現代のビジネス環境では、グローバル化が進み、多言語でのコミュニケーションが日常的に行われています。特に、契約書、技術文書、マニュアル、プレゼンテーション資料など、さまざまな種類の文書を迅速かつ正確に翻訳する必要性が高まっています。しかし、従来の翻訳方法では時間とコストがかかる上、特にPDFファイルのような複雑なレイアウトを持つ文書の場合、翻訳後の修正作業が大きな負担となることが少なくありませんでした。
このような課題を解決するため、AI(人工知能)を活用した自動翻訳ソリューションが注目を集めています。今回、株式会社みらい翻訳が提供するAI自動翻訳ソリューション「FLaT」のPDF翻訳機能が大幅にアップデートされ、この課題に対する強力な解決策が提供されました。新しい機能として、「翻訳優先」と「レイアウト優先」の2つのモードが搭載され、文書の種類や目的に応じて最適な翻訳結果を得られるようになったのです。この記事では、AI初心者の方にも分かりやすいように、この新機能がどのように業務効率と翻訳品質を向上させるのかを詳しく解説していきます。
AI自動翻訳ソリューション「FLaT」とは?
「FLaT」は、株式会社みらい翻訳が開発・提供するAI自動翻訳ソリューションです。すでに90万人ものユーザーが利用しており、その高い翻訳精度と使いやすさで多くの企業や個人に支持されています。このソリューションの一部は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究成果を活用して製品化されており、最先端のAI技術が詰まっています。
「FLaT」は、テキスト翻訳だけでなく、WordやExcel、PowerPointといったさまざまな形式のファイルを丸ごと翻訳できる機能も備えています。これにより、翻訳作業にかかる手間と時間を大幅に削減し、企業のグローバル展開を強力にサポートしています。
従来のPDF翻訳が抱えていた課題
これまでのPDF翻訳機能は、主にテキスト情報が中心の文書、例えば報告書や契約書などの翻訳において高い効果を発揮してきました。しかし、PDFファイルには、文字情報だけでなく、図面、グラフ、画像、表といった多様な視覚情報が含まれることがよくあります。特に、製造業の設計図面、製品マニュアル、マーケティング資料などでは、これらの視覚情報が文書の内容を理解する上で不可欠です。
従来のPDF翻訳では、画像内に埋め込まれた文字の認識が難しかったり、翻訳の過程で文書のレイアウトが大きく崩れてしまったり、画像の一部が欠落してしまうといった問題が発生することがありました。これにより、翻訳されたPDFファイルは、内容の確認や修正、レイアウトの再調整に多くの時間と労力を要し、結局は手作業での修正が必要になるケースが少なくありませんでした。このような課題が、PDF翻訳のさらなる活用を妨げる要因となっていたのです。
新機能「翻訳優先」モードで情報の網羅性を確保
今回のアップデートで搭載された「翻訳優先」モードは、特に文書内のあらゆる文字情報を網羅的に翻訳したい場合に最適な機能です。このモードの主な特徴と適用例、そしてそのメリットについて見ていきましょう。
「翻訳優先」モードの特徴
「翻訳優先」モードでは、PDFファイルに通常埋め込まれているテキストデータだけでなく、画像として埋め込まれた部分の文字も、OCR(光学的文字認識)技術を使って認識し、翻訳対象とします。OCRとは、画像の中にある文字をコンピューターが読み取って、編集可能なテキストデータに変換する技術のことです。この技術を用いることで、スキャンされた文書や、画像として貼り付けられた文字なども翻訳できるようになります。
これにより、文書内の文字情報の取得範囲が大幅に広がり、翻訳の網羅性が高まります。ただし、画像内の文字を抽出して再配置する過程で、元のPDFのレイアウトが多少変化する可能性がある点には注意が必要です。
「翻訳優先」モードの適用例
このモードは、以下のような文書の翻訳に特に適しています。
-
契約書や法律文書: 一語一句の正確性が求められ、情報の抜け漏れが許されない文書です。画像内に注釈や補足情報が含まれる場合でも、すべて翻訳することでリスクを最小限に抑えられます。
-
技術文書や研究論文: 専門的な内容が多岐にわたり、図表のキャプションや画像内の説明文も重要な情報源となる文書です。これらの情報を網羅的に翻訳することで、内容の正確な理解を助けます。
-
スキャンされたPDF: 紙の文書をスキャンしてPDF化したもので、テキストデータが埋め込まれていない文書です。OCR機能が活躍し、画像内の文字を読み取って翻訳します。
「翻訳優先」モードのメリット
「翻訳優先」モードを利用することで、翻訳後の情報漏れのリスクを大幅に減らせます。特に、重要な契約内容や技術的な詳細が画像内に隠れている場合でも、それらを見落とすことなく翻訳できるため、誤解や認識の齟齬を防ぎ、ビジネスにおける信頼性と安全性を高めることができます。これにより、企業の法務部門や研究開発部門など、高い正確性が求められる部署での業務効率が向上するでしょう。
