生成AI時代を加速!CPO向け「高出力波長可変光源」がデータセンターの通信を劇的に進化させる
近年、私たちは生成AI(人工知能)の急速な進化を目の当たりにしています。ChatGPTのようなAIツールは私たちの日常やビジネスに浸透し、その裏側では膨大なデータが瞬時に処理されています。また、5Gネットワークの普及や高画質なビデオストリーミングの利用拡大も相まって、世界中でやり取りされるデータ量は爆発的に増加しています。
このようなデータ量の増加は、データセンターという巨大な情報処理施設に大きな負荷をかけています。データセンター内では、サーバー間で情報をやり取りするために大量の電気信号が使われていますが、この電気信号には速度の限界や発熱、そして消費電力の問題が常に付きまといます。そこで注目されているのが、電気の代わりに「光」を使ってデータを送る技術、特に「CPO(Co-Packaged Optics)」と「Silicon Photonics(シリコンフォトニクス)」です。santec LIS株式会社が今回発表した「高出力波長可変光源 TSL-570 Type U」は、まさにこの次世代の光通信技術を支える、非常に重要な役割を担う製品と言えるでしょう。
CPO(Co-Packaged Optics)とは?AI初心者にもわかりやすく解説
CPO(Co-Packaged Optics)は、「コパッケージド・オプティクス」と読み、簡単に言えば、コンピューターの頭脳である「チップ」と、光の信号を扱う「光部品」を、まるで一つの製品のように一緒にパッケージング(一体化)する技術のことです。
私たちが普段使っているパソコンやスマートフォンの中では、チップ同士が電気の信号でデータをやり取りしています。しかし、データ量が増え、速度が速くなるにつれて、電気信号にはいくつかの課題が出てきます。
- 速度の限界: 電気信号は、チップ間の距離が長くなったり、信号が複雑になったりすると、その速度が落ちやすくなります。まるで、たくさんの車が走る道路で渋滞が起きるようなものです。
- 発熱: 電気信号が高速で行き来すると、熱が発生します。この熱はチップの性能を低下させたり、故障の原因になったりするため、冷却に多くのエネルギーが必要になります。
- 消費電力: データを送るたびに電力を消費します。データ量が増えれば増えるほど、消費電力も増大し、環境負荷やコストの問題につながります。
CPOは、これらの課題を解決するために考案されました。電気信号の代わりに「光の信号」を使うことで、より速く、より遠くまでデータを送れるようになります。さらに、光部品をチップのすぐそばに置くことで、電気信号でやり取りする距離を極限まで短くし、光に切り替えることで、高速化と省エネを両立させることを目指しています。
想像してみてください。データセンターがまるで巨大な図書館だとすると、CPOは本(データ)を運ぶための、電気のトラックではなく、超高速でエネルギー効率の良い光のパイプラインを、本の保管場所(チップ)のすぐ隣に設置するようなものです。これにより、データの移動がはるかにスムーズになり、全体の処理能力が向上するわけです。
Silicon Photonics(シリコンフォトニクス)が拓く未来
CPOと密接に関わるもう一つの重要な技術が「Silicon Photonics(シリコンフォトニクス)」です。これは、半導体の主要材料である「シリコン」を使って、光の回路を作る技術です。
これまでの光部品は、特殊な材料や複雑な製造工程が必要で、一つ一つが高価でした。しかし、Silicon Photonicsは、コンピューターのCPUやメモリを作るのと同じ、非常に精密で大量生産が可能なシリコン半導体の技術を利用して、光を制御する回路(導波路、変調器、検出器など)をチップ上に作り込みます。これにより、光部品の小型化、低コスト化、そして大量生産が可能になります。
Silicon Photonicsは、CPOを実現するための「インフラ」のようなものです。シリコンチップの上に光の道を作り、その道をデータが光として行き交うことで、電気信号の限界を突破します。これにより、データセンター内のサーバー間通信はもちろん、将来的にはチップ内部での通信にも光が使われるようになり、コンピューター全体の性能を飛躍的に向上させることが期待されています。
生成AIの計算能力向上には、大量のデータを高速かつ効率的に処理することが不可欠です。CPOとSilicon Photonicsは、このデータ処理のボトルネックを解消し、AI技術がさらに発展するための基盤を築く、まさに未来を拓く技術と言えるでしょう。
データ通信の「光」を強化!santec LISが高出力波長可変光源を発表
このようなCPOとSilicon Photonicsの市場が急速に拡大する中で、santec LIS株式会社は、CPO向けに最適化された高出力波長可変光源「型式: TSL-570 Type U」を開発しました。この新製品は、今後のデータ通信の進化を強力にサポートする画期的な技術です。

CPOデバイスでは、一つの光から複数の導波路(光の通り道)へ信号を分岐させる必要があります。しかし、光を分岐させると、その過程で光の力が弱まってしまう「挿入損失」という現象が起こります。例えるなら、一本の太い水道管から複数の細いパイプに水を分けると、それぞれのパイプから出る水の勢いが弱くなるようなものです。
この挿入損失が大きいと、CPOデバイスが設計通りに機能しているか、その性能を正確に評価することが難しくなります。そのため、デバイスの特性をしっかりと測定するには、元々の光の力が非常に強い、つまり「高出力な波長可変光源」が必要とされていました。
santec LIS株式会社は、こうした市場のニーズに応えるため、光学設計と制御回路を最適化。その結果、従来機と比較して3倍以上もの高出力化を実現した「TSL-570 Type U」を開発しました。この高出力化は、CPOおよびSilicon Photonicsデバイスの正確な評価を可能にし、これらの技術の実用化と普及を加速させる上で不可欠な要素となります。
「TSL-570 Type U」の圧倒的な性能とは?
