ディープテックで未来を切り拓く!K-NICスタートアップハンズオンプログラム2025年度下期、注目の8社が採択
現代社会が直面する地球規模の課題や、私たちの生活を根本から変えるような技術革新。これらを解決し、新たな価値を生み出す「ディープテック」と呼ばれる分野が、今、大きな注目を集めています。ディープテックは、AI(人工知能)やロボティクス、バイオテクノロジー、新素材など、深い科学的知見や技術を基盤とした事業を指します。
そんなディープテック領域での起業や事業育成を強力に支援する「K-NICスタートアップハンズオンプログラム」の2025年度下期採択者が、このたび8者決定しました。本プログラムは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と連携し、川崎市が運営を委託するKawasaki-NEDO Innovation Center(K-NIC)が実施しています。今回は、採択された革新的な事業と、それを支えるプログラムの全貌、そして豪華なメンター陣について、AI初心者の方にも分かりやすく詳しくご紹介します。
K-NICスタートアップハンズオンプログラムとは?
K-NICスタートアップハンズオンプログラムは、ディープテック領域で具体的な技術シーズ(技術の種)を持ち、研究開発要素のある事業での起業、または事業の育成を目指す方々を対象としたアクセラレーションプログラムです。
プログラムの目的と対象
このプログラムの最大の目的は、起業の促進と事業化の加速です。採択された起業家候補や研究開発型スタートアップは、NEDOが実施する研究開発型スタートアップ支援事業へのエントリー、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達、そして事業会社との協業といった目標達成に向けて、短期集中的な個別ハンズオン支援(メンタリング)を受けます。
ディープテック領域の具体例
ここでいうディープテック領域の事業とは、以下のような多岐にわたる分野を含みます。
-
ロボティクス:産業用ロボットからサービスロボットまで、自動化や人手不足解消に貢献する技術。
-
AI(人工知能):データ解析、自動運転、画像認識など、様々な分野で活用される知能化技術。
-
エレクトロニクス:次世代半導体や電子デバイスなど、情報通信社会を支える基盤技術。
-
IoT(モノのインターネット):あらゆるモノがインターネットにつながり、新たなサービスを生み出す技術。
-
環境:再生可能エネルギー、CO2削減、資源循環など、持続可能な社会を実現する技術。
-
素材:高機能素材、バイオ素材など、製品の性能向上や環境負荷低減に貢献する新素材。
-
医療機器:診断・治療を高度化する医療機器や、遠隔医療システムなど。
-
ライフサイエンス:遺伝子編集、再生医療など、生命科学の知見を応用した技術。
-
バイオテクノロジー:微生物利用、バイオ燃料など、生物の機能を活用した技術。
-
航空宇宙:次世代航空機、宇宙開発、衛星通信など、フロンティアを開拓する技術。
これらの分野で、まだ世に出ていない革新的な技術やアイデアを持つスタートアップが、このプログラムを通じて事業として花開くことを目指しています。
プログラムの詳細については、K-NICのウェブサイトで確認できます。
https://www.k-nic.jp/program/9411/
また、過去の採択者については、以下の記事でご覧いただけます。
-
エネルギー問題の解決策となる新素材を生み出す!半導体グレードのダイヤモンド基板製造への熱意と挑戦 | K-NIC川崎市にあるコワーキングスペース&起業支援施設「Kawasaki-NEDO INNOVATION CENT -
「惑星間の行き来を当たり前に」 元官僚が挑む宇宙デブリ(ゴミ)を無くすビジネス【株式会社BULL】 | K-NIC川崎市にあるコワーキングスペース&起業支援施設「Kawasaki-NEDO INNOVATION CENTER
2025年度下期採択者8社を徹底紹介
今回採択された8者の事業プランは、ライフサイエンス、ロボティクス、環境・エネルギー、航空・宇宙といった幅広い分野にわたっており、それぞれの技術が社会に与える影響は計り知れません。ここでは、各採択者の事業プランを具体的に見ていきましょう。

