歴史上の偉人と対話!品川弥二郎の対話型AIが拓く歴史史料活用の新時代
もし、あなたが歴史上の偉人と直接話せる機会があったら、何を尋ねてみたいでしょうか?
そんな夢のような体験が、AI(人工知能)の進化によって現実味を帯びてきました。NIPPON EXPRESSホールディングスグループのデータ・ソリューション事業を手掛ける株式会社NXワンビシアーカイブズ(以下、NXワンビシアーカイブズ)は、京都府立大学 文化情報学研究室の池田さなえ准教授と共同で、幕末から明治期に活躍した官僚・政治家である「品川弥二郎」に関する対話型AI(カスタムGPT)の試作に成功しました。
この画期的な取り組みは、歴史的な価値を持つ貴重な史料や専門的な研究論文の知見を、歴史学以外の専門家や一般の方々がもっと気軽に、そして楽しくアクセスできる環境を整えることを目指しています。

品川弥二郎とは?幕末から明治を駆け抜けた偉人
AIとの対話を通して知ることができる「品川弥二郎」とは、一体どのような人物だったのでしょうか。
品川弥二郎(1843-1900年)は、幕末の長州藩士として生まれ、明治維新では「奇兵隊」に所属し活躍しました。明治政府では官僚としてドイツに留学し、帰国後は内務省の要職を歴任。初代内務大臣や農商務大臣などを務め、地方自治制度の確立や殖産興業に尽力しました。また、教育分野にも深く関わり、日本の近代化に多大な貢献をした人物として知られています。
彼の残した手紙や記録は、当時の社会情勢や人々の考え方を知る上で非常に貴重な歴史史料となっています。今回試作された対話型AIは、このような品川弥二郎の歴史史料や研究データをもとに、まるで彼自身が語りかけてくるかのような体験を提供することを目指しています。
なぜ今、歴史史料にAIを?取り組みの背景にある課題
歴史史料は、過去の出来事や文化を知る上で欠かせない宝物です。しかし、これらの貴重な史料は、現代においていくつかの大きな課題を抱えています。
1. 分散し、アクセスしにくい史料たち
近代日本の政治史に関する史料は、博物館、図書館、文書館など、さまざまな機関に分散して保管されています。しかし、どこに何があるのかを示す「目録情報」が十分に共有されていなかったり、そもそも目録自体が未整備であったり、デジタル化されていないケースも少なくありません。このため、研究者でさえ、必要な史料を見つけ出すのに大変な労力と時間を要していました。
2. デジタル化されても活用が難しい現状
近年、史料のデジタル化は進んでいますが、ただ画像をスキャンしてデジタルデータにするだけでは、十分な活用にはつながりません。多くのデジタル化された史料は、文字情報が読み取れる「テキストデータ」として整備されていなかったり、複雑な手書きのレイアウトのために、AIが読み解きにくい形になっています。
その結果、AIを使った「数量分析」(データから傾向を読み取る)や「テキストマイニング」(文章から重要な情報を抽出する)といった高度な分析に不向きなデジタルファイルとなってしまい、せっかくの価値ある史料が十分に活用されていないのが現状です。
3. 学術と社会の橋渡しを阻む壁
これらの課題は、歴史学の研究成果や貴重な歴史史料の存在が、他の専門分野や一般社会に十分に共有されない一因となっています。歴史研究の知見が、ビジネスや社会問題の解決、あるいは人々の教養や娯楽に活かされる機会が失われているのです。
NXワンビシアーカイブズと京都府立大学は、このような状況を打開し、歴史研究と社会をつなぐ新たな道を切り開くために、今回の対話型AIの試作に取り組みました。
「帰ってきた品川弥二郎」チャットボットの仕組みと特徴
今回試作された対話型AIは、「帰ってきた品川弥二郎」と名付けられ、OpenAI社のカスタムGPT機能を用いて構築されました。カスタムGPTとは、特定の目的やデータに合わせてカスタマイズされたAIチャットボットのことで、まるで専門家と話しているかのような対話が可能です。
1. 品川弥二郎の人柄を再現
このチャットボットは、単に質問に答えるだけでなく、品川弥二郎の語り口や性格特性を反映するように設計されています。これにより、ユーザーはまるで品川弥二郎本人と会話しているかのような、より没入感のある体験ができます。歴史上の人物が、現代の言葉で、その人らしい表現で語りかけてくるというのは、歴史をより身近に感じる素晴らしい機会となるでしょう。
2. 信頼性の高い情報源「Knowledge」