新製品「TSL-570 Type U」は、CPOおよびSilicon Photonicsデバイスの特性評価において、研究開発から量産評価まで幅広い用途で活用できる、以下のような優れた特長を持っています。
1. 圧倒的な高出力
「TSL-570 Type U」は、連続(CW)発振において、1300nmから1320nmの範囲で+25dBm(300mW)を超える高出力を実現しています。dBm(ディービーエム)とは、光のパワー(出力)を表す単位で、数値が大きいほど光が強いことを意味します。300mWという出力は、一般的なレーザーポインターが数mW程度であることを考えると、非常に強力な光であることがわかります。
この強力な光は、前述のCPOデバイスにおける挿入損失が大きい環境下でも、十分な光量をデバイスに供給し、正確な測定を可能にします。光が弱すぎて測定できなかったり、ノイズに埋もれてしまったりする心配が減り、より信頼性の高い評価が可能になるのです。
2. 広い波長可変帯域
さらに、「TSL-570 Type U」は、1270nmから1350nmという広い波長範囲をカバーしながら、+20dBm以上の高い光出力を維持できます。nm(ナノメートル)は光の波長(色のようなもの)を表す単位で、波長が変わると光の性質も少し変わります。
光デバイスは、その種類や用途によって最適な波長が異なります。広い波長範囲をカバーできることで、さまざまなCPOやSilicon Photonicsデバイスの評価に対応できる柔軟性があります。しかも、その広い範囲で高い出力を維持できるため、異なる波長での評価においても、安定した強力な光を提供できる点が大きな強みです。これにより、開発者は多種多様なデバイスに対して、この一台で効率的かつ高精度な評価を行うことが可能になります。
これらの特長により、「TSL-570 Type U」は、光通信部品の研究室での基礎研究から、実際に量産される製品の品質管理まで、幅広い段階でその価値を発揮することでしょう。
なぜ今、高出力波長可変光源が求められるのか?
生成AIの進化は、データセンターのあり方を根本から変えようとしています。AIの学習や推論には、膨大な量の計算とデータ転送が必要であり、これは既存のデータセンターインフラにとって前例のない要求となります。結果として、データセンター内の通信量はさらに増加し、電力消費も大幅に増大する傾向にあります。
CPOやSilicon Photonicsといった次世代の光技術は、この課題を解決するための切り札として期待されています。これらの技術が本格的に導入されることで、データセンターはより高速に、より低消費電力で動作できるようになります。
しかし、新しい技術を実用化するためには、その性能を正確に評価し、信頼性を確保することが不可欠です。CPOデバイスの評価には、光の損失が大きいという特性から、強力な光を供給できる光源が必須となります。santec LIS株式会社の「TSL-570 Type U」は、まさにこのニーズに応える製品であり、今後数年間で大幅な成長が見込まれるCPOおよびSilicon Photonics市場の発展を力強く後押しすることになるでしょう。
santec LIS株式会社とは
santec LIS株式会社は、高度な光学技術を提供するリーディングカンパニーであるsantec Holding株式会社の子会社です。santec Holding株式会社は1979年に設立され、東京証券取引所スタンダード市場に上場しています(証券コード: 6777)。
日本国内にとどまらず、北米、英国、中国にも子会社を展開し、世界中の大手通信会社、光サブシステムメーカー、そして主要な研究機関といったグローバルな顧客基盤にサービスを提供しています。従業員数は全世界で約350名を擁し、その技術力と実績は国際的にも高く評価されています。
santecグループの製品は多岐にわたり、通信、ライフサイエンス、センシング、産業分野での応用を目指した光学部品、波長可変光源、光学検査&測定システム、OCTシステムなどがあります。長年にわたり培われた独自の光学技術は、現代社会を支える様々な先端技術の発展に貢献しています。
今後の展望とまとめ
生成AIの進化が止まらない現代において、それを支えるデータセンターのインフラ技術もまた、絶えず進化し続ける必要があります。santec LIS株式会社が発表したCPO向け高出力波長可変光源「TSL-570 Type U」は、CPOおよびSilicon Photonicsといった次世代の光通信技術の普及を加速させ、データ通信の限界を押し広げる重要な一歩となるでしょう。
この新製品は、AIがさらに高度化し、私たちの生活がより便利になる未来を、光の力で支える基盤技術の一つとして、その存在感を増していくはずです。santec LIS株式会社の革新的な技術が、これからも世界の情報通信インフラの発展に貢献していくことに期待が寄せられます。
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受注開始日
2026年2月1日

