経営者の知恵をAIで次世代へ:Tooと調和技研が「AI CXOエージェント」開発で描く未来
現代社会において、企業が持続的に成長していくためには、経営者の持つ独自の価値観や経営思想、そして長年の経験から培われた判断基準を、組織全体で共有し、次世代へと確実に継承していくことが非常に重要です。しかし、これらの「見えない知恵」を人から人へと正確に伝えることは、多くの企業にとって大きな課題となっていました。
このような背景の中、クリエイティブ市場の総合商社である株式会社Tooは、北海道大学発のAIスタートアップである株式会社調和技研と共同で、画期的な取り組みを開始しました。それが、経営者の価値観や経営思想、判断基準をAIエージェント化し、組織に共有・継承する「AI CXOエージェント」の開発です。

「AI CXOエージェント」とは?経営者の思考を組織の力に変えるAI
Tooと調和技研が共同で開発を進める「AI CXOエージェント」は、単なる情報検索ツールではありません。これは、経営者の価値観・経営思想・判断基準を「企業の知的資産」として整理し、蓄積することで、日々の意思決定の場で活用できるようにする「思考型AIエージェント」です。
具体的には、CEOや役員層がチャット形式のインターフェースを通じて、特定のタスクや疑問をAIに入力すると、AIは企業の経営思想や企業文化に深く根ざした示唆や判断材料を提供します。これにより、経営層はより一貫性のある、企業理念に基づいた意思決定を行うことが可能になります。
「企業メモリ」:経営者の知恵を構造化する独自の知識基盤
このAI CXOエージェントの中核をなすのが、「企業メモリ」と呼ばれる独自の知識基盤です。
企業メモリには、経営者が過去に発信したメッセージ、重要な意思決定の背景、そしてその判断に至った思考プロセスなどが、ただのテキストとして保存されるのではなく、LLM(大規模言語モデル)が理解しやすく、参照しやすい形で整理・構造化されて継続的に蓄積されます。ここで重要なのは、「どのような価値観のもとで、何を重視して判断したのか」といった文脈情報まで含めて管理される点です。
通常、経営者の経験や知恵は、個人の記憶や口頭での伝達に頼りがちで、解釈の揺れや時間の経過とともに風化してしまうリスクがあります。しかし、企業メモリはこれらの貴重な情報を「生きた知恵」としてデジタル化し、常にアクセス可能な状態に保ちます。これにより、組織全体の判断基準が明確になり、属人化を防ぐことができます。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用した高度な意思決定支援
AI CXOエージェントは、この企業メモリを基盤として、さらに社内外の最新情報や市場の動向と組み合わせながら参照・分析します。これにより、経営層の思考に極めて近いアウトプットを生成することが可能になります。
このプロセスで活用されるのが、RAG(Retrieval-Augmented Generation)という仕組みです。RAGとは、生成AIが情報を生成する際に、事前に用意されたデータベース(この場合は企業メモリ)から関連情報を探し出し、それを参考にしながらより正確で信頼性の高い回答を生成する技術のことです。これにより、AIは単に表面的な情報検索にとどまらず、企業メモリに蓄積された深い知見に基づいて、一貫性と再現性のある意思決定支援を実現します。
さらに、AIとの対話や、それによって導き出された新たな判断結果は、再び企業メモリに反映され、知識と判断軸が常に更新・拡張されていきます。この継続的な学習サイクルにより、AI CXOエージェントは単なるツールではなく、経営者とともに思考を深め、組織全体の判断力を蓄積し、次世代へと継承していく「パートナー」として機能するのです。
開発の背景:100年企業Tooの未来への挑戦
株式会社Tooは、創業から100年を超える長い歴史を持つ企業です。これまでの事業や組織の発展を通じて培ってきた経営者の価値観や経営思想、そして「勘所」とも言える判断の基準を、次の世代へと確実に引き継ぐことの重要性が高まっていました。
しかし、人間同士の口頭伝達やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に頼るだけでは、価値観の伝達に解釈のばらつきが生じたり、記憶が薄れてしまったりする課題がありました。そこでTooは、膨大なデータを学習し、柔軟な情報を生成することに長けたAIの技術を経営活動に取り入れることを、この課題を解決するための一つの有効な手段と捉え、本プロジェクトに着手しました。
Tooが目指すのは、価値観や理念、判断基準を、常に活用できる形で組織に常備することです。そして、時代の変化に合わせてそれを更新し、次世代へと継承していくことで、組織全体が常に共通の価値観に基づいて行動できる企業文化を築き上げることです。これは、単なる業務効率化に留まらない、企業の根幹を支える重要な取り組みと言えるでしょう。
各社の役割と今後の展開:専門性を結集し最適なAIエージェントへ
この革新的なAI CXOエージェントの開発において、Tooと調和技研はそれぞれの専門性を活かし、明確な役割分担のもとで協力しています。
-
