ティアフォーがimecのAutomotive Chiplet Programに加盟:自動運転の未来を拓く次世代半導体技術とAIアクセラレーター開発を解説
自動運転技術の「民主化」をビジョンに掲げる株式会社ティアフォーは、ナノエレクトロニクスとデジタル技術の分野で世界的に著名な研究開発機関であるimecの「Automotive Chiplet Program(ACP)」に加盟しました。
この提携は、ティアフォーが目指す「多種多様な環境」と「多種多様な応用」に対応する自動運転ソリューションの実現を加速させる重要な一歩となります。グローバルなモビリティエコシステムに対し、拡張性の高い自動運転ソリューションを提供することを目指しています。

加盟の背景と狙い:SDV時代を支えるハードウェアとソフトウェアの分離
自動車業界は現在、「ソフトウェア定義型自動車(Software Defined Vehicle:SDV)」への大きな転換期を迎えています。SDVとは、車両の機能がソフトウェアによって柔軟に定義・更新される自動車のことで、これによりユーザーは購入後も常に最新の機能やサービスを利用できるようになります。このSDVの進化において、ハードウェアとソフトウェアを切り離し、それぞれを独立して開発・最適化できる環境を構築することが、競争力を維持するために不可欠とされています。
ティアフォーは、この大きな流れの中で、以下の2つの点に特に注力しています。
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多種多様な環境への適合性: 自動車メーカーの多岐にわたる車両モデル、自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」、そしてシステム・オン・チップ(SoC)やセンサーを含む様々なハードウェアアーキテクチャに対して、高い適合性を実現することを目指しています。
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多種多様な応用への対応: システム開発と統合、車両への組み込み、リファレンスデザインの提供、そして顧客向けサービスを通じて、物流、公共交通、ラストワンマイル配送など、多様なユースケースに対応できる自動運転システムを提供することを目指しています。
今回のimec ACPへの加盟は、これらの目標達成に向けた重要な戦略的選択です。ここで鍵となるのが「チップレット技術」です。
チップレット技術とは?
チップレット技術とは、特定の機能を持つ小さなチップ(チップレット)を複数組み合わせることで、一つの大きな半導体チップを構築する新しい手法です。従来の半導体は、すべての機能を一つの大きなシリコンダイに集積するのが一般的でした。しかし、チップレット技術では、例えばCPU機能を持つチップレット、AI処理機能を持つチップレット、メモリ機能を持つチップレットなどを個別に製造し、それらをパッケージ内で接続して一つの強力な半導体を構成します。
この技術の最大の利点は、半導体の「モジュール化」が実現できる点にあります。自動車メーカーは、特定のベンダーの統合型SoCに依存することなく、用途や要件に応じて最適なチップレットを自由に選択し、組み合わせることが可能になります。これにより、開発コストの削減、開発期間の短縮、そして特定の機能の高性能化が期待できます。
ティアフォーはACPへの加盟を通じて、多様なソフトウェアが異なる半導体上で効率的に動作するチップレットアーキテクチャを推進し、自動運転システムの柔軟性と拡張性を飛躍的に高めることを目指しています。
取り組みの内容:AIベースの自動運転に最適化されたAIアクセラレーターの開発
今回のACPへの加盟において、ティアフォーは他の加盟企業と連携し、特定の機能に特化したハードウェアアクセラレーターの設計に重点を置いています。ハードウェアアクセラレーターとは、特定の種類の計算(例えばAIの計算)を、汎用的なCPUよりもはるかに高速かつ効率的に実行するために設計された専用のハードウェアのことです。
ティアフォーは、これまで培ってきた高速な3次元点群処理を可能にするLiDAR(ライダー)アクセラレーターの開発実績を基盤として、AIベースの自動運転に最適化されたAIアクセラレーターの研究開発を加速させます。
自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」は、認識から計画までを統合的に処理するニューラルネットワークへと進化を続けています。この進化に伴い、車両に搭載されるハードウェアには、膨大なAI処理を滞りなく実行するための非常に高い処理能力が求められるようになります。
チップレット技術を活用することで、ティアフォーがこれまでに培ってきた認識技術に関する深い知見を、他の演算ユニットとともにSoC(System-on-Chip)へ直接統合することが可能になります。これにより、次世代の自動運転システムに不可欠となる「低遅延」(処理の遅れが少ないこと)と「高い効率性」(少ない電力で多くの処理を行うこと)を実現できると期待されています。
