日本科学未来館の常設展示が生成AIで進化!落合陽一氏監修「計算機と自然、計算機の自然」リニューアルの全貌
東京・お台場にある日本科学未来館の常設展示「計算機と自然、計算機の自然」が、2026年4月1日(水)に大規模なリニューアルを迎え、一般公開されます。この展示は、メディアアーティストである落合陽一氏が総合監修を手がけ、AI(人工知能)が高度に発達した未来において、私たちの自然観や世界観がどのように変わっていくのかを深く問いかけるものです。
今回のリニューアルの最大の注目ポイントは、最新の「生成AI」技術を応用した二つの新しい展示が加わること。さらに、既存のシンボル展示も刷新され、デジタルとアナログが融合する「新しい自然」の世界がより鮮明に提示されます。AI初心者の方でも、未来の技術とそれがもたらす変化を肌で感じられる、貴重な体験となるでしょう。

「計算機と自然、計算機の自然」とは?私たちの世界観を揺るがすコンセプト
「計算機と自然、計算機の自然」は、2019年11月に公開されて以来、多くの来館者に驚きと考察の機会を提供してきました。この展示が掲げるテーマは、「コンピュータ(計算機)やAIが高度に発達した社会で、私たちの自然に対する見方や、世界全体に対する考え方がどう変化するのか」というものです。
現代において、コンピュータやデジタル技術は目覚ましい進化を遂げています。それらが作り出す仮想の世界や人工物の解像度は、私たちの五感で感じ取れる限界を超えつつあります。例えば、CG(コンピュータグラフィックス)で描かれた映像は、まるで本物と見間違えるほどリアルになり、AIが生成する画像や文章は、人間が作ったものと区別がつかないレベルに達しています。
このような状況は、今まで明確だった「自然なもの」と「人工的なもの」の境界を曖昧にしていきます。展示では、デジタル技術とアナログな現実が互いに影響し合い、その特性を高め合う状態を「新しい自然」と捉えています。この「新しい自然」という概念は、私たちが日常的に持っている常識を揺さぶり、未来の私たちがどのような世界で生きていくのかを想像させてくれるでしょう。
リニューアルの核:生成AIが拓く新たな体験
今回のリニューアルでは、展示エリアの中心にある二つのシンボル展示が刷新されるだけでなく、特に注目すべきは「生成AI」を応用した新しい展示が二つ加わる点です。生成AIとは、テキストや画像、音声などを「ゼロから生み出す」ことができる人工知能のこと。まるで人間が創造するように、新しいコンテンツを作り出す能力を持っています。
大規模言語モデル(LLM)とは?
新設される展示で活用される「大規模言語モデル」は、生成AIの一種で、膨大な量のテキストデータを学習することで、人間が話す言葉の構造や意味を理解し、自然な文章を生成したり、質問に答えたりする能力を持っています。私たちが普段使っている言葉をAIが理解し、まるで人間と会話しているかのように応答してくれる技術です。この技術が、展示の中でどのような体験を生み出すのかは、非常に興味深いポイントです。
刷新されたシンボル展示で「新しい自然」を体感
「計算機と自然」の進化:割れた液晶が変容する映像作品

「計算機と自然」は、印刷技術で再現された蝶が樹木や草花の中に溶け込み、自然物と計算機が生み出す人工物が境界なく混ざり合う世界を体感できる展示です。今回のリニューアルでは、この空間に生成AIを用いた新しい映像作品が追加されました。
追加された映像作品は、割れた液晶のイメージが流動的に変容し続けるというものです。液晶の亀裂がまるで液体のようにうねり、たえず形を変えていく様子は、物質と情報の境界が溶け合い、そこから新しい存在が生まれてくる「計算機と自然」という展示の核心を視覚的に表現しています。まるで生き物のように変化するデジタルな亀裂は、私たちに「どこまでが自然で、どこからが人工なのか」という問いを投げかけます。この作品は、華道家の辻雄貴氏によるいけばなや、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社による構造色印刷など、様々な技術とアートが融合して生み出されています。
「計算機の自然」の進化:拡散モデルによるリアルタイム映像生成

AIが最も活躍する分野の一つに「画像生成」があります。AIは大量の画像から共通の特徴を学習し、その知識を使って世界に存在しない全く新しい画像を創り出すことができます。この「計算機の自然」展示では、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「null2」で培われた新しいAI技術が応用されています。
本展示では「拡散モデル」と呼ばれる生成AIの技術が用いられています。拡散モデルとは、ノイズ(ざらざらした画像)から鮮明な画像を復元するプロセスを学習することで、様々な画像を生成できるAIです。会場に設置されたカメラが捉えた来館者の映像が、この拡散モデルによってリアルタイムで新しい映像へと生成されていきます。来館者自身が展示の一部となり、AIがリアルタイムで世界をどのように解釈し、再構築するのかを目の当たりにできる、没入感の高い体験が提供されます。落合陽一氏が手がけるこの作品は、テクニカルアシスタントの皆川達也氏の協力のもと制作されています。
新設される二つの体験型展示:AIとの対話、リアルとバーチャルの融合
「話し相手が人間か機械か、どちらでもいいじゃないか」:生成AIとの対話体験

