レガシーシステムが抱える深刻な課題「触れる人がいない」を生成AI「Claude Code」で解決

今日のビジネス環境において、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を急いでいます。しかし、その道のりには「レガシーシステム」という大きな壁が立ちはだかることがあります。特に、1988年に登場し、現在も製造業、金融、流通など多くの中小企業の基幹システムとして現役で稼働しているAS/400(現IBM i)は、その代表例と言えるでしょう。国内では約2万社がこのシステムを利用していると推計されています。
なぜ今、レガシーシステムの問題が深刻なのか?
AS/400の主要な開発言語である「RPG」は、独特な構文や厳格なカラム位置制約、古い環境に依存した書き方など、非常に専門性が高く、習得が難しいという特徴があります。さらに、学習リソースが少ないため、若い世代のエンジニアが自ら学ぼうとするモチベーションが湧きにくいという構造的な問題も存在します。
この結果、RPG技術者の平均年齢は50歳を超え、ベテランエンジニアの退職とともに、組織が長年培ってきた貴重な知識が失われ続けています。保守や改修の需要は年々増加しているにもかかわらず、対応できる人材は減少の一途をたどっており、高額な外部委託コストが中小企業の経営を圧迫する要因となっています。
このような状況は、企業の競争力低下やDX推進の足かせとなり、早急な解決が求められています。
オーエムネットワークが挑んだ生成AI「Claude Code」活用
こうした深刻な課題に対し、オーエムネットワーク株式会社は、20年以上にわたる基幹系開発で培った知見と、最新の生成AI「Claude Code」を組み合わせることで、実践的な解決アプローチに取り組みました。同社は、AIが本当にレガシーシステム開発に使えるのかという半信半疑のスタートから、従来4〜6日を要していたRPGプログラム開発をわずか約4時間で動作するところまで辿り着いた実践レポートを公開しています。
このレポートは、レガシーシステムの開発・運用保守に携わるエンジニアや情報システム部門の担当者に向けて、「実際に何が起きたか」をそのまま伝えることを目的としており、生成AIの業務活用を検討している方々にとって具体的な判断材料となるでしょう。
AS/400 RPG × Claude Code:実践の具体的な内容
開発したプログラム
今回の実践では、銀行マスター保守プログラム(3ファイル構成)の開発が行われました。
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RPGプログラム(約700行): 業務ロジック、エラーハンドリング、データベース連携を実装。
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CLプログラム: プログラム全体の起動と制御を担当。
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DDSファイル: 画面レイアウト定義(入出力画面)。
実装された機能は、新規登録、修正、厳格な文字種チェック(半角カナ・英数字のみ許可)、画面遷移制御など、実用的なものばかりです。
開発プロセス
開発は以下の2段階で進められました。
- 第1段階:仕様書からの自動生成(約30分): 既存のRPGプログラムをサンプルとしてClaude Codeに提示。それと類似した仕様書を作成し、3つのプログラムファイルが自動生成されました。この際、命名規則、コメント書式、インデントスタイルまで、既存コードのスタイルを完全に継承したコードが生成されたとのことです。
- 第2段階:環境対応と最適化(約2〜3時間): 古いRPG環境特有の制約への適応、変数命名規則の統一、文字種チェックロジックの段階的な改善が行われました。具体的なエラーメッセージ、行番号、期待する動作をClaude Codeに共有することで、修正作業は数秒から数分で完了したと報告されています。
開発効率の比較
同規模のプログラム開発を従来の人手作業で行った場合と、生成AIを活用した場合の効率を比較すると、その効果は一目瞭然です。
| 項目 | 従来の方法 | 生成AI活用 |
|---|---|---|
| 初期コーディング | 2〜3日 | 約30分 |
| デバッグ・調整 | 1〜2日 | 2〜3時間 |
| ドキュメント作成 | 半日〜1日 | 数分 |
| 合計 | 4〜6日 | 約4時間 |
この比較からわかるように、生成AIを活用することで、開発にかかる総時間が劇的に短縮され、最大で90%以上の工数削減が実現したことが示されています。特に初期コーディングとドキュメント作成においては、AIがその能力を最大限に発揮し、驚くべきスピードで作業を完了させています。
技術的な課題とAIによる対処
RPG開発で生成AIを使う上で最も懸念されるのが、「古い環境の制約への対応」です。今回の実証では、以下の課題が段階的に解決されました。
| 環境・技術的な壁 | 生成AIによる対処 |
|---|---|
| カラム位置制約のある古い構文 | サンプルコードから学習し、同じスタイルで自動生成 |
| 変数位置指定エラー(SUBST命令) | 文字列シフト方式へ自動的に切り替え |
| 文字種チェックの精度不足 | シフト方式+範囲指定のハイブリッド方式で解決 |
| 半角英小文字禁止の環境制約 | 大文字表記に統一して自動的に適応 |

