
日本のAI活用を支える新たな動き:ベクターHDがAIインフラ構築へ
近年、ビジネスや日常生活において「AI(人工知能)」という言葉を耳にしない日はないほど、その活用は急速に広がっています。特に、文章や画像を自動生成する「生成AI」の登場は、社会に大きなインパクトを与えています。しかし、日本企業がAIを安全かつ効率的に導入・運用していくためには、いくつかの大きな課題があります。
具体的には、AIの処理に膨大な電力が必要となることによる「電力制約」、企業の重要な情報をAIに学習させる際の「機密情報の管理」、AIシステムが外部からの攻撃にさらされる「サイバー攻撃のリスク」、そして日本語の複雑さに対応できる「高品質な学習データの不足」などが挙げられます。これらの課題は、一つの企業だけで解決するのが難しく、さまざまな専門技術を持つ企業が協力し合う必要があります。
このような背景の中、株式会社ベクターホールディングス(以下、ベクターHD)は、日本企業が安心してAIを活用できる基盤を整えるため、米国テキサス州に本社を置くCornami, Inc.(以下、Cornami社)と、東京都千代田区に本社を置くアデコ株式会社(以下、アデコ社)との連携を開始しました。この連携は、電力効率が高く安全なAIサーバーの導入と、AIの精度を高めるための高品質なデータ作成(アノテーション)という二つの柱で構成されています。
Cornami社製「次世代型高性能サーバー」が切り開く省電力・高セキュリティAIの世界
AIが高度な処理を行うためには、高性能なコンピューターサーバーが必要です。ベクターHDが導入を検討しているCornami社製のサーバーは、これまでのサーバーとは一線を画す「次世代型」と位置付けられています。
非ノイマン型アーキテクチャとは?
従来のコンピューターの多くは「ノイマン型アーキテクチャ」という仕組みで動いています。これは、データを保存する場所(メモリ)と計算する場所(プロセッサ)が分かれており、データのやり取りに時間がかかるという特徴があります。しかし、Cornami社のサーバーは「非ノイマン型・大規模並列処理・拡張可能アーキテクチャ」という独自の仕組みを採用しています。これは、計算とデータのやり取りをより効率的に行えるように設計されており、AI、特に大規模言語モデル(LLM)のような複雑な処理において、非常に高い性能を発揮するとされています。
プレスリリースでは、このサーバーがNVIDIAH100ベースのサーバーと比較して、「ワットあたり桁違いに高い性能を発揮する」と評価されていることが示されています。これは、同じ量の電力を消費するなら、Cornami社のサーバーの方がはるかに多くのAI処理を行えることを意味します。AIの需要が増大する中で、電力消費を抑えながら高性能を維持できることは、持続可能なAIインフラを構築する上で非常に重要な要素となります。
FHE(完全準同型暗号)技術で実現する究極のデータセキュリティ
AI活用におけるもう一つの大きな懸念が、機密情報の扱いです。特に、医療データや金融情報、公共サービスに関するデータなど、最高レベルの秘密保持が求められる分野では、AIにデータを学習させること自体が難しい場合があります。
そこで注目されるのが、Cornami社製サーバーが兼ね備える「FHE(完全準同型暗号)」技術です。FHEとは、「データを暗号化したまま情報を処理できる」という画期的な技術です。通常、暗号化されたデータは、処理する前に一度復号(暗号を解除)する必要がありますが、FHEを用いると、暗号化された状態のままで計算や分析が可能です。これにより、データが第三者に見られるリスクや、サイバー攻撃によって情報が漏洩するリスクを大幅に低減できます。
このFHE技術によって、これまでセキュリティ上の懸念からAI活用が難しかった医療や金融、公共サービスといった規制の厳しい分野でも、安心してAIを導入し、その恩恵を受けられるようになると期待されています。ベクターHDは、Cornami社と協力して、このサーバーの性能と、日本の事業者環境での適合性について、今後検証を進めていくとのことです。
Cornami, Inc.について
Cornami, Inc.は、米国シリコンバレーに拠点を置く次世代の非ノイマン型アーキテクチャ開発企業です。同社のMxプロセッサは、大規模並列で構成可能なFracTLcore® コンピュート・ファブリック・アーキテクチャをサポートしており、1チップあたり数千コアからシステム全体で数百万コアまで拡張でき、低消費電力でリアルタイム性能を発揮します。Cornamiは、FHE(完全準同型暗号)やAI推論を含む、高度な暗号計算およびリアルタイムAI処理を必要とする分野において、競争優位性を有しています。また、ポスト量子時代のセキュアコンピューティング基盤として世界的に大きな注目を集めており、2024年時点で、大手半導体メーカー派生のVC(SoftBank Vision Fund 2、Applied Ventures, LLC 、Impact Venture Capital)などから複数回にわたる資金調達を行っています。
アデコ社との連携でAIの「質」を高めるデータアノテーション
AIの性能は、学習させるデータの「質」に大きく左右されます。どんなに高性能なAIシステムがあっても、学習データに誤りがあったり、偏りがあったりすると、AIは期待通りの結果を出せません。特に、日本語は表現が多様であり、文化的背景も複雑なため、高品質な学習データを準備することがAI開発において非常に重要となります。

データアノテーションとは?
