プライバシー保護とデータ活用を両立する次世代AI!EAGLYSとEmotionXが秘密計算AIの実用化へ共同開発を加速

プライバシー保護とデータ活用を両立する次世代AI!EAGLYSとEmotionXが秘密計算AIの実用化へ共同開発を加速

現代社会において、AI(人工知能)の活用は様々な分野で急速に進んでいます。しかし、AIにデータを学習させたり分析させたりする際には、個人情報や企業の機密情報が外部に漏れるリスクが常に伴います。このプライバシー保護とデータ活用の両立という課題を解決するために、今、「秘密計算AI」という革新的な技術が注目を集めています。

この度、EAGLYS株式会社とEmotionX株式会社は、秘密計算AIの実用化を加速させるための共同開発契約を締結したことを発表しました。この共同開発は、特に「完全準同型暗号(FHE)」という高度な暗号技術の高速化に焦点を当てています。本記事では、この重要な取り組みについて、AI初心者の方にも分かりやすい言葉で詳しく解説していきます。

秘密計算AIとは?なぜ今、必要とされているのか?

まず、秘密計算AIとは何か、そしてなぜ現代社会で強く求められているのかを理解しましょう。

私たちが日々の生活で利用するサービスや、企業がビジネスを進める上で、膨大なデータが生成されています。これらのデータをAIで分析することで、より便利なサービスが生まれたり、効率的な経営判断が可能になったりします。例えば、病気の診断支援、金融サービスの不正検知、マーケティングの最適化など、その応用範囲は多岐にわたります。

しかし、データの中には、個人の医療情報、銀行口座情報、企業の営業秘密など、非常にデリケートな情報が多く含まれています。これらの情報をAIに利用させる際、万が一データが外部に漏れてしまえば、大きな問題に発展する可能性があります。

そこで登場するのが「秘密計算」という技術です。秘密計算とは、データを暗号化した状態のまま計算や分析を行うことができる技術のこと。つまり、データの内容を誰も見ることなく、AIがそのデータを処理できるのです。これにより、プライバシーや機密性を完全に保ちながら、AIのメリットを最大限に享受することが可能になります。

秘密計算AIは、まさに「プライバシー保護」と「データ活用」という、これまで両立が難しいとされてきた二つの要素を同時に実現する画期的なソリューションとして、大きな期待が寄せられています。

完全準同型暗号(FHE)の革新性と課題

秘密計算を実現するための技術の一つに、「完全準同型暗号(Fully Homomorphic Encryption、FHE)」があります。このFHEこそが、今回のEAGLYSとEmotionXの共同開発の中心となる技術です。

FHEとは何か?

FHEは、暗号化されたデータを一度も復号(元に戻すこと)することなく、様々な演算(足し算、掛け算など)を自由に行える暗号方式です。例えるなら、鍵がかかった箱の中にデータが入っていて、その箱を開けることなく、箱の外から中のデータを加工できるようなものです。

従来の暗号技術では、データを計算する際には一度復号する必要がありました。しかし、FHEはデータが暗号化されたままで計算できるため、計算中に情報が漏洩するリスクを根本的に排除できます。これにより、機密情報を安全にクラウド上で処理したり、複数の企業が互いのデータを見ることなく共同で分析を行ったりすることが可能になります。

FHEの課題:膨大な計算負荷

FHEは非常に革新的な技術である一方で、実用化には大きな課題がありました。それは、演算負荷が非常に大きいという点です。

データを暗号化したまま計算を行うには、通常の計算よりもはるかに複雑な処理が必要です。そのため、FHEを使った計算は、現在の一般的なコンピューターでは非常に時間がかかり、現実的な速度で実行することが困難でした。この「遅さ」が、FHEの社会実装を阻む最大の要因となっていたのです。

EAGLYSとEmotionXの共同開発は、このFHEの計算負荷という大きな壁を乗り越え、実用的な速度でAI処理を可能にすることを目指しています。

EAGLYSとEmotionXの共同開発:FHE高速化への挑戦

EAGLYSとEmotionXの秘密計算AI実用化に向けた共同開発

今回の共同開発は、FHEの高速化に関するこれまでの研究成果をEmotionXが継承し、EAGLYSが持つ秘密計算アプリケーションの知見とEmotionXのFHE高速化ハードウェア技術を組み合わせることで、FHEの実用化を大きく前進させるものです。

EmotionX:FHE高速化のハードウェア技術を継承

EmotionXは、キオクシア株式会社(旧東芝メモリ)において進められてきたFHE高速化に関する研究成果を継承し、設立されたスタートアップ企業です。彼らは、FHEの計算を効率的に処理するための専用ハードウェア(FPU:FHE Processing Unit)の企画・開発を中核事業としています。ハードウェアの力で、FHEの計算負荷を大幅に軽減することを目指しているのです。

