台湾経済の今を読み解く:半導体、AIサーバー、金属加工機から見る最新トレンドと日本企業の存在感

台湾経済の今を読み解く:半導体、AIサーバー、金属加工機から見る最新トレンドと日本企業の存在感

台湾は、世界のテクノロジー産業において非常に重要な役割を担っています。特に半導体、電子部品、そして精密機械の分野では、世界のサプライチェーンに欠かせない存在です。そんな台湾の最新の産業動向を深く掘り下げた専門誌「ワイズ機械業界ジャーナル」の2026年1月第1週号が発行されました。

このジャーナルでは、世界的な半導体メーカーであるTSMCの先進技術を支える海外企業の投資動向、国際情勢の中で変化する金属加工機市場、そしてAI(人工知能)の進化とともに需要が高まるAIサーバー向けコネクタ市場など、多岐にわたる台湾製造業の「今」が分析されています。本記事では、AI初心者の方にも分かりやすいように、これらの重要な情報を詳しくご紹介し、台湾経済の未来と日本企業との関わりについて探ります。

「ワイズ機械業界ジャーナル」で台湾産業の”今”を知る

「ワイズ機械業界ジャーナル」は、台湾の機械業界に特化した日本語の情報誌です。半導体設備から電子材料、工作機械、さらには自動車や航空宇宙といった幅広い分野にわたる最新のトレンド、企業の動向、統計データ、法改正情報などを網羅的に提供しています。

このジャーナルは、豊富な写真や図表を用いて、パソコンでの閲覧に最適化された横型のPDF形式で提供されており、非常に読みやすいのが特徴です。また、過去の記事を自由に検索できるデータベースも用意されており、特定の情報を深掘りしたい際にも役立ちます。

週刊 ワイズ機械業界ジャーナルの特徴

「ワイズ機械業界ジャーナル」の詳細については、以下のリンクから確認できます。

台湾半導体産業の最前線:海外サプライヤーの投資加速

今回のジャーナルのトップ特集は、「海外半導体設備・材料メーカーの台湾投資動向」です。特に注目すべきは、世界最大の半導体受託製造(ファウンドリー)企業である台湾積体電路製造(TSMC)の動きです。

TSMCの先進パッケージング技術とは?

TSMCは、CoWoS(チップ・オン・ウエハー・オン・サブストレート)やSoIC(システム・オン・インテグレーテッド・チップス)といった「先進パッケージング」技術の生産を強化しています。

AI初心者の方には少し難しい言葉かもしれませんが、簡単に言うと、半導体チップはただ作るだけでなく、それを「パッケージング」という工程で、他の部品と接続したり、保護したりする必要があります。特に、高性能なAIチップやデータセンター向けのチップでは、このパッケージング技術が非常に重要になります。

  • CoWoS:複数のチップ(CPUやGPU、メモリなど)を一つのパッケージにまとめて搭載する技術です。これにより、チップ間のデータ転送速度が向上し、より高性能なコンピューティングが可能になります。AIの計算能力を飛躍的に高めるために不可欠な技術と言えるでしょう。

  • SoIC:チップを縦方向に積み重ねて接続する技術で、さらに小型化と高性能化を実現します。

これらの先進パッケージング技術は、AIの発展を支える高性能半導体チップの製造に不可欠であり、TSMCがこの分野で世界の最先端を走っています。

海外大手企業の台湾投資が活発化する理由

TSMCが先進パッケージングの生産を強化するにつれて、海外の半導体設備や材料メーカーが台湾への投資を加速させています。これは、TSMCの要求に迅速に対応し、製品開発や供給体制を強化するためです。以前は台湾法人を通じて輸入製品の販売やアフターサービスを提供することが多かったのですが、最近では研究開発(R&D)や生産の重要拠点を台湾に設ける動きが活発になっています。

具体的な事例としては、以下のような動きがあります。

  • 住友化学の事例:日本の大手化学メーカーである住友化学は、半導体用プロセス ケミカルメーカーの聯仕電子(AUECC)を買収することに合意しました。プロセス ケミカルとは、半導体製造の洗浄や乾燥工程で異物を取り除く際に使われる重要な材料です。台湾に製造拠点を確保することで、TSMCなどの顧客からの受注を強化する狙いがあると考えられます。

  • 韓国コミコ(KoMiCo)の事例:韓国の半導体部品洗浄装置大手であるコミコは、台湾子会社を「第2の事業拠点」と位置づけ、新工場を建設する計画を進めています。これは、先進プロセス向けの部品洗浄装置の需要に対応するための動きです。

  • ドイツのマンツ台湾の事例:ドイツのマンツ台湾も、経営陣による買収(MBO)を経て、PLP(パネルレベルパッケージング)装置市場に参入するなど、研究開発や生産拠点を台湾に設けることで、TSMCのニーズに迅速に応えようとしています。

これらの動きは、TSMCを中心とする台湾の半導体エコシステムが、世界中の企業にとって非常に魅力的であることを示しています。台湾での「地産地消」(現地で生産し、現地で消費する)の動きが加速することで、サプライチェーンの安定化や技術革新のさらなる促進が期待されます。

減速する金属加工機市場と日本のハイエンド工作機械の存在感

半導体産業が活況を呈する一方で、台湾の金属加工用機械製造業はやや苦戦している状況が報告されています。2025年1月から8月までの販売額は、前年同期比で7.89%減の791億台湾元と低迷しました。

米中対立と関税政策の影響

この減速の主な要因として挙げられているのが、米中対立による相互関税政策や、中国の輸入代替政策です。これにより、NC(数値制御)旋盤といった主要な金属加工機械の輸出が大きく落ち込みました。貿易摩擦や政治的な要因が、世界の製造業に直接的な影響を与えていることが分かります。