担当者からは「正直、ここまでできるとは思っていませんでした」という驚きの声が上がっています。既存のプログラムを見せるだけで、いきなりそれらしいコードが出力され、試行錯誤を繰り返しながらも最終的には実務で使えるレベルのプログラムが完成したとのことです。この経験を通じて、レガシーシステムは「終わっていく技術」という認識から、「生成AIと組み合わせることで、まだ新しい可能性が広がる」という認識へと変化したことが伺えます。
ビジネスにもたらす3つのインパクト
生成AIの活用は、単なる開発効率化に留まらず、ビジネス全体に大きなインパクトをもたらすことが期待されます。
1. コスト削減
高額な外部委託に頼ることなく、システムの内製化の可能性が広がります。特に中小企業にとって、専門人材なしで基幹系プログラムの保守・開発を継続できることは、経営上の極めて大きなメリットとなります。これにより、IT関連の費用を大幅に削減し、その分を他の戦略的な投資に回すことが可能になるでしょう。
2. 品質向上
AIが生成するコードは、一貫したコーディング規約が自動的に守られるため、人的ミスが大幅に減少します。これにより、バグの発生率が低下し、システムの安定性が向上します。また、コードの属人化を防ぎ、誰が見ても理解しやすいコードとドキュメントが同時に生成されるため、将来的なメンテナンスや引き継ぎもスムーズになります。
3. 人材育成
若手エンジニアが生成AIをメンターとして活用することで、RPG開発への参入障壁が劇的に下がります。AIが学習したベテランのサンプルコードは、組織の暗黙知(経験や勘に基づく知識)を形式知(明文化された知識)として継承する役割を果たします。これにより、世代交代が進む中でも、技術力の維持・向上を図ることが可能になり、IT人材不足という社会課題に対する有効な解決策となり得ます。
レガシーシステム開発の新時代へ
現時点での制約
生成AIは強力なツールですが、現時点ではいくつかの制約も存在します。
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完全自動化は困難: 最終的な検証や調整は、人間のエンジニアによる確認が不可欠です。
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環境依存の問題: 個別のシステムが持つ特殊な事情や制約には、その都度、人間の手による対応が必要となります。
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機密情報の取り扱い: 社内機密を含む情報をAIに入力する際には、情報漏洩のリスクを考慮し、適切な配慮とセキュリティ対策が求められます。
推奨される活用方法
これらの制約を踏まえ、生成AIは以下のような方法で活用することが推奨されます。
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初期開発の高速化: プログラムの骨格となるコードの作成に活用することで、開発初期段階の工数を大幅に削減できます。
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教育ツール: 若手エンジニアの学習支援や、経験豊富なメンターの代替として活用し、早期のスキル習得を促します。
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ドキュメント整備: 過去のレガシーコードから仕様書を自動生成することで、失われつつあるドキュメントを効率的に整備し、システムの理解度を高めます。
今回の事例は、生成AIがレガシーシステムの開発・保守において、実用的なツールとなり得る可能性を明確に示しました。深刻化する技術者不足という社会課題に対し、AIとの協働という新しいアプローチは、非常に有効な解決策になり得ると言えるでしょう。
まとめと今後の展望
オーエムネットワーク株式会社の実践レポートは、生成AI「Claude Code」がAS/400のRPG開発という、一見するとAIとは縁遠いと思われがちな分野で、いかに大きな変革をもたらすかを具体的に示しました。開発工数の劇的な削減、品質向上、そして人材育成への貢献は、多くの企業が抱えるレガシーシステム問題の解決に光明を差し込むものです。
同社は今後も、20年以上のシステム開発ノウハウと最新のAI技術を組み合わせることで、顧客の基幹システム保守・開発をより迅速、低コスト、高品質に支援していく方針です。AIを活用したDX推進は、レガシーシステムに悩む企業にとって、新たな未来を切り開く鍵となるでしょう。
会社概要
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会社名:オーエムネットワーク株式会社
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所在地:新潟県新潟市中央区
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代表取締役:山岸真也
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事業内容:業務システム開発、シフト管理システム「R-Shift」、勤怠管理システム「R-Kintai」
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提供Web:

