ONESTRUCTION株式会社は、建設業界のデジタル変革(DX)を推進するため、経済産業省およびNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主導する国内生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」に採択され、その研究開発成果として画期的なAIモデル「Ishigaki-IDS」と評価ベンチマーク「IDS-Bench」を公開しました。これは、建設分野における情報管理の効率化と品質向上に大きく貢献する可能性を秘めています。

建設業界のデジタル化を支えるBIMとIDSの重要性
AI初心者の方には聞き慣れないかもしれませんが、建設業界では今、「BIM(Building Information Modeling)」と「IDS(Information Delivery Specification)」という技術が注目されています。これらは、建物の設計から施工、さらには運用・維持管理に至るまでの全工程をデジタルデータで一元的に管理し、効率化を図るための重要なツールです。
BIMとは?
BIMは、建物の情報を3次元のデジタルモデルとして作成し、その中にコスト、材料、工程などのあらゆる情報を統合するプロセスを指します。これにより、従来の2次元図面では難しかった情報の共有や連携が容易になり、設計段階での問題発見、施工シミュレーション、資材発注の最適化などが可能になります。BIMを導入することで、手戻りの削減、工期の短縮、コストの削減、品質の向上といった多くのメリットが期待できます。
IDSとは?
IDSは「Information Delivery Specification」の略で、BIMデータに「どのような情報を、どのような形式で入力すべきか」を明確に定義するための要件定義書です。例えるなら、建物を建てるための「設計図」がBIMだとすると、IDSはその設計図に「どこに、どんな材料を、どれくらいの量使うか」といった具体的な指示を書き込むための「仕様書」のようなものです。これにより、BIMデータが常に高品質で一貫性のあるものとなり、建設プロジェクトに関わる全員が同じ情報を正確に共有できるようになります。
IDSは、建設物をまるでソフトウェア開発における「テスト駆動開発」のように、必要な情報が正しく含まれているかを検証しながら建設を進めるためのアプローチとして注目されています。これにより、情報の抜け漏れや誤りを未然に防ぎ、プロジェクト全体の品質と効率を向上させることができます。
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openBIMについての詳細はこちら: https://note.com/onestruction/n/n9ffa7dda5d01
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IDSについての詳細はこちら: https://note.com/onestruction/n/n0918976da166
建設BIM情報要件(IDS)生成基盤モデル「Ishigaki-IDS」の誕生
ONESTRUCTIONは、「建設とテクノロジーの架け橋に」をミッションに掲げ、建設ドメインに特化した汎用生成AI基盤モデルシリーズ「Ishigaki」の開発に取り組んでいます。今回公開された「Ishigaki-IDS」は、この「Ishigaki」シリーズの一環として、openBIMにおけるBIM情報要件(IDS)の生成に特化して開発されました。

