FRONTEOが経済安全保障AI「KIBIT Seizu Analysis」新技術でサプライチェーン解析を高度化!特許出願で何が変わる?
AI(人工知能)技術を活用して、企業が直面する複雑な課題を解決する株式会社FRONTEO(以下、FRONTEO)が、経済安全保障対策AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」において、サプライチェーン解析を大きく進化させる新技術を開発し、特許を出願したことを発表しました。この新技術は、企業が自社のサプライチェーンをより深く理解し、経済安全保障リスクに対応するための強力なツールとなることが期待されています。
経済安全保障対策AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」とは?
「KIBIT Seizu Analysis」(https://osint.fronteo.com/)は、FRONTEOが独自に開発したAI「KIBIT(キビット)」を搭載したソリューションです。現代の企業活動において、サプライチェーン(製品やサービスが消費者に届くまでの全工程)は非常に複雑であり、国際情勢の変化や地政学的リスクによって、予期せぬ中断や制裁のリスクに直面することがあります。このようなリスクから企業を守り、事業の継続性を確保するために、サプライチェーンの透明性を高め、潜在的な脅威を早期に発見することが求められています。
KIBIT Seizu Analysisは、膨大な企業間取引データや産業構造データなどをAIが解析することで、企業のサプライチェーンにおける「チョークポイント」(ボトルネックとなり得る重要な地点)や、隠れた依存関係、さらには株主支配ネットワークや研究者ネットワークといった多岐にわたるリスク要因を可視化し、分析を支援します。これにより、企業はより客観的なデータに基づいて、経済安全保障に関する意思決定を行うことが可能になります。
サプライチェーン解析を革新する新技術「実効依存モデル」
今回FRONTEOが特許を出願したのは、サプライチェーン解析をさらに高度化させるための新技術「実効依存モデル」です。これは、従来の解析手法が抱えていた課題を解決し、より現実的で精度の高い分析を可能にします。
従来の解析手法の課題
これまでのサプライチェーン解析では、「構造依存モデル」という手法が主流でした。このモデルは、企業間の取引ネットワーク、つまり「誰と誰が取引しているか」というつながりだけに着目していました。しかし、この方法には以下のような限界がありました。
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物理的なモノの流れや産業構造の反映不足: 取引の量が多いからといって、それが必ずしも「モノづくり」において重要な役割を果たしているとは限りません。例えば、クラウドサービスを提供する企業や物流拠点は、多くの企業と取引がありますが、原材料を生産する企業とは異なる種類の重要性を持っています。
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サービス業の過大評価: サービス業は多様な企業と取引を行う傾向があるため、構造依存モデルでは、実態以上にチョークポイントとして高く評価されやすい傾向がありました。これにより、真に重要なボトルネックを見落とす可能性があったのです。
新技術「実効依存モデル」とは?