対話型AIの回答の根拠となる情報源は、「Knowledge(ナレッジ)」と呼ばれるデータベースに格納されています。このKnowledgeには、品川弥二郎が実際に書いた手紙の「翻刻文」(原本を現代の文字に起こしたもの)に加えて、池田准教授が国立歴史民俗博物館の奨励研究として行った品川弥二郎の書簡目録情報に関する分析データが含まれています。
つまり、AIは、歴史史料(一次資料)そのものと、それらを専門家が分析した研究データ(二次資料)の両方を参照して回答を生成します。これにより、AIが提供する情報の信頼性と深さが格段に向上しています。
3. 根拠を明示する対話設計
「帰ってきた品川弥二郎」は、対話の基本方針として「情報源優先」と「根拠提示型」を標準としています。これは、AIが回答する際に、どの史料やデータに基づいているのかを明確に示すことを意味します。これにより、ユーザーはAIの回答の信頼性を確認でき、さらに深く学びたい場合には元の情報源にアクセスすることも可能です。
また、「語調統制」によって、品川弥二郎らしい言葉遣いを維持しつつ、専門的な情報を格納したKnowledgeを使って、質問の検索、参照、そして回答の生成までを一貫して処理する設計となっています。これにより、ユーザーはスムーズかつ的確な情報を得ることができます。
京都府立大学とNXワンビシアーカイブズの連携
今回の対話型AIの試作は、京都府立大学とNXワンビシアーカイブズが、歴史文化資源の利活用を目的として連携している一環として実現しました。
京都府立大学の池田准教授は、歴史史料の専門家として、品川弥二郎に関する深い知見と研究データを提供しました。特に、国立歴史民俗博物館での奨励研究で得られた書簡目録情報の分析データは、AIのKnowledgeの重要な基盤となっています。
一方、NXワンビシアーカイブズは、長年にわたり企業の重要な情報管理に携わってきた実績と、最新のAI技術を活用するノウハウを提供しました。情報の安全確保と効率的な管理を追求してきた同社の技術力が、今回の歴史史料のデジタル化とAI活用において大きな役割を果たしています。
この産学連携によって、歴史学の専門知識とAI技術が融合し、これまで難しかった歴史史料の新たな活用方法が模索されています。
この取り組みが目指す3つのポイント
NXワンビシアーカイブズと池田准教授は、今回の対話型AIの試作を通じて、以下の3つの重要な点を検討しています。
1. 歴史学の研究成果を他分野で活用する
歴史研究の成果は、過去の出来事を明らかにするだけでなく、現代社会の課題を理解し、未来を予測するための貴重な示唆を与えてくれます。しかし、その多くは専門的な論文や書籍に留まり、他の学術分野やビジネス、行政といった実社会で活用される機会は限られていました。
この対話型AIは、歴史学の研究成果を、よりアクセスしやすい形で提供することで、例えば企業の経営戦略や地域活性化、教育コンテンツ開発など、多様な分野での活用を促進することを目指しています。歴史的な視点から新たなアイデアが生まれる可能性を秘めているのです。
2. 歴史的人物(歴史史料)への親しみやすさを向上させる
歴史の教科書や専門書を読むだけでは、なかなか歴史上の人物に親しみを覚えるのは難しいかもしれません。しかし、AIを通じて直接対話できることで、品川弥二郎という人物の人間性や考え方をより深く理解し、身近に感じることができるようになります。
これにより、歴史への興味関心を喚起し、特に若い世代やAI初心者が、堅苦しく考えずに歴史に触れるきっかけとなることが期待されます。博物館や史料館への来館促進にもつながるかもしれません。
3. 持続可能な取り組みの実現
どんなに素晴らしい取り組みも、継続できなければ意味がありません。このプロジェクトでは、以下の観点から「持続可能性」も重視しています。
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技術面: 最新のAI技術を使いつつも、将来的な技術の進歩にも対応できる柔軟なシステム設計。
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コスト面: 高額な費用をかけずに運用できるような、現実的なコスト感でのシステム構築。
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研究者自身による運用・保守: 歴史研究者が、ITの専門知識がなくても、ある程度自身でAIの運用や情報の更新、保守を行えるような使いやすさ。