この新設展示は、私たちがAIとのコミュニケーションをどのように捉えるべきかを問いかけます。展示では、受話器に話しかけると、その言葉が音声認識AIによってテキストに変換されます。次に、そのテキストの内容に応じて、文章生成AIが適切な返答を作成。そして最後に、音声生成AIがその返答を、メディアアーティスト・落合陽一氏の声で読み上げます。
この一連の応答の仕組みの中心にあるのが、前述の「大規模言語モデル」という生成AI技術です。大量のテキストデータを学習することで、人間が話す言葉の構造や文脈を深く理解し、まるで人間が考えているかのような自然な会話を成立させます。かつて黒電話の先にいたのは常に人間でしたが、現代では、その先にいるのが人間なのか、それとも高度なAIなのか、その区別が曖昧になりつつあります。この展示は、そのような現代社会における人間と機械の新しい関係性を、来館者自身が体験を通じて考えるきっかけとなるでしょう。この作品は、落合陽一氏が手がけ、テクニカルアシスタントの佃優河氏が協力しています。
「これは計算機の中と外、どっち?」:裸眼3D立体視でリアルとバーチャルの境界を探る
もう一つの新設展示は、特殊なメガネをかけることなく立体映像を体験できる「裸眼3D立体視」を応用したものです。この技術では、カメラが最も近くにいる人の両眼の位置を正確に追跡し、その視線に合わせてモニターに映像を表示し続けることで、立体感を生み出します。
展示される作品では、実体のある彫刻と立体的なデータが一つに繋がっているように見えます。これにより、来館者は「今見ているものが、現実の物理的なものなのか、それともコンピュータの中に存在する仮想的なものなのか」という、リアルとバーチャルの境界が曖昧になる新しい体験をすることになります。筑波大学の横山拓巳氏と同大学デジタルネイチャー開発研究センターが原案・制作を担当し、Stanford Computer Graphics Laboratoryがデータ提供を行っています。この展示は、デジタル技術が現実世界とどのように融合し、私たちの知覚をどのように拡張していくのかを示す、示唆に富んだ作品です。
落合陽一氏が問いかける「新しい自然」の哲学
落合陽一氏は、メディアアーティストとして、常にテクノロジーとアート、そして人間社会の間に横たわる問いを探求し続けています。今回のリニューアルにおいても、彼の監修のもと、コンピュータやAIが私たちの生活に深く浸透したときに、人間が「自然」と呼ぶものの定義がどのように変わるのか、という根源的な問いが込められています。
デジタル技術が作り出す精巧な人工物が、もはや自然と区別がつかなくなるほどに進化したとき、私たちは何をもって「自然」と感じるのでしょうか。そして、AIが人間のような知性や創造性を持つようになったとき、人間という存在の価値や役割はどのように再定義されるのでしょうか。この展示は、単に最新技術を紹介するだけでなく、来館者一人ひとりが未来の社会や人間と技術の関係について深く考えるための「場」を提供しています。
日本科学未来館 常設展示「計算機と自然、計算機の自然」公開概要
未来の技術とアートが融合したこの特別な展示を体験するために、以下の情報を参考にしてください。
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一般公開日: 2026年4月1日(水)
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展示エリア: 日本科学未来館 3階 常設展示ゾーン「計算機と自然、計算機の自然」
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休館日: 火曜日(祝日、夏休み期間などは開館の場合あり)
- ※2026年10月1日から2027年4月22日までは施設整備工事のため休館となります。
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開館時間: 10:00~17:00(入館券の購入および受付は16:30まで)
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料金:
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大人(19歳以上): 630円
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18歳以下(小学生以上): 210円
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※未就学児および18歳以下(小学生以上)の土曜日は無料です。
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詳細URL: https://www.miraikan.jst.go.jp/exhibitions/future/digitallynatural/
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日本科学未来館公式サイト: https://www.miraikan.jst.go.jp/
今回のリニューアルに伴い、「昔も今も色は一緒?」と「ここは計算機の中と外、どっち?」の一部展示は公開を終了しています。
まとめ:AIとアートが織りなす未来の姿を体験しよう
日本科学未来館の常設展示「計算機と自然、計算機の自然」のリニューアルは、生成AIをはじめとする最先端のデジタル技術が、私たちの世界観や自然観にどのような影響を与えるのかを、体験を通じて深く考える機会を提供します。落合陽一氏の総合監修のもと、アートとテクノロジーが融合したこれらの展示は、AI初心者の方でも直感的に理解し、未来の姿を想像できるような工夫が凝らされています。
デジタルとアナログ、自然と人工物の境界が曖昧になる「新しい自然」の世界は、きっと私たちにとって驚きと発見に満ちていることでしょう。ぜひ日本科学未来館に足を運び、AIが拓く未来の可能性と、それが私たちの生活にもたらす変化を、五感で体験してみてください。この展示は、これからの社会を生きる私たちにとって、AIとの共存のあり方を考える上で重要なヒントを与えてくれるはずです。

