- AIの信頼性を根底から変える新技術:VeritasChainの「CAP-SRP」とは?
- Grok AIセーフガード回避問題の衝撃:なぜAIの安全対策が重要なのか
- 「生成しなかった」ことを証明する難しさ:AIガバナンスの構造的問題
- VeritasChain Standards Organization(VSO)とは
- 世界初の技術「CAP-SRP」の登場:AIの「負の証明」を可能に
- 「世界初」の信頼性:5つの独立調査が証明
- 国際的なAI規制への対応:CAP-SRPが果たす役割
- 「信頼してください」から「検証してください」へ:AIガバナンスのパラダイムシフト
- C2PAとの補完関係:包括的な透明性エコシステムの実現
- 今後の展開と国際標準化への取り組み
- まとめ:より安全で信頼できるAI社会の実現へ
AIの信頼性を根底から変える新技術:VeritasChainの「CAP-SRP」とは?
近年、人工知能(AI)の進化は目覚ましく、私たちの生活や社会に大きな変革をもたらしています。特に、文章や画像を自動で生成する「生成AI」は、その可能性の広さから注目を集めています。しかし、その一方で、AIが意図しない、あるいは悪意のあるコンテンツを生成してしまうリスクも浮上しており、AIの安全性と信頼性の確保が喫緊の課題となっています。
このような背景の中、VeritasChain Standards Organization(VSO)は、AIが有害なコンテンツの生成を「拒否した」ことを暗号学的に証明できる、世界初のオープン技術仕様「CAP-SRP」を正式に公開しました。この画期的な技術は、AIガバナンスにおける「信頼」から「検証」への転換を提唱し、AIの透明性と説明責任を根本から強化するものです。

Grok AIセーフガード回避問題の衝撃:なぜAIの安全対策が重要なのか
AIの安全性に関する議論が高まるきっかけの一つとなったのが、2025年12月に発生したElon Musk氏率いるxAI社の生成AI「Grok」におけるセーフガード回避問題です。Grokにイメージ編集機能が追加された後、特に「Spicy Mode」と呼ばれる成人向けコンテンツ生成機能と組み合わせることで、実在する人物の写真から同意のない性的画像(NCII:Non-Consensual Intimate Images)を生成することが可能になってしまいました。
この問題は国際社会に大きな衝撃を与え、複数の国や地域が迅速な対応に乗り出しました。
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インドネシア(1月10日): Grokへのアクセスを一時的に遮断した最初の国です。政府通信マルチメディア相は、同意なく作成される性的ディープフェイクが「デジタル空間における人権の深刻な侵害である」と強く非難しました。
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マレーシア(1月10日): インドネシアに続き、Grokへのアクセス制限を発表しました。通信・マルチメディア委員会は、X Corp.およびxAIが規制当局の要請に対応しなかったことを声明で指摘しています。
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英国Ofcom(1月12日): Xに対する正式な調査を開始しました。児童を含む個人の「性的描写」生成に関する「深く憂慮すべき報告」を受け、プラットフォームの世界的収益の10%または1,800万ポンド(約34億円)のいずれか大きい方の罰金を科す権限を行使する可能性を示唆しています。
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その他: フランス、EU当局、オーストラリア(ASIC)、インド、ブラジルなど、多くの国や地域がこの問題に対する調査を開始しています。
X社は、違法コンテンツを作成するユーザーへの警告声明を発表し、イメージ生成機能を有料購読者のみに制限する措置を取りました。しかし、英国科学技術相のLiz Kendall氏は、この措置を「侮辱的」と批判し、「違法な画像を作成できるAI機能を単なるプレミアム提供に変えるだけである」と指摘。AIプロバイダーの自主規制だけでは、問題の根本的な解決には至らないという認識が広がっています。
「生成しなかった」ことを証明する難しさ:AIガバナンスの構造的問題
Grokの事件は、現代のAIガバナンスにおける深刻な構造問題を浮き彫りにしました。それは、AIプロバイダーが「セーフガードは正常に機能していた」と主張しても、その主張を第三者が客観的に検証する手段が存在しないという問題です。例えば、xAI社が「何百万件もの有害リクエストをブロックした」と主張しても、その主張を裏付ける暗号学的な証拠がこれまで存在しませんでした。
従来のAIシステムでは、AIが「何を生成したか」は記録できても、「何を生成しなかったか」、つまり有害なコンテンツの生成を「拒否した」という事実を証明する仕組みがありませんでした。内部ログは存在しますが、これらは改ざんが可能であり、暗号学的な整合性が保証されていないため、外部の監査人や規制当局が独立して検証することは不可能でした。拒否イベントは、揮発性のメモリ上に一時的に存在するだけで、永続的な証拠として残ることはなかったのです。
VeritasChain Standards Organization(VSO)とは
このような課題に立ち向かうために活動しているのが、VeritasChain Standards Organization(VSO)です。VSOは、「アルゴリズム時代の信頼をコード化する(Encoding Trust in the Algorithmic Age)」をミッションに掲げる独立した国際標準化団体です。東京を本部とし、アルゴリズム取引向けの監査証跡標準「VeritasChain Protocol(VCP)」や、AIコンテンツ生成向けの「CAP」といった技術仕様の開発を進めています。
