NVIDIA IGX Thor™搭載!アドバンテックの次世代AI推論システム「MIC-735」が切り拓く安全でスマートな未来:ロボットと医療AI最前線

NVIDIA IGX Thor™搭載!アドバンテックの次世代AI推論システム「MIC-735」が切り拓く安全でスマートな未来:ロボットと医療AI最前線

近年、AI(人工知能)技術は目覚ましい進化を遂げ、私たちの生活や産業に大きな変革をもたらしています。特に、現実世界と直接連携して動作する「フィジカルAI」は、ロボットや医療機器、自動運転車など、さまざまな分野での応用が期待されており、その進化が社会の未来を大きく左右すると言われています。

このような背景の中、産業用コンピュータの世界的なリーダーであるアドバンテック株式会社は、NVIDIA®の最新プロセッサ「NVIDIA® IGX Thor™」を搭載した次世代AI推論システム「MIC-735」を正式に発表しました。この革新的なシステムは、フィジカルAIの可能性を最大限に引き出し、安全でスマートな次世代オートメーションの実現を目指しています。

本記事では、AI初心者の方にも分かりやすい言葉で、MIC-735がどのようなシステムなのか、その核となる技術、そしてロボティクスや医療分野での具体的な活用例について、詳しくご紹介します。

アドバンテックの次世代AI推論システム「MIC-735」

アドバンテックが発表した次世代AI推論システム「MIC-735」とは?

MIC-735は、アドバンテックが開発したエンタープライズ(企業向け)対応のAI推論システムです。ここで言う「AI推論システム」とは、AIが事前に学習した知識やパターンを使って、新しいデータから答えを導き出す(推論する)ためのコンピュータシステムを指します。例えば、カメラの映像から物体を認識したり、医療画像から異常を見つけ出したりする際に、この推論処理が不可欠となります。

NVIDIA® IGX Thor™による加速化

MIC-735の最も重要な特徴は、その「頭脳」としてNVIDIA® IGX Thor™を搭載している点です。NVIDIA® IGX Thor™は、NVIDIA®が開発した高性能なAIプロセッサで、特に現実世界とインタラクションするAI、つまりフィジカルAIの処理に特化して設計されています。

このプロセッサは、最大2,070 TFLOPS(テラフロップス)という驚異的な計算能力(FP4形式の場合)を持っています。TFLOPSとは1秒間に1兆回の浮動小数点演算ができることを意味し、これが高いほど、膨大なデータを瞬時に処理し、複雑なAIモデルを高速で実行できることを示します。これにより、ロボットや医療機器がリアルタイムで周囲の状況を認識し、瞬時に判断を下すことが可能になります。

NVIDIA® IGX Thor™に関する詳細はこちらをご覧ください。
https://blogs.nvidia.com/blog/igx-thor-processor-physical-ai-industrial-medical-edge/

フィジカルAIの加速とNVIDIA® Holoscanプラットフォームの役割

アドバンテックは、NVIDIA®およびそのエコシステムパートナー企業との連携を強化し、フィジカルAIの導入を加速することを目指しています。フィジカルAIとは、現実世界で物理的な行動を伴うAIのことで、例えばロボットが工場で作業をしたり、医療機器が患者の診断を支援したりするような場面で活躍します。これらの応用では、リアルタイムでの処理能力、システムの安全性、そして自律的な意思決定能力が極めて重要となります。

NVIDIA® Holoscanプラットフォームとの統合

MIC-735のもう一つの核となる技術が、NVIDIA® Holoscanプラットフォームとの統合です。Holoscanは、センサーから得られる大量のリアルタイムデータを高速で処理し、AI推論を行うためのソフトウェアプラットフォームです。特に、医療機器や産業用ロボットなど、複数のセンサーからの情報を統合してAI処理を行う必要がある分野で、その真価を発揮します。

NVIDIA® Holoscanに関する詳細はこちらをご覧ください。
https://www.nvidia.com/ja-jp/edge-computing/holoscan/

