【Godotで産業革新】3D-LiDAR点群シミュレータが大型産業機械の安全性と効率を飛躍的に向上!AI初心者でもわかる技術解説

Godotゲームエンジンが産業を変える!3D-LiDAR点群シミュレータで開発効率を劇的に改善

大型産業機械の安全性と効率性は、常に重要な課題です。これらの機械の開発には、実機を用いた検証が不可欠でしたが、その準備には多くの時間とコストがかかっていました。しかし、このたび株式会社タダノインフラソリューションズが、イーソル株式会社(以下、eSOL社)と共同で、画期的なシミュレーション技術を開発しました。それが、オープンソースゲームエンジン「Godot」を用いた3D-LiDAR点群シミュレータです。

この新しいシミュレータは、従来の開発プロセスに大きな変革をもたらし、AIやシミュレーション技術に馴染みのない方でもその重要性を理解できるよう、詳しく解説していきます。

3Dモデルのクレーンが建設現場で作業している様子

従来の開発課題とシミュレータが解決する未来

大型産業機械、例えばクレーンなどの開発では、製品の実機構造や、それが稼働する周囲の環境を細かく再現したシミュレーション技術が非常に重要です。特に、機械の「目」となる3D-LiDAR(スリーディーライダー)センサーの検証は、その性能を最大限に引き出すために欠かせません。

しかし、これまでの3D-LiDARセンサーの検証は、現実空間で実機を使って行う必要がありました。これには、実際に機械を準備したり、広大な計測場所を確保したり、関係者と綿密な日程調整をしたりと、多くの手間と時間がかかっていたのです。この非効率なプロセスが、開発期間の長期化やコスト増加の要因となっていました。

今回開発されたシミュレータは、これらの課題を一挙に解決します。実機を準備することなく、仮想空間で3D-LiDARセンサーの挙動を検証し、運転支援機能の検討や初期開発を迅速に進めることが可能になります。これは、開発サイクルを劇的に短縮し、より安全で効率的な大型産業機械を市場に投入するための大きな一歩と言えるでしょう。

仮想環境一体型センシング及び制御シミュレータ(VECS)とは?

株式会社タダノインフラソリューションズは、長年にわたり、仮想環境で実機と同じようにセンサーが情報を取得し、その情報に基づいて機械が制御される、という一連の動作を再現する技術開発に取り組んできました。この取り組みを「仮想環境一体型センシング及び制御シミュレータ(VECS:Virtual-Environment-based machine Control simulator with virtual Sensors)」と定義しています。

VECSの核となるのは、「仮想環境」と「センシング・制御処理の連動」です。具体的には、コンピューター上に構築された仮想の空間(デジタルツインのようなもの)に、実際の機械の構造やその周囲の環境を忠実に再現します。そして、この仮想環境内で、実際のセンサー(今回であれば3D-LiDAR)がどのようにデータを取得するかをシミュレートし、そのデータに基づいて機械がどのように動くかを制御する処理を組み込みます。

これにより、センサーが仮想環境から情報を得て、その情報をもとに機械が仮想的に動作するという「閉ループ(フィードバック)」が仮想空間内で完結します。まるで現実世界で機械が動いているかのように、センシングと制御が一体となった動作を仮想空間で再現できるため、開発者は実機を使わずに様々な検証を行うことができるのです。

このVECSの概念は、大型産業機械の設計・開発において、安全性や効率性を向上させるための重要な基盤となります。例えば、クレーンが荷物を吊り上げる際の周囲の障害物検知や、自動運転機能のテストなど、多岐にわたる応用が期待されています。

Godotゲームエンジンが産業活用の鍵を握る

本シミュレータの開発において中心的な役割を果たしているのが、ゲームエンジン「Godot(ゴドー)」です。Godotは2014年に一般公開された、2D/3Dのオープンソースゲームエンジンです。オープンソースであるため、誰でも自由に利用でき、必要に応じてプログラムをカスタマイズしたり、新しい機能を追加したりできるという大きなメリットがあります。

黒い背景に虹色のグラデーションで描かれた点群データ

Godotの主な特徴は以下の通りです。

  • 柔軟なカスタマイズと機能拡張性: オープンソースなので、開発者は自由にコードを修正したり、独自の機能を追加したりできます。これにより、特定の産業用途に合わせた細かな調整が可能です。

  • 軽量で高速な動作: 複雑な処理を必要とする産業シミュレーションにおいても、Godotはスムーズかつ高速に動作します。これにより、リアルタイムに近い検証が可能となります。

  • 低コストでの実装: 商用ゲームエンジンに比べてライセンス費用がかからないため、開発コストを大幅に削減できます。これは、特に予算が限られる中小企業や、新しい技術を試験的に導入したい企業にとって大きな魅力です。

  • 高度なビジュアル表現: ゲームエンジンならではの優れたグラフィック性能により、シミュレーション環境を非常にリアルに再現できます。これにより、視覚的に分かりやすい検証や、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)※3などの開発において、高品質なユーザー体験を提供できます。

