障害者クリエイターの創作をAIで企業デザインに変換する新SaaS「PoteerChat」とは?
近年、AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスのあらゆる場面でその存在感が増しています。特に「生成AI」と呼ばれる技術は、テキストや画像、音楽などを自動で作り出すことができ、クリエイティブな分野に大きな変革をもたらしています。しかし、その一方で、「AIが作ったものは誰の作品なのか?」「元のクリエイターにはどうやって利益が還元されるのか?」といった、新しい課題も生まれてきました。
このような課題に対し、株式会社bajji(バッジ)は、障害のあるクリエイターのユニークな作品をAIのアイデアの元(インスピレーション源)として活用し、企業が求めるデザインを自動で作り出す法人向けSaaS(サース)「PoteerChat(ポティアチャット)」の提供を開始しました。
SaaSとは「Software as a Service」の略で、インターネットを通じてソフトウェアを利用するサービスのことです。PoteerChatは、まさにこのSaaSの形で、企業が手軽にAIデザイン生成を利用できるだけでなく、その利用が障害者クリエイターへの報酬還元に直結するという、画期的な仕組みを持っています。本記事では、AI初心者の方にも分かりやすく、PoteerChatがどのようなサービスで、どのように社会貢献に繋がるのかを詳しくご紹介します。
PoteerChat開発の背景:生成AI時代のクリエイター還元への問い
生成AIの技術は、これまで時間やコストがかかっていたコンテンツ制作の効率を飛躍的に向上させました。例えば、簡単な指示(プロンプト)を入力するだけで、瞬時に多様なデザイン案が生成されるようになりました。これは企業にとって、デザイン制作のスピードアップやコスト削減に繋がる大きなメリットです。
しかし、この技術の進化には、倫理的な問題や社会的な課題も伴います。特に議論されているのが、「生成AIが学習する元データは、誰かの作品ではないのか?」「その作品を作ったクリエイターには、AIの利用によって生み出された価値がどのように還元されるべきなのか?」という点です。もし、クリエイターの作品が勝手に利用され、何の対価も得られないとしたら、創作活動そのものが停滞してしまう可能性があります。
株式会社bajjiが運営する「Poteer」というプラットフォームは、もともと障害のある方々の日常行動から生まれる様々なものを、AIで解析し、企業品質のデジタルクリエイティブに変換する取り組みを行ってきました。例えば、散歩の軌跡、何気ない落書き、撮った写真、スマートフォンをタップする動き、声、目の動きなど、一つ一つの行動がユニークなクリエイティブの元となります。
これまでPoteerでは、これらのクリエイティブを作品として制作・販売することで、障害者クリエイターに価値を還元してきました。しかし、企業からは「自社のブランドに合ったデザインをすぐに作りたい」「社会的な意義のあるクリエイティブを積極的にビジネスに取り入れたい」という声が高まっていました。そこで、Poteerに蓄積されたクリエイティブを企業が直接活用し、自社のブランドに合わせたデザインを生成できるSaaSとして、PoteerChatが開発されたのです。
PoteerChatが解決する生成AI時代の課題
生成AIが普及する現代において、多くの人が高品質なコンテンツを手軽に作れるようになった一方で、「どのデータが、どのような価値を生み出したのか」そして「その価値は、元のクリエイターにどう還元されるのか」という問いは、社会全体で解決すべき大きな課題となっています。
PoteerChatは、この問いに対し、以下の3つの仕組みを実装することで、生成AIとクリエイターが共存し、お互いに良い影響を与え合う「新しい価値循環モデル」を構築しています。
- クリエイティブ生成時に、インスピレーション源となったデータを紐づける設計
PoteerChatでデザインを生成する際、そのアイデアの元となった障害者クリエイターの作品データが明確に記録されます。これにより、AIがどの作品からインスピレーションを得たのかが透明化されます。 - 利用に応じて障害者クリエイターへ報酬が還元される仕組み
企業がPoteerChatを利用してデザインを生成するたびに、そのデザインの元となったクリエイターへ報酬が支払われる仕組みです。これにより、AIの利用が直接的にクリエイターの収入に繋がり、創作活動の継続を支援します。 - 企業側が社会的インパクトを可視化できるダッシュボード
企業は、PoteerChatの利用を通じて、どれだけのクリエイターを支援し、どれほどの社会的価値を生み出したかを専用の画面(ダッシュボード)で確認できます。これは、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)活動やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を具体的に示すデータとなります。

上の図は、PoteerChatのエコシステム(持続可能な仕組み)を示しています。障害者クリエイターの日常の活動から生まれたクリエイティブがPoteerアプリを通じてデータ化され、PoteerChatで企業のデザインに活用されます。そして、生成されたデザインはPoteerStoreで商品化・販売されることもあり、その収益がクリエイターに還元されることで、社会参加と喜びを促進するという、一連の流れが描かれています。
PoteerChatの主な特徴