VSOは、特定のベンダーや製品に偏ることなく、標準策定の中立性を保ちながら、技術的な準拠認証を提供することで、AI技術の健全な発展に貢献しています。公式サイトはhttps://veritaschain.org/です。
世界初の技術「CAP-SRP」の登場:AIの「負の証明」を可能に
VSOが公開した「CAP(Content / Creative AI Profile)」バージョン0.2には、この「負の証明」問題を解決するために設計された、世界初のオープン技術仕様「Safe Refusal Provenance(SRP)」が含まれています。SRPは、AIシステムが有害なコンテンツの生成を「拒否した」ことを暗号学的に証明することを可能にします。
CAP-SRPの主要な技術的特徴
CAP-SRPは、以下の画期的な技術的特徴を持っています。
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生成試行と拒否の暗号学的記録
AIに対するすべての生成リクエスト(GEN_ATTEMPT)と、その結果(生成成功:GEN、または生成拒否:GEN_DENY)が、Ed25519デジタル署名とSHA-256ハッシュチェーンによって、改ざん不可能な形で記録されます。これにより、AIの挙動に関する確固たる証拠が残るようになります。 -
プライバシー保護型検証
有害なプロンプトそのものを開示することなく、そのハッシュ値(PromptHash)を用いて「特定のリクエストが拒否された」ことを数学的に証明できます。これにより、監査人や法執行機関は、元の有害コンテンツの内容を見ることなく、AIプロバイダーの対応を検証することが可能になり、プライバシー保護と検証の両立が図られます。 -
完全性不変条件(Completeness Invariant)
CAP-SRPは、以下の数学的保証を提供します。
∑ GEN_ATTEMPT = ∑ GEN + ∑ GEN_DENY + ∑ ERROR
これは、すべての生成試行に対して、必ず1つの結果イベントが存在しなければならないことを意味します。この不変条件により、「都合の悪い結果だけを記録しない」という選択的ログ(Selective Logging)攻撃を技術的に排除し、ログの完全性を保証します。 -
SCITT透明性サービス統合
IETF(インターネット技術特別調査委員会)で標準化が進むSCITT(Supply Chain Integrity, Transparency, and Trust)アーキテクチャと統合されています。これにより、Merkle Tree証明による第三者検証が可能となり、より広範な透明性と信頼性が確保されます。
これらの技術により、AIシステムが透明性高く、説明責任を果たせるようになります。CAP v0.2仕様書およびSRP拡張仕様は、以下のGitHubリポジトリで公開されています。
https://github.com/veritaschain/cap-spec
「世界初」の信頼性:5つの独立調査が証明
VSOは、CAP-SRPの「世界初」という主張を裏付けるために、異なる手法とAIリサーチプラットフォームを用いた5つの独立した調査を実施しました。170以上の学術論文、技術標準、業界実装、規制文書を精査した結果、以下の結論が得られています。
| CAP機能 | 世界初判定 | 確信度 | 検証結果 |
|---|---|---|---|
| Safe Refusal Provenance(SRP) | ✅ 完全に世界初 | 高 | 5調査すべてが支持 |
| 完全性不変条件 | ✅ 世界初(AI拒否への適用) | 高 | 5調査すべてが支持 |
| 統合ライフサイクル監査 | ✅ 世界初(統合フレームワーク) | 高 | 5調査すべてが支持 |
| Evidence Pack形式 | ✅ 世界初(AI監査特化) | 中〜高 | 5調査すべてが支持 |
この調査結果は、CAP-SRPが既存の技術と比較しても独自性が高いことを示しています。
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C2PA(Content Credentials): コンテンツの真正性(「これは本物か?」)を証明する技術ですが、AIが生成を拒否したことを証明する機能は持ちません。
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IETF SCITT: 汎用的な透明性ログのフレームワークですが、AIの拒否イベントの定義や完全性不変条件は含まれません。
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Guardtime KSI: ログの整合性を保証する技術ですが、AI監査スキーマやEvidence Pack形式は提供していません。
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主要AIプロバイダー各社: 内部ログは存在するものの、公開仕様、暗号学的検証、完全性保証のいずれも欠如しています。
詳細な世界初検証レポートは、以下のGitHubリポジトリで確認できます。
https://github.com/veritaschain/cap-spec/blob/main/docs/CAP_WorldFirst_Final_Consolidated_Report.md
国際的なAI規制への対応:CAP-SRPが果たす役割
