伯東とVieurekaが連携!生成AIを現場で動かす「エッジ生成AI BOX」で社会実装を加速
AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしています。特に、文章や画像を自動で作り出す「生成AI」は、その可能性に大きな注目が集まっています。しかし、これらの高度なAIを実際の「現場」で活用するには、いくつかの課題がありました。
今回、技術商社である伯東株式会社と、エッジAIの社会実装に取り組むVieureka株式会社が連携し、この課題を解決する画期的なソリューションを発表しました。それが、VLM(視覚言語モデル)やLLM(大規模言語モデル)といった生成AIを、クラウドではなく「エッジ」側で動作させる「エッジ生成AI BOX」です。この連携により、生成AIが私たちの身近な現場で、もっと便利に、もっと安全に活用される未来が現実味を帯びてきました。
この記事では、AI初心者の方にも分かりやすい言葉で、この「エッジ生成AI BOX」がどのようなもので、なぜ重要なのか、そして私たちのビジネスや社会にどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。
エッジAIとは?生成AIを現場で活用する新技術
AIを動かす方法には、大きく分けて「クラウドAI」と「エッジAI」の2種類があります。クラウドAIは、インターネットを通じて遠く離れた高性能なサーバーでAIを動かす方法です。一方、エッジAIは、AIを使う場所(例えば工場や店舗、介護施設など)の近くにあるデバイス自体でAIを動かす方法を指します。
なぜエッジAIが生成AIの現場活用に重要なのか?
生成AI、特にLLM(文章生成など)やVLM(画像とテキストを同時に理解するAI)は、非常に高度な計算能力を必要とします。これをクラウドで動かす場合、以下のような課題がありました。
- 通信遅延(タイムラグ): 現場の情報をクラウドに送り、AIが処理して、結果を現場に戻すまでに時間がかかります。一瞬の判断が求められる状況では、この遅延が問題となることがあります。
- プライバシーとセキュリティ: 現場の画像や音声などの機密情報をクラウドに送る際、情報漏洩のリスクが懸念されます。特に、人の顔や個人情報が含まれるデータは慎重な扱いが必要です。
- 通信コスト: 大量のデータを常にクラウドとやり取りすると、通信費用がかさみます。
- オフラインでの利用: インターネット環境がない場所では、クラウドAIは利用できません。
「エッジ生成AI BOX」は、これらの課題を解決するために開発されました。AIを現場のエッジデバイスで直接動かすことで、通信遅延を大幅に削減し、プライバシー保護を強化します。これにより、AIが現場でリアルタイムに判断し、迅速な対応が可能となるため、生成AIの現場実装が大きく前進すると期待されています。
「エッジ生成AI BOX」の革新性
伯東とVieurekaが今回発表した「エッジ生成AI BOX」は、Ambarella, Inc.の高性能AIビジョンプロセッサ「CV72」を搭載した「Cooper Mini」を基盤としています。

Ambarella「CV72」とは?