これらの点を考慮することで、歴史学の現場で、長期的にAIを活用した史料管理・公開が進むことを目指しています。
歴史史料活用の未来:生成AIがもたらす可能性
NXワンビシアーカイブズと池田准教授は、今後も「歴史史料への親近性の向上」、「利用容易性(アクセシビリティ/ユーザビリティ)の確保」、「持続可能なコスト感」、「研究者自身による運用・保守可能性」といった観点から、歴史史料に対する生成AI活用の有効性を検証していきます。
生成AIは、膨大な情報を学習し、まるで人間が書いたかのような文章や対話を生成できる技術です。この技術を歴史史料に適用することで、以下のような可能性が広がります。
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史料のアクセシビリティ向上: 難解な古文書をAIが現代語に翻訳したり、特定のテーマに関する情報を素早く抽出したりできるようになります。これにより、専門家でなくても史料の内容に容易にアクセスできるようになります。
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新たな研究手法の開拓: AIが史料間の関連性や隠れたパターンを発見し、これまで見過ごされてきた歴史的側面を浮き彫りにするかもしれません。研究者は、より高度な分析に集中できるようになります。
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教育コンテンツの革新: AIチャットボットやインタラクティブな歴史体験を通じて、学生たちが歴史に主体的に関わり、深い学びを得られるようになります。
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文化観光の魅力向上: 歴史上の人物と対話できるAIガイドや、史跡を巡りながら関連史料をAIが解説するといった、新しい観光体験が生まれる可能性があります。
今回の品川弥二郎の対話型AIは、このような歴史史料の新たな活用の可能性を探る、実証的な試みであり、その成果は今後の歴史研究と社会のあり方に大きな影響を与えることでしょう。
株式会社NXワンビシアーカイブズとは
今回の取り組みをリードするNXワンビシアーカイブズは、1966年の設立以来、「企業の情報の安全確保と管理の効率化」を一貫して追求してきた企業です。
同社は、強固なセキュリティ体制のもと、機密文書、医薬品開発関連資料、永年保存の歴史資料、テープ等の記録メディア、デジタルデータ、細胞・検体試料・治験薬・医薬品原薬など、企業の重要な情報の「発生」から「活用」「保管」「抹消」までのライフサイクル全てをカバーする総合的なサービスを提供しています。
現在では、東京・名古屋・大阪・九州に営業拠点を構え、官公庁や金融機関、医療機関、製薬業をはじめとする4,600社以上のお客様に利用されています。近年では、書類と電子契約に対応した電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」(2019年リリース)や、Web申し込み後最短5日で利用可能な書類保管サービス「WAN-CASE」(2022年リリース)、リーズナブルな電子化プラン「WAN-Scan」やカスタマイズ可能なレコードバンキングシステム「WAN-RECORD Plus®」(2024年リリース)など、お客様の働き方の変革をサポートする多様なサービスを展開しています。
長年の情報管理のノウハウと最新技術を組み合わせることで、NXワンビシアーカイブズは、今回の歴史史料のAI活用においても、その専門性と信頼性を発揮しています。
企業情報に関する詳細は、株式会社NXワンビシアーカイブズの公式サイトをご覧ください。
まとめ
NXワンビシアーカイブズと京都府立大学による品川弥二郎の対話型AIの共同試作は、歴史史料の活用に新たな地平を切り開く画期的な取り組みです。歴史学の成果を社会に開くという大きな目標に向け、AIという最新技術が、過去と現在、そして未来をつなぐ架け橋となることでしょう。
この「帰ってきた品川弥二郎」が、多くの人々にとって歴史に触れる新たな扉となり、学術研究のさらなる発展と社会全体の知的好奇心の向上に貢献することを期待します。AIが歴史を語り継ぐ、そんな新しい時代がすぐそこまで来ています。

