AIフェイク時代を乗り越える!スマホ写真の信頼性を高める「VeraSnap」のLiDAR実物判定技術を徹底解説

AI時代の写真・動画の信頼性問題と「VeraSnap」の登場

近年、AI(人工知能)技術の急速な進化は目覚ましく、写真や動画をあたかも本物であるかのように生成する「AIフェイク」や「ディープフェイク」と呼ばれる技術が社会に大きな影響を与えています。見た目では本物と区別がつかない偽のコンテンツがインターネット上に氾濫することで、私たちは何が真実で、何が偽りなのかを判断するのが非常に難しくなっています。この問題は、フェイクニュースによる世論操作、個人への誹謗中傷、さらには詐欺行為など、さまざまな形で深刻な影響を及ぼしています。

このような状況の中で、デジタルコンテンツ、特に写真や動画の「信頼性」をいかに確保するかが、現代社会における喫緊の課題となっています。例えば、保険金請求の証拠写真、裁判での証拠、不動産や建設現場の記録、報道写真など、多くの場面で写真が持つ「証拠能力」が極めて重要になります。しかし、AIフェイクの登場により、その証拠能力自体が揺らぎかねない時代を迎えているのです。

こうした背景から、VeritasChain株式会社は、スマートフォンで撮影した写真に「法的証拠能力」を持たせることを目指した画期的な証跡作成カメラアプリ「VeraSnap(ベラスナップ)」を開発しました。VeraSnapは、ただ写真を撮るだけでなく、いつ、どこで、誰が、何を撮影したのかという情報を暗号技術を用いて記録し、その写真が改ざんされていないことを証明できるようにするアプリです。

VeraSnapの画期的なアップデート:LiDARによる「実物判定」機能

このVeraSnapが、さらに一歩進んだ機能として、LiDAR(ライダー)センサーを活用した「実物判定」に対応しました。これは、撮影している対象が「目の前に実際に存在する物(実物)」なのか、それとも「スクリーンに表示された画像」なのかを判定できる世界初の機能です。この機能は、AppStoreでVeraSnap v1.2として公開されています。

LiDARを用いた真偽判定の原理を説明する図です。iPhoneのLiDARセンサーが赤外線レーザーで対象物(3D実物または画面)までの距離をミリ単位で計測し、実物と画面の深度の違いを検出する仕組みを示しています。

LiDARとは?なぜ実物判定ができるのか?

LiDAR(ライダー)とは、「Light Detection and Ranging」の略で、光を使って距離を測るセンサー技術です。iPhoneのProモデルなどに搭載されており、赤外線レーザーを対象物に照射し、その光が反射して戻ってくるまでの時間を計測することで、対象物までの正確な距離をミリ単位で把握することができます。

VeraSnapは、このLiDARセンサーと、オープン標準の暗号学的プロベナンスプロトコル(CPP v1.4、RFC 3161)を組み合わせることで、リアルタイムでのスクリーン撮影検出を可能にしました。これは、世界初のコンシューマー向けスマートフォンアプリケーションとして注目されています。

「アナログホール」問題への対応

これまでのデジタルコンテンツ認証システムには、「アナログホール」と呼ばれる重大な脆弱性が存在しました。これは、どんなに高度な認証技術をもってしても、AIが作った偽の画像や動画(ディープフェイク)を高品質なスクリーンに表示し、それを正規のカメラで撮影してしまえば、暗号学的には「本物の写真」として認証されてしまう、という問題です。つまり、偽物を本物と見せかけることが可能だったのです。

VeraSnapのLiDAR深度分析は、この「アナログホール」の問題を解決します。撮影時に49,152点もの3D深度データを取得し、被写体が実世界の立体物か、それとも平面的なスクリーンかをリアルタイムで判定します。実世界のシーンは、手前にあるものや奥にあるものなど、奥行きがあるため深度に大きなばらつきが生じます。一方、スクリーンに表示された画像は、すべてが同じ平面上にあるため、深度が均一になるという物理的な特性を活用しているのです。

VeraSnap LiDARスクリーン検出技術の解説。LiDARの原理と実世界・スクリーンの深度パターンの違いを説明し、平坦度、深度均一性、エッジ鮮明度の3要素と信頼度スコアでスクリーンを判定するアルゴリズムを示している。

