AI進化の舞台裏!マクニカがさくらインターネットの大規模HPCクラスタ「さくらONE」を構築支援
近年、私たちが目にする機会が増えた「生成AI」は、文章作成から画像生成、さらにはプログラミングまで、驚くべき能力を発揮しています。この生成AI技術の急速な発展は、私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらそうとしていますが、その裏側には、膨大な計算能力を持つ高性能なコンピュータシステムが不可欠です。
今回ご紹介するのは、株式会社マクニカ(以下、マクニカ)が、さくらインターネット株式会社(以下、さくらインターネット)が提供する大規模HPCクラスタ「さくらONE」の構築を技術支援したニュースです。このプロジェクトでは、国内で初めてEdgecore Networks Corp.(以下、Edgecore社)製の800GbEホワイトボックススイッチと、オープンソースネットワークOS「エンタープライズSONiC」が採用され、わずか4ヶ月という短期間で最先端のAI開発基盤が立ち上げられました。AIの進化を支えるこの革新的な取り組みについて、AI初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
大規模HPCクラスタ「さくらONE」とは?AI開発を支えるスーパーコンピュータの力
「さくらONE」とは、さくらインターネットが提供する大規模なHPCクラスタの名称です。HPCとは「High Performance Computing(高性能計算)」の略で、非常に複雑で大量の計算を高速で行うためのシステムを指します。一般的には「スーパーコンピュータ(スパコン)」と呼ばれることもあります。特に、AIの分野では、大量のデータを使ってAIモデルを学習させるために、このHPCクラスタが不可欠です。
「さくらONE」は、800基ものGPU(Graphics Processing Unit)を搭載した大規模なシステムで、GPUはAIの学習において非常に効率的な計算処理を可能にする半導体です。このクラスタは、その性能が認められ、スパコンの国際性能ランキング「TOP500」において世界49位(2025年6月発表時点)を獲得するなど、国際的にも高い評価を得ています。これは、日本のAI研究開発を加速させる重要なインフラとなることを示しています。
なぜ今、高性能なHPCクラスタが求められるのか?
生成AI技術の進化は目覚ましく、製造業、医療、金融など、あらゆる産業分野でAIの活用が急速に進んでいます。例えば、新薬開発のためのシミュレーション、製品設計の最適化、金融市場の予測モデル構築、自動運転技術の開発など、AIが担う役割は広がる一方です。これらの高度なAIアプリケーションを開発し、運用するためには、膨大なデータ処理と複雑な計算を瞬時にこなす能力が求められます。そのため、高性能なHPCクラスタの需要はかつてないほど高まっているのです。
「さくらONE」構築の鍵:国内初の最先端オープンネットワーク技術
「さくらONE」の構築において、特に注目すべきは、国内で初めて採用された最先端のオープンネットワーク技術です。マクニカは、このプロジェクトでEdgecore社製の800GbEホワイトボックススイッチと、オープンソースネットワークOS「エンタープライズSONiC」を提供し、技術支援を行いました。
ホワイトボックススイッチとは?そのメリットを解説
ネットワーク機器と聞くと、通常は特定のメーカーが製造・販売する製品を思い浮かべるかもしれません。しかし、「ホワイトボックススイッチ」は、汎用的なハードウェアと、その上で動作するソフトウェア(ネットワークOS)を分離して自由に組み合わせることができるスイッチのことです。例えるなら、スマートフォンが特定のメーカーのハードウェアと、AndroidやiOSといったOSを組み合わせて動いているのと同じイメージです。
ホワイトボックススイッチの主なメリットは以下の通りです。
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コスト削減: 汎用的なハードウェアを使用するため、従来のメーカー製スイッチに比べて導入コストを抑えることができます。
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柔軟性: 特定のメーカーに縛られず、ハードウェアとソフトウェアを自由に選択・組み合わせられるため、システムの要件に合わせて柔軟に構成を変更できます。
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技術革新への対応: オープンな技術であるため、最新の技術トレンドやコミュニティの進化を迅速に取り入れやすいという利点があります。
「さくらONE」の構築では、GPU間の高速通信が求められ、ネットワークのオープン性とマルチテナント(複数の利用者が同時に利用できる)対応が重視されました。その結果、汎用性の高いイーサネットが採用され、マクニカが提供したEdgecore社製の800GbEホワイトボックススイッチ「AIS800-64O」が選ばれました。このスイッチは、800ギガビットイーサネット(800GbE)という超高速な通信速度を実現し、大規模なデータ処理を効率的に行います。

オープンソースネットワークOS「エンタープライズSONiC」の導入