| 氏名(法人名またはチーム名) | 事業プラン名 |
|---|---|
| 江口弘一(チームメタルバイオテクノロジー) | 微生物利用による廃太陽電池からのレアメタル回収事業 |
| 小木將綱(UPCYCLE Technologies株式会社: https://upcycletech.jp/) | 触媒式低温炭化装置による有機性廃棄物のアップサイクル事業 |
| 田口好弘(株式会社The IT Lab: https://www.the-itlab.com/) | 糖鎖×miRNA解析による多がん種リキッド検査 |
| 加藤優一(ポリカループ) | 肥料とモノマーを与えるポリカーボネートのケミカルリサイクル |
| 菅沼名津季(株式会社bacterico: https://bacterico.co.jp/) | 個人専用オーダーメイドビフィズス菌製剤 |
| 新井淳一(みなとロケット株式会社: https://minatorocket.com/) | ハイブリッドロケットによる宇宙輸送サービス事業 |
| 西洋介(白銀技研株式会社: https://shirogane.ltt.jp/) | パーソナル電動エアモビリティ「Beedol」の開発と量産化 |
| 瀧下奎斗(Kanaria Tech株式会社: https://www.kanaria.tech/ja) | Kanaria Robotic Model(KRM): モバイル社会的ナビゲーションのための基盤モデル |
各事業プランの解説
-
江口弘一(チームメタルバイオテクノロジー)「微生物利用による廃太陽電池からのレアメタル回収事業」
太陽電池は再生可能エネルギーの重要な源ですが、その寿命が来ると大量の廃棄物となります。この事業は、特定の微生物の力を借りて、廃太陽電池から貴重なレアメタルを効率的に回収することを目指しています。これは、資源の有効活用と環境負荷の低減に大きく貢献する、まさにサーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現する技術と言えるでしょう。 -
小木將綱(UPCYCLE Technologies株式会社)「触媒式低温炭化装置による有機性廃棄物のアップサイクル事業」
UPCYCLE Technologies株式会社は、有機性廃棄物(生ごみや農業廃棄物など)を特殊な装置で低温炭化し、新たな価値を持つ製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」を推進します。通常、廃棄物は燃やされたり埋められたりしますが、この技術を使えば、環境に優しく、さらに有用な資源へと転換できる可能性があります。 -
田口好弘(株式会社The IT Lab)「糖鎖×miRNA解析による多がん種リキッド検査」
株式会社The IT Labが提案するのは、血液検査だけで複数種類のがんを早期に発見できる技術です。体内の「糖鎖」と「miRNA」という生体分子を組み合わせることで、がんの兆候をより高精度に捉えることを目指します。これは、がんの早期発見・早期治療に繋がり、多くの命を救う可能性を秘めたライフサイエンス分野の画期的な技術です。 -
加藤優一(ポリカループ)「肥料とモノマーを与えるポリカーボネートのケミカルリサイクル」
ポリカーボネートは、CDやスマートフォンの筐体など、私たちの身の回りにある多くの製品に使われているプラスチックです。ポリカループの事業は、使用済みポリカーボネートを化学的に分解し、再びプラスチックの原料(モノマー)や肥料として再利用するケミカルリサイクル技術です。これにより、プラスチックごみの削減と資源の循環に貢献します。 -
菅沼名津季(株式会社bacterico)「個人専用オーダーメイドビフィズス菌製剤」
株式会社bactericoは、個人の腸内環境に合わせた最適なビフィズス菌製剤を提供するサービスを開発しています。人それぞれ異なる腸内フローラ(細菌叢)を解析し、その人に最も効果的なビフィズス菌を配合することで、よりパーソナルな健康維持・増進をサポートすることを目指します。これは、個別化医療・健康の未来を拓くものです。 -
新井淳一(みなとロケット株式会社)「ハイブリッドロケットによる宇宙輸送サービス事業」
みなとロケット株式会社は、液体燃料と固体燃料を組み合わせた「ハイブリッドロケット」を用いた宇宙輸送サービスを展開します。従来のロケットに比べて安全性が高く、コストも抑えられるハイブリッドロケットは、小型衛星の打ち上げや宇宙資源開発など、新たな宇宙ビジネスの可能性を広げることが期待されます。 -
西洋介(白銀技研株式会社)「パーソナル電動エアモビリティ『Beedol』の開発と量産化」
白銀技研株式会社が手掛けるのは、個人が手軽に空を移動できる電動エアモビリティ「Beedol」です。ドローンの技術を応用し、都市部の移動手段や災害時の活用など、未来の交通インフラを大きく変える可能性を秘めています。安全で使いやすいパーソナルエアモビリティの実現は、SFの世界が現実に近づく一歩となるでしょう。 -
瀧下奎斗(Kanaria Tech株式会社)「Kanaria Robotic Model(KRM): モバイル社会的ナビゲーションのための基盤モデル」
Kanaria Tech株式会社の「KRM」は、ロボットが人間社会の中でより自然に、かつ効果的に機能するための基盤となるAIモデルです。ロボットが周囲の状況を理解し、人々とコミュニケーションを取りながら、適切な行動をとるための「社会的ナビゲーション」能力を向上させます。これにより、家庭や公共施設でのロボットの活用がさらに広がるでしょう。
これらの事業は、約2ヶ月間のプログラム期間中(2026年1月~3月末)に、豊富な経験を持つ2名のメンターによる徹底的な伴走支援を受け、さらに事業のブラッシュアップを図ります。
強力なメンター陣が事業を徹底伴走
K-NICスタートアップハンズオンプログラムでは、採択されたスタートアップの成長を加速させるため、経験豊富なメンター陣が個別に伴走支援を行います。彼らは、それぞれの専門知識とネットワークを活かし、事業計画の具体化、資金調達戦略、市場開拓など、多岐にわたるアドバイスを提供します。今回は、その中から4名のスーパーバイザーをご紹介します。
K-NICスーパーバイザー 尾﨑 典明 氏

