Qualcommが主導!エッジAIの未来を拓く「QAIPI 2025 APAC Demo Day」で革新的スタートアップ15社が次世代AIソリューションを披露

Qualcommの「QAIPI 2025 APAC Demo Day」でエッジAIの最前線が明らかに

2025年12月8日、クアルコム・テクノロジーズ(Qualcomm Technologies, Inc.)は、韓国のソウルで「Qualcomm AI Program for Innovators (QAIPI) 2025 – APAC Demo Day」を開催しました。このイベントでは、アジア太平洋地域から選ばれた15社の革新的なスタートアップ企業が、Qualcommの最先端プラットフォームを駆使したエッジAIソリューションを発表し、ロボティクス、ヘルスケア、スマートシティといった多岐にわたる分野でのAIの可能性を示しました。

近年、AI(人工知能)の進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらしています。中でも「エッジAI」は、これからの社会を大きく変える可能性を秘めた技術として注目を集めています。

エッジAIとは?AI初心者にも分かりやすく解説

AIには、大きく分けて「クラウドAI」と「エッジAI」の2種類があります。

クラウドAIとは

クラウドAIは、インターネットを通じてアクセスする大規模なデータセンター(クラウド)でAIの処理を行う方式です。例えば、スマートフォンの音声アシスタントが質問に答える際、多くの場合、音声データはクラウドに送られ、そこで処理されてから結果が返されます。クラウドAIのメリットは、非常に複雑な計算や大量のデータ処理が可能であること、そして常に最新のAIモデルを利用できる点にあります。しかし、デメリットとしては、インターネット接続が必須であること、データセンターとの通信に時間がかかるため「遅延」が発生すること、そしてプライバシーに関わるデータを外部に送信する必要があることなどが挙げられます。

エッジAIとは

一方、エッジAIは、AIの処理を「エッジデバイス」と呼ばれる端末自体で行う方式です。エッジデバイスとは、スマートフォン、スマートカメラ、産業用ロボット、自動車などのように、データの発生源に近い場所にあるデバイスのことを指します。エッジAIの最大のメリットは、以下の点が挙げられます。

  • リアルタイム処理と低遅延: データがクラウドに送られるのを待つ必要がないため、非常に速い応答が可能です。例えば、自動運転車が瞬時に障害物を認識したり、工場で機械の異常をリアルタイムで検知したりする場合に不可欠です。

  • プライバシー保護: データを外部に送信せず、デバイス内で処理するため、個人情報や機密性の高いデータのプライバシーをより効果的に保護できます。

  • オフライン動作: インターネット接続がない環境でもAIが機能するため、災害時や通信インフラが整備されていない場所でも利用可能です。

  • 電力効率: クラウドへのデータ送信が減るため、デバイス全体の消費電力を抑えることができます。

Qualcommは、スマートフォンやPC、IoTデバイスなどに搭載される高性能なプロセッサーを開発しており、これらのプロセッサーにAI処理に特化した機能を組み込むことで、エッジAIの普及を強力に推進しています。今回のQAIPI Demo Dayで発表されたソリューションも、Qualcommのプラットフォームが持つ高い処理能力と電力効率によって実現されています。

QAIPI 2025 APAC Demo Day:革新的なエッジAIソリューションが集結

Qualcomm AI Program for Innovators (QAIPI) 2025 – APAC Demo Dayは、アジア太平洋地域のスタートアップ企業が、Qualcommの技術を活用して次世代のAIソリューションを開発・発表する場として開催されました。

Qualcomm AI Program for Innovators 2025 - APAC Demo Day

最先端のQualcommプラットフォームがAIイノベーションを加速

今回のデモデイでは、以下のQualcommプラットフォームを搭載したオンデバイスAIソリューションが発表されました。

  • Snapdragon® Xプロセッサー: 高性能PC向けのプロセッサーで、AI処理能力が非常に高いことが特徴です。

  • Snapdragon® 8シリーズモバイルプラットフォーム: スマートフォン向けに広く利用されている高性能プロセッサーで、モバイルデバイスでの高度なAI体験を実現します。