EAGLYS:秘密計算アプリケーションとソフトウェア技術の専門家

一方、EAGLYSは、AIと秘密計算を組み合わせたPrivate AIプラットフォームを提供する企業です。「世の中に眠るデータをつなぐハブとなり、集合知で社会をアップデートする」というビジョンのもと、秘密計算アプリケーションの開発やソフトウェア技術において豊富な知見を持っています。彼らは、暗号化されたデータをどのようにAIで効率的に処理するか、そのためのソフトウェア的なアプローチを得意としています。

垂直統合で実現する次世代計算基盤

EAGLYSのソフトウェア技術とEmotionXのハードウェア技術を組み合わせることで、両社はアプリケーション・ソフトウェアからアルゴリズム、そして半導体技術までを「垂直統合」した形で、FHEの高速化と実用化を目指します。

これにより、暗号化されたままのデータに対するAI処理を、現在の技術では難しかった「現実的な性能水準」で実行可能にすることを目指します。この協力体制は、AI時代のプライバシー課題を解決するための、新しい次世代計算基盤を確立する上で非常に重要なステップとなります。

共同開発が目指す具体的な成果と将来展望

今回の共同開発では、具体的にどのような成果を目指し、どのような未来を描いているのでしょうか。

段階的な技術検証とPoC(概念実証)

まず、両社は世界最先端水準の計算精度と処理性能の両立を目指した高速化アーキテクチャの検証および性能評価を進めていきます。これは、FHEがどれだけ速く、正確に計算できるかを実際に試す重要なプロセスです。

具体的な応用例として、まずは技術検証やPoC(概念実証)を通じて、以下のデータベースにおける演算処理を、暗号化されたままの実用的な性能水準で実行可能であることを確認します。

  • 類似度計算: 顧客データや商品データなど、互いに似ているものを暗号化したまま見つけ出す。

  • スコアリング: 信用情報などを暗号化したまま点数化し、評価を行う。

  • 信用判定: 金融機関などが顧客の信用度を暗号化したまま判定する。

  • 不正検知: 取引データなどを暗号化したまま、不正なパターンを自動で発見する。

  • 閾値判定: 特定の基準(閾値)を超えているかどうかを暗号化したまま判断する。

これらの処理が暗号化されたままで高速に実行できるようになれば、機密性の高いデータを扱う多くのビジネス分野で、AIの活用が飛躍的に進むことでしょう。

プライバシークラウドサービスへの反映

EAGLYSとEmotionXは、今春リリースを予定しているプライバシークラウドサービスにおいて、今回の共同開発の成果を段階的に反映していく予定です。これにより、企業や組織が安全にAIを活用できる環境が、より早く提供されることになります。

将来的な展望:大規模データでのAI学習・推論

さらに将来的には、暗号化状態のまま大規模なデータを対象としたニューラルネットワーク(AIの深層学習モデル)の学習および推論処理を可能とする基盤の確立を視野に入れています。

これは、AIが膨大な機密データを学習し、そこから高度な知識や洞察を得る際にも、データのプライバシーが完全に保護されることを意味します。例えば、複数の病院が患者データを共有せずに協力してAIを開発し、より正確な病気の診断モデルを構築するといった、これまで不可能だった共同研究やビジネス連携が実現する可能性を秘めています。

秘密計算の社会実装が拓く未来

EAGLYSとEmotionXは、本共同開発を通じて、秘密計算の社会実装を加速し、プライバシーとデータ利活用を両立する次世代のデータ活用基盤の確立に貢献していきます。これは、私たち一人ひとりのデータがより安全に扱われながらも、社会全体の発展のために有効活用される未来を意味します。

個人情報保護の重要性が増す中で、AI技術が進化し続ける現代において、秘密計算AIはまさに「切り札」となる技術です。この共同開発が成功すれば、金融、医療、製造、行政など、あらゆる産業において、より安全で信頼性の高いAI活用が実現し、新たな価値創造が加速することでしょう。

EAGLYS株式会社

AI×秘密計算によるインダストリーデータの活用を促進するPrivate AIプラットフォームを提供する企業です。『世の中に眠るデータをつなぐハブとなり、集合知で社会をアップデートする』というビジョンの下、様々なお客様のAIならびにデータのコラボレーション促進を支援しています。

EmotionX株式会社

キオクシア株式会社からカーブアウトして設立された、完全準同型暗号(FHE)の高速化技術を中核とするスタートアップです。プライバシークラウドおよび専用ハードウェア(FPU:FHE Processing Unit)の企画・開発を行っています。

まとめ

EAGLYSとEmotionXによる秘密計算AIの実用化に向けた共同開発は、FHEの計算負荷という長年の課題に、ソフトウェアとハードウェアの両面から挑む画期的な取り組みです。この技術が確立されれば、私たちはプライバシーを犠牲にすることなく、AIがもたらす恩恵を最大限に享受できるようになるでしょう。未来のデータ活用基盤を築くための、両社の挑戦に今後も注目が集まります。

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