ZOZO研究所の画期的なAI研究:GNNの常識を覆す「Co-Sparsify」が世界を驚かす

株式会社ZOZO NEXTの研究開発組織である「ZOZO研究所」が、人工知能(AI)分野において世界的に権威のある国際会議「AAAI-26」のMain Track Oral Talksに採択されたことを発表しました。採択された論文は「Connectivity-Guided Sparsification of 2-FWL GNNs: Preserving Full Expressivity with Improved Efficiency」(邦題:2-FWL GNNsにおける接続性誘導型スパース化:完全な表現力保持と計算効率向上)です。この研究は、高性能なグラフニューラルネットワーク(GNN)が抱える「表現力の高さ」と「計算効率」という長年の課題を解決する新手法「Co-Sparsify」を提案しており、AI分野に大きな影響を与えることが期待されています。
AAAIとは?なぜ採択が「すごい」ことなのか?
「AAAI」とは、「Association for the Advancement of Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能学会」と訳されます。このAAAIが主催する国際会議は、人工知能分野で最も権威があり、世界中のトップ研究者が集まる場として知られています。毎年、世界中から数多くの論文が投稿されますが、採択されるのはごく一部に限られます。特に「Oral Talks」は、その中でも特に重要で画期的な研究に対して与えられる発表の機会であり、研究の質と独創性が国際的に高く評価された証しと言えます。
ZOZO研究所の研究員である莫 凡(Fan Mo)氏を含む複数機関の研究グループによる今回の採択は、ZOZO研究所が世界のAI研究を牽引する存在であることを明確に示すものです。
AI初心者でもわかる!GNN(グラフニューラルネットワーク)とは?
AI技術は私たちの生活の様々な場面で活用されていますが、その中でも「グラフニューラルネットワーク(GNN)」は、少し特殊なデータを扱うAIとして注目されています。
「グラフ構造データ」って何?
私たちが普段目にするデータには、画像やテキストのように「きっちり並んだ」ものが多いですが、世の中にはもっと複雑な「つながり」を持つデータもたくさんあります。例えば、以下のようなものです。
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SNSの友達関係: あなたと友達、友達と友達の友達…という「つながり」のネットワーク。
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分子の構造: 原子と原子が結合して分子を作る「つながり」の構造。
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交通網: 駅と駅、道路と道路が「つながり」合うネットワーク。
このような「点(ノード)」と「線(エッジ)」で表現されるデータのことを「グラフ構造データ」と呼びます。GNNは、このグラフ構造データから、その「つながり」の中に隠されたパターンや情報を学習するAIの一種なのです。
GNNは何ができるの?
GNNは、グラフ構造データの特徴を捉えることで、様々な予測や分析を行うことができます。
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新薬開発: 分子構造(グラフ)から、その分子がどのような薬効を持つかを予測する。
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友達のおすすめ: SNSのつながり(グラフ)から、あなたに合う新しい友達やコミュニティを推薦する。
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不正検知: 金融取引のネットワーク(グラフ)から、異常な取引パターンを見つけて不正を検知する。
このように、GNNは従来のAIでは難しかった「つながり」の情報を深く理解し、活用することで、幅広い分野での応用が期待されています。
高性能GNNのジレンマ:「表現力」と「計算効率」の課題
GNNは非常に強力なツールですが、すべてのGNNが同じ性能を持つわけではありません。より複雑な構造パターンを識別するために、「高次GNN(HOGNNs)」と呼ばれる、より高性能なGNNが研究されてきました。特に「2-FWL GNNs」は、その高い「表現力」(複雑な構造を正確に捉える能力)が評価されています。
しかし、この高い表現力には大きな代償がありました。それは「計算量の爆発的な増加」です。2-FWL GNNsのような高性能なモデルは、計算が非常に複雑になるため、大規模なデータ(例えば何百万、何千万という数のノードを持つグラフ)に適用しようとすると、途方もない時間と莫大なメモリが必要になってしまいます。これでは、せっかく高性能なモデルがあっても、実用的に使うことができません。
つまり、GNN分野では長年にわたり、「複雑な構造を正確に理解できる高い表現力」と「限られた時間や資源で効率的に計算できる能力」という、相反する二つの要素をどう両立させるか、という大きな課題に直面していました。
ZOZO研究所が提案する画期的な新手法「Co-Sparsify」
ZOZO研究所の研究グループは、この長年の課題に対し、革新的な解決策「Co-Sparsify」を提案しました。この手法の最大のポイントは、「グラフ構造の“必要な部分のみに計算を集中させる”」という、「接続性に基づくスパース化」という発想です。
「スパース化」とは?