これにより、例えば保険金請求における写真詐欺の防止、法的証拠としての信頼性向上、リモートでの検査における不正防止など、多岐にわたる分野での活用が期待されます。さらに、生の深度データは保存せずにハッシュ値のみを記録するというプライバシー保護設計も特徴です。

「実物の3Dシーン」と「スクリーン表示」の深度マップを比較したグラフ。実物では多様な深度差が、スクリーンでは均一な深度差が示され、スクリーン検出の精度を視覚的に説明しています。

LiDARによる深度データから標準偏差を計算し、撮影対象が実物かスクリーンかを判定します。信頼度スコアも表示されるため、客観的な検証が可能です。

モバイルアプリの証跡詳細画面。FaceIDによる人間認証情報、Bronzeレベルの証明力、LiDARセンサーによる深度分析結果が表示され、認証時刻や信頼度などの詳細が確認できます。

対応機種と今後の展開

LiDAR実物判定機能は、LiDARセンサーを搭載した以下のiPhone Proモデルで利用できます(2026年2月1日時点)。

  • iPhone 12 Pro / 12 Pro Max

  • iPhone 13 Pro / 13 Pro Max

  • iPhone 14 Pro / 14 Pro Max

  • iPhone 15 Pro / 15 Pro Max

  • iPhone 16 Pro / 16 Pro Max

  • iPhone 17 Pro / 17 Pro Max

また、VeraSnapはiPadOSへの対応も予定されており、VeraSnap v1.3として2026年2月にアップデートでリリースされる見込みです。世界で稼働しているiPadは2025年2月時点で2~3億台と推定されており、現場での活用を望む声に応える形となります。

VeraSnapというモバイルアプリの「証跡」管理画面。証跡一覧と、選択された証跡の詳細情報(ID、日時、ファイル名、サイズ、ハッシュ、撮影場所の地図)が表示されている。共有、QRコードプレビュー、削除オプションも利用可能。

さらに、ケースごとの管理機能も強化され、現場での利便性が向上しました。ディープリンクにも対応し、証跡のやり取りがより簡単になっています。

白い車のドアに深いへこみと錆が見られ、損傷状況を示している。画面上には事故報告用のアプリインターフェースが表示されており、「証跡を生成しました」というメッセージが見える。

Android版VeraSnapについても現在開発が進められており、2026年2月中のリリースを目指しているとのことです。

Android版VeraSnapは、iOS版と完全に相互運用可能で、CPP(Capture Provenance Profile)仕様v1.5に準拠しています。これにより、プラットフォームを問わず、撮影された証拠データの真正性を同じ検証基盤で確認できます。主な機能として、RFC 3161準拠のタイムスタンプ局(TSA)連携による第三者証明、LiDAR/ToFセンサーを活用したスクリーン撮影検知、生体認証と連動した本人確認付き撮影モードなどを搭載予定です。Android固有の機能として、TPM 2.0/StrongBoxによるハードウェアレベルの鍵保護にも対応し、企業環境での導入にも適しています。

黒い背景に「VeraSnap」というアプリの起動画面が表示されています。中央には指紋認証のアイコンがあり、その下に「Verify, Don't Trust.」というスローガンと「Content Provenance Protocol」という説明文が記されています。

VeraSnapのその他の主要機能

  • ケース管理機能: 案件やプロジェクト単位で証拠を整理できるため、建設現場の工程記録、保険査定の事故写真、法的証拠の収集など、業務用途での活用が想定されています。

  • VeraCheck検証機能: アプリ内で他者から受け取った証拠データをオフラインで検証できます。JSONファイルのインポートやペーストに対応し、ハッシュチェーンの整合性、電子署名の有効性、TSAタイムスタンプの検証を数秒で完了。専門知識がなくても証拠の信頼性を確認できる視覚的なバッジ表示も特徴です。

  • 10言語対応のグローバル展開: 英語、日本語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、アラビア語の10言語に対応し、国際的なビジネスシーンでの利用を想定しています。

  • プライバシー・バイ・デザイン: 位置情報はデフォルトでOFF、生体認証データはデバイス外に送信されず、すべての検証処理はオンデバイスで完結します。GDPRおよび各国のプライバシー規制に準拠した設計です。