  • Qualcomm Dragonwing™製品: 産業用IoTや組み込みシステム向けの製品で、エッジでのリアルタイムAI推論を可能にします。

これらのプラットフォームは、AIの推論(学習済みのAIモデルを使って判断を行うこと)をデバイス上で直接、かつリアルタイムで、さらに電力効率良く実行できるため、多様な分野でのエッジAIの応用を可能にしています。

参加スタートアップと発表されたソリューションの例

6ヶ月間のメンターシップフェーズを経て、最終選考に残った15チームがデモデイでプレゼンテーションを行いました。これらのスタートアップは、様々な業界におけるエッジAIの変革の可能性を強調しています。

Qualcomm AI Program for Innovators 2025 - APAC Demo Day

日本からの参加企業:

  • AMATAMA: 人型ロボットプラットフォーム「nHOS™」を開発しており、神経科学、生体力学、AIを統合した次世代のヒューマノイドプラットフォームを通じて、2050年までに世界的な労働力不足に対処することを目指しています。Qualcommのプラットフォームとの連携により、共感的基盤モデルのエッジ実装を実現しています。

  • Cear: 高度なオーディオ技術(マルチマイク指向性制御、空間オーディオ処理)とQualcomm Vision AIを組み合わせ、あらゆる環境で最適化された没入型音響体験を提供します。Qualcomm Dragonwing™と第13世代Snapdragon 2を組み合わせたAIオーディオ処理ソリューションを発表しました。

  • Guide Robotics: コンピュータビジョンと自律型ロボット技術を活用し、物流、建設、セキュリティといった産業オペレーションを変革する高度なツールを開発しています。QAIPI APAC 2025 Demo Dayでは、産業オペレーションにおけるコンピュータビジョンとAIの融合についてプレゼンテーションを行いました。

QAIPI APAC 2025 Demo Dayでプレゼンテーションを行うGuide Robotics

  • ModAstera: 医療機器企業が医療データからAIモデルを構築するためのノーコードプラットフォームを提供し、開発期間を数ヶ月から数日に短縮し、コストを最大90%削減します。MAEA(Medical AI Engineering Agent)プラットフォームのオンプレミスデプロイメントをSnapdragon® X EliteとQualcomm AMATAMA Co. Engineer OREOストレージエリアと連携させて発表しました。

  • Noahlogy: (詳細な発表内容はプレスリリースに記載されていませんが、他の参加企業と同様にエッジAIソリューションを発表したものと推測されます。)

シンガポールからの参加企業: AI Seer、Biorithm、LINGOAI、MetaOptics、Vilota
韓国からの参加企業: BanyaAI、MaumAI、MOTOV、SAKAK、SqueezeBits

これらのスタートアップ企業が発表したソリューションは、産業オペレーションにおけるロボット工学やコンピュータービジョン、ヘルスケアにおける分析プラットフォーム、スマートシティソリューションなど、非常に幅広い分野に及んでいます。デバイス内AIのイノベーションは、パーソナライズされ、プライバシーを保護する体験を提供し、Qualcommの強力なプラットフォームと統合されたエッジAIが、現実世界に大きな影響を与えていることを示しています。

スタートアップを強力に支援するQualcommのプログラム

QAIPIプログラムは、単なるデモデイだけではありません。参加するスタートアップ企業は、6ヶ月間にわたる包括的なメンターシップフェーズを通じて、多岐にわたる支援を受けます。

充実した支援内容

  • Qualcommエンジニアによる技術サポート: 最先端のAI技術を開発する上で不可欠な、専門家による直接的な技術指導が提供されます。

  • Qualcomm Technologiesのハードウェア開発キットへのアクセス: 実際にソリューションを開発・テストするためのQualcomm製ハードウェアが提供され、開発の加速を支援します。

  • 導入準備を支援するビジネスワークショップ: 技術的な側面だけでなく、市場への導入やビジネス展開に必要な知識や戦略を学ぶことができます。

  • 知的財産(IP)に関するトレーニング: スタートアップが自社の技術を保護し、長期的な競争力を確保するために重要な知的財産権について学ぶ機会が提供されます。

  • 最大5,000米ドルの特許出願インセンティブ: 革新的なアイデアが特許として保護されるよう、経済的な支援が行われます。これは、スタートアップが安心して研究開発を進め、その成果を守る上で非常に大きな意味を持ちます。

