マクニカと奥村組が開始した「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証試験とは?
未活用地を再生可能エネルギー供給地へ:未来のエネルギーと防災を両立
地球温暖化対策として、世界中で再生可能エネルギーへの転換が急務となっています。特に日本は、2050年カーボンニュートラルの目標達成に向けて、太陽光発電のさらなる導入拡大が期待されています。しかし、国土の約7割を山地が占める日本では、太陽光発電に適した平坦な土地が限られているという課題があります。加えて、近年の異常気象による豪雨や地震の増加は、地盤の軟弱化を招き、斜面災害のリスクを増大させています。このような状況下で、広大な面積を占めるにもかかわらず、これまで有効活用されてこなかった道路の法面や盛土といった傾斜地を、再生可能エネルギーの供給源として活用しつつ、同時に防災機能も強化する革新的な技術が求められています。
こうした背景のもと、株式会社マクニカと株式会社奥村組は、未来のエネルギー供給と防災を両立させる画期的な取り組みとして、「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証試験を開始しました。この技術は、従来の太陽電池では難しかった傾斜地での設置を可能にし、国土の有効活用と災害に強い社会の実現に貢献することを目指しています。
ペロブスカイト太陽電池とは?その魅力と可能性
この実証試験の核となるのが「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」です。AI初心者の方にも分かりやすく、この次世代型太陽電池がなぜ注目されているのか、その魅力と可能性を詳しく見ていきましょう。
従来の太陽電池との違い
現在主流の太陽電池は、主にシリコン半導体を用いた固いパネル型です。これらは高い発電効率を誇りますが、重く、柔軟性に乏しいため、設置場所が平坦な屋根や広大な遊休地に限定されるという課題がありました。また、製造には高温プロセスが必要で、コストや環境負荷も考慮すべき点でした。
一方、ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトという特殊な結晶構造を持つ材料を光吸収層に用いた太陽電池です。その最大の特長は、薄型・軽量で、柔軟なフィルム状に製造できる点にあります。この柔軟性こそが、従来の太陽電池では設置が難しかった場所への導入を可能にする鍵となります。
ペロブスカイト太陽電池の主な特長
- 薄型・軽量: フィルムのように薄く、非常に軽いため、建物の壁面や窓、さらには今回のような傾斜地にも負担なく設置できます。運搬や設置作業も容易になります。
- 柔軟性: 曲げられる素材でできているため、曲面や不整形な場所にもフィットさせることが可能です。これにより、デザイン性の高い建築物への応用や、多様な地形への設置が期待されます。
- 高い発電効率: シリコン太陽電池に匹敵する、あるいはそれ以上の発電効率が期待されており、限られた面積でも効率的に発電できます。
- 低コスト製造の可能性: 比較的低温での製造が可能であり、製造コストの削減が見込まれています。これは、太陽光発電のさらなる普及を後押しする要因となります。
- 低照度環境での発電性能: 曇りの日や室内光のような弱い光でも発電しやすい特性を持つとされており、設置環境の選択肢を広げます。
これらの特長から、ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池では活用が難しかった場所、例えばビル壁面、車両、ウェアラブルデバイス、そして今回の実証試験の対象である法面や盛土など、あらゆる場所を「発電所」へと変える可能性を秘めた、まさにゲームチェンジャーとなりうる技術として期待されています。
遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池の画期的なコンセプト
マクニカと奥村組が開発した「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」は、このペロブスカイト太陽電池の特長を最大限に活かし、さらに日本の地形的課題と防災ニーズに応えるために生まれた革新的なソリューションです。
「防災」と「発電」の二重メリット
この技術の最も画期的な点は、たった一つのシートで「防災機能」と「発電機能」という二つの重要な役割を同時に果たすことです。
- 防災機能の強化: 日本は豪雨や地震による斜面災害が頻発する国です。これらの災害の主な原因の一つは、雨水が地中に浸透し、地盤を軟弱化させることにあります。本技術では、ペロブスカイト太陽電池を遮水シートと一体化させることで、斜面への雨水の浸透を効果的に抑制します。これにより、地盤の軟弱化を防ぎ、斜面崩壊のリスクを低減するという、重要な防災対策としての役割を担います。
- 再生可能エネルギーの供給: 遮水シートとして斜面を覆うことで、その広大な面積をそのまま太陽光発電の場として活用できます。これにより、これまで未活用だった道路の法面や盛土、河川敷の堤防など、日本中に存在する傾斜地を、新たな再生可能エネルギーの供給源へと変えることが可能になります。これは、限られた土地資源を有効活用し、2050年カーボンニュートラル目標達成に大きく貢献する道を開くものです。
この二つの機能が一体となることで、土地の有効活用と社会インフラの強靭化という、一石二鳥の効果が期待されます。特に、柔軟なフィルム状であるペロブスカイト太陽電池だからこそ、傾斜地や湾曲した地形にも容易に設置でき、従来の固い太陽電池パネルでは実現できなかった広範囲への導入が可能となります。
実証試験の具体的な内容と検証項目
この画期的な技術の有効性を確認するため、奥村組技術研究所内で綿密な実証試験が開始されました。試験では、実際の道路側面に模擬盛土(人工的に作られた土手のようなもの)を造成し、そこに遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池を設置して、さまざまな条件下での性能と耐久性が検証されます。
検証項目
実証試験では、主に以下の二つの側面から詳細な検証が行われます。
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発電性能:
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発電効率: 設置された環境下で、ペロブスカイト太陽電池がどれくらいの効率で太陽光を電力に変換できるかを測定します。これは、エネルギー生成の基本となる重要な指標です。