PoteerChatは、単にAIでデザインを生成するだけでなく、社会的な価値創造とビジネスニーズの両方を満たすために、いくつかのユニークな特徴を持っています。
1. クリエイターのデータを活用した生成AI
PoteerChatのAIは、一般的なAIとは異なり、障害のあるクリエイターから生まれた独自のデータをインスピレーション源として活用します。具体的には、以下の2種類のデータが使われます。
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クリエイター原画:障害のある方々の日常行動から自然に生まれたデータです。例えば、散歩した場所の軌跡、紙に描かれた落書き、日常の風景を切り取った写真、スマートフォンをタップする際のパターン、発した声の音色、視線の動きなど、これらは一つ一つがその人の個性や感性を映し出すユニークな表現です。
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AI生成クリエイティブ:Poteerアプリを通じて、上記のクリエイター原画を元にAIが生成したデザイン素材です。これは、人間(クリエイター)の感性とAIの技術が融合して生まれた、新しい形のクリエイティブと言えます。
これらのデータを組み合わせることで、PoteerChatは、単なる既存のデザインの模倣ではない、人間らしい温かみや意外性を持った、独自のクリエイティブ生成を実現しています。

2. ブランドガイドラインへの対応
企業がデザインを制作する際、最も重要となるのが「ブランドガイドライン」への適合です。ブランドガイドラインとは、企業のロゴ、色、フォント、デザインのトーン&マナーなど、ブランドイメージを一貫させるためのルールブックのようなものです。PoteerChatでは、企業が自社のブランドカラー(企業の色)、フォント(文字の種類)、トーン(デザインの雰囲気)などを細かく指定できます。これにより、AIが生成するデザインが、企業のブランドイメージにぴったりと合うように最適化されます。例えば、企業のロゴの色に合わせた背景色や、特定のフォントを使ったテキストデザインなど、細部にわたる調整が可能です。
3. 多様なクリエイティブ生成
PoteerChatは、様々なビジネスシーンで活用できる多様なデザインを生成できます。例えば、以下のような用途に対応可能です。
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テキスタイル:布地の模様や柄のデザイン。
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サムネイル:ウェブサイトや動画の表示に使われる小さな画像。
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プレゼン資料:会議や発表で使うスライドのデザイン。
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広告素材:オンライン広告や印刷物に使用する画像やバナー。
これらのデザインは、企業の要望に合わせて柔軟に生成されるため、マーケティング、広報、商品開発など、幅広い部門での活用が期待できます。
4. クリエイターへの還元
PoteerChatの最も重要な特徴の一つが、障害者クリエイターへの「報酬還元」の仕組みです。企業がPoteerChatを利用してデザインを生成すると、そのデザインのインスピレーション源となったクリエイターが特定され、利用状況に応じて自動的に報酬が支払われます。これは、生成AIの技術が、クリエイターの創作活動を奪うのではなく、むしろ支援し、新たな収益源を生み出す可能性を示しています。企業がデザインを生成すればするほど、クリエイターの収入が増え、創作意欲の向上や社会参加の機会拡大に繋がるという、ポジティブな循環が生まれます。
5. インパクトの可視化
現代の企業にとって、ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮やSDGs(持続可能な開発目標)への貢献は、企業価値を高める上で不可欠です。PoteerChatは、企業が自社の利用によって「どのクリエイターに、どれくらいの報酬が還元されたのか」や「どの程度の社会的インパクト(良い影響)が生まれたのか」を、専用のダッシュボード(管理画面)で確認できる機能を提供しています。この情報は、企業のESGレポートやCSR活動の報告書に活用でき、社会貢献への取り組みを具体的に示す強力なツールとなります。

上の画像は、PoteerChatのインパクト・ダッシュボードの画面です。総生成数や支援したクリエイターの数、そして個々のクリエイターへの貢献度が具体的に表示されており、企業が自社の社会貢献活動を明確に把握できるようになっています。
PoteerChatの料金プラン
PoteerChatは、企業のニーズに合わせて複数の料金プランを提供しています。初めて利用する方から、大規模なデザイン生成を必要とする企業まで、柔軟に対応できるよう設計されています。
サービスサイトはこちら:https://chat.poteer.life/ja
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Free(無料プラン):月に5回までデザイン生成が可能。まずは試してみたい企業向けです。
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Starter(スタータープラン):月額3,300円で、月に50回までデザイン生成が可能。小規模なデザインニーズに対応します。
