はじめに:生成AI時代の企業の新たな課題
近年、生成AI(ジェネレーティブAI)の進化は目覚ましく、ビジネスの現場に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。文章作成、データ分析、アイデア創出など、多岐にわたる業務での活用が期待されており、多くの企業がその導入を検討しています。しかし、その一方で、生成AIを企業内で本格的に活用するには、いくつかの重要な課題が存在します。
具体的には、「社内の機密データを外部のAIサービスに接続することによる情報漏洩のリスク」や、「生成AIを導入しても、実際の業務プロセスにどのように組み込めば良いのか分からない」といった悩みが挙げられます。また、「AIやその基盤(インフラ)に詳しい専門家が社内に不足している」ことや、「RAG(検索拡張生成)のような高度なAI活用や業務自動化を進めたいが、構築や運用にかかる手間が大きい」といった問題も、多くの企業で顕在化しています。
このような背景から、企業が安心して生成AIを導入し、最大限にその能力を引き出すためには、セキュリティを確保しながら、社内データを安全かつ効率的にAIに連携できる環境が不可欠となっています。
デジタルベースとSpingence Technology、共同開発の全貌
こうした企業の喫緊の課題に応えるため、デジタルベース株式会社(以下、デジタルベース)と台湾のAIインフラ企業であるSpingence Technology Co., Ltd.(以下、Spingence)は、この度、企業が自社内で安全かつ手軽に業務向けのAIを構築・運用できる「社内データ連携AIプラットフォーム」を共同開発しました。
この新しいプラットフォームは、企業が抱えるセキュリティ、導入、運用における課題を解決し、生成AIをより身近なものにすることを目指しています。そして、この革新的なプラットフォームは、2026年4月15日(水)から17日(金)まで東京ビッグサイトで開催される「NexTech Week 2026【春】第10回 AI・人工知能 EXPO」にて、初めて一般公開される予定です。
なぜ今、社内データ連携AIプラットフォームが必要なのか?
生成AIの活用が広がるにつれて、企業が直面する具体的な課題はより明確になってきました。多くの企業では、以下のような悩みが深刻化しています。
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セキュリティ要件の厳格化: 企業が持つ顧客情報や営業秘密といった重要な社内データは、外部のクラウドAIサービスに安易に接続することができません。情報漏洩のリスクを懸念し、多くの企業が生成AIの本格導入に二の足を踏んでいます。
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PoC(概念実証)止まりの現状: 生成AIの可能性は理解しているものの、実際に業務フローの中にAIを組み込み、日々活用できる状態にするまでには至っていないケースが少なくありません。どのようにすればAIを日々の業務に落とし込めるのかが大きな課題です。
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AI・インフラエンジニアの不足: AIモデルの構築や、それを動かすためのIT基盤(インフラ)に関する専門知識を持つエンジニアは、依然として不足しています。特に、社内環境でAIを運用するための知識を持つ人材はさらに稀少です。
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RAGや業務自動化の構築・運用負荷: 特定の文書に基づいてAIに回答させたり(RAG:Retrieval Augmented Generation)、定型業務をAIで自動化したりすることは、技術的には可能ですが、その構築や運用には専門的な知識と多大な労力が必要です。
このような状況は、データ管理やセキュリティ対応への関心が幅広い業種で高まっていることと密接に関係しています。政府レベルでも、自国のデータ主権を確保する「ソブリンAI」の推進や、製品・サービスの供給網全体におけるセキュリティ対策を可視化する取り組みが進められています。こうした動きは、外部のクラウドサービスに過度に依存せず、企業が自社内でデータを安全にAIへ接続できる環境への需要をさらに拡大させていると言えるでしょう。
革新的なプラットフォームの仕組みと両社の強み
デジタルベースとSpingenceは、これらの背景を踏まえ、それぞれの強みを活かして社内データ連携AIプラットフォームを共同開発しました。このプラットフォームは、企業が社内環境で安全かつ容易にAIを構築・運用できることを目指しています。
デジタルベースは、AIソフトウェア全体の構築(フルスタックAIソフトウェア構築)や、企業が持つデータと業務機能、そしてAIを連携させることに長けています。特に、セキュリティを重視し、それぞれの業務フローに合わせた専用AI環境を構築する技術が強みです。
