就職活動の新たな課題:AI診断の普及と「語れない就活」
近年、就職活動は早期化の一途をたどり、学生の皆さんは限られた時間の中で効率的に自己分析を進めることが求められています。このような状況の中、AIを活用した自己分析ツールや適職診断が広く利用されるようになり、短時間で自分に合った職種や企業を見つけるための強力なサポートとなっています。しかし、AI診断の結果は便利である一方で、「結果が抽象的で、自分ごととして語りにくい」「個性が伝わりにくい」といった新たな課題も生まれています。
株式会社SynergyCareerが2025年に実施した調査(https://reashu.com/report-ai-chatgpt-es/)でも、AIをES作成や自己分析に活用する学生がいる一方で、「具体性に欠ける」「個性が伝わりにくい」という懸念が挙げられています。このように、効率を追求するあまり、自身の言葉で経験を語り、深く自己理解する機会が失われつつある現象は、「語れない就活」という現代の課題として顕在化しています。
専修大学とビルディットが挑む産学連携プロジェクト
このような「語れない就活」の現状に対し、専修大学経営学部の足代訓史ゼミと振り返りノートアプリ「Stockr(ストッカー)」を提供する株式会社ビルディットは、産学連携プロジェクト「大学生向けコンセプト開発プロジェクト」を実施しました。このプロジェクトの目的は、Z世代の学生が「Stockr」を通じて、どのように自己理解を深め、自身の言葉で未来を語れるようになるかを研究することでした。

「大学生向けコンセプト開発プロジェクト」とは
本プロジェクトは、大学生の皆さんの自己理解を支援するための新しい活用シーンやサービスコンセプトを検討する取り組みです。就職活動の早期化やSNSの普及により、自分自身を深く理解することの重要性は高まっています。しかし、AIによる自己分析やエントリーシート(ES)作成支援の活用が広がる一方で、学生自身の経験や言葉を通じて深く自己理解する機会は、必ずしも十分とは言えません。
自己理解を深めるためには、日々の出来事や感情、思考を振り返り、自身の変化や価値観に気づくプロセスが非常に重要です。ビルディットが提供する「Stockr」は、これまでも記録と振り返りを通じて自己理解・成長・目標達成を支援してきましたが、主な利用者は社会人の方々でした。そこで、本プロジェクトでは、デジタルサービスのヒット要因を研究する専修大学・足代ゼミの学生たちが、「Stockr」を大学生に広める方法について約3か月間研究と提案を行いました。
学生が提案した3つの革新的なコンセプト
2026年1月22日に開催された最終発表会では、実体験に基づいたZ世代ならではの3つの新しいコンセプトが提案されました。これらのコンセプトは、いずれも「外から与えられた答え」に頼るのではなく、「自らの経験を振り返り、言語化すること」に価値を置くものでした。

チームA:SNSの「保存」で終わらせない、気づきの「居場所」づくり
課題意識
学生の皆さんは、SNSなどを通じて多くの情報を集めることに慣れています。しかし、集めた情報をただ「保存」するだけで満足し、それを自身の思考や行動の変化に結びつけられていない、という課題に注目しました。
調査結果
実際に学生179名を対象に行った調査では、学びや気づきを残す手段として最も多く利用されているのが「SNSの保存機能」であることが判明しました。しかし、インタビューでは「保存したこと自体を忘れてしまう」「後で見返すことがほとんどない」といった実態も明らかになりました。
「Stockr」での解決策
この課題に対し、チームAは、集めた情報を自分なりの気づきに変換し、それをしっかりと蓄積できる「思考の居場所」として「Stockr」を活用することを提案しました。SNSの保存機能が一時的な記録であるのに対し、Stockrは能動的に振り返り、自分の言葉で意味づけを行うことで、より深い学びへと繋がるという考えです。
詳細はこちらからご覧いただけます:https://stockr.bldt.jp/media/senshu_teamA
チームB:インターンの挫折を「自信の土台」に変える振り返り法
課題意識
就職活動やインターンシップに励む中で、「自分だけが足踏みをしていて、何も積み上がっていない」と感じ、自信を失いかける学生の皆さんの声に注目しました。特に、失敗や挫折を経験した際に、それをどう乗り越え、次へと繋げるかという点に焦点を当てました。
調査結果
