【AI初心者向け】洋上風力発電の環境影響評価を高度化!バイオロギングとビッグデータが拓くネイチャーポジティブの未来

洋上風力発電と自然共生を両立!革新的な環境影響評価プロジェクトが始動

洋上風力発電

地球温暖化対策として、クリーンなエネルギー源である再生可能エネルギーの導入が世界中で進められています。特に、洋上風力発電は大規模な発電が可能であることから、脱炭素社会の実現に向けた重要な柱として期待されています。しかし、一方で、洋上風力発電施設の建設や運用が、海洋生物やその生態系に与える影響も懸念されています。自然環境への影響を最小限に抑えながら、再生可能エネルギーを拡大していくためには、精度の高い環境影響評価が不可欠です。

このような背景の中、株式会社シンク・ネイチャー、バイオロギングソリューションズ株式会社、Koudou Labの3社が、東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授をアドバイザーに迎え、洋上風力発電の環境影響評価を高度化するための画期的な共同プロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、脱炭素社会の実現と、自然を回復させる「ネイチャーポジティブ」という、一見すると両立が難しい目標を同時に達成することを目指しています。

プロジェクトの全貌:脱炭素とネイチャーポジティブの両立を目指す

本プロジェクトの核心は、「バイオロギング」という野生生物の行動を記録する技術と、「生物多様性ビッグデータ」という膨大な生物に関する情報を組み合わせ、洋上風力発電が環境に与える影響をこれまで以上に詳しく、正確に評価することにあります。

バイオロギングとは?

「バイオロギング」とは、野生生物に小型のセンサーや記録計(ロガー)を取り付け、その動物の行動や移動経路、周囲の環境情報(水温、深度など)を自動的に記録する技術のことです。例えば、海鳥にGPSロガーを取り付ければ、どこを飛んで、どこで餌を探しているのかがわかります。魚にセンサーを取り付ければ、水中でどのように動き、どの深さにいるのかといった情報が得られます。

この技術によって、人間が直接観察することが難しい野生生物のリアルな生活を、データとして「見える化」できるようになります。これにより、洋上風力発電施設が建設される場所やその周辺で、どのような動物が、いつ、どのように活動しているのかを詳細に把握することが可能になります。

生物多様性ビッグデータとは?

「生物多様性ビッグデータ」とは、地球上の多様な生物に関する膨大なデータのことです。これには、生物の生息地情報、遺伝子情報、過去の記録(標本情報)、人工衛星やドローンによる観測データ(リモートセンシング)、環境DNA調査(水や土壌から生物のDNAを検出する技術)、市民科学(一般の人が参加して集めるデータ)など、多岐にわたる情報が含まれます。

これらのデータは、特定の地域の生物種構成や、生態系の状態を広範囲にわたって理解するために非常に役立ちます。本プロジェクトでは、この生物多様性ビッグデータとバイオロギングデータを組み合わせることで、個々の動物の行動だけでなく、広域的な生態系全体への影響を評価しようとしています。

この二つの先進技術を統合することで、洋上風力発電施設と野生生物の生息エリアや行動エリアがどのように重なるのか、衝突のリスクはどれくらいあるのか、また、複数の開発が積み重なった場合にどのような影響が出るのかといった、広範囲かつ高解像度な影響評価が可能になるのです。これにより、脱炭素社会の実現と生物多様性の保全という二つの目標を、科学的な根拠に基づいて両立させるための次世代型環境影響評価モデルの構築を目指します。

政策と科学の融合:環境影響評価の科学的基盤を強化

日本政府は、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「GX(グリーントランスフォーメーション)」の推進、生物多様性の保全に関する「生物多様性国家戦略」、そして自然を回復させる経済活動を目指す「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」といった重要な政策を進めています。これらの政策を実現するためには、洋上風力発電のような再生可能エネルギーの導入を拡大しつつ、それが自然に与える影響を適切に評価し、地域社会の合意を得て進めることが大きな課題となっています。

従来の評価の限界とプロジェクトの解決策

これまでの環境影響評価は、調査する場所や期間が限られており、野生生物の実際の生息地や移動、行動パターンを十分に反映できないという制度的・技術的な制約がありました。例えば、渡り鳥のように広範囲を移動する動物の場合、限られた期間の調査ではその全貌を捉えることが困難でした。

本プロジェクトでは、この課題を解決するために、バイオロギングによって得られる野生生物の行動・移動データと、生物多様性ビッグデータを統合します。これにより、個々の動物がどこでどのように生活しているのかという情報を、非常に詳細なレベルで「見える化」する「マクロ生態学的分析」を実施します。

マクロ生態学的分析とは?