CAP-SRPは、現在策定中または施行予定の主要なAI規制に対応するよう設計されており、AIプロバイダーが規制要件を満たす上で強力なツールとなります。
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EU AI Act 第12条(記録保持)
高リスクAIシステムに対して、全ライフサイクルにわたるイベントの自動記録を義務付けています。CAP-SRPのイベントモデルとEvidence Pack形式は、この要件を「追加開発なしに」満たすことが可能です。2026年8月の全面適用に向けた準備として、早期の導入が推奨されます。 -
EU DSA 第35条(独立監査)
超大規模オンラインプラットフォーム(VLOP)に対する年次独立監査を義務付けています。CAP-SRPのEvidence Packは、監査人が暗号学的にログの完全性を検証できる構造化されたアーティファクトを提供し、監査プロセスを効率化します。 -
米国 TAKE IT DOWN Act
同意のない性的画像(NCII)の48時間以内削除を義務付けています。CAP-SRPは、削除依頼への対応を証明するための「非生成証拠」として機能し、プラットフォームの迅速かつ適切な対応をサポートします。
「信頼してください」から「検証してください」へ:AIガバナンスのパラダイムシフト
VSOファウンダー兼テクニカルディレクターの上村十勝氏は、次のように述べています。「『私たちを信頼してください』の時代は終わりました。今回のGrok事件は、AIプロバイダーの善意に依存する『信頼ベース』のガバナンスモデルが限界に達したことを如実に示しています。有料化や利用規約の強化だけでは、根本的な問題は解決しません。」
そして、「CAP-SRPは、『検証してください』と言えるAIシステムへの転換を可能にします。xAI社が『何百万件もの有害リクエストをブロックした』と主張するなら、その主張を暗号学的に証明できるべきです。CAP-SRPを導入していれば、監査人は独立してその主張を検証できます。これは不信ではなく、検証を通じた正当な信頼の基盤を構築することです。」と、この技術がAIガバナンスにもたらす哲学的な意義を強調しています。
C2PAとの補完関係:包括的な透明性エコシステムの実現
CAP-SRPは、既存のコンテンツ認証標準であるC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)を置き換えるものではなく、互いに補完し合う関係にあります。
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C2PA: 「このコンテンツは本物か?」を証明し、コンテンツの真正性(資産の認証)を保証します。
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CAP-SRP: 「AIはなぜこの判断をしたか?」を証明し、AIシステムの意思決定プロセスにおける説明責任を果たします。
両者を組み合わせることで、生成されたコンテンツにはC2PA Content Credentialsを付与し、AIシステムの意思決定プロセスにはCAP監査証跡を提供する、包括的な透明性エコシステムが実現します。上村氏は「C2PAがコンテンツの『パスポート』であるならば、CAPはAIシステムの『フライトレコーダー』です」と例え、両技術の役割を分かりやすく説明しています。
今後の展開と国際標準化への取り組み
VSOは、CAP仕様の国際標準化に向けて、精力的に以下の取り組みを進めています。
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IETF標準化: draft-kamimura-scitt-refusal-eventsとしてSCITTワーキンググループに提出済みであり、国際的な標準としての確立を目指しています。
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規制当局エンゲージメント: EU、英国、シンガポール、豪州を含む50以上の管轄区域の規制当局と協議を進めており、各国の規制要件に適合するよう調整を行っています。
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業界採用: クリエイティブ産業、メディア企業、AIプロバイダーとの早期採用プログラムを準備中で、幅広い業界でのCAP-SRPの導入を促進する予定です。
すべての仕様書およびコードは、CC BY 4.0ライセンスの下でオープンに公開されており、商用・非商用を問わず自由に利用できます。
関連論文はこちらから確認できます。
https://doi.org/10.5281/zenodo.18213616
まとめ:より安全で信頼できるAI社会の実現へ
Grok AIのセーフガード回避問題は、AIの倫理的かつ安全な利用を保証するための、明確な「検証可能な仕組み」の必要性を浮き彫りにしました。VeritasChain Standards Organization(VSO)が公開した「CAP-SRP」は、AIが有害コンテンツの生成を「拒否した」ことを暗号学的に証明できる世界初の技術であり、この課題に対する強力な解決策を提供します。
この技術は、AIプロバイダーの主張を客観的に検証する手段を提供し、AIの透明性と説明責任を大幅に向上させます。また、EU AI Act、DSA、米国 TAKE IT DOWN Actといった国際的なAI規制への対応も支援し、より安全で信頼できるAI社会の実現に大きく貢献することが期待されます。AIの進化は止まりませんが、CAP-SRPのような技術が、その進化の健全な方向性を保証するための重要な礎となるでしょう。