132名を対象とした調査では、約半数の学生が自信の揺らぎを感じており、約85%が「今よりも自信を高めたい」と回答しました。また、失敗後に「1人で考える」学生が多いものの、それを次の行動に効果的に繋げられていない実態も明らかになりました。一方で、記録を習慣化している学生ほど、経験を次に活かせている傾向が確認されました。
「Stockr」での解決策
チームBは、失敗やネガティブな感情を否定するのではなく、それを正直に記録し、次の行動へと繋がるよう振り返ることで、挫折を「自信の土台」へと転換する「Stockr」の活用法を提案しました。記録を通じて自身の成長を可視化し、小さな成功体験を積み重ねることで、揺らぎがちな自信をしっかりと構築できると訴えました。
詳細はこちらからご覧いただけます:https://stockr.bldt.jp/media/senshu_teamB
チームC:AIや適職診断に依存しない、自発的なキャリア構築
課題意識
適職診断やMBTIなどのAI自己分析ツールは非常に便利ですが、「結果が抽象的で、自分ごととして語れない」といった、就職活動中の学生が直面する課題に注目しました。AIが提供する「答え」に頼りすぎることで、自分自身の言葉でキャリアを語る力が育ちにくいという問題意識です。
調査結果
130名を対象とした調査では、自己分析ツールを利用したことがある学生は約6割に上る一方で、「結果が抽象的で物足りない」「自分を十分に理解できない」といった課題が多く挙がりました。また、インタビューからは「自発的に言語化した経験の方が腑に落ちやすい」という傾向も確認されました。
「Stockr」での解決策
チームCは、AI診断の結果に依存するのではなく、学生自身の言葉による記録をもとに、自発的なキャリア構築を支援する「Stockr」の活用法を提案しました。日々の経験や感情を記録し、それを振り返ることで、自分自身の価値観や強み、興味関心を深く理解し、AIでは導き出せない「自分だけのキャリアストーリー」を紡ぎ出すことを目指します。これにより、面接などで自信を持って自身の言葉で語れるようになります。
詳細はこちらからご覧いただけます:https://stockr.bldt.jp/media/senshu_teamC
AI時代の就職活動で「語れる自己理解」を育む重要性
今回のプロジェクトで学生から提案された3つのコンセプトは、AIや診断ツールを活用した自己分析が広がる現代において、非常に重要な視点を提供しています。それは、効率的なツールを利用しつつも、「外から与えられた答え」に満足するのではなく、「自らの経験を振り返り、言語化すること」にこそ、真の自己理解と成長の価値があるという点です。
AIはデータに基づいて最適な答えを導き出すことは得意ですが、その人の感情や経験から生まれる唯一無二のストーリーを創造することはできません。就職活動において「自分を語る」ということは、単に情報を伝えるだけでなく、その人の個性や情熱、そして未来への可能性を伝えることです。そのためには、自分の言葉で自分の経験を深く理解し、表現する力が必要不可欠です。
このプロジェクトは、AIによる効率化が前提となりつつある就職活動において、どのようにして「語れる自己理解」を育んでいくかという、現代的な論点に対して学生自身の視点からその重要性を示しました。AIを賢く活用しつつも、人間ならではの深い内省と表現力を養うことの価値が、改めて浮き彫りになったと言えるでしょう。
振り返りノートアプリ「Stockr」とは

「Stockr」は、「振り返り」を通じて自己理解を深め、自信と成長を育むための振り返りノートアプリです。2026年2月時点で、総ダウンロード数は約7.5万件に達しています。
「Stockr」の主な特徴
従来の一般的な日記アプリやタスク管理アプリ、メンタルケアアプリとは異なり、「Stockr」は「記録→振り返り→可視化」までをワンストップで提供し、「書いて終わり」にしない振り返り体験に特化している点が大きな特徴です。日々の出来事や感情、思考をただ記録するだけでなく、それらを深く内省し、自身の成長へと繋げるための機能が充実しています。
充実した機能
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ストック機能: 日々の思考や感情、出来事を手軽に記録できます。
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再発見機能: 過去の記録を振り返り、そこから新たな気づきや学びを得ることをサポートします。