この課題を解決するために開発されたのが「実効依存モデル」です。この新技術の鍵となるのは、経済統計である「産業連関表」と「投入係数」という考え方を活用することです。
産業連関表と投入係数
「産業連関表」とは、国内のすべての産業が、他のどの産業からどれくらいの原材料やサービスを受け取り、どれくらいの製品やサービスを提供しているかを網羅的に示した経済統計です。まるで、国の産業全体を写した巨大な「レシピ帳」のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。
この産業連関表の中から特に重要なのが「投入係数」です。投入係数とは、ある製品やサービスを1円分生産するために、原材料、部品、サービスなどが「どれだけ必要か」を産業別に示した指標です。例えば、自動車を1台作るためには、鉄鋼が何円分、半導体が何円分、そして運送サービスが何円分必要か、といった具体的な「産業のレシピ(構成比)」を示してくれます。
実効依存モデルの仕組み
実効依存モデルでは、単なる取引の多寡だけを見るのではなく、企業の事業内容を産業分類コード単位で詳細に分析します。そして、この分析結果に、産業連関表に基づく投入係数を「重み付け」として加味します。これにより、次のようなことが可能になります。
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真に重要なサプライヤーの特定: 鉱山、精錬、鋼材といった原材料分野や、半導体などの「モノづくり」の根幹を支えるサプライヤーは、たとえ直接の取引量がそれほど多くなくても、投入係数が示す「産業のレシピ」における重要度が高いと判断されます。新技術は、このような真に重要度の高いサプライヤーを特定できます。
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ボトルネックの定量的な可視化: サービス業のように取引が多いだけではなく、産業の根幹を支える「投入」の観点から、本当にボトルネックになり得る部分を客観的な指標として可視化します。これにより、企業はどこに真のリスクが潜んでいるのかを正確に把握できます。
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数段上流のTierまで推定: 直接取引のない、さらに上流のサプライヤー(Tier 2、Tier 3など)についても、投入係数を用いてその影響力や依存関係を推定し、可視化することが可能になります。これにより、より広範なサプライチェーン全体のリスクを把握できるようになります。
この新技術によって、サプライチェーン上の経路スコアに応じて線の太さを変えた図で、依存関係を定量的に表現できるようになります。下の画像は、データフローを示すサンキーダイアグラムであり、灰色の帯の幅がデータの量を表し、異なる色の棒が接続の開始点と終了点を示しています。このように、複雑なデータを視覚的に理解しやすくする工夫も盛り込まれています。

企業の経済安全保障対応と戦略立案を高度化
この新技術「実効依存モデル」の導入は、企業にとって多大なメリットをもたらします。具体的には、以下のような点で企業の経済安全保障対応と戦略立案が高度化されます。
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デューデリジェンスの効率化: 自社のサプライチェーン全体におけるリスク評価(デューデリジェンス)を、より効率的かつ高精度に行うことができます。これにより、潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じることが可能になります。
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戦略的な調達計画: 客観的なデータに基づいて、サプライヤーの選定や調達先の分散など、経済安全保障を見据えた戦略的な調達計画を立案できます。特定のサプライヤーへの過度な依存を避け、安定した供給網を構築する上で役立ちます。
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M&A戦略の立案: M&A(企業の合併・買収)を検討する際にも、対象企業のサプライチェーンにおけるリスクや、その企業が持つ真の重要性を評価するための客観的なデータとして活用できます。これにより、よりリスクの少ない、戦略的に価値の高いM&Aを実現できます。
経済安全保障をめぐる情勢と企業に求められる対応
近年、世界情勢は急速に変化しており、経済安全保障の重要性が増しています。米中間の地政学的対立の長期化に加え、半導体やエネルギーなどの重要物資を巡る供給網の再編が世界的に進んでいます。各国政府は、自国の安全保障や経済的利益を守るため、制裁措置や輸出入管理の枠組みを拡大・厳格化しています。
日本においても、2022年5月に「経済安全保障推進法」(https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/suishinhou.html)が施行されました。この法律は、国民生活や経済活動を脅かすリスクに対処するため、サプライチェーンの強靭化、基幹インフラの安全性確保、先端技術の開発促進、特許出願の非公開化など、多岐にわたる取り組みを企業に求めています。
このような環境下で、企業には自社のサプライチェーンや取引先に関する透明性の確保と、説明責任の強化が不可欠です。想定外の規制違反による制裁リスクや、調達・供給の断絶による事業継続への影響を回避するためには、これまで以上に高度なリスク管理体制の構築が求められています。
FRONTEOの経済安全保障事業が企業を支援
FRONTEOは、経済安全保障領域におけるAIソリューションのリーディングカンパニーとして、企業がこれらの複雑な課題に対応できるよう、包括的な支援を提供しています。