株式会社Tooの役割:経営思想や判断基準の定義、具体的な利用シーン(ユースケース)の設計、そして社内でのPoC(概念実証)の推進を担当します。Tooは、自社の経営における具体的な課題とニーズをAI開発に落とし込む重要な役割を担います。
-
株式会社調和技研の役割:AIエージェントの基盤となるシステムやモデルの整備、AIの思考プロセスの設計、そしてその他の機能の技術的な実装を支援します。調和技研は、高度なAI技術を駆使して、Tooの求めるAIエージェントを具現化する役割を担います。
両社の協力により、目的に合致した最適なAIエージェントの実現を目指しています。現在、PoCモデルの開発が進められており、社内でのテスト利用が順次推進されています。そして、2026年内には、Too社内での本格的なAI CXOエージェントの展開が計画されています。
両社トップが語る「AI CXOエージェント」への期待とビジョン
株式会社Too 代表取締役社長 石井剛太氏のコメント
Tooの石井社長は、1919年の創業以来、常に時代の変化を先取りし、クリエイティブ分野の発展に貢献してきたTooの歴史に触れながら、現代のAI技術の急速な進歩が新たな挑戦の機会であることを強調しています。
石井社長は、100年以上の歴史を持つTooが、次の100年も顧客のビジネス成長に貢献するためには、AIのような新しい技術を積極的に活用していく必要があると考えています。本取り組みは、企業の理念を単なる言葉としてではなく、実際に「判断できる知恵」として組織に根付かせる挑戦であると述べています。「AI CXOエージェント」という仕組みを通じて、過去の意思決定と市場の変化を融合させた思考の枠組みを提供し、次世代の経営層が、会社の理念に即した選択ができるようにしたいという強い願いが込められています。石井社長自身も、この変革を通じてTooの文化がより強く、未来志向で育っていくことを心から願っていると語っています。
株式会社調和技研 代表取締役社長 中村拓哉氏のコメント
調和技研の中村社長は、2009年に北海道大学発のベンチャーとして設立された同社の成り立ちを紹介しています。大学で培った専門知識を社会に役立てたいというシンプルな動機と、「好きなことをとことん追求する」という創業当初からの精神が、現在の調和技研の礎となっていると述べています。
中村社長は、本プロジェクトを通じて、100年にわたって磨かれてきた企業の価値観や判断の本質を、AIによって再解釈し、未来の意思決定に活かしていくことの面白さを強く感じていると語っています。歴史の中で培われてきた価値観は、単なる過去の遺産ではなく、今も経営を支える「生きた知恵」であり、それをAIという形で未来へつなげられると考えています。
「AIと社会の調和」を理念に掲げる調和技研は、Tooとともに「AI CXOエージェント」の開発に挑戦しています。経営の知見とAI技術を融合させることで、経営判断をより柔軟かつ創造的に支援し、企業が本来持つ潜在的なクリエイティビティを引き出していきたいというビジョンを示しています。中村社長はこれからも、「できない理由を探すのではなく、『どうすればできるか』を考え続け、挑戦を重ねながら、未来に向けた価値創造を後押ししていく」と力強く語っています。
株式会社Tooについて
株式会社Tooは、「人々がクリエイティブになれる環境をクリエイト」することをミッションに掲げ、1919年の創業以来、時代の変化に合わせて常に挑戦し続けてきました。IT・クリエイティブ製品の提供や活用支援を通じて、顧客がそれぞれの理想に向かってビジネスに専念できる環境づくりを支援しています。
-
代表者:代表取締役社長 石井剛太
-
事業内容:IT・クリエイティブ製品の販売及びシステムインテグレーション、運用支援事業ほか
-
所在地:東京都港区虎ノ門3-4-7 虎ノ門36森ビル
株式会社調和技研について
株式会社調和技研は、2009年に北海道大学発のベンチャーとして設立され、AIモデル・AIエージェント開発や機械学習技術の研究開発・提供などを手掛ける企業です。大学で培った高度な専門知識を社会実装することを目指し、「AIと社会の調和」を理念に掲げています。
-
代表者:代表取締役社長 中村拓哉
-
事業内容:AIモデル・AIエージェント開発/機械学習技術の研究開発・提供 ほか
-
所在地:札幌市中央区南2条西12丁目324-2 902
まとめ:AIが拓く新たな経営の形
Tooと調和技研が共同で開発を進める「AI CXOエージェント」は、経営者の貴重な価値観や判断基準を、AI技術によって組織の知的資産として構造化し、次世代へと継承していく画期的な取り組みです。これにより、属人化しがちだった経営の知恵が、企業メモリとして蓄積され、RAGを活用したAIによって、常に一貫性のある意思決定支援が可能になります。
100年企業であるTooの事業継承の課題から生まれたこのプロジェクトは、AIが単なる業務効率化のツールに留まらず、企業の文化や理念を深め、経営判断の質を高めるパートナーとなり得ることを示しています。2026年内の本格展開を目指し、今後もその進化に注目が集まるでしょう。AI CXOエージェントは、きっと多くの企業にとって、未来の経営のあり方を再定義する重要な一歩となるでしょう。