尾﨑氏は、長年にわたり企業の新事業・新商品開発支援に携わってきたコンサルティングのプロフェッショナルです。2009年にS-factoryを創業後、自治体やNPO、スタートアップへの支援も行いながら、官公庁等のアドバイザーも歴任されています。業種や事業ステージを問わず、それぞれの課題に応じた実践的な支援を提供しており、TXアントレプレナーパートナーズ副代表理事、NEDO技術委員、NEPスーパーバイザー、筑波大学国際産学連携本部 客員教授、北陸先端科学技術大学院大学 客員教授など、多岐にわたる要職を兼務されています。その幅広い知見と経験は、採択者の事業を多角的にサポートするでしょう。
K-NICスーパーバイザー 岡島 康憲 氏

岡島氏は、電気通信大学大学院修了後、NECビッグローブ株式会社で動画配信サービスの企画運営を担当。その後、ハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事株式会社を創業し、自社製品開発だけでなく、企業向けのハードウェアプロトタイピングや商品企画支援も手がけてきました。2014年にはハードウェアスタートアップアクセラレータ「ABBALab」の立ち上げや、シェアファクトリー「DMM.make AKIBA」の企画運営にも関与。2017年にはセンサーデバイスによる情報可視化プラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業するなど、ハードウェアとスタートアップ支援の最前線で活躍されてきた方です。特にハードウェア関連の事業を展開する採択者にとっては、非常に心強い存在となるでしょう。
K-NICスーパーバイザー 武田 泉穂 氏

武田氏は、東京工業大学大学院で生物物理学の博士号を取得後、ライフサイエンス・バイオテック分野のベンチャービジネスに創業者、経営者、投資家として深く関わってきました。医療機関の設立・経営、ベンチャーキャピタルの創業・経営・投資といった豊富な経験を持ち、JST大学発新産業創出基金事業ガバニングボード委員、金沢大学客員教授、東京科学大学MOT非常勤講師も務めています。特にライフサイエンスやバイオテクノロジー分野の事業を持つ採択者にとって、武田氏の専門知識とビジネス経験は、事業の成功に不可欠な視点を提供してくれることでしょう。
NV Ventures株式会社 代表取締役社長/K-NICサポーター 前田 信敏 氏