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AIがサポートする機能: AIを活用した「ビジョン設定コーチング」「AIコメント」「価値観診断」など、AIがあなたの内省を深めるためのメタ視点でのサポートを提供します。AIはあくまでサポート役として、あなたの気づきを促します。
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スコア&レポート機能: 日々の記録や振り返りの積み重ねを可視化し、自身の成長や変化を客観的に把握できます。
これらの機能を通じて、「Stockr」は自己理解を深め、揺るぎない自信を積み上げていくことを支援します。AIの力を借りつつも、最終的には自分自身の言葉で自分を理解し、表現する力を養うための強力なツールとなるでしょう。
「Stockr」の詳細については、以下の公式サイトをご覧ください:https://stockr.bldt.jp/
株式会社ビルディットについて
株式会社ビルディットは、「Your growth, improve the world. (一人ひとりの成長が、世界をより良くする)」をスローガンに掲げ、学ぶことの楽しみ・豊かさ・充実をつくり出せる仕組みづくりに取り組んでいる教育テクノロジー企業です。
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会社名: 株式会社ビルディット
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代表者: 代表取締役 富田 陽介
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所在地: 東京都八王子市東町1-14 橋完ビル4F
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URL: https://bldt.jp/
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設立: 2016年3月
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資本金: 100万円
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従業員数: 12名(アルバイト・業務委託を含む)
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事業内容: ふりかえりアプリ「Stockr」関連事業開発・サービス提供、教育/育成関連事業DXコンサルティング
専修大学 足代訓史ゼミについて
専修大学経営学部の足代訓史ゼミは、デジタルイノベーション(デジタル技術を使用した革新的な製品・サービスやビジネス)を生み出そうとする能動的な姿勢や行動パターン(アントレプレナーシップ)についての研究を行っています。
活動内容としては、Instagram、TikTok、Airbnb、Timee、Spotifyなどの身近なデジタルイノベーション事例を選択し、その製品・サービスのヒットの理由や収益獲得の仕組みをチームで調査・研究しています。また、プラットフォームや製造小売、サブスクリプションといった、近年注目されるビジネスのパターンを50個近く学び、それらのパターンを組み合わせて新規ビジネスを構想する実践的な活動を行っています。
まとめ:AIと人間の共存で切り拓く、豊かな就職活動の未来
今回の専修大学とビルディットによる産学連携プロジェクトは、就職活動におけるAIツールの活用が広がる中で、改めて人間自身の内省と「言語化する力」の重要性を示しました。AI診断は効率的な自己分析を可能にしますが、その結果を自分自身の言葉で深く理解し、表現する力がなければ、表面的な「分かったつもり」で終わってしまう可能性があります。
「Stockr」のような振り返りノートアプリを活用し、日々の経験や感情を丁寧に記録し、振り返ることで、AIだけでは得られない「自分だけの納得感」を育むことができます。これは、就職活動だけでなく、その後のキャリア形成や人生全体においても、自己肯定感を高め、主体的に未来を切り拓くための強力な土台となるでしょう。
AIは素晴らしいツールですが、私たち人間が持つ内省力や表現力こそが、真の自己理解と成長の鍵を握っています。AIと人間の強みを組み合わせることで、より豊かで意味のある就職活動、そしてその先のキャリアパスを築いていくことができるはずです。この記事が、AI初心者の方々を含め、多くの就活生やビジネスパーソンにとって、自己理解と成長のための新たなヒントとなれば幸いです。