これらの支援は、スタートアップ企業がプロトタイプ開発から実際の運用へとスムーズに移行できるよう、Qualcommが積極的にエコシステムを構築している証拠です。

Qualcommのエコシステム拡大戦略と将来の展望

Qualcommは、エッジAIのグローバル展開を継続的に推進しており、その取り組みは多岐にわたります。

Qualcomm APAC プレシデント O.H. Kwon氏

Qualcomm APACプレシデントのO.H. Kwon氏は、「AIは世界中の産業を変革し続けており、アジア太平洋地域のイノベーターたちがこの進化をリードできるよう支援できることを大変嬉しく思います。私たちはイノベーターたちがプロトタイプ開発から実運用へと移行できるよう支援し、この地域の次世代AIエコシステムを積極的に構築することに尽力しています」と述べ、地域イノベーションへの強いコミットメントを示しました。

また、Qualcomm Incorporatedのエンジニアリング副社長であり、グローバルエコシステム開発プログラムの責任者を務めるSudeepto Roy氏は、「日本、シンガポール、韓国の発明家たちの深い専門知識を基盤に、高性能でエネルギー効率の高いエッジコンピューティングを構築しています。これは、多様な地域のワークフローにエンボディドAIを展開するための重要な触媒となります」と語り、イノベーターがスケーラブルなソリューションを生み出すことへの期待を表明しました。

Arduino買収と開発者コミュニティの強化

Qualcommは、オープンソースのハードウェアおよびソフトウェアのリーディングカンパニーであるArduinoを買収することで、開発者リソースとイノベーションエコシステムをさらに拡大しました。Arduinoは、初心者からプロフェッショナルまで幅広いユーザーに利用されているマイクロコントローラーボードで、その開発コミュニティは非常に活発です。

Arduino初のデュアルブレインボードである新型Arduino UNO Qは、Qualcomm Dragonwingプロセッサのパワーを数百万人の開発者に提供します。これにより、より多くの開発者がQualcommのエッジAI技術に触れ、新たなアイデアを形にする機会を得られるでしょう。Qualcommは、オープンソースコラボレーションとエコシステム開発へのコミットメントを強化し、スタートアップ企業が初期コンセプトからプロトタイプ、そして市場投入可能なソリューションへと効率的に進歩し、イノベーションから特許取得可能な知的財産への移行を支援しています。

Qualcomm AI Program for Innovatorsのスタートアップブース

2026年への期待

2026年には、Qualcomm AI Program for Innovators (QAIPI) 2026 – APACが開催される予定です。引き続き地域全体のスタートアップを支援し、Arduinoなどのラピッドプロトタイピングプラットフォームや、デバイスレベルのAIおよび機械学習統合の拡張サポートを通じてイノベーションを推進していくことが期待されます。

QAIPI 2026の詳細は近日中に発表されるとのことなので、興味のある方はプログラムのウェブサイトを定期的に確認することをおすすめします。

Qualcomm AI Program for Innovators 2025 - APAC Demo Day パネルディスカッション

まとめ

Qualcommが主催した「QAIPI 2025 APAC Demo Day」は、エッジAIの未来を形作る革新的な技術と、それを支えるスタートアップ企業の熱意が集結したイベントでした。Qualcommの強力なプラットフォームと包括的な支援プログラムは、アジア太平洋地域のAIイノベーションを加速させ、ロボティクス、ヘルスケア、スマートシティといった様々な分野で、私たちの生活をより豊かで安全なものに変えていくことでしょう。

エッジAIは、リアルタイム性、プライバシー保護、電力効率といったメリットを活かし、今後ますます多くのデバイスやサービスに組み込まれていくと予想されます。Qualcommの継続的な取り組みと、才能あるスタートアップ企業との協業によって、エッジAIがもたらす社会変革の波は、さらに加速していくに違いありません。今後のQAIPIプログラムや、そこから生まれる新たなイノベーションにも注目が集まります。

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