ティアフォーとimecからのコメント
株式会社ティアフォー 代表取締役 執行役員 CEO 加藤真平氏のコメント:
加藤氏は、自動運転システムが多種多様な環境や応用に対して柔軟に適応できる技術の実現を目指していると述べました。ACPに加盟することで、オープンな標準規格に基づき、オープンソースソフトウェアを半導体と連携させることが可能になる点を強調しています。異なるアーキテクチャにおいても、最適化されたチップレット設計を通じて、「Autoware」や同社のAIベースモデルがその性能を最大限に引き出せる環境を構築していく考えを示しています。
imec Automotive VP Bart Placke氏のコメント:
Placke氏は、ティアフォーをACPに迎えることができ大変喜ばしいと語りました。自動車業界がチップレットアーキテクチャへと移行する中で、この変革を一社単独で成し遂げることは難しいとの認識を示し、ACPではエコシステム全体で共通基盤となる標準規格の策定や車載要件を満たす手法の検証に共同で取り組んでいることを説明しました。ティアフォーの加盟により、ACPの半導体およびシステム統合の知見と、ティアフォーの自動運転ソフトウェアおよびリファレンスプラットフォームの技術力を融合させることが可能となり、次世代の安全で信頼性が高く、拡張性とエネルギー効率に優れた自動運転のモビリティを支えるチップレットアーキテクチャの確立を加速させていくと述べています。
今後の展望:オープンなエコシステムによる自動運転社会の実現
ティアフォーは、ACPにおいて、世界の主要企業とともに、車載チップレットの共通基盤となる標準規格の策定に積極的に取り組みます。この標準化への貢献は、The Autoware Foundationが推進するOpen AD KitやティアフォーのCo-MLOpsプラットフォームにおいて、最先端の半導体技術を活用した開発を可能にするでしょう。
また、チップレット技術を企業の枠を超えて相互に活用できるエコシステムを推進することで、透明性の高いサプライチェーンを構築し、安全で拡張性の高い自動運転の社会実装をグローバルで加速させていくことを目指しています。この取り組みは、自動運転技術の普及と発展に大きく貢献し、より安全で持続可能な社会の実現に繋がると期待されます。
株式会社ティアフォーについて
株式会社ティアフォーは、「自動運転の民主化」をビジョンに掲げ、自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」の開発を主導するディープテック企業です。同社は自社製品として「Autoware」を活用したソフトウェアプラットフォームを提供し、それらを基盤に市場ニーズに応じた自動運転における各種サービスを展開しています。
ティアフォーは、「Autoware」が生み出すエコシステムを通じて、世界中のパートナーと連携しながら自動運転の可能性を広げ、より安全で持続可能な社会の実現を目指しています。
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株式会社ティアフォー公式サイト: https://tier4.jp/
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Autowareプロジェクト(GitHub): https://github.com/autowarefoundation/autoware
imecについて
imecは、ベルギー・ルーベンに本部を置く、ナノエレクトロニクスとデジタル技術の分野で世界をリードする独立系研究開発機関です。半導体技術、AI、ヘルスケア、エネルギーなどの分野で、革新的な研究と技術開発を行っています。imecのAutomotive Chiplet Programは、自動車分野におけるチップレット技術の標準化とエコシステム構築を目的としています。
- imec Automotive Chiplet Program(ACP)詳細: https://www.imec-int.com/en/expertise/cmos-advanced-and-beyond/compute/automotive-chiplet-program
まとめ
ティアフォーのimec Automotive Chiplet Programへの加盟は、自動運転技術の進化における重要な節目です。この協力関係を通じて、チップレット技術とAIアクセラレーターの開発が加速され、ソフトウェア定義型自動車(SDV)時代の自動運転システムの柔軟性、効率性、そして安全性が飛躍的に向上することが期待されます。オープンな標準規格とエコシステムの構築は、自動運転の社会実装をグローバルに推進し、より安全で持続可能なモビリティ社会の実現に貢献するでしょう。

