オリックス銀行は、AIファースト戦略とクラウドネイティブ戦略の基盤として、Workato Inc.(以下、Workato)が提供するエンタープライズiPaaS「Workato」を採用しました。この導入は、従来の部門やシステムごとに分断されていたデータや業務プロセスを統合し、生成AIやAIエージェントの活用による次世代の業務最適化と自律化、さらには業務部門自身による改善を実現することを目的としています。

オリックス銀行の先進的な取り組み:クラウドネイティブからAIファーストへ
オリックス銀行は、2019年6月から全社的なクラウド化を推進してきました。これは、ITシステムやデータをインターネット経由で利用する「クラウド」を積極的に活用する取り組みです。特に、システム設計や開発、運用をクラウド環境で行うことを前提とする「クラウドネイティブ」な体制を構築し、2025年度末にはクラウド化率95%という高い目標を掲げています。
この堅固なクラウド基盤の上で、オリックス銀行は2024年度から「AIファースト戦略」を展開しています。これは、あらゆる業務やサービスにおいてAIを最優先で活用し、ビジネスの変革を推進する考え方です。2024年11月には、生成AIサービス「ORION」をリリースしました。ORIONは、Amazon Bedrockというクラウドサービスを活用しており、社内規定を参照して回答するAIも自社で開発しています。これらの取り組みにより、コールセンターをはじめとする実際の業務現場でのAI活用が急速に拡大しています。
生成AI「ORION」がもたらす具体的な成果
生成AIサービス「ORION」は、現在、全社員が利用できるWebチャット基盤として社内に定着しています。その効果はすでに数字として現れており、例えばコールセンターでは、通話後に必要となる「交渉履歴作成」の業務を生成AIで自動化しました。この結果、処理時間は47%削減され、対応件数は52%も増加するという顕著な成果を上げています。
この成功をきっかけに、オリックス銀行では営業支援や事務処理業務など、様々な分野でAIと人が協力して業務を進める「ハイブリッド業務モデル」が展開されています。これは、AIが定型的な作業やデータ分析を担い、人がより高度な判断や創造的な業務に集中することで、全体の生産性を向上させる新しい働き方です。
既存の課題:部門間の壁とAI活用ワークフローの限界
オリックス銀行のAIファースト戦略は目覚ましい成果を上げていますが、一方で、従来のシステム構造が新たな課題を生み出していました。各部門が独立して業務を支える複数のシステムを運用していたため、部門間やシステム間でデータを連携させる際には、手作業に頼る部分が多く残っていたのです。これは、情報の共有が遅れたり、入力ミスが発生したりする原因となり、業務効率を低下させる要因となっていました。
さらに、生成AIを活用した新しいワークフローをシステムとして実装するには、多くの開発工数が必要であることが明らかになりました。特定の業務でAIを活用する仕組みを構築しても、それを他の部門や業務に「横展開」することが難しく、全社的なAI活用のスピードを鈍らせる可能性があったのです。このような課題は、データドリブン経営(データに基づいて意思決定を行う経営手法)を推進し、AIの力を最大限に引き出す上で、乗り越えるべき大きな壁となっていました。
解決策としてWorkatoを採用:iPaaSと業務自動化の力
こうした課題を解決するため、オリックス銀行はWorkatoを「業務自動化・データ連携のハブ、AI活用の基盤」として採用しました。
iPaaSとは?AI初心者にも分かりやすく解説
Workatoは「iPaaS(Integration Platform as a Service)」と呼ばれるサービスです。iPaaSとは、インターネット経由で提供されるクラウドサービスの一種で、異なるシステムやアプリケーション、データベースなどを連携させ、業務プロセスを自動化するためのプラットフォームを指します。
例えるなら、iPaaSは、別々の言語を話す人たち(システム)の間に入って、彼らの言葉を翻訳し、スムーズに会話(データ連携)できるようにする通訳のような存在です。これにより、企業は様々なシステムを個別に開発・運用するのではなく、iPaaSを介して効率的に連携させ、全体の業務プロセスを最適化できます。
Workatoが実現するノーコード連携とデータ基盤の強化
Workatoの大きな特長は「ノーコード」で操作できる点です。これは、プログラミングの専門知識がなくても、マウス操作などで簡単にクラウド上の様々なアプリケーションやデータベース、AIツールを統合できることを意味します。特定の条件が満たされた場合に、あらかじめ定めた処理やアクションを自動的に実行する「業務回路」を迅速に実装できる環境が整備されました。
例えば、「顧客からの問い合わせメールが届いたら、自動で顧客情報をCRMシステムから取得し、生成AIで回答文案を作成して担当者に通知する」といった一連のプロセスを、コーディングなしで構築できるようになります。これにより、これまで属人的なスキルに依存していた業務を標準化し、誰でも同じ品質で業務を進められるようになります。