一方、Spingenceは、台湾を拠点に、エッジAIインフラ(デバイス上でAIを動かすための基盤)から、企業内にAIモデルを設置するオンプレミスLLM基盤、さらにはGPU(AIの計算に特化した半導体)インフラの管理まで、幅広いAI基盤技術を提供しています。特に、高い安定性と信頼性が求められるAI基盤の分野で、多くの企業向けAI基盤の設計・構築実績を持っています。

両社の異なる、しかし相補的な技術を組み合わせることで、企業はこれまで以上に現実的で導入しやすい形で、社内データを安全にAIと連携させ、専用のAI環境を構築・運用できるようになりました。
このプラットフォームは、社内にある様々なデータソースからAIプラットフォームを通じてデータを処理・統合し、ユーザーが活用・分析するためのシステムアーキテクチャで構成されています。アプリケーション層とインフラ層から構成され、多様なAI機能やデータ連携、モデル管理、自動化機能を提供します。

これにより、企業は文書検索、問い合わせ対応、データ検索、報告書作成、業務自動化など、多様な業務でAIを実際に活用できる環境を構築できます。
プラットフォームの主な特徴:企業が求めるAI環境を実現
今回共同開発された社内データ連携AIプラットフォームは、企業が社内データとAIを安全に連携させ、AIを実際の業務フローの中で効果的に運用するための様々な機能を備えています。主な特徴は以下の通りです。
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多様な社内データへの接続: 社内にあるデータベース(MySQL、PostgreSQLなど)、ファイルサーバー、業務システム、APIといった様々なデータソースをAIに安全に接続できます。これにより、企業内に散在するあらゆる情報をAIが活用できるようになります。
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RAG環境の構築: 社内文書(マニュアル、FAQ、過去の問い合わせ履歴など)を活用し、AIがより正確で信頼性の高い情報を生成するRAG(検索拡張生成)環境を構築できます。これにより、AIの回答精度が向上し、専門知識を必要とする業務での活用が期待できます。
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業務フローに合わせたAIエージェントの構築・業務自動化: 特定の業務プロセスを自動化するAIエージェントを構築できます。例えば、定型的な問い合わせへの自動応答、資料作成のサポート、データ集計の自動化など、日々の業務効率を大幅に向上させることが可能です。
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複数AIモデルの管理・切替: クラウドAI(OpenAIのGPTシリーズなど)だけでなく、オープンソースのAIモデル(OSSモデル)も柔軟に管理・切り替えて利用できます。これにより、企業の要件やコストに応じて最適なAIモデルを選択し、運用することが可能になります。
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用途に応じた柔軟な構成に対応: GPUサーバーのような高性能な環境から、デスクトップ環境まで、企業の具体的な用途や予算に合わせて柔軟なシステム構成を選べます。これにより、スモールスタートから大規模な導入まで、幅広いニーズに対応できます。
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企業向けの運用管理機能を搭載: 権限管理、利用ログ管理、セキュリティ対策など、企業がAIを安全かつ効率的に運用するために必要な管理機能を標準で搭載しています。これにより、情報システム部門はAIの利用状況を把握し、統制を効かせながら運用できます。
これらの機能は、個別のツールとしてではなく、企業内のAI環境として統合的に提供されます。情報システム部門は安定・堅牢な運用、AIモデルの再学習・運用・監視、使用量の可視化と最適な配分、堅牢なログ管理とセキュリティ対策を実現できます。また、各事業部門では、RAG-AIエージェントによる社内データの横断検索、審査・承認プロセスのAI代行、問い合わせ対応時間の大幅短縮、会議音声からの議事録自動生成、現場フォーマットでの資料AI生成、データ変換・突合・集計の自動化など、多岐にわたる活用が期待されます。

Spingence Technology CEO Jesse Chen氏のコメント:日本市場への期待
今回の共同開発について、Spingence Technology Co., Ltd.のCEOであるJesse Chen氏は、次のようにコメントしています。