これらの特徴により、Godotはゲーム開発だけでなく、シミュレータやHMIといった産業領域での活用が注目されています。高度なビジュアル表現が求められる場面で、柔軟かつ迅速に、そして低コストでソリューションを実現できる点が、産業界での導入を加速させています。

3D-LiDAR点群シミュレータの具体的な機能とメリット

今回開発されたシミュレータでは、仮想空間上に現実の3D-LiDARセンサーと同じ仕様のセンサーモデルと、検証したい構造物(例えば、建物の骨組みや地面の起伏など)を配置します。これにより、設置した3D-LiDARセンサーがどのような点群データ(※1)を検知するのかを仮想的に取得できます。

クレーンのシミュレーション画面が表示されたディスプレイと開発中のオフィス風景

この機能により、開発者は以下のようなメリットを享受できます。

  • 実機不要の検証: 従来のように実機を準備しなくても、仮想環境内で3D-LiDARセンサーの挙動を詳細に検証できます。これは、時間とコストの大幅な削減につながります。

  • 迅速な仕様検討と初期開発: 実機検証の待ち時間が発生しないため、運転支援機能に関する仕様の検討や、初期段階での開発をスピーディーに進めることが可能です。

  • 多様なシナリオの再現: 仮想環境なので、現実では再現が難しいような危険な状況や、特定の環境条件(悪天候、夜間など)も簡単に設定し、シミュレーションできます。これにより、より網羅的な検証が可能となり、製品の安全性と信頼性が向上します。

  • 問題点の早期発見: 仮想空間で様々なテストを行うことで、設計段階での問題点を早期に発見し、修正することができます。手戻りが減り、開発全体の効率化に貢献します。

Godotの産業活用を推進する三社連携の力

今回の取り組みは、株式会社タダノインフラソリューションズ、eSOL社、そして株式会社フレームシンセシス(以下、フレームシンセシス社)の三社が締結した基本合意書(MOU)に基づいて進められています。このMOUは、国内産業分野におけるGodotの活用促進を目的としています。

各社の役割は以下の通りです。

  • 株式会社タダノインフラソリューションズ: 大型産業機械の開発およびシミュレーション技術の活用を推進。

  • イーソル株式会社: 産業領域向けのソフトウェア開発に強みを持つ。

  • 株式会社フレームシンセシス: XR(クロスリアリティ)やインタラクティブコンテンツのシステム開発を手がける。

この三社が連携することで、Godotの持つ可能性を最大限に引き出し、産業領域における技術課題の解決や品質向上に貢献することを目指しています。それぞれの専門知識と技術を持ち寄ることで、単独では成し得ない革新的なソリューションが生まれることが期待されます。

今後の展望と期待される効果

今後、このシミュレータで取得された点群データと、現実空間で3D-LiDAR実機を用いて計測されたデータとの整合性検証が進められる予定です。これにより、シミュレーションの精度がさらに向上し、より実機挙動に即した高度なシミュレーション技術の実現が目指されます。

株式会社タダノインフラソリューションズは、eSOL社およびフレームシンセシス社と連携を継続し、Godotの産業活用をさらに推進していくとのことです。仮想環境を活用したセンシングおよび制御技術の高度化を通じて、大型産業機械の安全な動作とさらなる効率向上に貢献していくでしょう。この技術は、建設現場や物流、製造業など、多岐にわたる産業分野において、作業の安全性向上、コスト削減、そして生産性向上に大きく寄与することが期待されます。


ウェビナー登壇情報

Godotの産業活用についてさらに詳しく知りたい方のために、ウェビナーが開催されます。

株式会社タダノインフラソリューションズは、eSOL社が主催するウェビナー『「産業×ゲームエンジン」最前線 ~OSSゲームエンジンGodotの可能性と適用事例(モビリティ・建設・産業機器)~』に登壇します。「大型荷役機械におけるGodot産業活用事例 ~人の理解を助けるデジタルツイン~」と題し、Godotの活用事例について紹介される予定です。ゲームエンジンの産業活用にご興味がある方は、ぜひご参加ください。

注記

  • ※1 3D-LiDAR (Light Detection and Ranging): レーザー光を対象物に照射し、その反射光が戻ってくるまでの時間を計測することで、対象物までの正確な距離を測るセンサー機器です。これにより、周囲の地形や構造物の三次元形状を「点群データ」と呼ばれる無数の点の集まりとして検出します。自動運転やロボットの目として活用されています。

  • ※2 2025 年2 月18 日 株式会社IHI プレスリリース「建設現場の安全性と効率性を飛躍的に向上するジブクライミングクレーン向け運転支援システムを開発」: https://www.ihi.co.jp/all_news/2024/industrial_general_machine/1201278_13680.html

  • ※3 HMI (Human Machine Interface): 人間(Human)と機械・装置(Machine)の間で、情報の表示や操作を行うための接点(インターフェース)のことです。タッチパネルやディスプレイ、ボタンなどがこれにあたります。ユーザーが機械を直感的に操作できるように設計されます。

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