また、Workato上で構築される自動化フローはデータ基盤と連携します。これにより、AI活用に必要な高品質なデータが継続的に蓄積される仕組みが形成されます。AIは質の高いデータがあるほど賢くなりますから、この仕組みは将来的なAIエージェント活用に向けた強固な基盤を確立することにつながります。
Workato導入がもたらす「7つの価値」と未来の銀行業務
Workatoの導入により、オリックス銀行は以下の7つの価値実現を目指しています。これらの価値は、業務の効率化だけでなく、従業員の働き方やビジネスのあり方そのものを変革する可能性を秘めています。
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手作業によるデータ転記・入力作業を排除し、業務時間を削減
システム間のデータ移動や入力作業をWorkatoが自動化することで、従業員は単純な繰り返し作業から解放され、より重要な業務に集中できるようになります。 -
コーディング不要の自動化で開発工期を短縮
ノーコードでの開発が可能になるため、システムの連携や業務自動化の仕組みを、IT部門だけでなく業務部門も主体となって迅速に構築できます。これにより、新しいアイデアをすぐに試すことができるようになり、開発にかかる時間とコストを大幅に削減します。 -
すでに活用中の外部AIツールとの連携を容易に実現
Workatoは様々なAIツールとの連携をサポートしているため、オリックス銀行がすでに導入している生成AI「ORION」やその他のAIサービスとスムーズに連携させ、その価値を最大化できます。 -
データ基盤との連携によりAI活用に必要なデータを即時共有・再利用
Workatoを通じて、各システムに散らばっていたデータがデータ基盤に集約され、AIが分析・学習するための高品質なデータが常に利用可能な状態になります。これにより、AIの精度向上と迅速な意思決定を支援します。 -
エンジニアが「ビジネス貢献」を軸に創造的業務へシフト
定型的なシステム連携や簡単な自動化はWorkatoが担うため、ITエンジニアは、より戦略的なシステム開発や、ビジネスに直接貢献する創造的な業務に時間を割けるようになります。 -
業務部門自らが業務改善を簡単に実現できる環境づくり
ノーコードツールであるWorkatoを活用することで、業務に精通している現場の担当者自身が、プログラミング知識なしに業務プロセスの改善や自動化を試みることが可能になります。これにより、現場のニーズに即したスピーディーな改善が期待できます。 -
「業務をシステム化する」発想から「人物・役割をAIエージェント活用で再現する」発想への転換
この最も重要な価値は、単に既存の業務を自動化するだけでなく、AIエージェントが人間の特定の役割や判断を再現し、自律的に業務を遂行する未来を目指すものです。これにより、銀行業務のあり方そのものが大きく進化すると考えられます。
オリックス銀行が描く未来:AIエージェント・オーケストレーションの推進
オリックス銀行株式会社 執行役員 清水 直彦氏は、Workatoによる自動化基盤の確立と「AIエージェント・オーケストレーション」の推進に大きな期待を寄せています。
「AIエージェント・オーケストレーション」とは、複数のAIエージェントやシステムを連携させ、複雑な業務プロセス全体を自動化・最適化する概念です。これは、単一のAIが特定のタスクを行うだけでなく、異なるAIが協力し合い、まるで人間がチームで働くように、より大規模で複雑な業務を自律的に進めることを意味します。
オリックス銀行は、Workatoを介してデータが循環する組織モデルを実現することで、新しい業務プロセスやAIエージェントの仕組みを試行し、必要なシステムやデータを連携させ、課題や改善点を仮説検証するサイクルを繰り返します。これにより、業務に特化したAIエージェントを育成する発想で継続的な業務変革を目指すとのことです。さらに、WorkatoのEnterprise MCP機能を用いて、社内外のAIモデルやサービスの活用も視野に入れています。
Workato株式会社 執行役員社長 Allan Teng氏は、オリックス銀行のAIファースト戦略とクラウドネイティブ戦略の基盤としてWorkatoが選ばれたことを歓迎し、「Workatoのエージェンティック・オーケストレーション技術は、部門間の分断を超えたデータ連携と業務自動化、そしてAIエージェント活用による次世代の業務最適化を実現します。オリックス銀行様の先進的な取り組みとWorkatoの革新性が融合することで、日本の金融業界に新たな価値と競争力をもたらすと確信しています。」とコメントしています。
まとめ:金融業界の未来を切り拓くデータドリブン経営
オリックス銀行のWorkato導入は、単なるITシステムの導入にとどまらず、AIファースト戦略とクラウドネイティブ戦略を加速させ、データドリブン経営を推進する重要な一歩です。部門間の壁を取り払い、データとAIを最大限に活用することで、業務効率の大幅な向上、新たな価値創造、そして従業員の働き方の変革が期待されます。
この先進的な取り組みは、日本の金融業界におけるデジタルトランスフォーメーションの新たなモデルとなるでしょう。AIと自動化がもたらす未来の銀行業務に、今後も注目が集まります。
Workatoに関する詳細は、以下のリンクから確認できます。