Ambarellaの「CV72」は、AI処理に特化した非常にパワフルな半導体チップです。その主な特徴は以下の通りです。
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5nmプロセス技術: これは、チップ内部の回路の線幅が非常に細いことを意味します。線幅が細いほど、より多くの回路を詰め込むことができ、処理能力が高まり、消費電力が抑えられます。スマートフォンやパソコンのCPUにも使われる最先端の技術です。
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第3世代CVflow®アーキテクチャ: Ambarellaが独自に開発したAI処理に特化した設計思想です。これにより、画像認識や映像解析などのAI処理を非常に効率良く行えます。
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Transformer向けアクセラレータ内蔵: 生成AIの核心技術の一つである「Transformer(トランスフォーマー)」モデルの処理を高速化するための専用回路が内蔵されています。Transformerは、LLMやVLMといった大規模なAIモデルで広く使われており、このアクセラレータがあることで、生成AIの推論(AIが答えを出すこと)をエッジデバイス上で素早く実行できます。
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高性能と低消費電力の両立: 最先端のプロセス技術と専用アーキテクチャにより、高いAI処理能力を持ちながら、消費電力を抑えることが可能です。これは、現場での長時間稼働やバッテリー駆動のデバイスにとって非常に重要な要素です。
LLMとVLMがエッジで動くメリット
この高性能なCV72を搭載した「エッジ生成AI BOX」は、LLM(大規模言語モデル)やVLM(視覚言語モデル)といった生成AIを、インターネットに接続せず、現場で直接動かすことができます。
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LLM(大規模言語モデル): テキストの生成、要約、翻訳、質問応答などを行うAIです。エッジで動かすことで、例えば製造現場での作業報告書の自動作成や、介護施設での会話記録の要約などが、通信遅延なくリアルタイムに行えるようになります。
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VLM(視覚言語モデル): 画像とテキストの両方を理解し、関連付けることができるAIです。例えば、「この写真に何が写っているか教えて」と聞くと、写真の内容を言葉で説明してくれます。エッジでVLMを動かすことで、カメラ映像から異常を検知し、その状況を言葉でリアルタイムで通知するといったことが可能になります。
特に、このAI-BOXは「CLIP(Contrastive Language-Image Pre-Training)」や「Bunny」といったVLMにも対応しています。
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CLIP: 画像とテキストの関連性を高精度に推定できるAIです。例えば、「犬」という言葉と「犬の写真」を関連付けて理解できます。特筆すべきは「ゼロショット性能」で、事前に特定のタスクで学習していなくても、画像とテキストの関係から新しいタスクに対応できる柔軟性を持っています。これにより、現場の多様な状況に、より柔軟に対応できる可能性が広がります。
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Bunny: 軽量でありながら高性能なマルチモーダルモデルです。マルチモーダルとは、画像、テキスト、音声など複数の種類のデータを組み合わせて処理できる能力を指します。軽量であるため、エッジデバイスのような限られたリソースでも効率良く動作し、現場での多様なニーズに応えることが期待されます。

Vieurekaプラットフォームとの強力な連携
「エッジ生成AI BOX」のもう一つの重要な要素は、VieurekaのエッジAIプラットフォーム「Vieurekaプラットフォーム」が組み込まれていることです。
Vieurekaプラットフォームは、エッジAIデバイスの導入から運用、管理までを包括的にサポートするシステムです。このプラットフォームを「エッジ生成AI BOX」に搭載することで、以下のようなメリットが生まれます。
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AIモデルの追加学習とアップデート: 現場でAIを使い続ける中で、新しい状況に対応したり、より精度を高めたりするために、AIモデルを更新する必要があります。Vieurekaプラットフォームを使えば、遠隔から安全かつ効率的にAIモデルの追加学習やアップデートを行うことができます。
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デバイス設定の変更: AI-BOXのカメラ設定や動作モードなど、現場の状況に合わせて細かく調整したい場合も、遠隔から簡単に設定変更が可能です。
