岡山大学「AI-HPCパートナーズ」第2回ミーティング開催!AI・高性能計算研究を加速する交流と人材育成の最前線

はじめに:AIとHPCが拓く未来の扉

現代社会において、AI(人工知能)とHPC(High Performance Computing:高性能計算)は、私たちの生活や産業、そして科学研究を大きく変革する可能性を秘めた二つの柱です。

AIとは、コンピューターが人間のように学習したり、推論したり、問題を解決したりする技術の総称です。例えば、スマートフォンの音声アシスタント、顔認証システム、自動運転技術、医療診断のサポートなど、私たちの身近なところでAIはすでに活躍しています。AIは大量のデータからパターンを見つけ出し、未来を予測したり、最適な判断を下したりする能力を持っています。

HPCは、スーパーコンピューターに代表されるような、非常に複雑で膨大な計算を驚異的な速さで処理する技術です。天気予報の精度向上、新薬や新素材の開発、宇宙のシミュレーション、自動車の衝突実験など、莫大な計算量を必要とする分野でHPCは不可欠な存在です。HPCは、AIが膨大なデータを学習し、高度なモデルを構築するための強力な計算基盤を提供するため、両者は切っても切り離せない関係にあります。

このような最先端技術の進化は、研究者や技術者の専門知識を深めるだけでなく、異なる分野の人々が協力し合うことで、新たな発見やイノベーションが生まれる土壌を育みます。国立大学法人岡山大学は、このAIとHPCをキーワードに、研究者・技術職員の交流を促進し、新たな共同研究や研究拠点形成を目指す「AI-HPCパートナーズ」を設立しました。そして、このたび第1回に続き、2026年1月19日に第2回ミーティングが開催されました。

「AI-HPCパートナーズ」とは?最先端技術を繋ぐ交流拠点

AIとHPCの重要性が増す中、岡山大学が立ち上げた「AI-HPCパートナーズ」は、これらの技術に関心を持つ研究者や技術職員が一堂に会し、知識やノウハウを共有し、新たな共同研究を生み出すことを目的とした研究拠点です。

このパートナーズの核となるのは、まさに「交流」です。AIやデータ駆動計算、シミュレーションといった分野は、日々進化しており、一つの専門分野にとどまらず、多様な視点や技術を融合させることで、より大きな成果が期待できます。例えば、AIの専門家がHPCの専門家と連携することで、AIモデルの学習速度を飛躍的に向上させたり、HPCを使ってシミュレーションした結果をAIで解析し、新たな知見を得たりすることが可能になります。

第2回ミーティングには、教員、技術職員、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)、コーディネーター(産学連携、学術研究)など、約30名もの多様なバックグラウンドを持つ参加者が集結しました。これは、「AI-HPCパートナーズ」が、単なる学術発表の場ではなく、実際に研究を進める上での課題解決や、新しいアイデアの創出に繋がる実践的な交流の場として機能していることを示しています。異なる専門性を持つ人々が集まることで、予期せぬ化学反応が生まれ、これまでにない研究テーマやアプローチが生まれることが期待されます。

第2回ミーティングの開催概要とハイライト

2026年1月19日、岡山大学津島キャンパスの創立五十周年記念館2階大会議室にて、「AI-HPCパートナーズ」第2回ミーティングがハイブリッド形式で開催されました。この形式は、遠隔地からの参加も可能にし、より多くの研究者や技術職員が交流できる機会を提供しました。

AI-HPCパートナーズミーティング

ミーティングの冒頭では、世話人を務める関本敦准教授(学術研究院環境生命自然科学域(工))が開会の挨拶を行いました。関本准教授は、AI-HPC計算基盤と研究拠点形成に向けた岡山大学の取り組みについて説明し、さらに、ヨーロッパのスーパーコンピューターインフラ「PRACE」や日本のスーパーコンピューターインフラ「HPCI」の利用経験についても紹介しました。これにより、参加者は国内外の最先端の計算資源の活用事例や、それらを取り巻く現状について理解を深めることができました。

専門家による講演:AI・HPCの現在と未来

今回のミーティングでは、AIとHPC分野の第一線で活躍する専門家による2つの講演が行われ、参加者は最新の知見と技術動向に触れる貴重な機会を得ました。

講演①:計算リソースの「見える化、共有、取引」による分散コンピューティングの新形態

最初の講演では、モルゲンロット株式会社CTOの伊藤寿氏が、「AI・HPC向け計算リソースの見える化、共有、取引へ〜新しい分散コンピューティングのかたち」と題して登壇しました。AIやHPCの研究開発を進める上で、高性能な計算リソース(コンピューターの処理能力やストレージなど)は不可欠ですが、これらは非常に高価で、誰もが自由に使えるわけではありません。

伊藤氏の講演では、このような限られた計算リソースを、より多くの研究者や企業が効率的に利用できるよう、「見える化」(どこにどのようなリソースがあるか分かりやすくする)し、「共有」(使っていない時間を有効活用する)し、さらには「取引」(必要な時に必要な分だけ利用できる市場を作る)する、という新しい分散コンピューティングの概念が紹介されました。これは、AIやHPCの利用障壁を下げ、研究開発の民主化を促進する可能性を秘めており、参加者は計算資源の有効活用に向けた新たな視点を得ることができました。

講演の様子

講演②:学術用計算資源の全体像

次に、岡山大学AI・数理データサイエンスセンター サイバーフィジカル情報応用研究推進部門(Cypher)部門長の嶋吉隆夫教授(学術研究院異分野融合教育研究領域(AI・数理))が、「学術用計算資源ひとめぐり」と題して講演を行いました。大学や研究機関には、研究に役立つ様々な高性能計算資源が存在しますが、どの資源がどこにあり、どうすれば利用できるのか、その全体像を把握することは容易ではありません。