新機能「レイアウト優先」モードで視覚的な再現性を維持
一方で、文書によっては、翻訳されたテキストの内容だけでなく、元の文書の見た目や配置が非常に重要となる場合があります。「レイアウト優先」モードは、このようなニーズに応えるために開発されました。
「レイアウト優先」モードの特徴
「レイアウト優先」モードでは、PDFファイルに直接埋め込まれているテキストレイヤー(文字情報)のみを翻訳対象とします。そして、図面、写真、グラフ、表などの視覚的な要素の見た目や元の配置を、できる限り忠実に保持することに重点を置きます。このモードでは、画像の中に含まれる文字は翻訳の対象外となりますが、これにより、翻訳後のレイアウト崩れや視覚的な情報の欠損を最小限に抑えることができます。
「レイアウト優先」モードの適用例
このモードは、以下のような文書の翻訳に特に適しています。
-
製造業の設計図面・CAD出力: 寸法、部品配置、記号などが厳密に配置されており、レイアウトの変更が許されない文書です。視覚的な情報を損なわずに、注釈や指示を翻訳できます。
-
グラフや図表が多い資料: 財務報告書、マーケティング資料、研究発表資料などで、グラフや図表がデータの視覚的な理解に不可欠な場合です。これらのビジュアル要素の配置を保ちながら、説明テキストを翻訳します。
-
マニュアルやカタログ: 製品の使用方法を説明するマニュアルや、商品の特徴を紹介するカタログなど、写真やイラストが多用され、視覚的な誘導が重要な文書です。見た目をそのままに、説明文を翻訳できます。
「レイアウト優先」モードのメリット
「レイアウト優先」モードを利用することで、翻訳された文書が元のデザインや構成をほぼ完全に保持できるため、翻訳後の再編集にかかる手間を大幅に削減できます。特に、視覚的な情報が中心となる文書では、レイアウトが崩れてしまうと内容の理解が困難になることがありますが、このモードを使えばそのような心配はありません。デザイン部門や製品開発部門など、ビジュアルの完全性が求められる部署での作業効率向上に貢献します。

どちらのモードを選んでも翻訳精度は同等
ユーザーが「翻訳優先」モードと「レイアウト優先」モードのどちらを選択しても、翻訳エンジン自体は同じものが使用されます。また、登録されている用語集も同様に適用されます。このため、どちらのモードを選んだとしても、翻訳の品質や専門用語の一貫性に差が生じることはありません。ユーザーは、文書の内容や用途に応じて、安心して最適なモードを選択できるのです。
アップデートの背景と今後の展望
今回の2モード化の背景には、従来のPDF翻訳機能が抱えていた課題と、ユーザーからの多様なニーズがありました。株式会社みらい翻訳は、実際のユーザーの運用状況を綿密に分析し、テキスト情報の網羅性が重要な文書と、レイアウトの完全性が不可欠な文書とで、異なるニーズがあることを認識しました。
このアップデートにより、翻訳後の修正作業の工数や、手戻りの発生を大幅に削減できると期待されています。特に、設計図面や操作マニュアルといった、ビジュアル要素が非常に重要な文書においても、AI翻訳の活用範囲が大きく広がるでしょう。株式会社みらい翻訳は今後も、ユーザーの皆様の声を真摯に受け止め、運用実態に即した改善を継続していく方針です。これにより、翻訳の品質と効率の両面で、さらなる価値向上を目指していくとのことです。
株式会社みらい翻訳は「言語の壁を取り除く」という壮大なビジョンを掲げ、世界のすべての人々が英語を母語とする人々と同等の体験を得られるよう、AI自動翻訳「FLaT」や「みらい翻訳Plus」といった自社プロダクトを中心に、ランゲージサービスプラットフォーマーとして事業を展開しています。今回のアップデートも、そのビジョン実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
-
株式会社みらい翻訳について: https://miraitranslate.com/company/
-
FLaT 製品ページ: https://miraitranslate.com/text-translate/flat/
まとめ
AI自動翻訳ソリューション「FLaT」のPDF翻訳機能のアップデートは、ビジネスにおける多言語対応のあり方を大きく変える可能性を秘めています。「翻訳優先」モードと「レイアウト優先」モードという2つの選択肢が加わったことで、ユーザーは文書の種類や目的に応じて、より柔軟かつ効率的に翻訳作業を進めることができるようになりました。
これにより、契約書のような厳密な情報伝達が求められる文書では情報の網羅性を確保し、設計図面やマニュアルのような視覚的情報が重要な文書ではレイアウトの完全性を維持することが可能になります。翻訳後の手直し作業が減ることで、時間とコストの削減はもちろん、翻訳品質の向上にもつながり、企業のグローバルビジネス展開を強力に後押しするでしょう。AI翻訳の進化は止まることなく、これからも私たちの働き方をよりスマートに変えていくに違いありません。