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遠隔からの安全かつ効率的な運用管理: 大量のAI-BOXが導入された場合でも、個々のデバイスの状態を把握し、一元的に管理できます。これにより、メンテナンスの手間が省け、運用コストを削減できます。
この連携により、現場ごとの細かいニーズに合わせてAIを最適化できるようになります。例えば、介護施設では利用者の動きをより正確に把握するAIモデルを、製造工場では特定の製品の不良を検知するAIモデルを、流通店舗では顧客の動線を分析するAIモデルを、それぞれ柔軟に導入・更新することが可能になります。
これは、介護・製造・流通といった人手不足や業務効率化が課題となっている多様な業界において、より柔軟かつ迅速なAI活用を可能にし、現場の課題解決に大きく貢献すると期待されています。
「EdgeTech+ 2025」で初公開!現場で体験できる未来
今回初公開される「エッジ生成AI BOX」のデモ製品は、2025年11月に開催される展示会「EdgeTech+ 2025」の伯東ブースで実際に体験できます。
この展示会では、サーバーに依存しないエッジAIの高度な処理性能と、遠隔からの柔軟な運用管理によって、現場の課題がどのように解決されるのかを直接確認できます。AIが現場でどのように動き、どのように進化していくのか、その可能性をぜひご自身の目で確かめてみてください。
展示会情報
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会 期: 2025年11月19日(水)~21日(金)
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会 場: パシフィコ横浜 展示ホール
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ブース: 伯東ブース(詳細は公式サイトをご確認ください)
両社のコメントから見る未来への展望
この連携について、両社の担当者からは未来への強い期待が寄せられています。
伯東株式会社 取締役の石下裕吾氏は、Vieureka社とのパートナーシップを中期経営計画におけるソリューションプロバイダー戦略の重要なステップと位置づけ、高性能なハードウェアとVieureka社のAIプラットフォームの融合により、次世代のEdgeAIソリューションを展開していくと述べています。
Vieureka株式会社 代表取締役社長の宮﨑秋弘氏は、伯東社との協業がVieurekaが目指す「現場に根差したエッジAI」の社会実装を一歩前進させると強調しています。Ambarella社の高性能生成AI BOXとVieurekaの遠隔運用可能なエッジAIプラットフォームを組み合わせることで、介護・製造・流通などの現場において、プライバシーを守りながらリアルタイムに課題解決を図ることが可能になると語っています。また、現場特化型のLLM/VLMを安全かつ効率的に運用できる仕組みを提供し、エッジAIの可能性を最大限に引き出すことで、エッジAIの社会実装に貢献していく意向を示しています。
これらのコメントからは、両社が協力して、生成AIを単なる技術に留めず、「現場で使える技術」として社会に深く根付かせようとする強い意志が感じられます。
伯東株式会社について
伯東株式会社は1953年の創業以来、最新の情報や最先端の技術をお客様に提供する技術商社として、また生産効率化のための工業薬品を製造するメーカーとして発展してきました。企業活動を通じて「人と技術と自然環境の共存」を目指し、先進のテクノロジーが人々の暮らしと地球に活力と潤いをもたらし、より豊かな社会の実現に貢献することを使命としています。
- 詳細情報: 伯東株式会社
Vieureka株式会社について
Vieureka株式会社は、パナソニックホールディングス株式会社、株式会社JVCケンウッド、WiL, LLCの3社からの出資を受け、2022年7月にパナソニックホールディングス株式会社からカーブアウト(事業の一部を分離・独立させること)して設立されました。「世界の今をデータ化する新たな社会インフラを創造」をミッションに掲げ、開発・導入・運用のハードルを下げるプラットフォームを通じて、エッジAIの社会実装を先導しています。
- 詳細情報: Vieureka株式会社
まとめ:エッジAIが拓く、生成AIの新たな可能性
伯東とVieurekaの連携による「エッジ生成AI BOX」は、生成AIの社会実装における大きな一歩です。高性能なAmbarellaのAIビジョンプロセッサ「CV72」によって、LLMやVLMといった複雑な生成AIモデルをエッジデバイスで直接動かすことが可能になり、通信遅延の削減とプライバシー保護を実現します。
さらに、Vieurekaプラットフォームとの組み合わせにより、AIモデルの遠隔更新やデバイス管理が容易になり、現場ごとのニーズに合わせた柔軟なAI活用が実現します。これにより、介護、製造、流通といった様々な業界で、人手不足の解消や業務効率化といった喫緊の課題に対し、AIがより迅速かつ的確なソリューションを提供できるようになるでしょう。
「現場で動き、現場で進化するAI」という新たな価値を提供するこの技術は、私たちの働き方や暮らしを大きく変える可能性を秘めています。2025年の「EdgeTech+」でのデモ公開を皮切りに、エッジ生成AIが社会の様々な場面で活躍する未来が、もう目の前に来ています。

