば、危険な作業を行う前に集中力の低下を警告したり、最適な作業タイミングを提案したりすることが考えられます。
生成AIがBMIにもたらす進化
生成AIは、BMIの精度と応用範囲を飛躍的に広げる鍵となります。生成AIは、複雑で多様な脳信号のパターンを効率的に学習し、より高精度で多様な機械操作を可能にするでしょう。例えば、漠然とした「何かを掴みたい」という思考から、ロボットアームが最適な動きを「生成」したり、個人の脳活動パターンに合わせて最適なインターフェースを自動で「調整」したりすることが期待されます。これにより、BMIはより直感的で、個人のニーズに合わせたパーソナライズされた技術へと進化していくと考えられます。
脳をデジタル空間に再現する「デジタルツイン神経科学」とは?
「デジタルツイン」という言葉は、現実世界にある物理的なモノやプロセスを、仮想空間(デジタル空間)にそっくりそのまま再現する技術を指します。例えば、工場や都市計画、製品開発などで活用されており、現実の状況をシミュレーションしたり、未来を予測したりするために使われます。この「デジタルツイン」の概念を「脳」に応用したのが「デジタルツイン神経科学」です。
デジタルツイン神経科学の概念
デジタルツイン神経科学では、個人の脳の構造、神経細胞の活動パターン、思考プロセスなどの膨大なデータを収集し、仮想空間にその人の「脳のデジタルコピー」を作り出します。これは、まるで一人ひとりの脳の「分身」をデジタル世界に持つようなイメージです。
この脳のデジタルツイン上で、現実の脳では倫理的・技術的に難しい様々な実験やシミュレーションを行うことが可能になります。例えば、新しい薬が脳にどのような影響を与えるかを仮想的に試したり、特定の刺激が脳機能にどう作用するかを予測したりすることができます。
デジタルツイン神経科学がもたらす革新
この技術は、特に医療や科学研究の分野で、これまでにない大きな変革をもたらすと期待されています。
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個別化医療の進展: 患者一人ひとりの脳のデジタルツインを基に、その人に最適な治療法や薬剤の組み合わせを開発・選択できるようになります。副作用のリスクを事前に予測し、より効果的な個別化医療の実現に貢献するでしょう。
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脳疾患の早期発見と治療: アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病などの脳疾患の発症メカニズムをデジタルツイン上で詳細にシミュレーションすることで、病気の進行を予測し、早期発見や新たな治療法の開発につながります。
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認知機能の向上と学習最適化: 学習や記憶のメカニズムをデジタルツイン上で深く理解することで、教育方法やトレーニングプログラムを最適化し、個人の認知能力を最大限に引き出す方法を見つけることができるかもしれません。
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AI開発の加速: 人間の脳の働きをデジタルツインで高精度に再現することで、より人間らしい思考や学習能力を持つ、次世代のAI(人工知能)の開発を加速させることが期待されます。
生成AIがデジタルツイン神経科学にもたらす進化
生成AIは、デジタルツイン神経科学の発展に不可欠な要素です。膨大な神経科学データ(MRI画像、脳波データ、遺伝情報など)から複雑な脳のモデルを構築し、デジタルツインの精度を飛躍的に向上させることができます。さらに、生成AIはデジタルツイン上で様々なシナリオを「生成」し、未知の脳機能を発見したり、新しい治療法の仮説を効率的に検証したりする役割を担うでしょう。これにより、研究者はより迅速に、より多くの可能性を探ることが可能になります。
生成AIが加速させる人と機械、脳とネットワークの融合
近年目覚ましい進化を遂げている生成AIは、従来のAIでは難しかった「新しいものを生み出す」能力を持っています。この能力が、ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)やデジタルツイン神経科学といった分野に、これまでにない大きな変革をもたらしています。
新たな情報基盤の構築
生成AIは、脳活動データや神経科学の膨大な知見を学習し、人と機械がより自然に、そして高度に連携できる「新たな情報基盤」を構築する力を持っています。これにより、私たちの脳とコンピュータが直接対話し、情報をやり取りするような未来が、SFの世界から現実のものへと着実に近づいています。
パーソナライズされたインタフェースの実現
生成AIは、個人の脳の特性や意図をより深く理解し、その人に最適化されたBMIを自動で生成・調整することが可能になります。例えば、ある人が特定の思考をしたときに、その人の脳波パターンに合わせて最適なロボットの動きを「生成」したり、操作の難易度を自動で調整したりするようなことです。これにより、より直感的でストレスの少ない操作が実現し、誰もが容易にBMIを活用できるようになるでしょう。
複雑な脳機能の解明
デジタルツイン神経科学の領域では、生成AIが膨大なシミュレーションを繰り返し、これまで未知だった脳の複雑な機能や、疾患のメカニズムに関する新たな仮説を「生成」することができます。これは、脳科学研究のブレークスルーにつながり、これまで解き明かせなかった脳の謎に迫る大きな一歩となります。
倫理的・社会的課題への対応
高度な融合技術の発展には、プライバシー保護や倫理的な側面に関する議論も不可欠です。生成AIは、これらの課題解決に向けたシミュレーションを行ったり、社会的な合意形成を支援するツールとしても活用される可能性があります。例えば、ある技術が社会に導入された場合に起こりうる倫理的な問題を予測し、対策を検討する材料を「生成」するといった役割です。
