NVIDIAとLillyが創薬の未来を拓く!AI共同イノベーションラボで医薬品開発を加速する最先端技術とは?

NVIDIAとLillyが創薬の未来を拓く!AI共同イノベーションラボで医薬品開発を加速する最先端技術とは?

医薬品の開発は、人類の健康と福祉に不可欠な活動ですが、そのプロセスは非常に複雑で、莫大な時間とコストがかかることで知られています。一つの新薬が世に出るまでには、平均で10年以上、そして数十億ドルもの費用がかかり、多くの研究が途中で断念されることも少なくありません。このような現状を変革し、より迅速かつ効率的に患者へ新薬を届けるために、AI(人工知能)技術への期待が高まっています。

この度、AIとアクセラレーテッドコンピューティングの世界的リーダーであるNVIDIAと、約150年の歴史を持つ世界的な製薬会社Eli Lilly and Company(以下、Lilly)は、創薬の未来を大きく変える可能性を秘めた共同イノベーションAIラボの設立を発表しました。両社は、この革新的な取り組みに対し、5年間で最大10億ドルもの大規模な投資を行う予定です。このラボでは、世界をリードする科学者、AI研究者、エンジニアが結集し、医薬品の発見から開発、そして製造に至るまでの全プロセスにおいて、AIを最大限に活用することを目指します。

NVIDIAとLillyのロゴ

AI共同イノベーションラボの全貌:創薬の難題に挑む拠点

この新たなAI共同イノベーションラボは、アメリカのサンフランシスコ ベイエリアを拠点として稼働を開始する予定です。このラボの最大の特長は、Lillyが長年培ってきた生物学、科学、医学分野における深い専門知識と、NVIDIAが誇るAI、アクセラレーテッドコンピューティング、そして強固なAIインフラにおけるリーダーシップが融合する点にあります。

両社の専門家が同じ場所で協力し合うことで、創薬プロセスにおける最も困難な問題に対し、多角的な視点からアプローチすることが可能になります。具体的には、このラボではNVIDIAの先進的なBioNeMoプラットフォームが重要な基盤として活用され、大規模なデータを生成し、医薬品開発を加速させるための強力なAIモデルが構築されることになります。

NVIDIAの創業者兼CEOであるジェンスン フアン氏は、この提携について「AIはあらゆる産業を変革しており、その中でも大きな影響をもたらすのはライフ サイエンス分野になるでしょう」と述べています。また、Lillyの会長兼CEOであるDavid A. Ricks氏も、「Lillyの膨大なデータと科学知識を、NVIDIAのコンピューティング能力とモデル構築の専門知識と組み合わせれば、これまでの創薬を変革させる可能性があります」と、その可能性に大きな期待を寄せています。この共同ラボは、どの企業も単独では達成できないブレークスルーを生み出すための環境を創出することを目指しています。

NVIDIA BioNeMoが創薬にもたらす革新

創薬の初期段階では、数百万、時には数十億もの化合物の中から、病気の原因となる特定の標的分子に作用する可能性のある候補物質を見つけ出す必要があります。この膨大な探索空間を効率的に探索するために、NVIDIA BioNeMoプラットフォームが重要な役割を担います。

BioNeMoは、ライフサイエンス分野に特化した大規模言語モデル(LLM)プラットフォームであり、創薬の様々な段階でAIモデルを構築、カスタマイズ、展開するためのフレームワークを提供します。例えば、AIは新しい分子構造を設計したり、特定の生体分子との相互作用を予測したり、化合物の毒性を評価したりすることができます。これにより、科学者は実際に分子を合成して実験する前に、コンピューター上で広大な生物学的および化学的空間をシミュレーションし、有望な候補物質を絞り込むことが可能になります。これは、時間と資源を大幅に節約し、開発の成功確率を高める上で極めて重要です。

NVIDIA BioNeMoに関する詳細はこちらをご覧ください。
NVIDIA BioNeMo

創薬における「継続的学習システム」の構築

今回のコラボレーションでは、特に「継続的学習システム」の構築に重点が置かれています。これは、Lillyの実験室(ウェットラボ)でのデータ生成と、コンピューターによるデータ解析(ドライラボ)を密接に連携させ、AIが24時間365日体制で実験を支援する仕組みです。

具体的には、実験で得られた新しいデータがAIモデルの学習に利用され、その学習結果が次の実験計画にフィードバックされるというサイクルが継続的に繰り返されます。この「サイエンティスト・イン・ザ・ループ」と呼ばれるフレームワークにより、実験、データ生成、AIモデル開発が相互に情報を与え合い、常に改善されていくことを目指します。これにより、生物学者や化学者は、より効率的かつインテリジェントな方法で研究を進めることができるようになります。