「マクロ生態学的分析」とは、個々の生物のデータだけでなく、より広い範囲(マクロ)での生態系のパターンやプロセスを分析する手法です。例えば、特定の地域の気候変動が、その地域の生物の分布や行動にどのような影響を与えているかを、広範囲のデータを使って解析するといったことです。本プロジェクトでは、この分析を通じて、洋上風力発電施設と野生生物の行動エリアの重なり、衝突リスク、さらには複数の開発による累積的な影響を広域的に評価することが可能になります。

この取り組みは、環境影響評価制度の科学的な精度と透明性を高め、再生可能エネルギー導入における生物多様性配慮の具体的な指針を策定する上で役立ちます。また、国や地方自治体が計画を立てる段階で、環境への影響を回避したり軽減したりするための対策を検討する際にも支援を提供します。さらに、地域住民との合意形成を進める上で、客観的で定量的な証拠を示すことで、科学と政策を結びつけるネイチャーポジティブ実装モデルの構築に貢献すると期待されています。

金融とビジネスへの影響:自然関連リスクの可視化とTNFD・ESG対応

近年、金融機関や投資家の間では、気候変動がもたらすリスクだけでなく、「自然関連リスク」への関心が高まっています。自然関連リスクとは、企業活動が生物多様性や生態系サービス(自然が私たちに与えてくれる恵み、例えばきれいな水や空気など)を損なうことによって、事業の安定性(レジリエンス)が低下するリスクのことです。このリスクをどのように数値化し、投資判断に反映させるかが、重要な課題となっています。

自然関連リスクとTNFD・ESGとは?

    • 自然関連リスク: 企業が自然環境に与える影響や、自然環境の変化が企業に与える影響に関するリスクです。例えば、森林伐採が水源を枯渇させ、企業の生産活動に影響を与えることなどが挙げられます。

    • TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures): 自然関連財務情報開示タスクフォースの略で、企業が自然に関するリスクと機会を金融市場に開示するための枠組みを開発しています。気候変動に関するTCFD(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures)の自然版と考えると分かりやすいでしょう。

    • ESG: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の持続可能性を評価する際の三つの重要な要素です。投資家は、これらの要素を考慮して投資先を決定する「ESG投資」を重視しています。

洋上風力発電のような大規模な再生可能エネルギープロジェクトは、長期にわたる大規模な投資を伴いますが、もし自然資本(自然が持つ価値)への影響が明らかになった場合、事業の遅延、規制の強化、企業イメージの悪化(レピュテーションリスク)などにつながる可能性があります。

本プロジェクトは、野生生物の「生息適地」と「行動」に基づいた高解像度な自然の情報を「見える化」することで、自然関連リスクをこれまでの定性的な評価(言葉による説明)から、定量的な評価(数値による説明)へと進化させます。これにより、プロジェクトの開発初期段階で生物多様性に関するリスクを明確に把握し、TNFDやESG評価に役立つ科学的な証拠を提供することが可能になります。結果として、事業中断や社会的反発といった非財務リスクを低減し、ネイチャーポジティブな投資(自然を回復させることに貢献する投資)としての説明責任と透明性を向上させ、持続可能な投資判断を支援することを目指します。

未来への一歩:プロジェクトの今後の展開

本プロジェクトは、まず初期の段階として、すでに存在するバイオロギングデータを活用し、洋上風力発電施設と野生生物の空間的な重なりや、移動経路におけるリスク(例えば、鳥が風力タービンに衝突するバードストライクなど)を整理し、「見える化」します。これにより、具体的なリスク箇所や時期を特定する手助けとなるでしょう。

このプロジェクトの大きな特徴は、バイオロギングデータを単なる生データとして提供するのではなく、高度な解析と概念の整理を通じて、政策決定、投資判断、そして事業運営に役立つ「インテリジェンス」(知見や洞察)として提供する点にあります。学術論文の発表にとどまらず、予備的な成果や概念的な成果を「ホワイトペーパー」という形で段階的に公開していくことで、政策立案者、市場関係者、金融関係者との対話を先行させ、ネイチャーポジティブに関する評価基準やルール形成を主導していくことを目指しています。

中長期的には、洋上風力発電を対象とした先行事例を通じて知見を蓄積し、その成果を制度設計やガイドラインの整備、さらには持続可能な投資判断への反映といった形で、社会全体に実装していく計画です。これにより、再生可能エネルギー開発と自然環境保護が両立する未来の実現に貢献することでしょう。

