上田日本無線、生成AI搭載「ヤラク翻訳」導入で医療機器翻訳を大幅効率化
無線通信機器や車載電子機器など幅広い分野で電子技術を提供する上田日本無線株式会社が、このたび、生成AIを搭載した翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」を導入しました。これにより、特に高度な専門性が求められる医療機器関連文書の翻訳業務が大幅に効率化され、同社のグローバル展開がさらに加速すると期待されています。

近年、上田日本無線は医療機器分野での技術応用やグローバル展開を強化しています。しかし、それに伴い、米国食品医薬品局(FDA)関連の規制資料や技術文書など、極めて専門性の高い翻訳業務の負荷が増大していました。このような背景から、「ヤラク翻訳」の導入は、翻訳の作業効率と品質の両立、そして社内のワークフロー改革を推進するための重要な一歩となります。
医療機器分野における専門翻訳の課題とDXの必要性
医療機器の分野における翻訳は、一般的なビジネス文書の翻訳とは比較にならないほど、高い精度と専門性が求められます。なぜなら、わずかな誤訳が人々の健康や安全に直結する可能性があるためです。ここでは、医療機器分野の翻訳が抱える具体的な課題と、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要とされる理由を詳しく見ていきましょう。
1. 極めて高い専門性と厳密な正確性
医療機器関連文書には、医学、薬学、工学、生物学など、多岐にわたる専門知識が必要です。例えば、手術器具の取扱説明書や、診断装置の技術仕様書、臨床試験の報告書など、その内容は非常に複雑で、専門用語が多用されます。これらの用語は、一語一句正確に翻訳されなければなりません。誤った表現や不正確な翻訳は、製品の誤用を招いたり、法的問題を引き起こしたりするリスクがあります。
2. 厳格な法的・規制要件への対応
医療機器を海外で展開する際には、各国の規制当局が定める厳格な基準(例えば、米国のFDAや欧州のCEマークなど)に準拠した文書作成が必須です。これらの規制文書は、特定のフォーマットや表現が求められるだけでなく、常に最新の規制変更に対応していく必要があります。翻訳者は、単に言語を変換するだけでなく、各国の医療規制に関する深い理解も求められるため、翻訳作業は非常に複雑かつ時間のかかるものとなります。
3. 翻訳量と品質・一貫性の確保
グローバル展開が進むにつれて、翻訳すべき文書の量は膨大になります。製品の取扱説明書、保守マニュアル、販売促進資料、規制申請書類など、その種類も多岐にわたります。これら大量の文書を、複数の翻訳者が担当する場合、用語や表現にばらつきが生じやすくなります。しかし、医療機器においては、製品名や機能に関する用語、安全性に関する警告文など、文書全体で一貫した表現が不可欠です。品質と一貫性を維持しながら、翻訳スピードを上げることは、長年の課題でした。
4. 高い翻訳コストと時間
上記のような専門性と厳格さから、医療機器の翻訳は、高度なスキルを持つ専門翻訳者に依頼する必要があり、必然的にコストが高く、時間もかかります。このコストと時間の制約は、特に中小企業にとって、海外展開への大きな障壁となることがあります。
これらの課題を解決し、グローバル市場での競争力を高めるためには、翻訳プロセスにおけるDXが不可欠です。AIやデジタル技術を活用することで、翻訳の効率化、品質向上、コスト削減を実現し、より迅速な海外展開を可能にする道が開かれます。
生成AI搭載翻訳支援ツール「ヤラク翻訳」とは?AIが翻訳を変えるメカニズム
上田日本無線が導入した「ヤラク翻訳」は、単なる機械翻訳ツールではありません。これは、CATツール(Computer Assisted Translation Tool:コンピュータ支援翻訳ツール)と呼ばれる翻訳作業を効率化し、品質を向上させるためのソフトウェアに、最新の生成AI(Generative AI)を組み合わせた画期的なツールです。AI初心者の方にも分かりやすく、その仕組みとメリットを解説します。
CATツールが翻訳作業をどう支援するのか?