ホワイトボックススイッチの頭脳となるのが、ネットワークOSです。「さくらONE」に導入されたのは、オープンソースネットワークOS「エンタープライズSONiC」です。SONiC(Software for Open Networking in the Cloud)は、マイクロソフトが開発し、現在はオープンソースコミュニティで活発に開発が進められているネットワークOSで、Linuxをベースにしています。
SONiCの最大の特長は、Linuxベースであるため、運用自動化に適している点です。大規模なHPCクラスタでは、ネットワーク機器の管理や設定変更が非常に多く発生します。SONiCを採用することで、これらの作業をプログラミングによって自動化しやすくなり、運用効率の大幅な向上が期待できます。

さくらインターネットは、わずか4ヶ月で800基のGPUによる大規模HPCクラスタを立ち上げるという、非常に挑戦的なプロジェクトを進めていました。この異例の短納期と、要求される高性能かつオープンなネットワーク要件を満たすために、マクニカが提供するEdgecore社製のホワイトボックススイッチとエンタープライズSONiCが採用されたのです。
短期間での構築と安定稼働を実現したマクニカの技術支援
この大規模プロジェクトをわずか4ヶ月で完了し、本番稼働に導くためには、単に製品を提供するだけでなく、高度な技術支援が不可欠でした。マクニカは、Edgecore社と緊密に連携し、以下の多岐にわたる支援を提供しました。
- 導入支援: ホワイトボックススイッチとエンタープライズSONiCのスムーズな導入をサポートしました。
- 性能検証: 実際にシステムを稼働させる前に、期待される性能が発揮されるかを徹底的に検証しました。
- 障害時の切り分け: 万が一のトラブル発生時にも、迅速に原因を特定し、解決するための支援を行いました。
- ロスレスネットワークの実現: AI学習用クラスタでは、データ損失が許されない「ロスレスネットワーク」が必須です。マクニカは、イーサネット(RoCEv2)上でロスレスネットワークを実現するための重要な技術であるPFC(優先フロー制御)とECN(輻輳通知)のパラメータ設定を最適化する構成を提案しました。
- チップレベルでのトラブルシューティング: スイッチ内部に搭載されているBroadcom社製チップ「Tomahawk5」に関する深い知見を活かし、より詳細なレベルでのトラブルシューティングや設定最適化を支援しました。
これらの包括的な技術支援により、マクニカは「さくらONE」の短期間での立ち上げと安定稼働に大きく貢献しました。特に、オープンネットワーク技術は、その自由度が高い反面、導入や運用には専門的な知識と経験が求められます。マクニカのようなパートナーの存在が、このような大規模かつ先進的なプロジェクトを成功に導く上で極めて重要であることがわかります。
AI時代のインフラを支えるマクニカの今後の展望
AIワークロードの急増は、ネットワーク運用にも新たな課題をもたらしています。より高度な監視精度、運用の自動化、そしてネットワーク全体の状況を可視化する「オブザーバビリティ」の強化が求められています。また、次世代の高速ネットワークとして、現在の800GbEをさらに上回る1.6TbE(テラビットイーサネット)への対応も業界全体で重要視されています。
マクニカは、こうしたAI時代のニーズに応えるべく、今後も国内外の先進事例や技術トレンドをいち早く取り入れ、お客様への貢献を目指しています。製品提供にとどまらず、技術検証、構築支援、運用設計まで一貫したサポートを提供することで、オープンネットワーキングのさらなる実用化を後押ししていくとのことです。
マクニカが提唱する「オープンネットワーキング」は、複数のメーカーのホワイトボックススイッチ製品、ネットワークOS、光モジュールなどを組み合わせ、事前に検証済みの構成提案やワンストップのサポート体制を整えることで、お客様が機器間の相性確認や複数窓口対応の手間を省き、導入リスクを最小限に抑えることを可能にします。このアプローチは、コスト、自由度、性能の面で大きな優位性をもたらし、日本のデジタル社会の進化に貢献していくことでしょう。
マクニカのオープンネットワーキングについて、さらに詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
まとめ:AIインフラの未来を拓く技術革新
マクニカによるさくらインターネットの大規模HPCクラスタ「さくらONE」への技術支援は、生成AI時代の到来とともに高まる高性能計算インフラの需要に応える重要な一歩です。国内初の800GbEホワイトボックススイッチとエンタープライズSONiCの採用は、ネットワークのオープン性と柔軟性を高め、AI開発の効率化とコスト削減に貢献します。また、マクニカの包括的な技術支援が、短期間でのプロジェクト成功の鍵となりました。
AI技術の進化は止まることなく、それを支えるインフラもまた、常に進化し続ける必要があります。今回の取り組みは、日本のAI研究開発と産業競争力の強化に大きく貢献するとともに、今後のAIインフラ構築における新たなスタンダードを示すものとなるでしょう。マクニカとさくらインターネットの連携が、日本のデジタル社会のさらなる発展を後押しすることに期待が高まります。
さくらインターネット株式会社について、さらに詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
株式会社マクニカについて、さらに詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。

