AIが拓く新たな視界:Teledyne FLIRの「Lepton XDS」が日本上陸、熱と可視の融合で“見えないもの”を捉える
現代社会において、AI(人工知能)技術は私たちの生活や産業に深く浸透し、その進化はとどまるところを知りません。特に、AIの「目」となるセンサー技術の発展は、自動運転、ロボット、スマートシティといった分野の発展に不可欠です。
この度、先進的な赤外線技術で知られるTeledyne FLIR社が、マイクロサイズの可視+赤外線デュアルカメラモジュール「Lepton® XDS」を発表しました。国内代理店であるコーンズテクノロジー株式会社は、本製品の日本国内での販売と、量産を見据えた技術サポートを本格的に開始します。
この「Lepton XDS」は、従来のサーマルカメラの常識を覆す“視認性・識別性の高い熱画像”を実現し、AIを活用した様々なシステムに新たな可能性をもたらすと期待されています。

Lepton XDSとは?熱と可視情報を同時に捉えるデュアルセンシング
「Lepton XDS」は、組み込み用途やOEM(他社ブランド製品の製造)向けに開発された、画期的なカメラモジュールです。その最大の特徴は、以下の2つのセンサーを一体化している点にあります。
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160×120画素の放射温度測定(ラジオメトリック)対応Lepton 3.5マイクロサーマルカメラ:物体の温度を正確に測定し、熱の分布を画像化できます。
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500万画素の可視センサー:私たちが見ているのと同じように、色や形を鮮明に捉えることができます。
この2つのセンサーが一体となることで、単に物体の温度を測るだけでなく、その物体の「形」や「周辺の環境」といった可視情報も同時に取得できるようになります。これにより、熱画像だけでは判別が難しかった対象物を、より明確に識別することが可能になり、より実用的な状況認識を実現します。
例えば、AIを搭載した監視システムでは、熱画像で異常な温度上昇を検知した際に、同時に取得した可視画像によってそれが何であるか(人、動物、機械の故障など)を正確に特定し、迅速な判断を下すことができるようになります。

MSX®技術が実現する“見やすい”熱画像
従来のLeptonシリーズは、そのマイクロサイズと低消費電力という強みから、多くの組み込み用途で活用されてきました。しかし、160×120画素という熱画像の解像度だけでは、対象物の細かい形状を把握するのが難しいという課題がありました。
「Lepton XDS」では、この課題を解決するために、Teledyne FLIR社が特許を取得している「MSX®(Multi-Spectral Dynamic Imaging)技術」を搭載しています。
MSX技術は、可視カメラで捉えた画像から輪郭(エッジ)情報を抽出し、それを熱画像にリアルタイムで合成する技術です。これにより、熱画像の解像度自体を変更することなく、まるで高解像度の熱画像であるかのように、対象物の形状がくっきりと浮かび上がり、圧倒的に“視認性・識別性の高い熱画像”を実現します。
AIが画像を解析する際、物体の輪郭情報は非常に重要な要素となります。MSX技術によって強化された熱画像は、AIの認識精度を向上させ、より賢い判断をサポートすることでしょう。

*MSX技術により、熱画像に可視画像の輪郭が合成され、細部の識別が容易になる様子。
Prism ISPによるオンボード処理で開発を簡素化
「Lepton XDS」には、Teledyne FLIR社独自の「Prism ISP(Image Signal Processor)」が搭載されています。このPrism ISPは、モジュール内部で高度な画像処理をリアルタイムで行うことができるため、OEMメーカーの製品開発を大きくサポートします。
通常、熱画像や可視画像を組み合わせて活用する場合、それぞれの画像データを取得した後、外部のプロセッサで複雑な画像処理を行う必要があります。しかし、Prism ISPがオンボード(モジュール内蔵)で処理を行うことで、以下のような高度な機能が提供され、組み込み設計が大幅に簡素化されます。
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熱画像と可視画像のリアルタイム融合:MSX技術による画像合成をモジュール内で完結させます。
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ROI(関心領域)設定、スポット温度測定、等温線表示、カラーパレット変更:特定の領域の温度を詳細に分析したり、見やすい色で温度分布を表現したりできます。