アドバンテックは、このHoloscanプラットフォームに加えて、独自開発した「Holoscan Sensor Bridge」を統合しています。このSensor Bridgeは、複数のセンサーからのデータをシームレスかつ高帯域幅で接続し、センサーとAIプロセッサ間のリアルタイム通信における互換性を確保します。これにより、MIC-735は次世代ロボティクスや医療分野における中核的な「ニューロハブ」(情報の中心地)となり、カメラ、センサー、AIモデルをNVIDIA® IGX T5000モジュールを通じて接続し、安全性が極めて重要なAI推論と超低遅延の制御を実現します。

ロボティクスと医療分野における「MIC-735」の具体的な活用

MIC-735は、その高性能と堅牢な設計により、特に産業用ロボット、AMR(自律走行搬送ロボット)、内視鏡、手術用可視化システムなどのAI駆動型医療機器向けに特化して設計されています。これらの分野では、高い信頼性と安全性が求められます。

厳しい環境下での安定動作と高速通信

MIC-735は、マイナス30℃からプラス60℃までの幅広い温度範囲で安定して動作します。これは、工場や屋外など、温度変化の激しい過酷な環境下でも、システムが確実に機能し続けることを意味します。このような堅牢性は、産業用機器には不可欠な要素です。

また、5G/QSFP 4×25GbEインターフェースに対応しており、超高速かつ大容量のデータ通信が可能です。ロボットや医療機器は、多くのセンサーから膨大なデータをリアルタイムで収集し、それをAIで処理して瞬時にフィードバックする必要があります。この高速通信能力は、遅延のないリアルタイム制御を実現し、機器の自律的な動作を支えます。

機能安全と高精度なセンサー連携

さらに、MIC-735には機能安全MCU(マイクロコントローラユニット)モジュールが搭載されています。機能安全とは、システムが故障した場合でも、危険な状態にならないように設計された安全対策のことで、人命に関わる医療機器や、人と協働するロボットにとって極めて重要です。このモジュールにより、センサーとアクチュエーター(動きを制御する部品)間のリアルタイム通信が保証され、ロボットや医療機器が安全に自律動作できる環境が提供されます。

MIPIインターフェースも搭載されており、カメラを直接接続したり、アドバンテックのHoloscan Sensor Bridgeと統合したりすることができます。これにより、複数の画像センサーとのシームレスな接続が確保され、NVIDIA® IGX Thor™とセンサー間でリアルタイム推論と制御に必要な高スループットのデータ通信が実現します。高精細な画像データを遅延なくAIに送り込むことで、より正確な認識や判断が可能になります。

アドバンテックのロボティクスエコシステムを拡張する「MIC-742-AT」

アドバンテックは、MIC-735だけでなく、NVIDIA® Jetson T5000モジュールを搭載したエッジAIシステム「MIC-742-AT」も提供しています。このMIC-742-ATは、高性能な画像処理とセンサー統合を強化するために設計されており、ロボティクスエコシステムをさらに拡張します。

柔軟なI/O設計とGPUDirect RDMA技術

MIC-742-ATは、直接MIPI接続やMIPI経由での8ポート以上のGMSLカメラ入力に対応する柔軟なI/O(入出力)設計を特徴としています。GMSLカメラとは、自動車などで用いられる長距離伝送可能なカメラのことで、これによりロボットナビゲーション、物体認識、空間認識に不可欠な、堅牢で同期されたマルチカメラ認識を実現します。複数のカメラからの映像を正確に同期して処理することで、ロボットは周囲の環境をより詳細かつ正確に把握できるようになります。

また、GPUDirect RDMA(Remote Direct Memory Access)技術を活用したHoloscan Sensor Bridgeとの統合により、ネットワークアダプタやストレージがNVIDIA® IGX Thor™に直接アクセスできます。この技術は、CPUを介さずにデバイス間で直接データをやり取りできるため、カメラセンサーとAIプロセッサ間でリアルタイムの画像解析と制御に不可欠な、高速かつ安定したデータフローが可能になります。

