オープンソースとは?AI初心者にも分かりやすく解説
「オープンソース」という言葉を聞いたことがありますか?AIやIT分野でよく耳にするこの言葉は、ソフトウェアの設計図にあたる「ソースコード」が一般に公開されており、誰でも自由に利用、修正、再配布できるソフトウェアのことを指します。
オープンソースソフトウェア(OSS)は、特定の企業が独占的に開発するのではなく、世界中の開発者コミュニティによって共同で開発・改善されています。これにより、以下のような多くのメリットが生まれます。
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コスト削減: 基本的に無料で利用できるため、ソフトウェア導入費用を抑えられます。
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柔軟性とカスタマイズ性: コードが公開されているため、自社のニーズに合わせて自由に機能を追加したり、変更したりできます。
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イノベーションの促進: 多くの開発者の知見が集まることで、新しい技術や機能が生まれやすく、革新的なソリューションが迅速に提供されます。
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透明性とセキュリティ: コードが公開されているため、潜在的な脆弱性が発見されやすく、コミュニティによって迅速に修正される傾向があります。また、内部の仕組みが明確であるため、信頼性が高いとされています。
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ベンダーロックインの回避: 特定のベンダーに依存することなく、自由に技術を選択・変更できるため、将来的なリスクを軽減できます。
近年、AI技術の発展やクラウドサービスの普及に伴い、オープンソースの重要性はますます高まっています。多くのAIフレームワークや基盤技術がオープンソースとして提供されており、企業や開発者にとって不可欠な存在となっています。
Linux Foundationが「日本のオープンソースの現状 2025」レポートを発表
大規模なイノベーションをオープンソースを通じて促進する非営利団体であるLinux Foundationは、2025年12月8日に最新レポート「The State of Open Source Japan 2025: Accelerating business value through strategic open source engagement」を発表しました。このレポートは、日本企業におけるオープンソースの活用状況を詳細に分析し、その戦略的活用がビジネス価値にどのように影響しているかを明らかにしています。
Linux Foundationは、Linux、Kubernetes、Node.jsなど、世界のインフラストラクチャを支える数多くのオープンソースプロジェクトをホストし、オープンコラボレーションの持続可能なモデルを構築することに注力している組織です。
このレポートは、日本企業がオープンソースを重要な基盤として認識している一方で、ガバナンスやセキュリティ体制においていくつかの課題を抱えている現状を浮き彫りにしています。

日本のオープンソース活用、世界をリードするビジネス価値向上
今回のレポートで特に注目すべきは、日本企業がオープンソースから得られるビジネス価値の向上に強い手応えを感じている点です。過去1年間で、実に69%もの日本の組織がオープンソースによってビジネス価値が向上したと回答しており、これは世界全体の平均54%を大きく上回る結果です。さらに、74%の組織が将来にわたってもオープンソースに価値があると認識しています。
Linux Foundation日本代表の福安徳晃氏は、この結果について「日本のオープンソースが、単なる選択肢から競争力とイノベーションを支える戦略的な必須要件へと進化した重要な転換点を示している」と述べています。これは、日本におけるオープンソースの啓発と導入が着実に進んできた証拠と言えるでしょう。
この高いビジネス価値の認識は、日本企業がオープンソースを単なるコスト削減ツールとしてだけでなく、競争優位性を確立し、新たなイノベーションを生み出すための戦略的な資産として捉え始めていることを示唆しています。
課題:ガバナンスとセキュリティの成熟度におけるギャップ
ビジネス価値の認識が高い一方で、レポートは日本企業がオープンソースのガバナンスとセキュリティ成熟度においてギャップを抱えていることを指摘しています。
オープンソースプログラムオフィス(OSPO)と戦略策定の遅れ
オープンソースの利用を戦略的に管理するための専門組織であるOSPOを導入している日本企業はわずか41%にとどまっています。また、明確なオープンソース戦略を策定している組織は39%に過ぎません。さらに、オープンソースに関する自社の立場を公表している組織は33%で、2024年から増加が見られませんでした。
これらの数値は、多くの日本企業がオープンソースを活用しているものの、その利用を体系的に管理し、戦略的な方向性を定めるための体制がまだ不十分であることを示しています。
セキュリティ評価と知的財産権(IP)の懸念
セキュリティ面では、日本企業の40%が自動セキュリティテストツールを使用していますが、包括的な評価手法の導入は限定的です。例えば、オープンソースコンポーネントの直接的な依存関係を評価している企業は35%、ソースコードを手動でレビューしている企業は33%にとどまっています。特に、コンポーネントを評価する際にコミュニティの活動状況を確認している割合はわずか26%であり、世界全体の47%を大きく下回っています。これは、オープンソースの健全性を測る上で重要な指標であり、日本企業の意識向上が求められる点です。
一方で、日本ではセキュリティフレームワークの評価においてコモンクライテリア(Common Criteria)が52%と広く採用されており、世界全体の13%と比較して非常に高い割合です。しかし、いずれのセキュリティフレームワークも普遍的に受け入れられているわけではなく、エコシステム全体のセキュリティを阻害する断片化が生じている現状も指摘されています。
また、知的財産権(IP)に関する懸念も、オープンソースへのさらなる参加を阻む要因となっています。コントリビューション(貢献)におけるIPの不安を52%が、導入に関するIPの不安を44%が挙げており、34%は投資対効果(ROI)について確信が持てないと回答しています。これらの課題を克服するためには、専門的な知識と正式なガバナンス体制の整備が不可欠です。