「Spingenceは、Digital Baseとの協業を通じて、日本市場におけるエンタープライズ向けオンプレミスAI基盤の提供を進められることを大変嬉しく思います。当社はこれまで、アジア、特に中国語圏において、製造業や社内ナレッジ活用などの分野で、実運用レベルのAI基盤導入を支援してきました。こうした実績をもとに、SpingenceのAI基盤とDigital Baseのアプリケーション開発力を組み合わせることで、日本企業がPoC(概念実証)に留まらず、安全かつスケーラブルにAIを活用できる環境を実現できると考えています。」
このコメントは、Spingenceが持つ豊富な実績と、デジタルベースの技術力が融合することで、日本企業がAIをより実践的に、そして安全に活用できるようになることへの強い期待を示しています。
「NexTech Week 2026【春】」で実機を体験
今回共同開発された社内データ連携AIプラットフォームは、「NexTech Week 2026【春】第10回 AI・人工知能 EXPO」のSpingence Technology社ブース(小間番号:23-54)にて展示されます。この展示会は、AI技術の最新動向を一堂に集めるもので、多くのビジネスパーソンが訪れることが予想されます。
会場では、プラットフォームの実機によるデモンストレーションが実施される予定です。実際に動作する様子を見ることで、AI初心者の方でもその機能や利便性を直感的に理解できるでしょう。また、各企業の具体的な用途や課題に応じた導入構成、そしてAI活用イメージについても、専門家から直接相談できる機会が設けられています。
AI導入を検討している企業や、現在のAI活用に課題を感じている企業にとって、この展示会は貴重な情報収集と相談の場となるでしょう。
| 展示会名 | NexTech Week 2026【春】第10回 AI・人工知能 EXPO |
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| 会期 | 2026年4月15日(水)〜17日(金)10:00〜17:00 |
| 会場 | 東京ビッグサイト |
| 展示場所 | Spingence Technology社ブース |
| 小間番号 | 23-54 |

今後の展開と両社のビジョン
デジタルベースとSpingenceは、今回の共同開発を皮切りに、今後この社内データ連携AIプラットフォームの展開を加速させていく方針です。
特に、製造業、建設業、医療、自治体など、社内データや機密情報を厳格に扱う必要のある幅広い企業をターゲットとしています。これらの業界では、AIによる業務効率化や意思決定支援への期待が高い一方で、セキュリティやデータガバナンス(データ管理のルール)への懸念から、AI導入が進みにくいという現状があります。
両社は、日本と台湾を起点に、企業ごとに最適化された専用AI環境をより簡単に構築できる世界の実現を目指しています。そのため、今後も継続的に製品開発を進めるとともに、日本市場における提供体制の強化にも注力していくとのことです。企業のAI活用を強力に後押しし、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる存在となることが期待されます。
会社情報
デジタルベース株式会社
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代表者:今井康之
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所在地:東京都港区
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事業内容:AIを中心としたソフトウェアの開発、環境構築
Spingence Technology Co., Ltd.
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代表:Jesse Chen
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所在地:台湾・台北市
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事業内容:エッジAIインフラの開発・販売、AIソリューションの提供
まとめ:安全なAI活用で企業の未来を切り拓く
デジタルベースとSpingenceが共同開発した「社内データ連携AIプラットフォーム」は、生成AIの可能性を最大限に引き出しつつ、企業のセキュリティと運用効率の課題を解決する画期的なソリューションです。
社内データを安全にAIと連携させ、RAGや業務自動化を容易に実現することで、企業はAIをPoC(概念実証)の段階から一歩進め、実際の業務で活用できるようになるでしょう。これにより、生産性の向上、コスト削減、新たな価値創造へとつながることが期待されます。
2026年4月15日から開催される「NexTech Week 2026【春】第10回 AI・人工知能 EXPO」での初公開は、多くの企業にとって、安全で実用的なAI導入への新たな一歩となるはずです。AI初心者から上級者まで、すべての企業が生成AIの恩恵を享受できる未来が、すぐそこまで来ています。

