建設現場の働き方を変革!AIアシスタント「Archibs」が業務効率化と技術継承を強力にサポート

近年、日本の基幹産業である建設業界では、少子高齢化に伴う人手不足や、2024年4月に厳格化された「36協定」による法定労働時間問題など、多くの課題に直面しています。特に社会インフラのメンテナンスを担う現場では、小規模な案件が多く、時には一人で複数の業務をこなす「ワンオペ」状態になることも少なくありません。
このような状況の中、東京大学発のAIスタートアップである燈(あかり)株式会社と、社会インフラメンテナンスの専門企業であるショーボンド建設株式会社が、建設現場の働き方を根本から変える画期的なAIアシスタントシステム「Archibs(アーカイブス)」を共同開発しました。
「Archibs」は、AI(人工知能)の力を活用し、現場担当者の負担を軽減しながら、ベテランの持つ貴重な技術や知識を次世代へと継承していくことを目指しています。このシステムがどのように建設現場の未来を切り開くのか、その詳細を見ていきましょう。
Archibs誕生の背景:建設現場が抱えるリアルな課題
ショーボンド建設は、主に橋梁などの社会インフラのメンテナンスを専門としています。その事業特性上、大規模な工事だけでなく、多種多様な小規模現場を数多く手がけることが特徴です。しかし、これが現場の担当者にとっては大きな負担となることがあります。
特に、現場の規模によっては一人の担当者が全ての業務を担う「ワンオペ」体制になるケースもあり、日々の業務量や責任は非常に重いものとなります。さらに、2024年4月に労働基準法に基づく「36協定」が厳格化されたことで、法定労働時間の上限がより厳しく適用されるようになりました。これにより、長時間労働が常態化しがちだった建設現場では、これまで以上に業務効率化が喫緊の課題となっています。
こうした背景から、燈とショーボンド建設は、社員の負担を減らし、長年培われてきた社内での知識(ナレッジ)をスムーズに引き継ぐことができるアシストツールの開発に着手しました。燈が持つ最先端のAI技術と、ショーボンド建設の現場の知見が融合することで、現場担当者を「執事(バトラー)」のようにサポートする「Archibs」が誕生したのです。
AIアシスタント「Archibs」とは?その名の由来と役割
「Archibs」という名称は、Artificial(人工的な)Resolver(解決者)、Contents(コンテンツの)Hub(集中管理)& Individual(個々の)Butler(執事)Systemの頭文字を組み合わせたものです。この名前が示す通り、「Archibs」は、現場監督が直面する様々な業務に対して、まるで個人の執事のように寄り添い、解決へと導くシステムです。
具体的には、チャットや音声での対話を通じて、必要な情報の検索を代行したり、資料作成を支援したりします。これにより、現場担当者は、膨大な資料の中から必要な情報を探し出す時間や、書類作成にかかる手間を大幅に削減できるようになります。
Archibsの主要機能:現場の「困った」を解決する多機能性
「Archibs」は、建設現場の多様なニーズに応えるために、非常に多機能なAIアシスタントとして設計されています。主な機能は以下の通りです。

1. 社内情報資産を網羅する多様な検索・RAG機能
「Archibs」は、用途に応じて最適な情報源にアクセスできる複数のチャットモードを搭載しています。これにより、ユーザーは必要な情報を効率的に、かつ網羅的に得ることができます。

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Box連携RAG(Retrieval-Augmented Generation): 「RAG」とは、AIが情報を生成する際に、事前に用意された外部の知識源を参照して、より正確で信頼性の高い回答を生成する技術です。Archibsは、ショーボンド建設が長年蓄積してきた数百万件規模のファイル(設計図、仕様書、過去の報告書など)と連携し、その膨大なデータの中から、質問に対する回答を生成します。これにより、現場担当者は、必要な情報を迅速かつ正確に得ることができます。
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個別ファイルRAG: ユーザーが個人でアップロードした特定のファイルに基づいた回答生成も可能です。例えば、自分の担当現場特有の資料や、一時的に参照したいファイルなどから、AIが情報を抽出してくれます。
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特定Excel・DB検索: 規定のエクセルファイルや社内データベース内の情報も検索対象とすることができます。これにより、複数の情報源にまたがる横断的な情報の検索や、異なるデータの比較検討をチャット上で簡単に行うことが可能になります。
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Web検索・File検索: 社内情報だけでなく、Web上の最新情報や、社内データベースから目的に沿った資料を探し出すこともチャット上で行えます。これにより、多角的な視点から情報を収集し、業務に役立てることができます。
2. 現場利用に特化した高度な音声インターフェース
建設現場は、キーボード操作が困難な状況や、騒音が多い環境であることが少なくありません。「Archibs」は、このような現場環境でもスムーズに利用できるよう、高度な音声インターフェースを備えています。