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ロバスト性(安定供給性): 天候の変化、例えば日射量の多い晴天時や雨天時など、さまざまな気象条件下で、どれだけ安定して電力を供給できるかを評価します。日本の四季や多様な天候に対応できるかどうかが問われます。
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耐久性:
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PSC一体化構造の耐久性: 長期間の使用や、外部環境(温度、湿度、風雨、積雪など)からの影響に対して、遮水シートと一体化されたペロブスカイト太陽電池がどれだけ劣化せずに性能を維持できるかを検証します。特に、屋外での長期設置には、厳しい自然環境への耐性が不可欠です。
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PSC保護機能: 遮水シートとの一体化構造が、ペロブスカイト太陽電池モジュール内部への水分の浸透をどれだけ効果的に防げるかを評価します。水分の浸入は、太陽電池の性能低下や故障に直結するため、遮水シートがどれだけ保護機能を果たせるかが重要です。
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これらの検証を通じて、遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池が、日本の厳しい自然環境下でも長期にわたり安定した性能を発揮し、防災とエネルギー供給の両面で実用可能であるかを判断するための貴重なデータが収集されます。

マクニカと奥村組、それぞれの専門性と共同開発への貢献
今回の実証試験は、異なる分野の専門知識を持つ二社の協力によって実現しました。
株式会社マクニカの役割
マクニカは、半導体やサイバーセキュリティを核とするテクノロジー企業であり、世界中の最先端技術を活用した環境ソリューション事業にも力を入れています。特に「サーキュラーエコノミー事業」では、「エネルギーマネジメント」「省エネマネジメント」「資源循環マネジメント」「環境ライフマネジメント」の4つの事業を展開し、CO2排出量の削減や脱炭素社会の構築に貢献しています。今回の実証試験では、マクニカがペロブスカイト太陽電池の提供を担当しており、その最先端技術と環境問題解決への強いコミットメントがこのプロジェクトを推進しています。
マクニカのサーキュラーエコノミー事業について、さらに詳しくはこちらのリンクからご覧いただけます。
www.macnica.co.jp/business/energy/
株式会社奥村組の役割
奥村組は、建設業界におけるリーディングカンパニーであり、特に土木技術や防災技術において豊富な実績と知見を持っています。今回の実証試験では、遮水シート一体化の企画運営を担当し、その建設技術と災害対策への専門知識が、この革新的なソリューションの実現に不可欠でした。奥村組技術研究所内の模擬盛土での試験実施も、同社の研究開発への強い意欲を示しています。
両社がそれぞれの強みを持ち寄り、協力することで、単独では実現が難しかった「防災」と「再生可能エネルギー」を融合させた新たな価値創造が期待されています。
今後の展望と社会への影響
今回の実証試験は、単なる技術検証にとどまらず、日本の未来、ひいては世界の持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となる可能性を秘めています。
2050年カーボンニュートラル実現への貢献
日本が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標達成には、再生可能エネルギーの導入拡大が不可欠です。遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池が実用化されれば、これまで活用が難しかった法面や盛土といった広大な面積を、効率的な発電スペースへと転換できます。これにより、太陽光発電の導入適地の制約を大幅に緩和し、日本のエネルギー自給率向上とCO2排出量削減に大きく貢献することが期待されます。
斜面災害対策の新たな選択肢
近年の気候変動により、豪雨災害のリスクはますます高まっています。遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池は、雨水の浸透を抑制することで、斜面崩壊を未然に防ぐという重要な防災機能を提供します。これは、人命や財産を守るだけでなく、災害復旧にかかるコストや時間を削減し、国土の強靭化に貢献する新たな選択肢となりえます。特に、インフラの老朽化が進む中で、メンテナンスコストを抑えつつ、多機能な対策を講じることの重要性は増しています。
持続可能な社会(Sustainable Society)の実現へ
この技術は、エネルギー問題と防災問題という、現代社会が抱える二つの大きな課題に対する統合的なソリューションを提供します。未活用地の有効活用、クリーンエネルギーの創出、そして災害に強いインフラの構築は、まさに持続可能な社会の実現に不可欠な要素です。マクニカが環境ソリューション事業を通じて目指す「将来のSustainable Societyの実現」に向けた具体的な取り組みとして、今回の実証試験の成功がその実現を加速させることでしょう。
実証試験の結果次第では、道路や鉄道の沿線、河川の堤防、ダムの斜面など、日本全国のさまざまな傾斜地での導入が検討されることでしょう。将来的には、この技術が世界各地の同様の課題を抱える地域にも展開され、グローバルな環境問題解決に貢献する可能性も秘めています。
まとめ
株式会社マクニカと株式会社奥村組が共同で開始した「遮水シート一体型ペロブスカイト太陽電池」の実証試験は、再生可能エネルギーの普及と国土の防災対策という二つの喫緊の課題に対し、革新的な解決策を提示するものです。薄型・軽量で柔軟なペロブスカイト太陽電池の特性を最大限に活かし、遮水シートと一体化させることで、これまで未活用だった広大な法面や盛土を「発電所」に変えながら、同時に斜面崩壊を防ぐという画期的なコンセプトは、未来の社会インフラのあり方を大きく変える可能性を秘めています。
この実証試験を通じて、発電性能や耐久性が確立されれば、2050年カーボンニュートラル目標の達成だけでなく、災害に強い持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。AI初心者の方にも、この技術が持つ無限の可能性と、それが私たちの生活にもたらす恩恵について、ご理解いただけたなら幸いです。今後の実証結果と、この革新的な技術の社会実装に大いに期待が集まります。
マクニカについて、さらに詳しくはこちらのリンクからご覧いただけます。
www.macnica.co.jp

