製造業の新たな一手:ZREKがNC旋盤自動化ソリューションを稼働開始
製造業の世界では、AI(人工知能)やロボット技術の進化が目覚ましいスピードで進んでいます。特に、人手不足や熟練工の減少といった課題を抱える現場において、生産性の向上と作業負担の軽減は喫緊の課題です。そんな中、フィジカルAI(現実世界で物理的な作業を行うAI)の開発に特化したスタートアップ企業ZREK(ゼレック)が、NC旋盤(えぬしーせんばん)の自動化ソリューションの稼働を開始しました。この革新的なシステムは、AIと協働ロボットを組み合わせ、これまで人の手で行われていたワーク(加工対象物)の供給・取り出し作業を自動で行うものです。
NC旋盤とは?製造業の基幹を担う機械
まず、NC旋盤について簡単に解説しましょう。NC旋盤とは、「Numerical Control(数値制御)」の略で、コンピュータープログラムによって工具の動きを数値で制御し、金属などの材料を削って円筒形や円錐形などの部品を作り出す工作機械の一種です。自動車部品や精密機械部品など、多くの製品の製造に不可欠な機械であり、製造業の「心臓部」とも言える存在です。

しかし、このNC旋盤を効率的に稼働させるためには、加工前のワークを機械にセットし、加工後のワークを取り出すという作業(ワーク脱着)が必ず発生します。この作業は単調でありながら、正確性と迅速性が求められるため、作業員の負担が大きく、生産性のボトルネックとなることが少なくありませんでした。
なぜ今、製造業の自動化が注目されるのか?
現代の製造業が直面しているのは、少子高齢化による労働人口の減少、熟練技術者の引退、そしてグローバル競争の激化です。こうした背景から、限られた人材でいかに生産性を高め、品質を維持・向上させるかが大きな経営課題となっています。そこで注目されているのが、AIやロボットを活用した「製造DX(デジタルトランスフォーメーション)」、つまり製造現場のデジタル化と自動化です。
従来の自動化は、専用の装置(パーツフィーダなど)を導入し、特定の条件下でしか動作しないように設計されることが多く、導入コストや柔軟性の低さが課題でした。しかし、AI技術の進化、特に「フィジカルAI」の登場により、より複雑で変動の多い現場環境にも対応できる、柔軟性の高い自動化ソリューションが実現可能になってきています。
ZREKの「フィジカルAI」とは?
ZREKが開発する「フィジカルAI」とは、単にデータを分析したり、画面上で処理を行うAIとは異なり、現実世界でロボットなどの物理的な装置を動かし、具体的な作業を実行するAIを指します。人間の手足のように物理的な動作を伴うため、製造現場のようなリアルな環境での応用が期待されています。
ZREKのソリューションでは、このフィジカルAIが協働ロボット(人間と協調して作業できるロボット)と連携し、NC旋盤のワーク脱着作業を自動で行います。これにより、従来の自動化では難しかった「現場の変動」にも対応できる柔軟性を実現している点が大きな特徴です。

ZREKのNC旋盤自動化ソリューションの具体的な特徴
ZREKのNC旋盤自動化ソリューションは、製造現場の具体的な課題に対応するため、以下の3つの主要な特徴を持っています。
① 現場変動に強い「ワーク脱着の柔軟運用」
製造現場では、ワークの位置が少しずれたり、加工途中でワークを追加・抜き取ったりと、様々な「現場要因」が発生します。従来の自動化装置では、こうした変動に対応できず、エラー停止や手作業での修正が必要になることがありました。しかし、ZREKのソリューションは、この課題を克服します。

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カメラと超軽量AI(エッジAI)の連携: ロボットに搭載されたカメラがワークの位置や状態をリアルタイムで認識します。そして、その場で高速に処理を行う「エッジAI」(クラウドではなく、デバイス上でAI処理を行う技術)が、ワークの位置ズレや途中補充、抜き取りといった現場の変動を検知し、ロボットの動作を柔軟に補正します。
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品番変更時の段取り負荷削減: 異なる品番のワークを加工する際にも、把持(ロボットがワークを掴む動作)からチャッキング(機械にワークを固定する動作)までの一連の動作をAIが自動で補正します。これにより、品番変更のたびに必要だった複雑な段取り作業の負荷が大幅に削減され、多品種少量生産にも対応しやすくなります。

② 工作機械I/Oまで含む「統合制御でのタクト短縮」
自動化の効率を最大化するためには、ロボットだけでなく、工作機械そのものとの連携が不可欠です。ZREKのソリューションは、この点にも着目し、工作機械のI/O(Input/Output、入出力信号)まで含めた統合的な制御を実現しています。

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工作機械とロボットの協調制御: NC旋盤の扉の開閉、チャック(ワークを固定する部分)の動作、エアブロー(切削くずなどを吹き飛ばす動作)といった工作機械側の操作と、ロボットのワーク脱着動作をAIが協調して制御します。これにより、無駄な待ち時間をなくし、一連の作業にかかる時間(タクトタイム)を短縮し、生産効率を向上させます。
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連携インターフェースの開発: 工作機械とロボット制御コンピューター間の連携インターフェースも独自に開発。これにより、異なるメーカーの機械間でもスムーズな情報交換と協調動作が可能となり、既存の設備への導入も容易になります。