プロジェクトを支える各社の力

この革新的なプロジェクトは、それぞれの分野で専門性を持つ3社の協力によって推進されています。

株式会社シンク・ネイチャー

マクロ生態学や生物多様性保全科学において優れた研究実績を持つ国内外の研究者が集まるグローバル企業です。世界の陸と海を網羅した自然史の研究論文や標本情報、人工衛星やドローンによるリモートセンシング、環境DNA調査、野生生物のバイオロギング、そして市民科学など、多様な方法で集められた生物関連データ(地理分布、遺伝子、機能特性、生態特性など)を統合しています。さらに、AIなどの最先端技術を用いて自然の状況を「見える化」したり、将来を予測したり、異なるシナリオを分析する技術(J-BMP1)を持っています。

TNFDのデータカタリストイニシアティブにも参加しており、自然資本ビッグデータを活用して、自然の持続的な利用に関する分析、評価、ソリューション(GBNAT2、TN LEAD3)を提供することで、金融機関や機関投資家、企業の生物多様性への対応を支援しています。また、「生物多様性ネットゲイン」(事業活動によって失われる生物多様性よりも回復・増加する生物多様性が多い状態)を「見える化」し、ネイチャーポジティブ事業を推進するためのサービス(TN GAIN4)も提供しています。

その他にも、生物多様性の記載研究を推進する研究者を表彰する「日本生態学会自然史研究振興賞(5)」を提唱・支援したり、一般向けに生物の豊かさを地図で「見える化」したスマートフォンアプリ「ジュゴンズアイβ版(6)」(無料)をリリースしたりするなど、生物多様性の普及啓発活動にも積極的に取り組んでいます。

1 J-BMP: 日本の生物多様性地図化プロジェクト https://biodiversity-map.thinknature-japan.com/
2 GBNAT: 生物多様性、森林減少、人的影響、水リスクに関するグローバルな定量データを提供し、生物多様性への影響を評価するための優先地域の特定を支援します。 https://lp.gbnat.com/jp/
3 TN LEAD:全産業セクター&グローバルな事業拠点に対応したTNFD対応支援サービス https://think-nature.jp/service/
4 TN GAIN:ネイチャーポジティブ関連事業の効果量を算定し、生物多様性ネットゲインを可視化するサービス https://services.think-nature.jp/gain/
5 日本生態学会自然史研究振興賞:生物多様性に関する記載研究を推進している会員を表彰する新たな賞 https://note.com/thinknature/n/n885ba7f11009
6 ジュゴンズアイ(DugongsAI)β版:生物種毎の生物の豊かさが地図上で可視化された個人向けスマホアプリ https://services.think-nature.jp/dugongsai/

Biologging Solutions株式会社

設立から10年以上にわたり、陸上の動物(サル、シカ、クマなど)や水産資源(マグロ、カツオ、ブリ、サバなど)を含む様々な野生生物や海洋環境を対象に、行動、移動、環境データを高精度に取得するバイオロギング機器と、その運用、解析、可視化までを一貫して提供する企業です。GPS首輪や小型ロガー、各種センサーなどの開発・製造に加え、クラウドを通じたデータ管理、地図表示、アラート、レポーティングを支援し、研究機関、行政、企業の意思決定を支えています。取得したデータを「使える知見(インテリジェンス)」へと変換し、ネイチャーポジティブの社会実装に貢献しています。

Koudou Lab

野生動物の行動を「見える化」するバイオロギング研究を専門とする個人事業です。海鳥、魚、陸上の哺乳類など、多様な動物に小型の記録計を取り付け、「どこで」「どのように」行動しているのかをデータから読み解いています。集められたGPSや加速度、深度、水温などのデータは、コンピューター解析によって整理・可視化され、動物の移動や採餌行動、周囲の環境との関係を理解する手がかりになります。こうした解析は、研究だけでなく、自然環境の保全や、人間と自然のより良い関係づくりにも役立てられています。また、バイオロギングデータ共有プラットフォーム(BiP)に公開されたデータを使った解析方法の開発や解説にも取り組んでいます。YouTubeチャンネルでは、野外調査の様子や研究の裏側を紹介し、バイオロギング研究を身近に感じてもらうための情報発信も行っています。

まとめ:持続可能な未来への貢献

この共同プロジェクトは、洋上風力発電の環境影響評価を高度化することで、脱炭素社会の実現とネイチャーポジティブという二つの重要な目標を両立させるための新たな道を切り開きます。AI初心者にも分かりやすい言葉で解説しましたが、バイオロギングと生物多様性ビッグデータの統合は、これからの持続可能な社会を築く上で不可欠な、科学的根拠に基づいた意思決定を可能にする画期的な取り組みと言えるでしょう。未来のエネルギーと自然環境の調和に、大きな期待が寄せられています。

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