無料で使えるVeraSnap:証拠能力の民主化

VeraSnapは、写真・動画撮影、RFC 3161タイムスタンプ、生体認証証明、LiDAR深度分析、ケース分け機能、法務用エクスポート機能など、証跡能力に関わる全ての機能を無料で利用できます。アプリ内広告も一切ありません。有料のProプラン(月額9.99ドル / 2026年2月時点)では、無制限の証拠保存に対応します。無料プランの保存上限は、撮影累積ではなく、削除ごとにリセットされるため、無料でも継続的に利用可能です。これは、「証拠能力の民主化」を目指し、世界中の個人から企業まで、幅広く使えるようにという開発者の強い思いが込められています。

SNS投稿時の信頼性を高める「Pre-Publish Verification」

VeritasChain Standards Organization(VSO)は、デジタルコンテンツの撮影証跡を暗号学的に証明するオープン仕様「Capture Provenance Profile(CPP)」のバージョン1.5を2026年1月30日に公開しました。

VeritasChainによるCapture Provenance Profile (CPP) v1.5の概要図。メディアの信頼性を確保するためのプリパブリッシュ検証フロー、検証範囲、信頼レベル、プロベナンスインジケーター、C2PA相互運用性、主要機能を解説しています。

CPP v1.5の最大の特徴は、SNSへの投稿直前にコンテンツの出所を検証する「Pre-Publish Verification Extension」が追加されたことです。これにより、ユーザーがSNSで写真や動画をシェアする瞬間に、そのコンテンツが「いつ」「どこで」「誰によって」撮影されたかを暗号学的に検証し、追跡可能な出所情報があることを示すことができるようになります。

中央に特徴的なロゴが配置された白黒のQRコードです。スマートフォンなどでスキャンすることで、特定の情報やウェブサイト、アプリケーションへアクセスできるデジタルリンクとして機能します。

この拡張機能は、ディープフェイクや生成AIコンテンツの急増により「本物の写真・動画」の価値が高まる中、一般ユーザーが日常的に利用するSNSプラットフォームと連携することで、コンテンツ真正性の普及を加速させることを目的としています。

技術的な特徴と「出所証明≠真実の証明」の原則

  • Silent Failure設計: 検証に失敗した場合でもSNSへのシェアがブロックされないため、ユーザー体験を損なうことがありません。200ミリ秒以内の高速検証を実現し、実用的なワークフロー統合を可能にしています。

  • ProvenanceIndicator: 検証結果を示す視覚的インジケータの仕様を標準化しています。ただし、「Verified(検証済み)」「Authentic(本物)」「Trusted(信頼済み)」など、誤解を招く可能性のある7つの用語の使用を禁止し、「Provenance Available(出所情報あり)」という事実のみを伝達します。これは、「出所証明は、そのコンテンツが真実であることの証明ではない」という重要な原則を徹底するためです。

  • C2PA相互運用性: Adobe、Microsoft、Googleなどが推進するC2PA規格との明確なフィールドマッピングを定義し、CPPとC2PA両方のマニフェストを同時に出力する「Dual-Standard Output」にも対応しています。これにより、業界標準との共存を実現しています。

  • 免責事項テンプレート: 3段階の免責事項テンプレートを提供し、各国・地域の法規制に準拠した適切な情報開示を支援します。

CPP v1.5は、CC BY 4.0ライセンスのもとでGitHub(https://github.com/veritaschain/cpp-spec)にて公開されており、誰でも無償で実装可能です。また、本仕様はIETF Internet-Draft(draft-vso-cpp-core-00)としても提出されており、国際標準化を目指しています。

急成長するコンテンツ信頼性市場とVeraSnapの戦略的ポジション

デジタルコンテンツの信頼性を暗号学的に保証する「メディア・プロベナンス」市場は、生成AIの急速な普及とディープフェイクの社会問題化を背景に、世界的な成長期に入っています。

ノートパソコンを操作する人物の手元が写されており、その上には「FAKE」と書かれた吹き出しが複数浮かんでいます。これはフェイクニュースや誤情報の拡散、オンライン詐欺などを暗示しています。

複数の市場調査機関によると、この市場の規模は2024年時点で約1.3億ドル(約195億円)であり、年間成長率23.6%で拡大を続け、2033年には約7.8億ドル(約1,170億円)に達する見通しです。ディープフェイク検知やAIコンテンツ検知を含む関連市場全体では、2033年までに数十億ドル規模への成長が予測されています。