③ 省スペースでの後付け「協働ロボット自動化セル」
製造現場では、スペースの制約も大きな課題です。新しい設備を導入したくても、設置場所がないというケースも少なくありません。ZREKのソリューションは、この点にも配慮した設計となっています。

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協働ロボットの活用: 人間と同じ空間で安全に作業できる「協働ロボット」を採用することで、安全柵などの大がかりな設備が不要となり、省スペース化を実現しています。これにより、既存のNC旋盤の隣に手軽に設置できるため、大掛かりなレイアウト変更なしで導入が可能です。
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後付け可能な設計: ロボットの可動域に合わせて最適化された架台やレイアウト設計により、既存の設備への「後付け」を容易にしています。さらに、必要な時にだけ持ち込んで運用するといった柔軟な使い方も想定されており、導入企業の多様なニーズに対応できます。

実証パートナー:株式会社大矢製作所様
ZREKのNC旋盤自動化ソリューションの1号機は、株式会社大矢製作所(本社:川崎市中原区)に導入され、実証稼働を開始しています。株式会社大矢製作所は、量産加工だけでなく、摩擦圧接やへら絞りといった独自の技術を活かした自社商品事業にも積極的に取り組むなど、国内製造業の新たな可能性を追求している企業です。

ZREKは、この実証稼働を通じて得られる現場の知見をもとに、ソリューションの機能や運用をさらに磨き上げ、製造現場の「時間的・心理的負担」を軽減することを目指しています。これにより、現場の従業員がより創造的で付加価値の高い仕事に集中できる環境づくりに貢献していくとのことです。
ZREKが目指す未来と今後の展望
ZREKは、今回の実証稼働で得られるデータを活用し、ソリューションの継続的な改善を進めていく計画です。将来的には、クラウドGPU(グラフィック処理装置)との連携を強化することで、AIモデルの更新や新しい品番の追加、加工条件の変更などへの対応を、より迅速かつ柔軟に行える仕組みを整備していくとしています。
また、商社、設備メーカー、SIer(システムインテグレーター)といったパートナー企業との連携も積極的に強化し、ZREKのソリューションがより多くの製造現場に導入されるよう、普及を加速させていく方針です。これにより、日本の「スマートファクトリー」化を推進し、製造業全体の競争力向上に貢献することが期待されます。
株式会社Zrek 会社概要

| 社名 | 株式会社Zrek(ゼレック) |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役CEO 今村優希 |
| 所在地 | 〈東京本社〉東京都渋谷区神南1-6-12 B1F |
| 事業内容 | ソフトウェアおよびハードウェアの開発 |
| 設立 | 2021年4月 |
| 従業員数 | 12名(業務委託含む) |
| 公式HP | https://www.zrek.org |
ZREKの求人情報
ZREKでは、事業拡大に伴い、デザイナーやエンジニアをはじめとする専門人材を多岐にわたる形態(正社員・副業・長期インターンシップ・業務委託)で募集しています。シニア層やエキスパート層の参画も歓迎しており、ハンズオンでの技術リードやアドバイザリーとしての関与など、柔軟な働き方に対応しています。
特に、以下のような職種や経験を持つ人材を求めているとのことです。
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ハードウェアのプロダクトデザイナー
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AI/ロボティクスエンジニア(強化学習/模倣学習/ROS 2などの経験者)
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協働ロボットのシステムインテグレーション経験者
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LLM(大規模言語モデル)/VLM(大規模視覚言語モデル)/VLA(視覚言語行動モデル)を用いた開発経験者
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NVIDIA Isaac Sim/Lab/Omniverse/GR00T などの実装・運用経験者
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ヒューマノイドロボットや LeRobot に関する開発経験者
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FA(ファクトリーオートメーション)機器・ロボットの設計・製造・販売に携わった経験者
技術開発と社会実装の両面に関心があり、ZREKのビジョンに共感できる方は、公式HPまたは下記問い合わせ先から詳細を確認できます。
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E-mail:jobs@zrek.org
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お問い合わせフォーム:https://www.zrek.org/contact
まとめ:製造業の未来を変えるAIとロボットの可能性
ZREKが稼働を開始したNC旋盤自動化ソリューションは、製造現場が抱える人手不足や生産性、品質維持といった多くの課題に対し、AIと協働ロボットという最先端技術で具体的な解決策を提示しています。特に、現場の変動に柔軟に対応できるフィジカルAIの導入は、従来の自動化の限界を超え、多品種少量生産や急な仕様変更にも対応できる「スマートファクトリー」の実現を加速させることでしょう。
このソリューションが普及することで、製造業の現場は、単調な作業から解放され、より創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。これにより、従業員の満足度向上はもちろん、企業全体の競争力強化にも繋がります。ZREKの取り組みは、日本の製造業が持続可能な成長を遂げるための重要な一歩と言えるでしょう。今後の展開に注目が集まります。