FRONTEOの経済安全保障事業(https://osint.fronteo.com/)では、リスクマネジメント事業の一環として、膨大な情報と見えないネットワークに潜むリスクを可視化し、企業の事業・経営戦略の策定と推進を支援しています。
KIBIT Seizu Analysisの3つのソリューション
KIBIT Seizu Analysisは、現在、以下の3つのソリューションを提供しており、今回の新技術は特に「サプライチェーン解析ソリューション」を強化するものです。
- サプライチェーン解析ソリューション: サプライチェーンにおけるチョークポイントや、懸念される組織とのつながりの可能性、依存度などを詳細に把握します。今回の新技術により、この解析の精度と深さが飛躍的に向上します。
- 株主支配ネットワーク解析ソリューション: 複雑なネットワーク上の株主間の影響力を、間接持株比率を補正した独自の手法で解析し、隠れた支配力の伝播を把握します。これにより、見えない資本関係によるリスクを特定できます。
- 研究者ネットワーク解析ソリューション: 機微技術(国家安全保障に関わる重要な技術)に関わる研究開発について、研究者の所属組織などに注目した人脈を分析し、それに基づくリスクを把握します。技術流出のリスク管理に貢献します。
経済安全保障対策コンサルテーション
FRONTEOは、KIBIT Seizu Analysisの提供に加えて、企業が自社内で経済安全保障対応を自律的に運用できる「経済安全保障室」の業務設計をサポートする「経済安全保障対策コンサルテーション」も提供しています。これにより、ツールと専門知識の両面から、企業の体制構築を支援します。
FRONTEOと独自AI「KIBIT」について
FRONTEO(https://www.fronteo.com/)は、2003年8月に創業し、2007年6月に東証マザーズ(現:東証グロース)に上場した、日本、米国、韓国で事業を展開する企業です。同社の核となるのは、自社開発のAI「KIBIT」です。
KIBITの独自技術
KIBITは、一般的なAIとは異なる独自のアプローチを持っています。多くの汎用型AIが膨大な量の教師データと高いコンピューティングパワーに依存するのに対し、KIBITはFRONTEO独自の自然言語処理技術(日本・欧州・米国・韓国で特許取得済み)により、少ないデータからでも高速かつ高精度な解析を可能にします。
さらに、解析した情報をマップ化(構造を可視化)する特許技術を活用することで、KIBITは専門家の「インサイト」(洞察や直感)にダイレクトに働きかけることができます。これにより、例えば創薬分野での新しい仮説生成や標的探索など、高度な専門知識が求められる分野でもその威力を発揮しています。
下の画像は、FRONTEOのAIプラットフォーム「Exabit」を中心に、経済安全保障、リーガルテックAI、ライフサイエンスAI、ビジネスインテリジェンスといった多岐にわたる事業分野が連携し、データと情報分析を統合するビジネスモデルを描いたものです。KIBITがこれらの分野でどのように活用されているかが示されています。

KIBITが社会課題解決に貢献する分野
FRONTEOは、KIBITの独自技術とアプローチを通じて、「集合知に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する」という理念を掲げています。その実現に向けて、以下の各事業で社会実装を推進しています。
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ライフサイエンスAI: 創薬支援や医療研究の効率化に貢献します。(https://lifescience.fronteo.com/)
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リスクマネジメント:
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ビジネスインテリジェンス・コンプライアンス支援分野(https://kibit.fronteo.com/)
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経済安全保障分野(https://osint.fronteo.com/)
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リーガルテックAI分野(https://legal.fronteo.com/)
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DX(デジタルトランスフォーメーション): ビジネスインテリジェンス・プロフェッショナル支援分野で、企業のデジタル変革を推進します。(https://kibit.fronteo.com/)
まとめ:進化するAIが描く経済安全保障の未来
FRONTEOが今回開発し特許を出願した新技術「実効依存モデル」は、経済安全保障対策AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」のサプライチェーン解析能力を大きく向上させます。これにより、企業はより深く、より正確に自社のサプライチェーンのリスクを理解し、国際情勢の変化に柔軟に対応できる体制を構築できるようになるでしょう。
経済安全保障は、現代の企業経営において避けて通れない重要なテーマとなっています。FRONTEOのようなAI技術をリードする企業の取り組みは、日本企業の持続的な成長と、社会全体の安定に貢献していくことが期待されます。今後もFRONTEOの技術開発と社会実装に注目が集まることでしょう。