このように、生成AIはBMIやデジタルツイン神経科学の技術をさらに発展させ、人と機械、脳とネットワークがシームレスに融合する未来社会の実現を加速させています。
BMI・デジタルツイン神経科学が拓く産業応用とビジネスの可能性
これらのフロンティア技術は、単なる研究段階にとどまらず、すでに様々な分野での産業応用やビジネス展開の可能性が指摘されており、新たな市場を創造する原動力となることが期待されています。
ヘルスケア・医療分野
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リハビリテーションの革新: 脳卒中後のリハビリにおいて、脳活動を検知してロボットを動かし、麻痺した手足の運動機能回復を支援するシステムが開発されています。患者は「動かしたい」という意思を脳波で伝え、ロボットがその動きをサポートすることで、リハビリの効果を最大限に引き出すことができます。
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精神疾患の診断・治療: デジタルツインを用いて、うつ病や認知症などの精神・神経疾患の発症メカニズムを詳細に解明し、早期診断や個別化された治療法の開発が進められています。患者一人ひとりの脳の状態に合わせた最適な治療計画を立てることが可能になるでしょう。
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創薬プロセスの効率化: 新しい薬剤候補が脳にどのような影響を与えるか、副作用がないかを脳のデジタルツイン上でシミュレーションすることで、動物実験や臨床試験の負担を軽減し、創薬期間とコストを大幅に削減できる可能性があります。
エンターテイメント・コミュニケーション分野
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没入型体験の進化: 脳波で操作するVR/AR(仮想現実/拡張現実)コンテンツや、思考でゲームのキャラクターを動かすゲームなど、より深い没入感と直感的な操作を提供するエンターテイメントが生まれるでしょう。ユーザーはコントローラーなしに、自分の意思だけで仮想世界を体験できるようになります。
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ハンズフリー操作と新たなコミュニケーション: スマートフォンやPCを思考だけで操作できるようになり、キーボードやマウスを使わない新たなコミュニケーション手段が確立される可能性があります。これは、身体的な制約がある人々だけでなく、すべての人々にとって利便性を向上させるでしょう。
労働・教育分野
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集中力向上と生産性アップ: 脳波センサーで個人の集中度や疲労度をリアルタイムで可視化し、最適な休憩タイミングを提案したり、学習内容や作業環境を調整したりすることで、学習効率や作業生産性の向上に役立てる研究が進んでいます。
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スキル習得支援: デジタルツインを用いて、特定のスキルの習得プロセスを最適化し、個人に合わせた効率的なトレーニングプログラムを開発することができます。例えば、スポーツ選手のパフォーマンス向上や、外科医の手術トレーニングなどに応用されるでしょう。
セキュリティ・防衛分野
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意思決定支援システムの開発: 複雑な状況下での人間の意思決定プロセスを脳活動から分析し、AIが最適な情報を提示して意思決定を支援するシステムが検討されています。これにより、ヒューマンエラーのリスクを低減し、より迅速かつ正確な判断が可能になるかもしれません。
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ヒューマンエラー防止: 疲労やストレスによる認知機能の低下をリアルタイムで検知し、危険な状況になる前に警告を発したり、システムが介入したりすることで、事故を未然に防ぐシステムへの応用も期待されています。
これらの応用は、社会に大きな経済的インパクトと、人々の生活の質の向上をもたらすことが期待されており、フロンティア技術が新たなビジネスチャンスを次々と生み出すことでしょう。
シンポジウム登壇詳細:アラヤ濱田氏が解説する未来
今回、株式会社アラヤの濱田太陽氏が登壇するシンポジウムは、AIとニューロテックの最前線を学ぶ貴重な機会です。講演の詳細は以下の通りです。
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登壇タイトル: AIとニューロテックの融合によるブレイン・マシーン・インタフェースとデジタルツイン神経科学
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講演内容: 生成AIの発展により人と機械、脳とネットワークが融合する新たな情報基盤が生まれつつある中で、ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)とデジタルツイン神経科学がもたらすインパクトとその課題について紹介します。
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講演時間(予定): 2026年1月29日(木) 14:45 – 15:30
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会場: 東京ビッグサイト会議棟(102会議室)
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登壇者:
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濱田 太陽 Ph.D.