このシステムでは、業界でも前例のないコンピューティングへのアクセス、大規模で高品質なデータ生成、そしてNVIDIA BioNeMoをプラットフォームとして活用することで、生物学および化学分野における次世代の基盤モデルおよび最先端モデルの構築に注力します。基盤モデルとは、大量のデータから多様な知識を学習し、様々なタスクに応用できる汎用性の高いAIモデルのことです。

最先端のAIインフラ:AIスーパーコンピューターとNVIDIA Vera Rubinアーキテクチャ

NVIDIAとLillyの新たな取り組みでは、Lillyが以前発表したAIスーパーコンピューターをさらに拡張し、NVIDIA Vera Rubinを含む次世代のNVIDIAアーキテクチャへの大規模な投資を活用する予定です。LillyのAIスーパーコンピューターは、昨秋発表された際に「AIファクトリー」と称され、製薬業界で最も強力なものの一つとされています。

このAIファクトリーは、大規模な生物医学基盤モデルを驚異的な速度と精度でトレーニングする能力を持っています。これにより、創薬だけでなく、製造プロセス、医用画像処理、そして科学AIエージェントにおける新規かつ高度な応用もサポートすることが期待されています。

創薬を超えたAIの広範な応用:ロボティクスとデジタルツイン

NVIDIAとLillyの提携は、単に創薬プロセスの初期段階にとどまりません。両社は、臨床開発、医薬品の製造、そして商業運用全体でAIを適用する機会も模索しています。これには、複数の種類のデータを扱う「マルチモーダルモデル」、自律的にタスクを実行する「エージェント型AI」、そして「ロボティクス」と「デジタルツイン」の統合が含まれます。

特に、フィジカルAIとロボティクスをAIファクトリーで活用することは、Lillyが需要の高い医薬品を製造する能力を強化し、サプライチェーンの信頼性を向上させる上で非常に役立ちます。例えば、NVIDIA OmniverseライブラリとNVIDIA RTX PROサーバーを活用することで、Lillyは自社の製造ラインの「デジタルツイン」を作成することができます。

デジタルツインとは、現実世界の物理的なシステムやプロセスを仮想空間に再現したものです。これにより、Lillyは実際に物理的な変更を加える前に、サプライチェーン全体を仮想空間でモデル化し、様々な条件下でのストレステストを行い、最適な運用方法をシミュレーションによって見つけ出すことが可能になります。これは、製造コストの削減、生産効率の向上、そして品質管理の強化に大きく貢献するでしょう。

オープンイノベーションとエコシステムへの貢献

NVIDIAは、オープンソースAIを積極的に推進しており、実世界のAIシステムを開発するために必要なモデル、データ、ツールを企業に提供しています。また、NVIDIA Inceptionプログラムを通じて、スタートアップ企業に対し、技術的なメンターシップやNVIDIAのソフトウェアおよびコンピューティングリソースへのアクセスを提供し、AIエコシステムの成長を支援しています。

一方、LillyもAIおよび機械学習プラットフォームであるLilly TuneLabを提供しており、バイオテクノロジー企業が、Lillyの長年にわたる独自データに基づいて構築された創薬向けモデルの一部にアクセスできるようにしています。TuneLabは、将来のワークフローソリューションの一部として、ライフサイエンス向けのオープンなNVIDIA Claraの基盤モデルを含める計画です。

この共同イノベーションラボは、NVIDIAとLillyのスタートアップエコシステムや研究者に対し、深い専門知識と大規模なコンピューティングリソースを提供することで、業界全体のイノベーションをさらに加速させる役割を担うことになります。

まとめと展望

NVIDIAとLillyによるAI共同イノベーションラボの設立は、AI時代の創薬を再構築するための画期的な一歩です。両社の強みが結集することで、医薬品の発見、開発、製造プロセスが根本から変革され、より迅速に、より効率的に、そしてより多くの患者に革新的な医薬品が届けられる未来が期待されます。

AI、アクセラレーテッドコンピューティング、ロボティクス、そしてデジタルツインといった最先端技術の統合は、創薬のスピードと効率を劇的に向上させ、人類の健康と福祉に多大な貢献をもたらすでしょう。このラボは今年前半に南サンフランシスコで稼働が開始される予定であり、今後の研究成果が世界中の医療現場にもたらす影響に注目が集まります。

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