日立がCES 2026で発表したAI社会インフラ変革の全貌:NVIDIA、Google Cloud、Nozomi Networksとの協業で未来を創造
2026年1月9日に閉幕した世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」において、株式会社日立製作所(以下、日立)は、AI(人工知能)を活用した社会インフラの革新に向けた戦略と具体的なソリューションを発表しました。この発表は、NVIDIA、Google Cloud、Nozomi Networksといった世界的なテクノロジー企業との協業を通じて、エネルギー、モビリティ、産業といった社会の基盤となる分野をAIで変革し、喫緊の社会課題を解決することを目指すものです。
AI初心者の方にも分かりやすいように、日立がどのような未来を描き、どのようにAIを活用していくのか、その詳細を深く掘り下げてご紹介します。

日立が目指す「ハーモナイズドソサエティ」とは?
日立は、テクノロジーを通じて「ハーモナイズドソサエティ」の実現を目指しています。これは、環境、幸福、経済成長が調和した社会を意味し、持続可能で人々の暮らしが豊かになる未来像です。
このビジョンを実現するために、日立は長年にわたり培ってきたOT(制御・運用技術)、IT(情報技術)、そしてさまざまな「プロダクト(製品)」のドメインナレッジ(特定の分野に関する深い知識や経験)を基盤としています。これらの強みを活かし、社会に直接影響を与えるシステムやインフラにAIを組み込むことで、複雑な課題を革新的に解決し、より安全で効率的、そして持続可能な社会の実現を目指しているのです。
日立アメリカのCMOであるArya Barirani氏は、CES 2026への出展がこの「ハーモナイズドソサエティ」を具現化するものであると述べています。送配電網、鉄道システム、産業アプリケーションなど、多岐にわたる社会インフラにAIを適用することで、連携し合う世界の未来を示すことを目指しています。
社会インフラ変革の核「HMAX by Hitachi」とは
日立が今回発表した次世代ソリューション群の核となるのが「HMAX by Hitachi」(以下、HMAX)です。HMAXは、AIによって社会インフラを革新するための幅広いソリューションを指します。
HMAXが対象とする3つの重要分野
HMAXは、特に以下の3つの複雑な社会インフラ分野に展開されています。
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モビリティ:鉄道や自動車など、人やモノの移動に関するインフラ
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エネルギー:電力の供給や管理など、エネルギーインフラ
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産業:製造業やバイオ医薬など、様々な産業における生産・運用プロセス
これらの分野は、私たちの生活や経済活動を支える上で不可欠であり、AIによる変革が強く求められています。
HMAXを支える先進的なAI技術
HMAXの大きな特徴は、フィジカル(物理的な世界)とデジタル(情報の世界)の両方から得られる膨大なデータを活用し、複数の先進的なAI技術を統合している点です。具体的には、以下のAIが活用されます。
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Perception AI(知覚AI):センサーやカメラからの情報を認識・理解するAI。例えば、画像認識や音声認識などがこれにあたります。
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生成AI(Generative AI):新しいデータやコンテンツを生成するAI。文章作成や画像生成、シミュレーションモデルの生成などに活用されます。
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Agentic AI(エージェントAI):自律的に目標を設定し、行動計画を立て、実行するAI。複雑なシステムを自動で最適化したり、問題解決を行ったりします。
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フィジカルAI(Physical AI):物理的な世界で動作するロボットや機械に組み込まれ、現実世界のデータに基づいて学習・行動するAI。例えば、工場でのロボットの動きの最適化や、インフラ設備の自律的な点検などに使われます。
これらのAIを組み合わせることで、HMAXはプロダクト、OT、AIという日立ならではの強みを掛け合わせ、社会インフラに革新的な価値を提供していきます。HMAXは、日立の戦略的な成長を牽引する主要なドライバーと位置付けられています。
NVIDIAとの協業で加速するフィジカルAIの未来
CES Foundryセッション「Pioneering AI Technologies for the Physical World」では、日立アメリカのCMOであるArya Barirani氏と、NVIDIAのロボティクスおよびエッジAI担当バイスプレジデントであるDeepu Talla氏が登壇し、両社の協業について説明しました。
このセッションでは、日立とNVIDIAの協業が、どのように現実世界におけるAIの応用を加速させ、フィジカルAIの力を安全に活用することで、より効率的で自律的な未来を実現していくのかが議論されました。NVIDIAの高度なAI技術と日立のドメインナレッジが融合することで、物理的な環境でAIをテスト・検証するための高度なシミュレーションが可能になり、導入前の安全性と信頼性の確保に貢献します。これは、実世界でのAI導入におけるリスクを低減し、その普及を加速させる上で非常に重要な取り組みと言えるでしょう。
具体的な産業分野でのAI活用事例
HMAXは、さまざまな産業分野で具体的なソリューションとして展開されています。
Integrated Industry Automation
バッテリー分野でのAI活用
バッテリーは、電気自動車や再生可能エネルギー貯蔵など、現代社会でますます重要になっています。この分野では、歩留まり(生産量に対する良品の割合)の改善や品質向上を支援するために、AIが活用されます。
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精密解析・検査システム:AIがバッテリーの製造工程を詳細に分析し、不良の原因を特定したり、品質を予測したりします。
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ロールプレス、ドライクリーンルーム、ロボット活用自動化ソリューション:AIがこれらの製造設備を最適に制御し、効率的な生産と品質の安定化に貢献します。
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OT-ITプラットフォーム:制御技術(OT)と情報技術(IT)を統合したプラットフォーム上でAIが稼働し、生産データ全体を管理・分析します。