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高度な放射測定対応JPEG(RJPG)形式での保存:温度情報を含むJPEG画像を保存できるため、後から詳細な解析が可能です。
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FLIR Thermal Studioを含むソフトウェアエコシステムとの連携:取得したデータを専用ソフトウェアで解析し、詳細なレポートを作成できます。
これらの機能がモジュール内部で処理されることで、OEMメーカーは自社製品にLepton XDSを組み込む際の開発工数を抑え、より迅速に製品を市場に投入できるようになります。AIシステムを開発する企業にとっても、画像処理の負担が軽減されることは大きなメリットとなるでしょう。
Teledyne FLIR社のプロダクトマネジメントディレクターであるMike Walters氏は、この技術について「MSX技術は長年にわたりTeledyne FLIRの競争優位性を支えてきましたが、Lepton XDSによって、その技術をコンパクトでOEM向けに最適化されたモジュールとして提供できるようになりました。Lepton XDSは、可視カメラ、実績あるマイクロサーマルセンサー、オンボードのPrism ISP処理、さらにスポットメーターや関心領域を含むラジオメトリックオーバーレイへの直接アクセスを組み合わせたモジュールです。これにより、OEMの製品開発を加速し、ユーザーがより迅速に解釈できる明瞭な熱画像を提供します。」と述べています。このコメントからも、Lepton XDSが提供する情報価値の高さと、開発者への配慮が伺えます。
SWaP最適化設計とグローバル展開の容易さ
「Lepton XDS」は、AIを搭載した様々なデバイスへの組み込みを考慮し、以下の特長を備えています。
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SWaP最適化設計:SWaPとは、Size(サイズ)、Weight(重量)、Power(消費電力)の頭文字を取ったもので、これらの要素を最小限に抑える設計思想です。Lepton XDSは、コンパクトなサイズはもちろん、軽量で低消費電力であるため、バッテリー駆動の機器や常時監視が必要な用途に最適です。USB出力を標準搭載しているため、組み込みも容易です。
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ITAR非該当、ECCN 6A993.a分類:これは、米国政府の輸出規制(国際武器取引規制:ITAR)の対象外であり、輸出管理分類番号(ECCN)が商用用途としてグローバル展開が可能なカテゴリに分類されていることを意味します。これにより、国内外での製品展開がスムーズに行えます。
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600万台以上の出荷実績:Leptonシリーズはこれまでに600万台以上が出荷されており、その実績は製品の信頼性と安定した供給体制を裏付けています。量産を検討している企業にとって、安定した部品供給は非常に重要な要素です。
これらの特長は、AIを搭載した小型ロボット、ドローン、ウェアラブルデバイスなど、様々な先進的な製品への組み込みを強力に後押しするでしょう。
Lepton XDSが活躍するアプリケーション例
熱情報と可視情報を同時に活用できる「Lepton XDS」は、単なる温度検知にとどまらない「状況理解型センシング」を実現し、多岐にわたる分野でその能力を発揮します。AIとの組み合わせにより、以下のようなアプリケーションでの活用が期待されます。
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火災検知・予防システム:建物の内部や屋外で、初期の微細な温度上昇を熱画像で捉え、同時に可視画像で煙の発生や炎の状況を確認することで、誤報を減らし、迅速な初期消火や避難誘導をサポートします。
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EVバッテリー監視:電気自動車(EV)のバッテリーは、過充電や過放電、劣化などにより発熱する可能性があります。Lepton XDSは、バッテリーパックの温度分布を常時監視し、異常な発熱箇所を早期に特定することで、安全性向上に貢献します。
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ロボット・無人プラットフォームのナビゲーション:暗闇や煙が充満した環境、または複雑な地形での自律移動において、熱画像で障害物や生物の存在を検知し、可視画像で詳細な形状を認識することで、より安全で正確なナビゲーションを実現します。災害現場での探索ロボットなどに応用できます。