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Pro(プロプラン):月額16,500円で、月に200回までデザイン生成が可能。より頻繁にデザインを生成したい企業向けです。
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Enterprise(エンタープライズプラン):料金は要問い合わせで、生成回数に制限はありません。大規模なデザイン制作や特別な要件を持つ企業に適しています。
これらのプランにより、企業は自社の予算や利用頻度に合わせて最適な選択ができます。
今後の展望:クリエイターとAIが共創する未来
PoteerChatは、今後もサービスの進化を続けていきます。障害者クリエイターの数が増えれば増えるほど、AIが学習するデータの種類や多様性が広がり、より高度でユニークなクリエイティブ生成が可能になるでしょう。
将来的には、ビジネスチャットツールであるSlackやMicrosoft Teamsとの連携を強化し、日常業務の中でシームレスにPoteerChatを利用できるようになります。また、テンプレート機能の拡充も進め、より手軽にプロ品質のデザインを生成できる環境を目指します。これにより、PoteerChatは企業のクリエイティブ制作プロセスに深く組み込まれるプラットフォームとなることでしょう。
株式会社bajjiは、「創作・生成・還元」という3つの要素が循環する新しいエコシステムの構築を推進しています。これは、AIの力を借りて、これまで十分に評価されてこなかった才能に光を当て、社会全体の創造性と包摂性(多様性を受け入れること)を高めていくという、同社の強いビジョンを反映しています。
株式会社bajjiについて
株式会社bajjiは、「テクノロジーの力で世の中を1mmでも良くする」という企業理念(パーパス)のもと、様々な事業を展開しています。SDGsの進捗状況を可視化するメディア「mySDG」、心の健康をサポートする感情日記アプリ「Feelyou」、脱炭素社会への貢献を促すアプリ「capture.x」など、社会課題の解決に貢献するサービスを多数提供しています。
これまでの実績も豊富で、Google Play ベストオブ 2020「隠れた名作部門」大賞、超DXサミット最優秀賞の日経賞、グッドデザイン賞2022受賞など、数々の栄誉に輝いています。2022年12月には日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2023年版】」に選出され、その革新性が高く評価されています。
また、J-StarXおよびJ-Startupとして、世界最大級のテクノロジー見本市「CES(セス)」やフランスのスタートアップイベント「VIVA technology(ビバテクノロジー)」のJapanパビリオンにも選出されるなど、国内外での活躍が期待されています。2026年にはPoteerがソーシャルプロダクツ賞を受賞しており、社会的な価値創造への貢献も認められています。
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設立:2019年4月
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代表:代表取締役 小林 慎和
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所在地:東京都台東区柳橋2丁目1番11号 Barq SHINSO BLDG 403
関連リンク
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Poteer LP(ランディングページ):https://lp.poteer.life/
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Poteer iOSアプリ:https://apps.apple.com/jp/app/poteer-%E3%83%9D%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2/id6746227695
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Poteer Androidアプリ:https://play.google.com/store/apps/details?id=life.bajji.poteer&hl=ja
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Poteer ストア:https://store.poteer.life/ja
まとめ:AIと共生する新しい社会の形へ
PoteerChatは、生成AIの技術が持つ可能性を最大限に引き出しつつ、その課題を解決し、社会にポジティブなインパクトを与える画期的なサービスです。障害のあるクリエイターの才能をビジネスに活かし、企業のデザイン制作を効率化するだけでなく、クリエイターに公正な報酬を還元するという新しいエコシステムは、AIと人間が共存・共栄する未来の社会の形を示しています。
AI初心者の方にも、PoteerChatの仕組みやその社会的な意義をご理解いただけたでしょうか。このサービスが広がることで、より多くの障害者クリエイターが活躍できる場が生まれ、企業は社会貢献とビジネス成長を両立できるようになるでしょう。PoteerChatの今後の展開に、ぜひご注目ください。