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音声テキスト化機能: 現場で計測したデータや、口頭での指示などを音声で入力すると、AIがそれを自動的にテキスト(文字)に変換します。さらに、表形式での出力も可能なため、報告書作成などの手間を大幅に削減できます。
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建設用語対応・多言語翻訳: 建設業界には、一般には馴染みの薄い専門用語が数多く存在します。「Archibs」は、これらの建設業界独自の専門用語を高精度で認識し、適切に処理することができます。また、多言語に対応しているため、外国人労働者とのコミュニケーションを円滑にし、現場での連携を強化することが期待されます。
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音声入出力: チャットのやり取りは、テキストでの入力・表示だけでなく、音声での読み上げや入力にも対応しています。これにより、手がふさがっている状況や、視覚情報に頼れない環境でも、Archibsを利用することが可能です。
燈独自の技術的優位性:Archibsを支えるAI技術
「Archibs」の高性能を支えているのは、燈株式会社が独自に開発した先進的なAI技術です。特に以下の3つのポイントが、その技術的な優位性として挙げられます。
1. 数百万件規模のデータを高速・低コストで処理
通常、数百万件もの膨大な社内ファイルをAIで処理するには、非常に高い計算リソースとコストがかかることがあります。しかし燈は、独自のアーキテクチャ(システムの設計構造)を採用することで、この課題を解決しました。これにより、膨大なデータに対しても高精度なRAG(検索・回答生成)を高速に実現しつつ、システムの運用費用を抑えることに成功しています。
2. 仕様書などに強い「高性能OCR」と検索精度
建設業界では、PDF形式の仕様書や図面が多用されます。これらの資料には、表組みや画像の中にテキストが埋め込まれていることが多く、従来のOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)技術では正確に読み取ることが難しい場合がありました。しかし、「Archibs」に搭載された高性能OCRは、これらの複雑な形式のテキストも正確にデジタル化できます。これにより、図面の中にある注釈やスペック表といった情報も、AIの検索対象として活用することが可能となり、より詳細で正確な情報検索が実現します。
3. 柔軟な検索範囲の指定
膨大なデータの中から、常に全ての情報を検索する必要があるとは限りません。プロジェクトや現場の特性に応じて、参照すべき資料を限定したいケースも多くあります。「Archibs」は、任意のフォルダを指定して検索対象を絞り込む機能を搭載しています。これにより、ユーザーは必要な情報に素早くアクセスできるだけでなく、回答の精度と業務への適合性をさらに高めることができます。
Archibsが建設現場にもたらす未来:働き方改革と技術継承
「Archibs」の導入は、建設現場に多岐にわたるメリットをもたらします。
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現場担当者の負担軽減: 情報検索や資料作成といった間接業務の時間をAIが代行することで、現場担当者は本来の業務である施工管理や品質管理により多くの時間を割くことができます。これにより、業務の効率化と生産性向上が実現し、長時間労働の是正にも繋がります。
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技術継承の促進: ベテラン技術者の持つ貴重な知識やノウハウは、これまで個人の経験に依存し、継承が難しい側面がありました。しかし、「Archibs」が社内資料を網羅的に学習することで、これらの知識が「見える化」され、若手技術者でも必要な情報にアクセスしやすくなります。これにより、経験の浅い社員でも迅速に知識を習得し、技術レベルの底上げが期待できます。
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品質の向上と均一化: 誰でも正確な情報にアクセスできるようになることで、業務の属人化を防ぎ、品質のばらつきを抑えることができます。また、常に最新かつ正確な情報に基づいた判断が可能となるため、施工品質のさらなる向上にも貢献します。
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2024年問題への対応: 労働時間規制の厳格化は、建設業界にとって大きな課題ですが、「Archibs」のようなAIアシスタントの導入は、この「2024年問題」に対応するための強力なツールとなります。限られた時間の中で最大の成果を出すための効率的な働き方を支援し、業界全体の持続可能性を高めることが期待されます。
燈株式会社について
燈株式会社は、「日本を照らす燈となる」という使命を掲げ、AIをはじめとした最先端テクノロジーで社会課題を解決する、東京大学発のAIスタートアップ企業です。建設業、製造業、物流業、卸売・小売業など、日本の基幹産業における生産性向上や「匠の技」と呼ばれる技術力の継承といった課題の解決へ向けて、独自のAI技術を駆使したソリューションを提供しています。
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ホームページ: https://akariinc.co.jp/
まとめ:AIが拓く建設業の新たな可能性
燈株式会社とショーボンド建設株式会社が共同開発したAIアシスタント「Archibs」は、建設現場が抱える長年の課題に対し、AIという強力な解決策を提示しています。情報検索の効率化、資料作成支援、多言語対応、そしてベテランの知識継承といった多岐にわたる機能は、現場担当者の業務負担を大幅に軽減し、より付加価値の高い業務に集中できる環境を創出します。
AI技術の進化は、これまで人の手で行われてきた多くの作業を効率化し、新たな価値を生み出す可能性を秘めています。「Archibs」は、まさにその可能性を建設業界で具現化した事例と言えるでしょう。このシステムが広く普及することで、建設現場の働き方が大きく変わり、日本の社会インフラを支える基盤がより強固なものになることが期待されます。AIが拓く建設業の新たな未来に、今後も注目が集まるでしょう。