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NeuroAI事業部 ペルソナチームリーダー 神経科学者(博士)
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沖縄科学技術大学院大学(OIST)科学技術研究科博士課程を修了。2022年からは、Moonshot R&Dプログラム (目標9)「逆境の中でも前向きに生きられる社会の実現」(山田PMグループ)のPI(主任研究者)として、前向きな状態に関するモデル化に取り組んでいます。彼の研究テーマは、好奇心の神経計算メカニズムの解明や、大規模言語モデル(LLM)によるデジタルツイン、そしてAIの神経科学といった多岐にわたります。
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この講演は無料で参加できますが、事前登録が必要です。ご興味のある方は、以下のリンクよりお申し込みください。
「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026」開催概要
濱田氏の講演は、「MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026」の一環として開催されます。この展示会は、最先端の技術が集まる大規模なイベントです。
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名 称: MEMSセンシング&ネットワークシステム展2026
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開催日時・場所: 2026年1月28日(水)- 1月30日(金) 東京ビッグサイト西2ホール&会議棟
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公式 WEB サイト:
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入場料: 無料(事前来場登録制)
この展示会では、最先端のMEMS(微小電気機械システム)技術やセンシング技術が一堂に会し、関連する多くの企業や研究機関が集まります。フロンティア技術の現状と未来に触れる絶好の機会となるでしょう。
株式会社アラヤとは?AIとニューロテックで未来を創造するディープテック企業
今回のシンポジウムに登壇する濱田氏が所属する株式会社アラヤは、認知神経科学の研究者である金井良太氏が率いる、AIとニューロテックをコア技術とするディープテック企業です。
同社は、製造業、ヘルスケア、建設、アカデミック・リサーチといった幅広い分野において、AIアルゴリズム開発、エッジAI実装、生成AIを活用した先進的なソリューションやDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を推進しています。
また、ニューロテック領域での高度な研究開発支援も提供しており、脳科学とAIの融合を通じて、皆様から信頼されるソリューションパートナーであり続けることを目指しています。株式会社アラヤは、先端技術で社会の様々な課題解決に貢献し、未来を創造する役割を担っています。
まとめ:AIと脳科学が織りなす新たな社会の幕開け
ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)とデジタルツイン神経科学は、生成AIの目覚ましい進化と相まって、私たちの想像を超えるような未来社会を築きつつあります。身体機能の回復から、個別化された医療、そして新たなコミュニケーション手段の確立まで、その可能性は無限大です。
今回のシンポジウムは、これらの最先端技術がどのように発展し、私たちの生活や産業にどのような影響を与えるのかを深く理解する絶好の機会となるでしょう。AIや脳科学に関心のある方はもちろん、未来のビジネスチャンスを探している方にとっても、濱田氏の講演はきっと多くの示唆を与えてくれるはずです。
フロンティア技術がもたらす新産業創出の波に乗り遅れないよう、ぜひこの機会に最新の知見に触れてみてください。