CATツールは、人間の翻訳者がより速く、より正確に翻訳できるように、様々な機能を提供します。主な機能は以下の3つです。
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翻訳メモリ(Translation Memory: TM)
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これは「過去の翻訳資産のデータベース」のようなものです。一度翻訳された文章やフレーズが、原文と訳文のペアとして保存されます。次に同じ、あるいは似た文章が出てきた場合、CATツールが自動的に過去の翻訳を提示してくれます。
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メリット: 同じ文章を何度も翻訳する手間が省け、翻訳スピードが大幅に向上します。また、常に過去の翻訳が参照されるため、文書全体での表現の一貫性が保たれ、品質が安定します。
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用語集(Term Base: TB)
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特定のプロジェクトや企業で使う専門用語や固有名詞を登録し、その推奨される訳語を管理するデータベースです。例えば、医療機器の特定の部品名や機能名などを登録しておくことで、翻訳者が常に正しい訳語を使用できます。
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メリット: 専門用語の誤訳や表記の揺れを防ぎ、翻訳の品質と一貫性を確保します。特に医療機器のように専門用語が多い分野では、非常に重要な機能です。
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機械翻訳(Machine Translation: MT)
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AIが自動で文章を翻訳する機能です。CATツールでは、翻訳メモリや用語集と連携しながら、機械翻訳の提案を翻訳者に提供します。
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メリット: 翻訳の初期ドラフトをAIが作成してくれるため、翻訳者はゼロから翻訳するのではなく、AIの提案を修正・推敲する作業に集中できます。これにより、翻訳のスピードが格段に向上します。
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生成AIが翻訳に革命をもたらす理由
従来の機械翻訳は、統計的な手法やルールベースのものが主流で、文脈を完全に理解することが苦手でした。そのため、不自然な表現になったり、専門的な文章では誤訳が生じやすかったりする課題がありました。
しかし、生成AIは、大量のテキストデータを学習することで、人間が書いたかのような自然な文章を生成する能力を持っています。この生成AIがCATツールに組み込まれることで、以下のような革新が起こります。
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文脈を理解した自然な翻訳: 生成AIは、単語やフレーズだけでなく、文章全体の意味や文脈をより深く理解して翻訳を生成します。これにより、より自然で流暢な訳文が期待できます。
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専門性の高い文章への対応力向上: 医療機器のように専門用語が多く、複雑な構文を持つ文章でも、生成AIは過去の学習データから適切な表現を見つけ出し、より正確な翻訳を提案できるようになります。
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品質とスピードの飛躍的向上: CATツールの翻訳メモリや用語集で一貫性を保ちつつ、生成AIが高品質な初期ドラフトを迅速に生成することで、翻訳者はより高度な推敲や最終確認に時間を割けるようになります。これにより、全体の翻訳プロセスが劇的にスピードアップし、最終的な品質も向上します。
「ヤラク翻訳」は、まさにこの「人とAIの協働」を最大限に引き出すツールと言えます。AIが効率的に翻訳のベースを作り、人間がその品質を保証・向上させることで、専門性の高い医療機器翻訳においても、これまでにないスピードと精度を実現するのです。

上田日本無線が「ヤラク翻訳」導入で実現するワークフロー改革とグローバル戦略
上田日本無線株式会社が「ヤラク翻訳」を導入した背景には、医療機器の海外展開に伴う翻訳業務の増大と、それに伴う負荷の増加がありました。この導入により、具体的にどのようなワークフロー改革とグローバル戦略の強化が期待されるのでしょうか。
1. 翻訳作業の劇的な効率化
「ヤラク翻訳」の生成AIによる高精度な翻訳支援は、特に時間と労力がかかっていた米国食品医薬品局(FDA)関連の規制資料や、複雑な技術文書の翻訳時間を大幅に短縮します。AIが初期翻訳を迅速に生成し、翻訳メモリや用語集が用語の一貫性を保証することで、翻訳者はより少ない手間で高品質な訳文を作成できるようになります。
2. 翻訳品質の向上と一貫性の確保
医療機器分野では、わずかな誤訳も許されません。「ヤラク翻訳」は、生成AIによる文脈を考慮した自然な翻訳と、用語集による専門用語の厳密な管理を両立させます。これにより、翻訳品質が向上し、多数の文書や複数の担当者間でも表現の一貫性が保たれるため、信頼性の高い海外規制対応文書や技術資料を効率的に作成できます。
3. 社内ワークフローの改革と迅速な情報展開
翻訳プロセスの効率化は、社内全体のワークフローにも良い影響を与えます。これまで翻訳に要していた時間やリソースが削減されることで、製品開発や海外市場投入のリードタイムが短縮されるでしょう。また、海外の最新情報を迅速に社内に展開できるようになるため、意思決定のスピードアップにも貢献します。
4. グローバル展開の加速と競争力強化
効率的かつ高品質な翻訳体制は、上田日本無線のグローバル戦略を強力に後押しします。海外市場への製品投入がスムーズになり、各国・地域の顧客に対して、より迅速かつ正確な情報提供が可能になります。これにより、国際的な競争力を高め、新たな市場での成長機会を捉えることができると期待されます。
今回の「ヤラク翻訳」導入は、上田日本無線がデジタル技術を積極的に活用し、変化の激しいグローバル市場で持続的な成長を目指す、DX推進の象徴的な事例と言えるでしょう。
「ヤラク翻訳」を提供する八楽株式会社について
八楽株式会社は、生成AIを搭載した翻訳支援ツール(CATツール)「ヤラク翻訳」の開発と提供を行っています。自然言語処理(NLP)や機械翻訳技術の研究開発を基盤に、「人とAIの協働による新しい翻訳体験」の創出を目指しています。
同社のツールは、製造業や自治体をはじめとする多様な分野で導入が進んでおり、グローバルコミュニケーションの効率化と品質向上を支援しています。
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本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-5 リンクスクエア新宿16階
上田日本無線株式会社について
上田日本無線株式会社は、1947年の創業以来、無線通信技術を基盤に、長年にわたり電子技術を提供してきました。現在では、車載電子機器、情報通信機器、医療機器など、幅広い分野で製品を開発・製造しています。
特に近年は、医療機器分野での技術応用やグローバル展開を強化しており、高度な電子技術と信頼性の高い製品づくりを通じて、人々の安全で豊かな社会の実現に貢献しています。
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本社:長野県上田市踏入2-10-19
まとめ:AIと人の協働が拓く、グローバルビジネスの新時代
上田日本無線株式会社による「ヤラク翻訳」の導入は、専門性の高い分野における翻訳業務の課題を、生成AIとCATツールを組み合わせることで解決する、先進的な事例です。
医療機器のように、正確性と専門性が極めて重要視される分野でのAI活用は、これからのグローバルビジネスにおいて不可欠な要素となるでしょう。AIが翻訳の初期プロセスを効率化し、人間が最終的な品質とニュアンスを保証する「人とAIの協働」は、翻訳業務だけでなく、様々な分野でのDX推進の鍵を握っています。
この取り組みは、上田日本無線が医療機器分野でのグローバル展開をさらに加速させ、国際社会への貢献を深めていくための強力な基盤となるでしょう。そして、八楽株式会社は、今後もこのようなAIと人の協働による新しい翻訳体験を通じて、多様な業界のグローバルコミュニケーションを支援していくことが期待されます。