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スマートインフラ監視:橋梁や道路、電力設備などのインフラ設備の劣化や異常を、熱画像で温度変化として捉え、可視画像でひび割れや変形を確認することで、効率的かつ早期のメンテナンスを可能にします。
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産業機器の安全・状態監視:工場内のモーター、ポンプ、配電盤などの産業機器は、過熱が故障や事故の原因となることがあります。Lepton XDSは、これらの機器の熱異常を検知し、可視画像と合わせてAIが解析することで、予知保全や作業員の安全確保に役立ちます。
製品の仕様やアプリケーションの動画は、以下のリンクから確認できます。
製品の仕様・アプリケーション動画を見る
コーンズテクノロジーによる国内サポート体制
コーンズテクノロジー株式会社は、Teledyne FLIR社の国内代理店として、「Lepton XDS」の販売だけでなく、日本国内のお客様が安心して製品を導入・活用できるよう、量産を見据えた包括的な技術サポートを提供しています。
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日本国内での技術問い合わせ対応:製品に関する疑問や課題に対し、迅速かつ的確なサポートを提供します。
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組み込み設計段階からの技術支援:お客様の製品へのLepton XDSの組み込みを、設計の初期段階から専門的な知識で支援します。
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量産移行時の品質・供給サポート:量産体制への移行時にも、品質管理や安定供給に関するサポートを行い、お客様のビジネスを支えます。
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アプリケーションに応じた最適化提案:お客様の特定の用途や要件に合わせて、Lepton XDSの最適な活用方法やカスタマイズについて提案します。
コーンズテクノロジーは、この「Lepton XDS」の国内展開を通じて、日本における組み込みサーマルセンシング技術の高度化と、AIを活用した製品の量産展開の推進に貢献していく方針です。
Teledyne FLIR社とコーンズテクノロジー株式会社について
Teledyne FLIR社
Teledyne FLIR社(テレダインフリアー)は、先進的な赤外線技術を活用し、サーマルカメラやガス検知カメラ、音響カメラといった幅広い分野で製品を製造する世界的な企業です。コンパクトで軽量なデバイスから革新的なセンシングソリューション、イメージングシステムまで、多岐にわたるラインナップを提供し、産業、国防、航空宇宙、セキュリティ、環境モニタリングなど、幅広い市場でその技術が活用されています。
コーンズテクノロジー株式会社
コーンズテクノロジー株式会社は、長年にわたり日本と諸外国との貿易発展に寄与してきたコーンズグループの一員です。日本産業界のニーズに合った新製品や新技術のプロモーション・マーケティングおよび販売を行う技術専門商社として、世界中のパートナーと密に連携し、迅速かつ柔軟に世界最高レベルの提案を提供しています。
まとめ:AIとLepton XDSが拓く未来
Teledyne FLIR社の「Lepton XDS」は、「マイクロサイズ・低消費電力」というLeptonシリーズの強みを維持しつつ、MSX技術とPrism ISPによる画像融合と内部処理によって、これまでのサーマルカメラでは得られなかった“視認性・識別性の高い熱画像”と、より詳細な「状況理解能力」を提供する次世代のサーマルモジュールです。
この革新的な技術は、AIを搭載した様々なシステムにおいて、環境認識、安全監視、予知保全といった分野で、これまでにないレベルの精度と信頼性をもたらすでしょう。コーンズテクノロジーによる国内での販売と手厚い技術サポートにより、日本の産業界においてもLepton XDSの活用がさらに加速し、AIが私たちの社会をより安全で効率的なものにする未来が期待されます。
Lepton XDSに関する詳細は、以下の製品ページで確認できます。
製品ページはこちら
製品に関するお問い合わせは、コーンズテクノロジー株式会社の電子デバイス部センサーチームまでご連絡ください。
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