前田氏は、早稲田大学大学院商学研究科を修了後、大和企業投資株式会社、ウエルインベストメント株式会社を経て、2019年にNV Ventures株式会社を設立されました。20年以上にわたり、大学発を中心とした技術系スタートアップの支援を行っており、文部科学省(現JST)STARTプロジェクト事業プロモーター、内閣府技術委員・アドバイザー等を歴任。現在はNEDO技術経営アドバイザー、KSPビジネスイノベーションスクール メンターも務めています。技術系スタートアップの資金調達や事業戦略において、その豊富な経験と深い知見は、採択者にとって大きな強みとなるでしょう。
これらの多様なバックグラウンドを持つメンター陣が、採択されたスタートアップの事業を徹底的に伴走し、成長を後押しします。メンターとの密な連携を通じて、採択者は自身の事業プランをさらに磨き上げ、市場での競争力を高めていくことでしょう。
今後のスケジュール
採択された8者は、以下のスケジュールでプログラムを進めていきます。
| 採択者キックオフ | 2026年1月15日(木) |
|---|---|
| プログラム実施期間 | 2026年1月16日(金)~3月26日(木)ごろ |
約2ヶ月半にわたる集中的な支援期間を通じて、各事業は大きく飛躍することが期待されます。
K-NIC(Kawasaki-NEDO Innovation Center)とは

K-NICは、川崎市、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、公益財団法人 川崎市産業振興財団の3者連携により運営される、起業支援のワンストップ拠点です。新たなビジネスに挑戦する人々に対し、事業を成功させるためのヒント、ノウハウ、そして出会いの機会を提供しています。
K-NICでは、起業の実現から事業成長の加速化、資金調達、さらにはビジネスマッチングまで、幅広い支援を行っています。施設に常駐するコミュニケーターが、利用者の抱える課題や現在の状況を丁寧にヒアリングし、一人ひとりに最適なサービスを受けられるようサポートしてくれるため、起業に関するあらゆる悩みを相談できる心強い存在です。
-
所在地:川崎市幸区大宮町1310番地ミューザ川崎セントラルタワー5階(JR川崎駅西口からペデストリアンデッキで直結)
ツクリエとは

K-NICの運営を受託している株式会社ツクリエは、「スタートアップサイドでいこう」を掲げ、事業を作る人々を応援するプロフェッショナル集団です。起業支援サービス事業と、価値を創造するクリエイターを支援するクリエイティブ創造事業を二つの柱として事業を展開しています。
ツクリエは、起業を目指す方や起業家を支援するためのイベント企画、相談事業、アクセラレーションプログラムの開発から、起業家との協同事業、商品開発、プロデュースまで、多岐にわたるサービスを提供しています。彼らの専門性と情熱が、多くのスタートアップの誕生と成長を支えています。
まとめ:ディープテックが描く未来への期待
K-NICスタートアップハンズオンプログラム2025年度下期の採択者決定は、ディープテック分野における日本のイノベーションの可能性を示す明るいニュースです。選ばれた8者の革新的な事業プランは、環境問題、医療、宇宙開発、次世代モビリティなど、多岐にわたる社会課題の解決に貢献し、私たちの未来を豊かにする潜在力を秘めています。
経験豊富なメンター陣による手厚い伴走支援と、K-NICが提供する包括的な起業支援体制が、これらのディープテックスタートアップの成長を力強く後押しすることでしょう。このプログラムを通じて、採択された事業が大きく花開き、やがて社会に大きな変革をもたらす日が来ることを期待します。AIや先端技術に関心のあるすべての人にとって、彼らの今後の活躍はきっと注目に値するものです。
ディープテックは、一朝一夕に成果が出るものではありませんが、その研究開発の先に描かれる未来は、私たちの想像をはるかに超えるものになるでしょう。K-NICとツクリエの支援のもと、これらのスタートアップがどのように成長していくのか、今後の動向に注目していきましょう。