台湾国内のハイテク産業が求める日本の工作機械

しかし、全体が落ち込んでいるわけではありません。台湾国内の電子産業は、AIブームを背景に非常に好調です。AIチップやAIサーバーの需要が高まることで、これらの製造に必要な高精度な部品や装置の需要も増えています。

ここで注目すべきは、台湾のハイテク産業が必要とする「ハイエンド工作機械」の多くが、輸入に依存しているという点です。特に日本からの輸入額は、前年同期比で約21%も増加しており、大幅な伸びを見せています。

日本の工作機械は、その高い精度と信頼性で世界的に評価されています。台湾の企業が、AI関連製品のような非常に精密な部品を製造するためには、日本の技術力が不可欠であると言えるでしょう。これは、国際的な情勢が変化する中でも、日本の高い技術力が特定の分野で強い競争力を維持していることを示しています。

AIサーバー市場を狙う台湾企業:驊陞科技(Wieson)の挑戦

AIの進化は、私たちが想像する以上に多くの産業に影響を与えています。その中でも特に重要なのが「AIサーバー」です。AIサーバーは、大量のデータを高速で処理し、複雑なAIモデルを学習・実行するために特化したコンピューターであり、高性能なCPUやGPU、そしてそれらを効率的につなぐコネクタが不可欠です。

驊陞科技(Wieson)の戦略

台湾のコネクタメーカーである驊陞科技(ウィーソン・テクノロジーズ)は、これまでPCや車載用コネクタを手掛けてきましたが、今、AIサーバー市場への参入を強化しています。

同社は長年にわたり、GPU(画像処理装置)を搭載したビデオカード用コネクタの開発で培ってきたノウハウを活かしています。GPUはAIの計算において中心的な役割を果たすため、その接続部分であるコネクタの品質と性能は極めて重要です。

現在、驊陞科技の製品は、米国の主要なサーバーメーカーやクラウドサービスプロバイダー(CSP)によって検証が進められています。これは、同社の技術がAIサーバー市場の厳しい要求に応えられるレベルにあることを示唆しています。

次世代技術への挑戦

さらに、驊陞科技はPCIe Gen6/Gen7に対応する製品や、ロボット向けコネクタの開発にも注力しています。

  • PCIe Gen6/Gen7:これは、コンピューター内部のデータ転送速度の規格で、数字が大きくなるほど高速になります。AIの処理能力向上には、データのボトルネックを解消するための超高速なデータ転送が必要不可欠です。Gen6/Gen7といった次世代規格への対応は、将来のAIサーバーの性能を支える上で非常に重要となります。

  • ロボット向けコネクタ:AIはロボット技術とも密接に関わっており、AIを搭載したロボットの普及が進むにつれて、耐久性や信頼性の高いコネクタの需要も高まります。

このように、驊陞科技は現在のAIサーバー市場だけでなく、将来のAIおよびロボット技術の発展を見据えた戦略を展開しており、新たな成長分野を切り開こうとしています。

変化の波に揺れる台湾自動車産業

台湾の自動車産業も、国際的な情勢や政策の影響を受けています。2025年第3四半期の台湾車両産業の生産額は、前年同期比で3.7%減の1,269億台湾元となりました。

米国の関税政策が影響

この減少の要因の一つとして、米国の相互関税政策が挙げられています。特に、米国が日本や韓国よりも台湾に対して高い関税率を設定したことが、台湾からの自動車輸出に影を落としています。また、消費者が関税引き下げを期待して購入を控える「様子見」のムードが広がったことも、生産額の減少につながったと考えられます。

国際的な貿易政策が、個々の国の産業に大きな影響を与える典型的な例と言えるでしょう。

好調なバイク産業

一方で、バイク産業は好調を維持しています。新学期シーズンの需要増加や、各県市による購入補助政策が後押しとなり、生産額は前年同期比で14.2%増と大きく伸びました。

台湾では、バイクが主要な交通手段の一つであり、生活に密着した存在です。政策的な支援や季節的な需要が、市場を活性化させる重要な要素となっていることが分かります。

まとめ:台湾製造業の多様な顔と未来

ワイズ機械業界ジャーナル2026年1月第1週号は、台湾製造業が直面する多様な課題とチャンスを浮き彫りにしました。

  • 半導体産業は、TSMCの先進パッケージング技術を核として、海外からの投資が加速しており、世界のAI技術革新を牽引する重要な拠点としての地位を確立しています。日本の住友化学をはじめとする海外企業の台湾への積極的な投資は、このエコシステムの強固さを示しています。

  • 金属加工用機械産業は、国際情勢の影響で輸出が減速する一方で、国内のハイテク産業からの需要により、日本のハイエンド工作機械の輸入が増加するなど、質の高い技術へのニーズが顕在化しています。

  • AIサーバー向けコネクタ市場では、驊陞科技のような台湾企業が、これまでの経験と技術を活かして新たな成長分野に挑戦しており、AIの発展をインフラ面から支える重要な役割を担っています。

  • 自動車産業は、国際的な関税政策の影響を受けるものの、バイク産業の好調さなど、国内の需要や政策によって支えられている側面も持ち合わせています。

これらの動向は、台湾経済が常に変化に対応し、新たな価値を創造しようとしている姿を映し出しています。AIや先端技術の発展は、今後も台湾の産業構造に大きな影響を与え続けるでしょう。日本企業にとっても、台湾のこれらの動きはビジネスチャンスの宝庫であり、今後の協力関係の深化が期待されます。

台湾の市場調査やリサーチに関する詳細な情報、または「ワイズ機械業界ジャーナル」に関するお問い合わせは、以下の連絡先までお気軽にご相談ください。

ワイズリサーチ(威志総研)

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