数十億台のIoTデバイスにAIを!Nordic Semiconductorが超低消費電力エッジAIソリューションを発表

数十億台のIoTデバイスにAIを!Nordic Semiconductorが超低消費電力エッジAIソリューションを発表

現代社会において、モノのインターネット(IoT)デバイスは私たちの生活のあらゆる側面に浸透しつつあります。しかし、これらのデバイスがよりスマートになるためには、人工知能(AI)の力が不可欠です。これまでAIの処理は主にクラウド上で行われてきましたが、近年ではデバイスの「エッジ」でAI処理を行う「エッジAI」が注目されています。

低消費電力ワイヤレス接続ソリューションのグローバルリーダーであるNordic Semiconductorは、このエッジAIの分野に新たな風を吹き込むソリューションを発表しました。数十億台のIoTデバイスにAIの知能と機能をもたらすことを目指し、NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載した新しい「nRF54LシリーズSoC」と、エッジAI開発を簡素化する「Nordic Edge AI Lab」を導入します。

これにより、エネルギー効率と開発の容易さを両立させ、エッジAIインテリジェンスを統合する新世代デバイスの登場を加速することが期待されています。

Neuton Next-level Edge AI New nRF54L Series SoC with Axon NPU NORDIC SEMICONDUCTOR Axon CES 2026 | Booth #52039

エッジAIとは?IoTの未来を拓く重要技術

AI(人工知能)は、私たちの身の回りで活用が広がっています。スマートフォンでの音声アシスタントや、オンラインショッピングのおすすめ機能など、その多くは「クラウドAI」と呼ばれるものです。これは、デバイスから集められたデータをインターネット経由で大規模なデータセンター(クラウド)に送り、そこでAIが処理を行う仕組みです。

一方、「エッジAI」とは、IoTデバイスそのもの、つまり「エッジ(末端)」でAIの処理を行う技術を指します。クラウドAIとは異なり、データをデバイス内で処理するため、以下のようなメリットがあります。

  • 低遅延: データをクラウドに送って処理する時間が必要なく、瞬時に判断を下すことができます。例えば、自動運転車が障害物を検知した場合、クラウドに送る時間なしに即座にブレーキをかける判断が可能です。

  • プライバシーの保護: デバイス内でデータが処理されるため、機密性の高い情報が外部に送信されるリスクが低減されます。家庭内の監視カメラや医療機器など、プライバシーが重視される分野での活用が期待されます。

  • 通信コストの削減: 常にクラウドと通信する必要がないため、データ通信量を抑えられ、それに伴うコストも削減できます。

  • 低消費電力: 効率的なエッジAI処理により、デバイスのバッテリー寿命を延ばすことができます。これは、電池で動作する小型IoTデバイスにとって特に重要です。

Nordic SemiconductorのCEOであるVegard Wollan氏は、「エッジAIは、もはや単なる選択肢ではなく、安全性、プライバシー、そして持続可能性を大規模に実現するための“唯一の方法”です」と述べています。これは、エッジAIがIoTデバイスの進化において不可欠な要素であることを示しています。

Nordic SemiconductorのエッジAIソリューション概要

Nordic Semiconductorが今回発表したエッジAIソリューションは、主に以下の3つの要素で構成されています。

  • nRF54LM20B: Axon NPUを搭載した新しい超低消費電力・大容量メモリのワイヤレスSoC(System-on-Chip)。

  • カスタムNeutonモデル: 業界最先端の超小型エッジAIモデル。

  • Nordic Edge AI Lab: エッジAI開発を簡素化・加速する開発ツール。

これらの組み合わせにより、開発者は複雑なAI技術を容易に、そして極めて低い消費電力で、多様なIoTデバイスに組み込むことができるようになります。

次世代ワイヤレスSoC「nRF54LM20B」とAxon NPUの力

エッジAIを実現する上で核となるのが、新しいワイヤレスSoC「nRF54LM20B」です。このSoCは、Nordic Semiconductorが2023年に買収したAtlazo社のAxon技術を統合しており、特にAI処理に特化したハードウェアアクセラレータである「Axonニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)」を搭載しています。

Axon NPUによる画期的な性能と効率

Axon NPUは、要求の厳しいエッジAIワークロードを非常に効率的に加速します。これにより、音声分類、キーワードスポッティング、画像ベース検出といったAIタスクにおいて、競合ソリューションと比較して最大7倍の性能と最大8倍のエネルギー効率を実現するとされています。これは、バッテリー駆動の小型デバイスで高度なAI処理が可能になることを意味します。

nRF54LM20Bの多機能性

nRF54LM20B SoCは、Axon NPUに加え、以下のような充実した機能を備えています。

  • 2MBのNVM(不揮発性メモリ)

  • 512KBのRAM(ランダムアクセスメモリ)

  • 128MHzのArm® Cortex-M33+RISC-Vコプロセッサ

  • 高速USB

  • 最大66本のGPIO(汎用入出力)

  • Bluetooth® LE、Bluetooth Channel Sounding、Matter over ThreadなどをサポートするNordic第4世代の超低消費電力2.4GHz無線

これらの機能により、nRF54LM20Bは、AI処理だけでなく、多様なIoTアプリケーションに対応できる汎用性の高いプラットフォームとなっています。詳細はこちらで確認できます。
nRF54LM20B

業界最先端の超小型エッジAIモデル「Neuton」

ハードウェアだけでなく、AIを動かすソフトウェアであるAIモデルも重要です。Nordic Semiconductorが提供する「Neutonモデル」は、CPUで実行される超小型のエッジAIモデルであり、一般的に5KB未満と非常に小さいサイズが特徴です。