「MIC-735」と「MIC-742-AT」の主な特長まとめ

MIC-735の特長

MIC-735の特長

  • NVIDIA® IGX Thor™ モジュール搭載:最大2,070 TFLOPS対応(FP4)の高いAI処理能力を提供します。

  • QSFP 4×25GbE, 1×5Gbイーサネット対応:超高速かつ大容量のデータ通信を実現します。

  • 機能安全対応MCUモジュール搭載:システムの安全性を高め、誤動作のリスクを低減します。

  • -30℃~+60℃ 動作対応向け堅牢設計:過酷な環境下でも安定した動作を保証します。

  • ロボットデータフローを最適化する統合型Holoscanセンサブリッジ:複数のセンサーからのデータを効率的にAIプロセッサへ伝送します。

MIC-742-ATの特長

MIC-742-ATの特長

  • NVIDIA® Jetson Thor™ モジュール「Jetson T5000」搭載:最大2070 TFLOPS(FP4)のAI処理能力を持ちます。

  • 1xQSFP28(4x25 GbE)対応:高速ネットワーク接続を提供します。

  • 豊富なI/Oポート:1 x 5GbE, 4 x USB 3.2 (Gen 2), 1 x M.2 AEキー(Wi-Fi®), 1 x M.2 Bキー(LTE) に対応し、多様な周辺機器との接続が可能です。

  • 4 x CANbus, 1 x I2C 対応:産業用通信プロトコルに対応し、幅広い産業機器との連携を可能にします。

MIC-742-ATに関する詳細はこちらをご覧ください。
https://www.advantech.com/ja-jp/products/965e4edb-fb98-429e-89ed-9a0a8435a7be/mic-742%E2%80%8B/mod_79762a8d-c514-4c3f-b391-7f56a995b758

アドバンテックのビジョンと今後の展望

アドバンテックは1983年に台湾で設立され、40年以上にわたり産業向けの高品質・高性能なコンピュータを開発してきました。現在では、3,000を超える多様なIoT機器をラインナップし、世界26か国95都市に拠点を構える産業用PC市場の世界シェアNo.1メーカー(出典元:OMDIA – 産業用PCの市場の世界シェア1位。42.5% (2023年版))として、「Enable an Intelligent Planet」(インテリジェントな地球の実現)というビジョンを掲げています。

AIとIoT(モノのインターネット)を組み合わせたプラットフォームサービスを通じて、社会が抱える様々な課題を解決し、より豊かな未来を育むことを目指しています。今回のMIC-735の発表も、そのビジョンを具体化する重要な一歩と言えるでしょう。

アドバンテックのエッジAI関連機器シリーズについては、ぜひ以下のウェブサイトをご覧ください。
https://www.advantech.com/ja-jp/products/ai-computer-systems/sub_965e4edb-fb98-429e-89ed-9a0a8435a7be

また、アドバンテックの会社サイトはこちらです。
https://www.advantech.co.jp/

日本初公開の機会

MIC-735は、2025年12月に日本で初めて公開される予定です。具体的には、国際ロボット展(12月3日~6日)とSEMICON Japan 2025(12月17日~19日)にて実機が展示される予定ですので、興味のある方はぜひ足を運んで、その革新的な技術を直接ご覧になってください。

まとめ

アドバンテックが発表したNVIDIA® IGX Thor™搭載の次世代AI推論システム「MIC-735」は、フィジカルAIの領域に新たな可能性をもたらす画期的な製品です。高性能なAI処理能力、NVIDIA® Holoscanプラットフォームとの統合、そして堅牢な設計と機能安全への配慮により、産業用ロボットやAMR、さらには内視鏡や手術用可視化システムといった医療AI機器の進化を強力に後押しします。

AI技術が現実世界とより密接に連携することで、私たちの社会はより安全で効率的、そしてスマートな未来へと向かっていきます。アドバンテックとNVIDIA®の技術が融合したMIC-735は、その未来を切り拓く重要な鍵となるでしょう。今後のフィジカルAIの発展と、それがもたらす社会の変化に大いに期待が寄せられます。

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