嶋吉教授の講演では、学術研究に利用可能な計算資源について、その種類(スーパーコンピューター、GPUサーバーなど)、利用方法、そしてそれぞれの特徴が分かりやすく解説されました。これにより、参加者は自身の研究テーマに最適な計算資源を見つけ出し、その活用方法を具体的にイメージすることができました。特にAI初心者にとっては、高性能な計算資源へのアクセス方法を知る上で、非常に有益な情報となったことでしょう。

HPC技術に関するプレゼンテーション

活発な意見交換が行われた「AI-HPC計算機利用相談会」

講演会の後には、「AI-HPC計算機利用相談会」が実施されました。ここでは、スーパーコンピューターやAIの利用に関する具体的な疑問や課題について、参加者間で活発な意見交換が行われました。技術的な相談から、研究テーマの相談、共同研究の可能性の探求まで、多岐にわたる議論が交わされました。

このような相談会は、単に情報を提供するだけでなく、参加者同士が直接対話し、互いの知識や経験を共有することで、新たな解決策やアイデアが生まれる貴重な機会となります。特に、AIやHPCといった専門性の高い分野では、個々の研究者が抱える課題を共有し、多角的な視点から議論することで、より効果的なアプローチを見つけ出すことが可能になります。

ミーティングの参加者

今後の展望:「AI-HPCパートナーズ」が描く人材育成と共同研究の未来

「AI-HPCパートナーズ」は、今回の第2回ミーティングで得られた知見と交流を基盤として、今後も活動を活発化させていく予定です。

まず、次回の第3回ミーティングは、岡山大学AI・数理データサイエンスセンターのサイバーフィジカル情報応用研究推進部門(Cypher)との合同開催が予定されています。この合同開催では、招待講演やポスターセッションの実施が計画されており、さらに幅広い分野からの参加者と、より深く専門的な議論が期待されます。ポスターセッションは、若手研究者や技術職員が自身の研究成果を発表し、フィードバックを得る貴重な場となるでしょう。

また、技術交流会として、学内外と連携した実践的なプログラムの実施も計画されています。具体的には、AI初心者向けのワークショップ、GPGPU(汎用グラフィックス処理装置)ハンズオン、そしてGPUミニキャンプなどが予定されています。GPGPUは、AIの深層学習などで大量の並列計算を効率的に行うために不可欠な技術であり、これらのハンズオンやキャンプは、参加者が実際に手を動かしながら、AIやHPCの技術を習得できる絶好の機会となります。

これらの取り組みは、単に知識を共有するだけでなく、実際にAIやHPCを使いこなせる人材の育成を目的としています。実践的なスキルを身につけた人材が増えることで、岡山大学内外での共同研究がさらに活発化し、地域社会や世界の課題解決に貢献する新たなイノベーションが生まれることが期待されます。

「AI-HPCパートナーズ」は、AIやデータ駆動計算に新たに取り組みたい研究者・技術職員、そして計算リソースの有効活用に関心のあるすべての皆様の参加を歓迎しています。この交流の場が、未来の研究と技術開発を牽引する原動力となることでしょう。

岡山大学の取り組み:地域と地球の未来を共創する研究大学

岡山大学は、「AI-HPCパートナーズ」の活動を通じて、地域社会と地球の未来に貢献する「地域中核・特色ある研究大学」としての役割を積極的に果たしています。2023年度には文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択されており、世界に誇れる研究大学の山脈を築くことを目指しています。

岡山大学とJ-PEAKSロゴ

このJ-PEAKS事業は、地域の中核となり、世界的な研究成果を生み出す大学を育成するための国の重要なプロジェクトです。岡山大学は、AIやHPCのような最先端技術の研究推進を通じて、この目標達成に貢献しています。また、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも積極的に取り組んでおり、第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞するなど、その活動は高く評価されています。

岡山大学キャンパスの空撮

AIやHPCの研究は、医療、環境、エネルギーなど、SDGsが掲げる様々な課題解決に直結します。例えば、HPCを用いた気候変動シミュレーションは環境問題の理解を深め、AIを活用した効率的な資源管理は持続可能な社会の実現に貢献します。岡山大学は、このような研究を通じて、地域社会の持続可能性を高め、世界の革新の中核となることを目指しています。

岡山大学J-PEAKS事業の説明

那須保友学長が語るように、大学は地域と地球の未来を共創し、世界を変革させ、持続可能な社会を実現させる「力」を持っていると信じられています。岡山大学は、その「力」を最大限に発揮するため、教育、研究、社会貢献のあらゆる面でイノベーションを追求し続けています。

岡山大学学長とSDGs

岡山大学ロゴ

関連情報・リンク集

まとめ

岡山大学が開催した「AI-HPCパートナーズ」第2回ミーティングは、AIとHPCという最先端技術を巡る研究者・技術職員の活発な交流と、新たな共同研究の創出に向けた重要な一歩となりました。専門家による示唆に富んだ講演と、具体的な課題解決に向けた相談会を通じて、参加者は多くの学びと刺激を得ることができました。

今後も、Cypherとの合同開催や実践的な技術交流会を通じて、AI・HPC分野の人材育成と共同研究の推進が図られる予定です。岡山大学は、この「AI-HPCパートナーズ」の活動を核として、地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学としての役割をさらに強化していくことでしょう。今後の岡山大学の取り組みに、引き続きご期待ください。

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