Ishigaki-IDSの特長と開発背景
Ishigaki-IDSは、既存のオープンモデルをベースに追加学習を行うことで、IDS生成タスクに特化した建設BIM向け基盤モデルとして構築されました。開発では「Ishigaki-IDS-8B」「Ishigaki-IDS-14B」「Ishigaki-IDS-32B」の3種類のモデルが構築され、そのうち「Ishigaki-IDS-8B」が一般公開されています。
ベースモデルの選定にあたっては、様々なAIモデルの性能を評価する「Nejumi Leaderboard4」を参考に、汎用的な言語性能と安全性が確保されていること、複数のモデルサイズが揃っていること、そして国内外で広く利用され情報収集や検証がしやすいことから、Qwen3が採用されました。Qwen3の8B/14B/32Bを基盤とし、IDS生成に特化した追加学習が施されたことで、建設分野の専門知識がAIモデルに深く組み込まれています。
高いセキュリティと利用のしやすさ
Ishigaki-IDSは、モデルをダウンロードし、追加学習から推論までをすべて管理された環境内で完結させる構成を取っています。このため、学習データや入力データが外部に送信される心配がなく、高いセキュリティを確保しながら利用できる点が大きなメリットです。建設プロジェクトにおける機密情報の取り扱いを考慮すると、このような設計は非常に重要と言えるでしょう。
Ishigaki-IDS-8Bの公開ページはこちら: https://huggingface.co/ONESTRUCTION/Ishigaki-IDS-8B
IDS生成評価用ベンチマーク「IDS-Bench」
AIモデルの性能を客観的に評価するためには、適切なベンチマーク(評価基準)が不可欠です。「IDS-Bench」は、Ishigaki-IDSのIDS生成能力を測るために、建設・BIM領域の専門人材とONESTRUCTIONが協力して構築した独自のベンチマークです。
IDS-Benchの評価観点
IDS-Benchは、CSV形式のデータからIDSを生成する際の精度を測定します。評価は多角的に行われるよう設計されており、IFC/IDSのバージョン、使用言語(日本語、英語など)、そして建物のカテゴリ(住宅、商業施設、インフラなど)といった様々な観点から、AIモデルのIDS生成性能を詳細に分析できます。これにより、特定の条件下でのAIモデルの強みや改善点などを正確に把握することが可能になります。
IDS-Benchの公開ページはこちら: https://huggingface.co/datasets/ONESTRUCTION/IDS-Bench
Ishigaki-IDSの優れたIDS生成性能
ONESTRUCTIONが開発したIshigaki-IDSをIDS-Benchで評価した結果、IDS生成タスクにおいて非常に高い性能が確認されました。この性能は、一般的な汎用AIモデルと比較しても顕著な差があり、Ishigaki-IDSが建設BIM領域の専門知識を深く学習していることを示しています。

IDSは、建設BIM領域における専門性が非常に高く、2024年に公開された比較的新しい規格であるため、汎用的な事前学習だけでは十分に対応しにくい側面があります。しかし、Ishigaki-IDSは、こうした専門知識や規格構造を深く理解するための追加学習を徹底的に行ったことで、汎用モデルでは達成できないレベルのIDS生成性能を実現しました。これにより、建設プロジェクトにおけるIDS作成の効率化と品質向上が期待できます。
評価の詳細は、ONESTRUCTIONが同時公開しているテックブログで確認できます。
開発の経緯と技術的背景を詳しく解説
今回の開発で得られた知見や技術的な背景については、ONESTRUCTIONのテックブログで詳細に公開されています。AI技術の裏側や、建設分野への応用における課題と解決策について深く知りたい方は、ぜひ参照してみてください。このような技術的な情報は、今後の建設DXをさらに加速させるための重要な手がかりとなるでしょう。
テックブログはこちら: https://zenn.dev/onestruction/articles/487404c8762cc6
今後の展望と建設DXへの貢献
ONESTRUCTIONは、今回の取り組みで得られた知見を今後も論文やテックブログとして積極的に発表していく予定です。AIをはじめとする最先端のテクノロジーを建設分野に応用することで、同社は建設DXの推進に引き続き貢献していくとしています。
建設業界は、人手不足や生産性向上といった多くの課題を抱えています。AI技術の活用は、これらの課題を解決し、より安全で効率的、そして持続可能な建設を実現するための鍵となります。ONESTRUCTIONの「Ishigaki-IDS」と「IDS-Bench」は、建設情報のデジタル化と標準化を加速させ、建設DXの新たな一歩となるでしょう。
ONESTRUCTIONでは、建設AIや建設基盤モデル開発に興味を持つ人材を積極的に募集しています。この分野でのキャリアを考えている方は、以下の募集記事をご覧ください。
募集記事はこちら: https://note.com/onestruction/n/n54c103425f7f
ONESTRUCTIONの挑戦は、日本の建設業界が抱える課題に対し、AIという強力なツールで新たな解決策を提示するものです。この技術が広く普及することで、建設プロジェクトの効率性、品質、そして安全性が飛躍的に向上し、未来の社会基盤づくりに貢献することが期待されます。