「アノテーション」とは、AI・機械学習の分野において、分析対象のデータ(画像、音声、テキストなど)に「ラベル」や「タグ」を付与するプロセスを指します。例えば、画像内の犬に「犬」というラベルを付けたり、テキストの文章に「ポジティブ」や「ネガティブ」といった感情のラベルを付けたりする作業です。このアノテーションは、AIがパターンを学習するための「教師」となるため、「教師あり学習」と呼ばれる機械学習の手法で特に重要です。アノテーションの精度が高ければ高いほど、AIの学習精度も向上し、より賢いAIが生まれます。
ベクターHDは、AIの品質向上を目指し、アデコ社とのアノテーション領域での連携を開始しました。アデコ社は、人材サービスにおけるグローバルリーダーであり、長年にわたるアノテーション運用の実績とノウハウを持っています。この連携により、日本語特有の語彙、文体、文化的背景を適切に反映した、高品質な学習データの整備を推進していくとのことです。
さらに、将来的には医療や教育など、専門性の高い分野に特化したアノテーション人材の育成も視野に入れています。これにより、AIサービスの品質向上だけでなく、AI社会を支えるための専門人材の基盤整備にも貢献することを目指しています。
アデコ株式会社について
アデコ株式会社は、世界60の国と地域で事業を展開する人財サービスのグローバルリーダー、The Adecco Groupの日本における主な法人のひとつです。コンサルテーションを通じ、すべての働く人々のキャリア形成を支援すると同時に、人財派遣、人財紹介、アウトソーシングをはじめ、企業の多岐にわたる業務を最適化するソリューションを提供します。アデコ株式会社は、Adecco Group Japanのビジョンである「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」の実現を目指し、さらなるサービスの強化に取り組んでいます。
より詳しい情報は、https://adeccogroup.jpをご覧ください。
日本発のAIインフラ構築へ:信頼性、安全性、持続性が競争軸に
AIはもはや単なる新しい技術ではなく、電気や水道、通信と同じように、社会を支える「インフラ」としての役割を求められるようになっています。このような中で、AIの競争軸は、単なる性能の高さや規模の大きさから、「信頼性」「安全性」「持続性」へと変化しています。
日本は、これらの信頼性、安全性、持続性といった点で、世界的に高い評価を受けています。ベクターHDは、この日本の強みを活かし、AI基盤整備の中核を担う存在となることを目指しています。Cornami社やアデコ社のような各分野の専門性を持つ企業との連携をさらに推進し、電力効率、データ品質、そして安全性を兼ね備えた「日本発のAIインフラ」の構築に継続的に貢献していくとのことです。
株式会社ベクターホールディングスについて

株式会社ベクターホールディングスは、インターネットがまだ普及し始めたばかりの1989年に設立されました。国内最大級のソフトウェアダウンロードサイト「Vector」を運営し、日本のIT文化の発展に貢献してきました。現在は、電子契約サービス「ベクターサイン」やポイントモール「QuickPoint」などを展開する一方で、AIインフラ事業にも積極的に参入しています。人とテクノロジー、そして地域社会と共に進化する社会の実現を目指して活動しています。
会社名:株式会社ベクターホールディングス
所在地:東京都港区
設立:1989年2月3日
代表者:代表取締役社長 轟木 一博
上場市場:東証スタンダード(証券コード:2656)
URL:https://corp.vector.co.jp
AI事業に関するお問い合わせ先:
株式会社ベクターホールディングス AI事業部
TEL:03-6450-1238
e-mail:ai-support@vector.co.jp
URL:https://ai.vector.co.jp/
まとめ
ベクターHDの今回の取り組みは、日本がAI時代を乗り越え、より安全で豊かな社会を築くための重要な一歩と言えるでしょう。Cornami社の革新的な省電力・暗号技術特化型AIサーバーと、アデコ社の専門的なアノテーションノウハウが融合することで、日本企業はAI活用の障壁を乗り越え、新たな価値創造に集中できる環境が整うことになります。今後の検証と連携の進展が、日本のAIインフラをどのように進化させていくのか、大いに注目されます。