このモデルは、他のCPU実行型モデルと比較して、最大10倍の小型化、高速化、高効率化を実現しています。これにより、限られたメモリと小型バッテリー環境のデバイスでも、高度なAI処理を可能にします。

カスタムNeutonモデルの生成と活用

Nordic Edge AI Labは、異常検知、アクティビティ/ジェスチャー認識、生体モニタリングなど、特定の用途に合わせたカスタムNeutonモデルの生成を支援します。これにより、クラウドに依存することなく、プライバシーを保護したリアルタイムのインテリジェンスをデバイス上で実現できます。

例えば、工場での機械の異常音を検知したり、ウェアラブルデバイスでユーザーの運動パターンを認識したり、生体情報をモニタリングして健康状態の変化を早期に検出したりといった応用が考えられます。

エッジAI開発を簡素化する「Nordic Edge AI Lab」

高性能なハードウェアと効率的なAIモデルがあっても、開発が難しければ普及は進みません。そこでNordic Semiconductorは、エッジAI開発の複雑さを解消し、構想段階から実装へとスムーズに移行できる開発ツール「Nordic Edge AI Lab」を提供します。

Nordic Edge AI LabとNeutonモデルの組み合わせにより、高度なオンデバイスAIが、あらゆる組み込み開発者にとって現実的なものとなります。開発者は、迅速な開発を可能にするシンプルさと、ウェアラブルから産業用センシングまでスケールできる革新的な性能の両方を得ることができます。

導入事例:スマート・トラッキング・デバイスの高度化

最近の導入事例として、あるグローバルなサプライチェーン・ソリューションが、Nordic Edge AI Labで作成したAIモデルを用いて、スマート・トラッキング・デバイスを高度化しました。このデバイスは、nRF54LシリーズSoC上で衝撃、振動、輸送といった実際の取り扱いイベントをデバイス上で検知できるようになりました。

これらのAI駆動のインサイトは、NordicのnRF Cloudライフサイクルサービスにより、運用を中断することなく全フリートへ展開されました。これにより、サプライチェーンにおける物流の品質管理や問題特定が、よりリアルタイムかつ効率的に行えるようになります。

Nordic Edge AI LabおよびカスタムNeutonモデルに関する詳細はこちらから確認できます。
Nordic Edge AI LabとNeutonモデル

エッジAIとクラウドサービスの連携で実現する未来

デバイスがよりインテリジェントになり、エッジで処理を行うようになると、OTA(Over-The-Air)管理や高度な可観測性への需要が高まります。OTA管理とは、デバイスを物理的に回収することなく、無線通信経由でソフトウェアの更新や機能の追加を行うことです。

同時に、デバイス管理、組み込みオブザーバビリティ(デバイスの内部状態や動作を把握する能力)、位置情報サービスなどのクラウドベースのライフサイクルサービスも引き続き重要です。

メーカーは、製品をリアルタイムで改善するだけでなく、拡大する規制や顧客要件に対応するため、デバイス性能を継続的に把握する必要があります。配備済みデバイスから得られるデータを活用することで、ユーザー体験を損なうことなく機能を強化し、性能を最適化できます。これにより、接続製品はライフサイクル全体を通じて安全かつ効率的に進化し続けることが可能です。

Nordicのクラウドベースのライフサイクルサービスに関する詳細はこちらで確認できます。
クラウドベースのライフサイクルサービス

提供時期とCES 2026での展示情報

Nordic Edge AI LabおよびカスタムNeutonモデルは、NordicのワイヤレスnRF54シリーズSoCおよびセルラーIoT SiPモジュール向けに、現在提供が開始されています。

Axon NPUを搭載したnRF54LM20B SoCは、特定の顧客向けにサンプル出荷が開始されており、開発用途での広範な提供は2026年第2四半期初頭を予定しています。サンプルについては、Nordicの国内営業担当への問い合わせが必要です。

Nordic Semiconductorは、米国時間2026年1月6日から9日まで開催されるCES 2026にも参加します。Venetian Expoのブース#52039にて、新しい超低消費電力エッジAIソリューションのライブデモを体験できます。その他、Bluetooth Channel Sounding、スマートホーム向けMatter、セルラーIoT、NTN/衛星接続、クラウド・ライフサイクル・サービスなど、Nordicの最新イノベーションも紹介されます。

CES 2026でのNordicの参加については、ブログ記事で詳細を確認できます。
Nordic、CES参加

まとめ:IoTデバイスの新たな地平を切り拓くNordic SemiconductorのエッジAI

Nordic Semiconductorが発表したエッジAIソリューションは、NPU搭載の「nRF54LシリーズSoC」、超小型AIモデル「Neuton」、そして開発ツール「Nordic Edge AI Lab」を組み合わせることで、数十億台のIoTデバイスにAIの知能を、これまでにない低消費電力と開発の容易さで提供します。

これにより、デバイスはクラウドに依存することなく、リアルタイムで賢い判断を下し、プライバシーを保護しながら動作することが可能になります。スマートホーム、ウェアラブル、産業用センシング、サプライチェーン管理など、多岐にわたる分野でのIoTデバイスの機能と性能を飛躍的に向上させることが期待されます。

Nordic Semiconductorのこの取り組みは、IoTデバイスがさらに普及し、私たちの生活をより豊かで安全、そして持続可能なものにするための重要な一歩となるでしょう。エッジAIの進化が、今後のテクノロジーの発展にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まります。

詳細情報はこちらの関連リンクから確認できます。
Nordic Semiconductor、数十億台のIoTデバイス向けエッジAIを簡素化

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