「スパース化」とは、簡単に言えば「不要な部分を削ぎ落とし、必要な部分だけに絞り込む」という意味です。Co-Sparsifyは、GNNの計算において、本当に重要な部分だけに計算リソースを割くことで、全体の効率を大幅に向上させます。
「接続性に基づくスパース化」の仕組み
従来の2-FWL GNNsでは、「3つのノードの関係(3ノード相互作用)」を分析する際に、グラフ全体にわたって計算が行われていました。しかし、この研究では、数学的な解析によって、これらの相互作用が本質的に必要となるのは、ノード間の結合が非常に強い「二重連結成分」と呼ばれる領域に限られることが明らかになりました。
「二重連結成分」とは、グラフの中で、たとえ一つノードを取り除いても、残りのノード間の「つながり」が完全に断たれることがないような、非常に強固なつながりを持つ部分(サブグラフ)のことだとイメージしてください。例えるなら、SNSで「絶対に切れない親友グループ」のようなものです。
Co-Sparsifyは、この発見に基づき、次のような最適化を行います。
- 2ノード間の関係: 同じ「連結成分」内(あるノードから別のノードへ経路がある範囲)に限定して計算します。
- 3ノード間の関係: さらに厳しく、同じ「二重連結成分」内(より強く結びついたグループ内)に限定して計算します。
このように、演算の対象を必要最小限に絞り込むことで、無駄な、そして計算コストの高い高次演算を大幅に削減することに成功しました。
驚くべき計算効率の向上と表現力の維持
Co-Sparsifyの導入により、従来のモデルで必要とされた計算量が劇的に削減されました。例えば、分子解析のデータセット(ZINC、QM9)を用いた評価では、精度を維持したまま、処理時間が最大60%短縮され、メモリ使用量が最大52%削減されるという驚くべき結果が確認されています。これは、大規模なAIモデルの学習や運用において、非常に大きなメリットとなります。
さらに注目すべきは、本手法が近似やサンプリングといった、精度を犠牲にする可能性のある手法を用いていない点です。そのため、理論的には2-FWL GNNsと同等の表現力を保証しながら、実験によっては精度が向上するケースも確認されており、「表現力と計算効率の両立」という目標を高いレベルで達成していることが示されています。
研究成果がAIの未来にもたらす可能性
GNNモデルのスケーラビリティ向上
「Co-Sparsify」で示された「必要性に基づく演算の最適化」というアプローチは、既存のGNNモデルがより大規模なデータに対応できるようになる、つまり「スケーラビリティ」を根本的に向上させる可能性を秘めています。これは、AIが現実世界のさらに複雑な問題に取り組む上で不可欠な要素です。
「オーバー・スクワッシング」問題への貢献
GNNには、深い層で情報が圧縮されすぎてしまい、重要な情報が失われてしまう「オーバー・スクワッシング」という問題があります。Co-Sparsifyのアプローチは、情報の伝達を最適化することで、この問題の解決にも寄与し、GNNの「汎化性能」(まだ見たことのないデータに対しても適切に判断できる能力)の向上に繋がると期待されています。
さらなる高次モデルへの道
今回の研究は2-FWL GNNsに焦点を当てていますが、この手法が2-FWLを超えるさらなる高次モデルにも応用されれば、これまで計算コストの壁によって扱うことが困難だった、極めて大規模で複雑なデータセットに対しても、高性能なGNNを適用できるようになるでしょう。これは、AIの理解力と計算効率を同時に高い次元で両立させる、まったく新しいアーキテクチャ設計の実現に繋がる可能性を秘めています。
この論文はこちらから閲覧できます。
ZOZO研究所について
ZOZO研究所は、「ファッションを数値化する」というユニークなミッションを掲げ、ZOZOグループの研究開発を担う組織です。ZOZOグループが長年蓄積してきたファッションに関する膨大なデータや知見を基に、ファッションを科学的に解明し、新たな価値を創造するための研究開発を行っています。
ZOZO研究所の詳細については、ZOZO研究所のウェブサイトをご覧ください。
まとめ
ZOZO研究所による今回の「Co-Sparsify」の研究は、人工知能分野における長年の課題であった「GNNの表現力と計算効率の両立」に、画期的な解決策を提示しました。世界トップクラスの国際会議「AAAI-26」での採択は、その研究が持つ革新性と重要性を強く裏付けるものです。
この新技術は、AIモデルの大規模化と実用化を大きく加速させ、新薬開発からレコメンデーションシステム、さらには未知の分野まで、幅広い応用領域でAIの可能性を広げることでしょう。ZOZO研究所の今後の研究が、AI技術のさらなる進化と社会への貢献にどう繋がっていくのか、大いに注目が集まります。