この市場において、VeraSnapと近い事業領域を持つ米国Truepic社は、撮影時点でのコンテンツ真正性を保証するカメラSDKを提供し、累計約3,575万ドル(約54億円)を調達しています。2021年のシリーズBラウンド(2,600万ドル)では、MicrosoftのVC「M12」が主導し、Adobe、Sony Innovation Fundなど、C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)の中核企業が戦略的投資家として参加しました。これは、コンテンツ真正性技術がデジタル社会の信頼基盤として広く認識されている証拠と言えるでしょう。

C2PAエコシステムの拡大も市場の成長を後押ししています。2025年にはGoogle Pixel 10がC2PA認証を取得し、Leica、Nikon、Sonyといった主要カメラメーカーも対応を完了しています。また、欧州AI規則など、各国・地域での規制強化もプロベナンス技術への需要を加速させています。

VeraSnapは、この急成長市場で独自のポジションを確立しています。RFC 3161準拠の外部タイムスタンプ局による第三者時刻証明、生体認証による撮影者バインディング、そしてLiDARを活用した画面撮影検知など、法的証拠性に特化した技術スタックは、保険、リーガル、建設、報道といった分野で既存のソリューションとは一線を画します。C2PA互換エクスポートにより業界標準との統合も実現し、CPP仕様はIETFインターネットドラフトとして公開済みです。

「削除検出」技術の安全性:学術論文で数学的に証明

デジタル証拠の信頼性を確保する上で、もう一つ重要な課題があります。それは、「データが選択的に削除されていないこと」をどう証明するかという問題です。

デジタルフォレンジックにおける欠落攻撃の検出に関する論文。XORベースの完全性不変量を用いた、デジタル証拠セットからの意図的な証拠削除を検知する手法について説明している。

従来の技術(ハッシュチェーン、Merkle木、電子署名、C2PAマニフェストなど)は、「データが変更されていないこと」は検証できますが、例えば保険の請求で事故現場の写真を20枚撮ったとします。しかし、そのうち5枚が保険金詐欺を疑われるような不利な内容だった場合、その5枚だけをこっそり削除して提出することが可能です。これまでの技術では、残りの15枚が改ざんされていないことは証明できても、「5枚が削除されたこと」を検出することは非常に困難でした。

VeritasChainは、VeraSnapの中核技術であるCompleteness Invariant(完全性不変量)に関する学術論文「XOR-Based Completeness Invariants for Tamper-Evident Evidence Sets: Detecting Omission Attacks in Digital Forensics」を、欧州原子核研究機構(CERN)が運営するオープンアクセスリポジトリZenodoにて公開しました(DOI: 10.5281/zenodo.18455556)。

この論文では、SHA-256ハッシュのXOR集約を用いた軽量な暗号プリミティブを提案し、OmitForgeセキュリティゲームによる形式的な安全性証明を提示しています。VeraSnapに実装済みのこの技術は、1万件の証拠セッションで評価を行い、イベントあたり0.003ミリ秒という非常に低い処理オーバーヘッドと、100%の削除検出率を実現しています。検証に必要なデータはわずか56バイトであり、スマートフォン上での実用的な運用を可能にしました。

本論文はCreative Commons Attribution 4.0ライセンスのもとで公開されており、誰でも自由に閲覧・利用できます。また、本技術の基盤であるContent Provenance Protocol(CPP)仕様はIETFインターネットドラフト(draft-vso-cpp-core-00)として標準化手続きを進めています。

まとめ:VeraSnapが目指す「証拠能力の民主化」

VeraSnapは、本物と見分けがつかないAIコンテンツが氾濫する時代において、「個人が手軽に高度な暗号学的証明ができる」フラグシップ・アプリケーションを目指して開発が進められています。LiDARによる実物判定機能、オープンな国際標準を目指すCPP v1.5、そして学術的に証明された削除検出技術など、最先端の技術を駆使することで、デジタルコンテンツの信頼性を根底から支えようとしています。

私たちは、VeraSnapのような技術が普及することで、インターネット上の情報に対する信頼が回復し、より健全なデジタル社会が実現することを期待できます。誰もが簡単に、そして確実に、写真や動画の信頼性を確認できるようになることで、AIフェイクによる悪影響を最小限に抑え、真実が尊重される社会の実現に貢献するでしょう。

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