さらに、リチウムイオン電池のライフサイクルマネジメント(製造から廃棄、リサイクルまでの一連の流れを管理すること)を提供することで、資源の循環を促進し、環境負荷の低減にも貢献します。
バイオ医薬分野でのAI活用
バイオ医薬分野では、新薬開発や製造プロセスの効率化が大きな課題です。AIはここでもその力を発揮します。
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培養シミュレーションとAIによる製造工程へのフィードバック:日立の技術により、AIが培養プロセスをシミュレーションし、最適な製造パラメータを導き出します。これにより、製造リードタイムを3分の1に短縮できるとされています。
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ヘルスケアデータ分析プラットフォーム:説明可能なAI(AIがなぜそのような判断をしたのか、その根拠を人間が理解できる形で示す技術)を活用し、複雑な医療データから主要なバイオマーカー(病気の存在や進行を示す指標)を抽出します。これにより、医師の臨床判断を支援し、より正確な診断や治療法の選択に役立ちます。
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HVCT RM (Hitachi Value Chain Traceability for Regenerative Medicine):再生医療分野では、細胞や組織の品質管理や追跡が非常に重要です。このソリューションは、バリューチェーン(価値創造の連鎖)全体のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保し、再生医療の安全性と信頼性を高めます。
Google Cloudとの協業で鉄道DXを推進
日立レールは、持続可能なモビリティ分野でのリーダーシップ強化のため、Google Cloudとの協業を発表しました。この協業は、鉄道業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させることを目的としています。
Google Cloudの先進的なAI技術とサイバーセキュリティ技術、そしてGlobalLogic(日立グループのデジタルエンジニアリング企業)の高度なデジタルエンジニアリング能力が組み合わされることで、日立レールは鉄道オペレーションの効率を向上させ、鉄道業界の「自律化」と「省エネルギー化」への移行を推進していきます。
GlobalLogicは、この戦略的パートナーシップにおいて、リーダーシップ、実行、技術提供、戦略的整合性の各面で中心的な役割を担い、「One Hitachi」として協業を推進する目的の実現に貢献しています。
この協業に関する詳細は、2025年12月3日に発表された日立のニュースリリースで確認できます。
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2025/12/1203a.html
Nozomi Networksとの提携でOT/IoTセキュリティを強化
現代の社会インフラは、サイバー攻撃のリスクに常に晒されています。日立システムズの海外子会社であり、Hitachi Cyberブランドでグローバルにサイバーセキュリティサービスを展開するHitachi Systems Trusted Cyber Managementは、Nozomi Networksとの戦略的協業を発表しました。
この提携により、世界水準のOT(制御・運用技術)およびIoT(モノのインターネット)のモニタリング・可視化ソリューションが提供されます。Hitachi Cyberが持つ産業分野に関する深い知見と、Nozomi Networksの最先端セキュリティ技術が融合することで、エネルギー、モビリティ、製造分野などの重要インフラを脅かす物理的およびサイバーの脅威から守るための包括的な防御フレームワークが構築されます。
これにより、工場や発電所、鉄道システムといったOT環境におけるサイバー攻撃の検知・防御能力が大幅に強化され、社会インフラの安定稼働と安全性が確保されます。
CES 2026ブースでの体験ハイライト
日立のブースでは、来場者が最先端のソリューションを体験できるインタラクティブなデモや展示ゾーンが設けられました。特に注目されたテーマは以下の通りです。
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HMAX Mobility, HMAX Energy, HMAX Industry:
HMAXソリューションが社会インフラをどのように変革するかを紹介。インテリジェントな可視化と制御、タスクの自動化などを通じ、顧客の成果と社会への提供価値を最大化する様子が示されました。 -
ソフトウェア定義型自動車 (SDV):
日立のデジタルエンジニアリングとクラウドベースのAIソリューションが、次世代のインテリジェントでコネクテッドな車両(ネットワークに接続された自動車)をどのように支えるかが実証されました。 -
AIシミュレーションによる精度検証:
NVIDIAの技術を活用し、複雑な物理環境においてAIをテスト・検証するために高度なシミュレーションがどのように活用されるか、導入前に安全性と信頼性を確保する方法が紹介されました。 -
日立の研究開発:
次世代AIを活用した現場作業者支援、物流の最適化、脱炭素化など、未来に向けた最先端ソリューションのデモンストレーションが行われました。
これらの展示は、日立がAI技術を駆使して社会課題解決に貢献する具体的な姿を示し、来場者に「ハーモナイズドソサエティ」の実現に向けた取り組みを深く理解してもらう機会となりました。
まとめ:AIで社会インフラを革新する日立の挑戦
日立がCES 2026で発表したAIによる社会インフラ変革の取り組みは、NVIDIA、Google Cloud、Nozomi Networksといった各分野のリーディングカンパニーとの協業を通じて、その実現を加速させています。
「HMAX by Hitachi」を中心とした次世代ソリューション群は、モビリティ、エネルギー、産業といった社会の根幹を支える分野において、Perception AI、生成AI、Agentic AI、フィジカルAIといった多様なAI技術を統合し、日立が長年培ってきたOT、IT、プロダクトのドメインナレッジと融合させることで、これまでにない価値を生み出そうとしています。
バッテリー生産の効率化からバイオ医薬の製造リードタイム短縮、鉄道システムのDX推進、そして重要インフラのサイバーセキュリティ強化に至るまで、AIは私たちの社会をより安全で、効率的で、持続可能なものへと変革する可能性を秘めています。日立の挑戦は、AI技術が単なるツールに留まらず、社会全体の未来を形作る重要なドライバーとなることを示しています。
日立製作所の詳細については、公式サイトをご覧ください。
https://www.hitachi.com/ja-jp/