日本独自の導入パターンと専門分野での強み
レポートは、日本企業がオープンソースの導入において興味深いパターンを示していることを明らかにしています。オペレーティングシステム、DevOps、データベース、ウェブ開発などの基盤インフラストラクチャでは、世界全体と比較して導入が遅れている傾向が見られます。例えば、クラウド技術の導入率は33%で、世界全体の52%を下回っています。
しかし、特定の専門的なアプリケーション分野では、日本が世界をリードしています。拡張現実/仮想現実(AR/VR)、3Dシミュレーション、ブロックチェーン、製造技術の分野では、日本の導入率が世界平均を上回っています。これは、日本がこれらの新興技術分野において、オープンソースを積極的に活用し、競争力を高めていることを示唆しています。
日本で最も注目されているオープンソース技術としては、AR/VR(39%)、AI/ML(28%)、クラウド(28%)が挙げられています。これらの分野での強みをさらに伸ばすことが、日本のオープンソース戦略において重要となるでしょう。
高度なサポート要求と商用サポートへの依存
日本企業は、オープンソースの利用において、非常に高いレベルの商用サポートを求めていることも明らかになりました。日本の組織の89%が、重要なオープンソースの問題に対するサポートプロバイダーからの応答時間として12時間未満を期待しており、これは世界平均の69%を大きく上回ります。
さらに、有償サポートを不可欠であると考える割合が、規制の厳しい産業分野の環境では45%(世界では36%)、機密データを扱うシステムでは43%、ミッションクリティカルなワークロードでは40%に達しています。また、45%が長期サポートの保証を、35%が本番環境のオープンソースソフトウェアに対する迅速なセキュリティパッチ適用を期待しています。
これらの傾向は、日本におけるオープンソースの位置づけが、単なるコスト削減の選択肢から、正式なサービスレベルアグリーメント(SLA)を必要とする基幹的なビジネスインフラへと進化していることを示しています。企業は、オープンソースの安定運用とリスク管理のために、専門的なサポート体制を重視していると言えるでしょう。
積極的関与がもたらす競争優位性とイノベーション
オープンソースから最大限の価値を引き出すためには、受動的な利用から積極的なエコシステムへの参加への移行が推奨されています。レポートによると、オープンソースに非常に積極的に関与している日本の組織は、オープンソースによって競争力が高まると73%が回答しており、受動的な組織の56%と比較して高い割合を示しています。この結果は、関与の深さに比例して、競争上の利点が大きくなることを裏付けています。
オープンソースコミュニティに貢献している組織は、以下のような多岐にわたるメリットを報告しています。
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セキュリティの向上(78%)
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イノベーションの促進(77%)
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スタッフの知識向上(74%)
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ソフトウェア品質の向上(73%)
また、77%の組織がオープンソースは自社をより良い職場にすると考えており、68%が人材獲得に有益であると回答しています。これは、オープンソースへの積極的な関与が、技術的なメリットだけでなく、組織文化や人材戦略にも良い影響を与えることを示しています。
経営層の意識ギャップと今後の戦略的投資
一方で、経営層(C-suite)レベルでのオープンソースの戦略的価値は、まだ十分に認識されていないという課題も浮き彫りになりました。オープンソースの価値を認識している経営幹部は70%で、他の従業員(85%)を下回っています。この意識ギャップを埋めることは、オープンソース戦略を全社的に推進する上で重要な要素となります。
レポートでは、成熟度のギャップを埋めるための体系的な投資が推奨されています。日本企業は、開発者のトレーニング(44%)、アップストリームへの貢献(41%)、重要な依存関係へのスポンサーシップ(41%)を優先しています。これらの投資は、オープンソースの専門知識を組織内に蓄積し、コミュニティとの関係を強化するために不可欠です。
知的財産権に関する懸念や明確なポリシーの欠如といった障壁を解消するためには、専門的な知識と正式なガバナンス体制の整備が求められます。これらの課題をうまく克服できれば、特に新興分野において、人材獲得、オペレーショナルエクセレンス、市場でのポジショニングで競争優位性を獲得できる可能性を秘めているとレポートは示唆しています。
レポート全文の詳細はこちら
本記事で紹介した内容について、さらに詳細な分析をご覧になりたい方は、以下のリンクからレポート全文をご確認ください。
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オリジナル版 (英語): The State of Open Source Japan 2025: Accelerating business value through strategic open source engagement
まとめ:日本のオープンソースが描く未来
Linux Foundation Researchによる「日本のオープンソースの現状 2025」レポートは、日本企業がオープンソースのビジネス価値を高く評価し、その活用が着実に進んでいることを明確に示しました。特に、ビジネス価値の向上においては世界をリードする結果を出しており、日本の企業がオープンソースを戦略的な資産として捉え始めていることが伺えます。
一方で、ガバナンス体制の整備、セキュリティ評価の強化、知的財産権に関する懸念の解消、そして経営層の意識改革といった課題も浮き彫りになっています。これらの課題に体系的に取り組むことで、日本はオープンソースを通じてさらなる競争優位性を確立し、AR/VRや製造技術といった専門分野での強みを活かしながら、グローバル市場での存在感を高めていくことができるでしょう。
オープンソースは、もはや単なるコスト削減の手段ではなく、イノベーションを加速させ、持続的な成長を実現するための不可欠な戦略的ツールです。今回のレポートが示す洞察は、日本の企業がオープンソースを活用し、未来を切り拓くための重要な指針となるはずです。

